私は、御曹司の忘れ物お届け係でございます。

たまる

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愛人28号でお願いします

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 あれから怒涛のような時間が流れた。
 どこに連れて行かれるかわからないが、伊勢崎さんの運転でベントレーに乗り込んだ。いや押し込まれた。
 勝手に休学届けを出していたことを思い出して車内で再び憤慨した。ちょっと文句を言ったら、
「ごめん、美代。悪かった。すまん」
の繰り返しだ。
 しかも前言を撤回しないのにさらに腹が立つ。まるで浮気が見つかった旦那のようないい訳だ。まあ自分はそんな目に遭ったことがないというか、そういう立場になったことがないから、正解には、浮気がバレた世の中の彼氏や夫たちは、こんなになるのかなーと、珍しいものを見ている感じだ。慌てている蓮司を見ているだけで、なぜか楽しい。
 「なんか蓮司さん、浮気が見つかった旦那が妻に言い訳しているみたいですよ」
 そういうと、いきなり車内で腰を上げた。
 「な、何言うんだ! そんな事、この俺がするはずないだろう!」
と激しく動揺している。
 あ、あれ楽しい。
 イジワルをしたくなる。
 「そうかな……。誰かさん、最高にモテるし、今も知りませんが、将来だってまあ、正直、信用出来るかどうか……ああ、でもあからさまに浮気されると、まあなんと言うか、キツイんで、その辺は大人のマナーで……」
 続けようかと思ったが、物凄い睨みを効かした蓮司がいる。
 な、なに? っと思ったら、ちょっと美代の横髪をその長い指先でいたずらに遊びながら、フェロモン全開で見つめ返してきた。
 う、これはかなり辛い……。
 まともに好きな相手を見られない。
 やばい。蓮司が運転席と後部座席を仕切る窓を閉めた。
 かなり良くない兆候だ。
 からかい過ぎた自分を叱りたい。
 「美代……お前は俺を弄んで…いるのか?」
 ああ、ちょっとまたその、そこら辺の女子より潤っている唇を眺めた。それ以上近付いてきたら、なんかやばいと思った。でも、まあ、あの宝石で婚約者とかなんかに仕立てあげられているけど、どう考えても、想像できない。仕方ないので、非現実で、こう二人が並んだ時の映像を自分の頭の中で想像する。
 ああ、それでもどう考えても釣り合わない。
 いろいろパターンを考える。
 もし蓮司が歌舞伎町一番の売れっ子ホストだったら、私はなんだろう。うーむ、客ではありえない。あ、そうか、元々蓮司はタバコは吸わないが想像上の蓮司は、スモーカーだ。そうだ。私は店にある灰皿? いや違う。あんなゴージャスな雰囲気は自分には合わない。あ、身につけて貰う携帯用灰皿? タバコ捨てだな。しかも、なんかフリーサンプルみたいので、またまた貰って気に入って、捨てられないって感じ?
 あー、ほかはなんだろう。
 蓮司 眠れる森の美女を起こす王子
 私 王子に踏まれる草
 蓮司 アイドル
 私 紙吹雪、時々アイドルの顔にピタっとくっついて、取れない系。
 ああ、やばい。どれも人間の形でさえしていない。今まで自分の感情に押し流されていて、釣り合いの点では全く盲点だった。
 こ、これは至急、いま対策を練っておいた方がいいかもしれない。
 「いえ、遊んでいるのではなくてですね。その現実問題として今後の予定を考えています。やっぱり蓮司はモテるし、女性問題は、会長が無視していても、あちらがほっとかないというか、やはり会長も男だし、もしかして色々とあるかもしれないと思うので、他の方がいらした場合、いや出来た場合でも、まあ、私は二号、いや五号、え、なにそんなに驚いているんですか? いやー、じゃー覚えやすい愛人28号くらいで、いいですから、お側に居れればツッコミ入れられて、寂しくないし、楽しいと思います」
 美代は言いたい事がうまく言えたと思い、満足な顔をしていた。
 蓮司は美代を呆れた顔で見つめ返した。
 蓮司の言葉で表せば、全くなんてトンチンカンで、自己評価が低すぎる女なんだと言うことだった。
 だれが愛人、しかも28号まで成り下がった女にここまでするんだと怒鳴りたかった。ゴロがいい冗談にも程があると感じた。
 そして、何かを言おうと思った瞬間、粋がって愛人などとほざいている美代の手が膝に置かれているのが見えた。あんな流暢に愛人の話をしているのに、かすかに彼女の手が震えていた。
 ああ、馬鹿なのは俺か……。
 蓮司は自分の大人げない感情をサイドに押しやった。
 「美代、今、行くところは変更だ。お前の戸籍謄本と住民票はどこにある?」
 「え? ああ、どっちも*区です」
 「わかった。伊勢崎、その区役所へ今行こう……」
 「え、なに? どうして?」
 「決着つけてやる……。お前の愛人問題とやらに」
 なにか今日の何度目かの悪寒が美代の背中に走った。

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