私は、御曹司の忘れ物お届け係でございます。

たまる

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<閑話1> お仕事している真田さん

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 <*しばし、働く真田さんのお話が入ります。多分、二、三話程度の予定。本編とはちょっとずれているので、閑話という形で進みます。これが終わり次第、また本編に戻ります>

 静寂なオフィスも来訪よって沈黙が破られる。
 「真田代行、失礼致します。この書類にご署名お願いします」
 「真田代行、マイクロテック社の業績資料をお持ち致しました」
 「ありがとう、そこに置いてくれますか。いまこの書類の署名が終わり次第、目を通します」
 「真田代行、こちらのアズレ社とのパートナーシップの件、どう致しましょうか。一応、最終判断が総裁決断になっておりまして…」
 「それは、今回は見送りです。担当の相坂常務にも言っておきましたが、相手の会社の銀行からの資金繰りがどう考えても不透明な点が多い。あちらが倒れて共倒れなるとうちも困りますので」
 総裁代行業務はかなりの激務だ。
 しかも、基本的に蓮司と違って人当たりの良い真田の場合、部下達が、蓮司会長の時よりも気軽に頼めてしまうため、仕事量が自然に増えてしまうのだ。
 プラス、レア真田代行の登場により、社内でのOL達のSNSが混戦状態となる。
 『レア真田、本日付、メディファクト社に現れる』
 『マジ! キターーーーーっ(*^o^*)//』
 『♪───O(≧∇≦)O────♪』
 『泣ける、待ってた甲斐があった』
 『やばい、誰か会長室に行く任務くれ』
 『神降臨! 誰かリングがあるか、確認しろ!』
 『……秘書課スパイ1号から連絡……薬指のリングなし!!』
 『白!』
 『シロ!』
 『白って何?』
 『純白だってこと!』
 『結婚してないってこと!』
 『嫁にする!』
 『花婿はなむこでもなりたい』
 『泣ける、神の祝福あれ』
 『秘書課の奴らに先を越されるな!』
 『秘書課でも全く相手にされないよ、(´Д` )!』
 『マジ下っ端だと、会えないよ。レア真田様』
 『皇太子(蓮司あだ名、アンタッチャブルの世界から命名)でも、激レアなのに、レア真田……どうすれば会えるの?』
 『ハンカチ落とせば?』
 『ハンカチ落とし?』
 『古典すぎない?』
 『誰か今日をバレンタインの日に変更してくれ』
 『チョコ持ってない』
 『昼休みにダッシュして買いに行く』
 『何処が会社から一番近いチョコ屋だ?』
と、女達が荒れ狂っていた。

 当の真田さんは言われた業務を淡々とこなし、『さすが大原蓮司の右腕』、『殿の懐刀』、『大原の防波堤』と男性社員から畏敬の眼差しを受けていた。しかも、きっとこれを知ったら、美代などはショックというか多分信じないと思うのだが、真田は一度聞いたことはほぼ覚えられるというスーパー記憶力の持ち主だった。あの難聴気味な真田がそんな能力を持っているとはつゆ知らず、美代はいつも真田に憤慨していたのだ。
 であるため、ほぼ巨大企業ではあるが、一度聞いた名前と顔は忘れないので、久しぶりにあった社員にも物凄い勢いで溶け込んでいくのだ。
 隣のいた秘書の矢崎が、その仕事の量とこなすスピードに驚いている。
 「真田代行、本当に凄いですね。蓮司会長と変わらないスピードと正確さ。いつもながら驚きます」
 話しながらも、お互いの手はパソコンやら書類やらひっきりなしにやって来る部下達を相手にしながら仕事をしている。
 「いえいえ、これは蓮司会長をサポートする仕事ですから、当然です」
 「……でも、こんなに表舞台でも活躍出来る真田代行はなんで、いつもは補佐という名で、大原邸から出ないんですか? 真田さんなら関連企業の社長、いや副総裁になれますよね」
 「そんな、滅相も無いですよ。矢崎君。……でも、私は裏舞台が好きなんですよ……。影から蓮司会長を支えることが……」
 「はああーーー、凄いっす。もう感服ですよ。俺も真田さんを目指してもっと頑張ります」
 「矢崎君は、良いんですよ。表舞台で会長を支える人ですから……」
 「真田代行にそう言って貰えると、かなり嬉しいです」
 「あの有紗の件もうまくいきましたしね」
 「……はい、確かに……。まあ、あの時初めて、土屋さん、いえ今は美代様ですね。彼女の存在を知りましたよ。これはただの補佐じゃねーだろって思いましたよ」
 「そうだったんですか」
 「そりゃー、真田代行はご存知だったんですか? あの、蓮司会長が、美代様にぞっこんだった事を?」
 「……まあそうですね。それはわかりましたよ」
 あの午前3時過ぎの電話を思い出す。あの時ほど、驚いた蓮司の言葉は今までになかった。

