私は、御曹司の忘れ物お届け係でございます。

たまる

文字の大きさ
155 / 200

デート 待ち合わせ 美代編

しおりを挟む


 そして、ようやくおでんも食べ終わり、蓮司専用の、いや今では蓮司と美代の専用のリビングで、女子達は移動してきた。この中にはSPも入れないし、心置き無く語り合えるからだ。

 歩美がまず、「デートに蓮司を誘え」という。
 「なにか仕事も忙しそうなのに悪くないかな?」というと、歩美が「だったら、いつ誘うの?」と言われ、確かにそう言われると、いつになっても決めることは不可能に思えた。

 ノリが大切かもしれないと美代は思った。
 歩美が明日のプランを教えてくれた。
 夕方、武道館で行われるジャスティンのコンサートに蓮司を誘えということだった。
 なんだ。
 歩美ちゃん、知っていたんだ。
 ジャスティンの誘いにドキとした自分は馬鹿だったと思う。

 言われた通りに、歩美ちゃんの前で蓮司に連絡する。

 蓮司にメールを送る。
 時間があったら電話くださいって。
 送ってから、ものの1分もしないで電話がきた。

 「どうした。美代、大丈夫か?」
 「お、お仕事中、ごめんなさい。今、大丈夫ですか?」
 「……もちろんだ。ハニー、俺は君の為なら、大統領との会談中でも、君の電話はとるよ……」
 「!!いや、そんなこと言われたら、恐ろしくて電話はできません……」
 蓮司の微かな笑いが電話口から聞こえる。

 ああ、それだけで美代の胸がきゅんとする。

 大丈夫だろうか? 
 自分は明日、生き残れるだろうかと心配になる。

 蓮司に明日の件を伝えた。

 「明日、一緒にコンサートを観に行きませんか? 一応、デートのお誘いです……」

 相手が絶句しているのが、携帯電話でもよくわかる。
 物凄いガタガタと言う音が電話口でする。

 「大丈夫ですか!! 今、すごい何かが倒れた音が!」
 「だ、大丈夫だ。蚊に刺されただけだ……」

 え、今はまだ春先なのに、蚊なんているの?と突っ込めない。
 ちょっと気まずくなり、声をかける。

 「……もしかして、お仕事忙しかったら、また今度……」
 「行くよ! 絶対に行く。美代!!」
 「……え、本当ですか?」
 「本当だ。どこに迎えに行けばいい? 何時だ?」

 少し頬を赤らめた美代が電話口で教えた。
 それを蓮司は聞き終わると、ただ、
 「うん、わかった。明日必ずそこに行くから……」と言った。

 そして、美代に今晩はちょっと仕事で遅くなるから、君は歩美さんと一緒に、その部屋で寝なさいと言われた。あの部屋は蓮司の寝室以外に二つの寝室が繋がっていた。
 恥ずかしながら、どうして?と口に出しそうだったけれど、相手がその理由を言ってくる。

 「美代は、寂しがりやだからな。一緒に誰かがいた方が安心だろ?」
と言ってきた。
 恥ずかしさで、思いっきり声が出てしまう。
 「蓮司のバカ!」

 電話を切ってから、後悔する。
 バカって言っちゃった!
 どうして私って素直になれないんだろう。

 でも、ピンっと音がして、蓮司からのメッセージが現れる。

 【ごめん。からかって。でも、明日は、死ぬほど楽しみにしてるから……美代。でも、その部屋の方が大きいし使いやすい。今日はそこで歩美さんと一緒にいてくれ。お願いだ……。愛している】

 ああ、もう負けだよーー!
 顔をこれ以上真っ赤にできないほど、美代は赤面しながら、目の前のソファのテーブルに顔をふせた。
 真田も蓮司も何か急ぎの仕事のようで、会社に泊まりになる可能性があるとまでいわれたのだ。

 本当はやめようかと思ったが、歩美は
 「いい男はピンチをチャンスと考えんのよ……。やってみなさいよ。減るもんでもないし……明日になったら、全て変わっていることだってあるんだし……」

 そう言われて、先ほど蓮司に電話をしたのだ。
 でも、美代はその時、歩美が見せた影には全然気がつかなかった。
 
 もう一度明日の予定を確認した。
 まずは学校が終わったら、マチ子おすすめの美容院へ行くこと。髪をセットしてもらい、そこへジャスティン御用達のメイクアップの人に来てもらう。
 そして、ご飯前に待ち合わせをしろと……。
 でも、蓮司会長の行きつけだと、きっと超ゴージャスになる可能性もあるから、美代がリラックス出来るところがいいよと、歩美がアドバイス。しかも、コンサート前だから、きっと軽く早く終わった方がいい。

 全くおしゃれなレストランなんてわからない。
 ネットで調べようかと思っていたら、歩美が大丈夫。
 それはこの住所のところへ行けっと言われる。

 「でも、これって?」
 「……本当はジャスティンとマチ子さんの顔聞きで、すごい一流シェフのところに予約したんだけど、よく考えたら、美代が無理してあっちに合わせなくていいんだってよくわかった。しかも、コンサートの前に食べるからね。だから、場所も大変更。どう? いい選択でしょう?」
 美代が、ち、違うよ、その下のこの場所の名前……、どういう意味?っと思う。
 