 そうこうしているうちに来客の為、応接間に移動した。

 「おお、違う件で、下の階に来てたんですが、受付で今日は貴方になったとお聞きしまして、突然のアポなしでお会いしていただいてありがとうございます。お久しぶりです。その節はお世話になりました」
 「水野社長もお元気そうで、何よりです」
 大手食品会社の社長さんは、以前、大原傘下の会社、メディファクトに自社の製品とタレントのコラボの特別なラインを作りたいと相談に来た縁からの繋がりだ。それから、水野食品とは時々ご縁があれば、そのようにいい関係を作ってきた。また、野外コンサートなどで販売する食品などのを販売する場合、その協力などをお願いしてきたのだ。
 「蓮司総裁はご健勝なんですか?」
 「はい、全く元気でやっております。しばし長期休暇をとっていなかったものですから、ここで心身ともにリフレッシュして頂きたいと思いまして、不在の間、ご不便お掛けしますが、私がサポートさせていただきます」
 「ああ、こうやって真田代行にまたお会いできて、お礼が直接できて嬉しいです」
 「お嬢様はその後、いかがですか?」
 「お陰様で真田さんが仕組んでいただいた劇で相手の甲斐性なしがわかったみたいですよ。あと、あとでいただいた証拠写真で女関係の悪さもわかったみたいです」
 その社長は丁寧にお辞儀をした。

 真田は回想する。以前、蓮司会長が接待の後、ボソッと呟いた。相手先の水野社長がなにか娘さんの事で悩みがあるらしいと。その言葉から、水野社長にお節介とは思ったが、蓮司を通じ水野社長に連絡したのだ。
『何か蓮司会長から、お嬢様のお付き合いされている方に不満があるとお聞きしました。もし力がお貸しできる事がありましたら、ご連絡ください。一応、わたくしはこういう事に関しては得意ですので……』
と水野社長に話した。
 最初はあっけに取られた水野社長だが、真田は自分はこういう人間関係のトラブル解消を主に大原家のためにしてきたので、と説明され、しかも、真田家が歴代の大原家に仕えているからこそ、これは信用できるかもしれないと思った。そして、思い切って真田に一か八かで頼んだのだ。
 『どうやら我が娘が柄の悪い男と付き合っていて、どうしたらいいのか悩んでいる』
という事だった。
 『わたくしなら、お嬢様に相応しいか、見極めのお手伝いをできると思いますよ』
 真田の一言が水野には頼もしいかぎりだった。この男なら任せられると……。
 真田が調べるとその交際相手は酷い限りだった。ギャンブル好きで、金遣いが荒く、しかも女関係もひどい、最悪なチョイスの男だった。ただ、強引な性格のため、お嬢様育ちの水野のご令嬢がそれを愛だと勘違いしているらしかった。
 スキャンダルを嫌う水野社長は、穏便にすましたかった。お金を相手に払った方がいいかと真田に相談する。
 真田は、いつもの真面目でかつ柔軟な笑顔が全くなくなり、氷のような冷たい態度で、
『いえ、水野社長、こういう輩にははっきりと教えた方がのちに問題を起こさなくていいと思います』
と言い放った。
『でも、どうやって? 浮気現場を見せるのはちょっと酷なんじゃないか?』
『芝居をうちます。そこで奴の態度で彼女を本当に愛しているかわかるでしょう……ただ、社長一つだけお願いがあります』
『なんでしょうか? 真田さん』
真田は一言、水野社長に話しかける。
その言葉の意味を全ての事が終わった後に知るのだった。


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