 声が出せなくて、そのところを指で示す。
 
 「あ、それね、別に、使わなくてもいいんだよ。でも、今日の買い物で、美代の意気込みを感じた。最後が特に……」
 「あ、歩美ちゃん! からかわないで! でも、これ、本当に?」
 「大丈夫。あんたの身の丈考えて、きちんと払える金額だから……。直前だから、半額セールだったし……」
 「……」
 無言のまま、美代は顔が火照っているようだった。
 それを見て歩美は気合を入れようと思った。

 「決めるんでしょ?」
 「……え、あ、う、うん!」

 歩美と美代はにっこりとちょっと涙目でお互いに微笑んだ。



 次の日、起きたら歩美ちゃんの姿がなかった。
 会長からメールが入っていた。

 【今日、デート忘れてないから……。必ず行くから……】

 と入っていた。
 気がつくと、返信していた。
 
 でも、服に関しては、モールで買ったもので行くことにした。
 その代わり、蓮司にこう言えば、いいのよ。
 それを思い出して、蓮司に念を押す。

 【カジュアルな装いでお願いします……】
 【わかった。そうする】
 
 ドキドキしながら、返事を見つめた。

 あ、気がつくと歩美ちゃんからもメールが入っていた。
 【急な用事ができたから、実家に少し帰るね……また明日】
 とだけ書いてあった。
 
 そっか、何ごともないといいかなと思い、学校に行くための支度を始めた。

 あれ、歩美ちゃんの実家ってどこだっけ?


 そして、今、ちょっと早い夕方の混雑した東京の某所駅前で蓮司会長と待ち合わせになる。

 ものすごく緊張する。
 こんな普通の街中で待ち合わせなんてしたことがないのだ。
 すでに、かなり自分としては、大変身をしたつもりだった。
 意外にも、歩美とモールで購入した春先の薄手のワンピースは、ヘアサロンでも好評だった。
 カーデガンを上には羽織る。

 まっすぐの髪の毛には軽めのハイライトが入り、ふわっとカールされていた。
 お化粧も、ナチュラルに、とは言いながらも、流石にプロだから、何か骨格が違う人のように変身した。
 爪もピカピカだし、唇もグロスで艶やかに光っていた。

 まるで自分が地上から3センチぐらいに浮いている感覚がする。
 新しいローヒールだが、ピカピカで、可愛いリボンが付いていた。
 こんな乙女の装いをする日が来るとは……。
 今まで、頑張っている女子を馬鹿にしていた私、ごめんなさい!と思う。
 みんな、いっぱいいっぱいなのだ。

 チラチラと帰りぎわのサラリーマン達が見てくる。
 あ、やっぱりこの洋服、変なのかな……。
 も、もしかして半額で買っちゃったの……わかるの?
 それとも、このメイクがやっぱり元がおかしいから、失笑物?  
 この足元のリボンかも……。

 なんだか今まで浮かれていた気持ちが一気に急降下して、暗くなる。

 そこに、肩をトントンと叩かれた。
 え、もう蓮司会長の、来たの?と思って振り返ると、顔を赤くした二人連れの若いサラリーマンが立っていた。

 「あ、あの、これから予定あるんですか? 良かったら、僕達と夕食一緒に食べません?」

 「……え? あの、それは……」

 知り合いでしたっけと答えようとしたら、大きな壁がいきなり自分の前に現れた。

 「悪いな、彼女は先約があるんだ……」

 ほとんど攫われるような形で、蓮司に手を引かれた。
 どんどんと人混みをかき分けて歩いて行く。
 えっどういうこと?
 「か、会長! あ、歩くの早すぎます!」
 「……あ、悪かった……」
 改めて会長見上げると、そのあまりにものかっこよさに驚いて頬がまた赤くなる。
 今日は、無理を言って、『カジュアルな装い』で来てくださいとお願いしたのだ。

 黒のジーンズに、黒のV字のニットシャツで、シンプルな装いのため、蓮司の鍛え上げらえた肉体とスタイルの良さが目立っていた。その手にはジャッケットを持っていた。かなり若く見える蓮司がいる。髪はいつもより柔らかく仕上げてあり、いつもはあまりかけてないサングラスをしていた。
走って来たのか、息が上がっており、汗もかいているようだった。

 乱れた髪の毛がセクシーだった。

 「大丈夫ですか? 会長……」
 「……すぎるから……」
 「……え?」
 「おまえが可愛いすぎるから、遠くから見て、心臓がとまるかと思った……。そしたら、あんな奴らのナンパにひっかかってるし、猛烈に走って来た。婚約指輪してんのに、全然効かないな」
 サングラスを外し、切れ長の目が妖しく美代を見つめた。
 美代の心拍数が一気に上がる。
 「……キスしたい……」
 蓮司が囁くと、いきなり手をまたひかれ、人影があまりない路地へ連れて行かれた。
 彼の大きな手が美代の頬を包む。
 蓮司が大きく腰を曲げながら、美代の柔らかくぷるんとグロスが付いている唇に口づけする。
 「……あ、蓮司、ふ、グロス取れちゃう!」
 「馬鹿、こんな色っぽいのつけて……どうしたいんだ、俺を……全部俺がとってやる……」

 蓮司のしつこいキスが美代を襲った。
 しまいにはその今時の流行のカラーであるグロスプラスリップカラーが全て美代の唇からなくなっていた。
 
しおりを挟む
感想 142

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

処理中です...