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愛の逃避行 二
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「ねえ、なんか違くない?」
「いえいえ、これが一番ですよ」
先ほどまでオートバイで逃げると思っていたのに、着替えさせられて、いきなりクリーニングのカートに入れと言われた。
業者用のシーツなどを入れ込むカートに歩美は文句を言いながら、紛れ込む。
大原邸のベットシーツやタオル類の洗濯物は業者に頼んである。
そのカートに真田と歩美は潜り込んだのだ。
真田と密着する部分が熱くなる。
もうすでに身がわりの二人組みのバイクは大原邸を出ていた。
そのシーツなど入れたカートを店員がクリーニングの車に乗せてクリーニング店へと行く。
これは万が一の時の大原邸からの脱出の手口の一つだ。
店の人もよくわかっている。
真田がクリーニング店のオーナーに掛け合い、脱走ルートを調整してもらったのだ。
クリーニング店は何かしら組合や横つながりでネットワークが広い。
しかも、全国各地に必ず配達がある。
また、小さなクリーニング店は色々な工場に客から預かった品物を出す。
ドライクリーニングなどのものや、特別な洗いが必要なものを別の工場に持っていくためだ。
それらのトラックに混ぎれこみやすい。
駆け落ちカップルを装い、どんどんと違うトラックに相乗りさせてもらう。
一応、社長からのメモが来ているので、皆友好的だ。
途中、配達がない時間、仮眠のために好意で貸してくれた工場の事務所のソファに肩を並べて二人で寝ていると、早朝担当のオバちゃんたちに囲まれていた。どうやら、真田はとっくに起きていたようだが、オバちゃん達に、まだ連れ合いが寝ているのでっと、人差し指を立ててくれたおかげで、彼女達は静かにしていてくれたらしい。
目の前の、好奇心旺盛そうなオバちゃん達を視線を感じ、起きたての歩美が目を見張る。
でも、すぐになにが起こっているのかを察知して、演技をする。
「駆け落ちなんですぅ……。厳しい実家が許してくれなくて……」
おばちゃんたちが「まあ、それは大変だ……」と言っては、お菓子や食べ物をくれる。
温かいお茶も出された。
真田がにっこりと笑っていた。
恰幅のいいおばちゃんの一人が真田の背中をバンっと叩いた。
「あんた、幸せにしなさいよ。女が全て捨てて、あんたみたいなのと一緒になるって言ってんだ。わかっているよね!」
「……もちろんです。命をかけてお守りして、幸せにするつもりです…」
そう言うと、聞いていたおばちゃんたちはみんな赤面して、わぁ~~と言い出した。
「若いっていいわね!」
「私ももう二十年若かったらね……」
などとガヤガヤ話し始めた。
歩美もこれ以上ないくらいに赤面していた。
「ば、馬鹿……真田……」
と、小さな声を漏らした。彼の黒いジャケットは自分の上にかけられていたのだが、その下のセーターを抗議のつもりで引っ張った。
そんな様子を見ていた真田はぎゅっと歩美の肩を自分に寄せて、彼女の頭にキスをした。
「……歩美、そんな他人行儀な名前で呼ぶなよ……。慎一郎って呼んでよ……」
その真田の言葉を聞いて、呆然としている歩美をまた真田が抱きしめた。
歩美はただただ、顔を真っ赤にさせながら全身がマネキンのように固まっていた。
おばちゃんたちは真田の答えと初々しい二人の様子がいたく気に入った様子で、ニコニコしながら、結婚できたら、手紙くらいよこしなさいよ!っとまた真田の肩をバシンとたたいていた。
硬直している歩美をよそに、真田は何故かとても幸せそうな笑みを浮かべて、オバちゃん達にもうそろそろ、行かなくては……と説明していた。
朝一の配達トラックで九州を目指した。
猛烈なオバちゃん達の別れのあと、二人は博多からフェリー高速船に乗り韓国の釜山まで行くことになっていた。3時間以内で韓国に着くはずですっと真田が歩美に言う。
ジェットフォイルと呼ばれるウォータージェット推進式の水中翼船は、まるで海の上に浮いているような感覚だ。ほとんどの船の本体が水面から出ているのだ。
先ほどの赤面地獄から復活した歩美が興味深々な面持ちで、窓から外を覗いていた。
出航した船は、水面からかなり浮いた状態で進むので、普通の船が感じるような水圧感が船から感じられないのだ。
「面白いわね。こんなの見たこともないわ……」
「……よかった。貴方を驚かせることが出来て……」
真田の言葉に対して、なぜか照れ臭くて、歩美は返事ができなかった。
人はそこそこは混んでいたが、満員と言うほどではなかった。
真田はわざわざグリーン席を用意してくれていたようだった。
窓から景色を眺める。高速で進んでいく船の振動と共に、水飛沫の音が混じり合い、自分の気持ちをざわつかせていた。
だが、ふと横を見ると隣には温かい紅茶のカップをアテンダントから買って自分のトレイに置く真田がいた。その落ち着きように驚いてしまった。
彼の微笑みは優しかった。
思わず胸が熱くなってしまう。
少し頬に熱を感じながら、もらった紅茶を口に含んだ。
「……ねえ、なんでそんなに、冷静なの?」
思わず嫌味っぽく歩美は言ってしまったと、言った瞬間、後悔した。
どうしてか、好きな人前だと、違う言葉が出てきてしまうらしい。
なぜ自分はもうちょっと優しく言えないんだろう、と歩美は少し反省していた。
そんな自分のモヤモヤとした気持ちを知ってかしらずか、真田がにこやかに答えた。
「え? 冷静に見えますか? それはありがたい。年の功かもしれませんね……」
「……もしかして、緊張しているの?」
「……あたり前じゃないですか……貴方とこうやっていれるのだから……」
真田がアームレストにある歩美の手を見ていた。
そして、それを優しく取り上げると、真田自身の胸に押し当てた。見た目よりもかなりかっちりとした筋肉が彼の胸板に付いているがよくわかる。
物凄い早い心音を手のひらに感じた。
微かに真田の頬の色がピンク色に染まったような気がした。
「……わかりますか?」
「……うん、まあ、はっ、早いわね……心音」
ただ、歩美は聞けなかった。
緊張しているのは、この逃亡劇のせい?
それとも二人でこうやって、まるでデートのように出かけて、席を隣に並べているせい?
恥ずかしくて、彼の手を振りほどいた。
真田がちょっと残念そうな笑みを浮かべていた。
歩美は急いで話題を変えた。
共通の話を言えば、美代と蓮司のことだった。
「……今日はデートなんだよね。美代……」
「そうらしいですね。蓮司様もかなり楽しみにされてましたよ……」
そのあと、いかに蓮司が変態で傲慢で、美代にはもったいないと歩美が力説しはじめると、それを楽しそうに真田は黙って聞いていた。そんな会話が続いている間に、船は韓国の釜山に到着した。
そこからは手配してある車で空港へ向かう。
金海国際空港には事前に用意しておいたプライベートジェットが待機していた。
驚いている歩美に対しては、ちょっと裏筋を使いましたっと真田は言った。
これは蓮司に怒られるかもしれないが、あのアジアでは幅を利かせているマフィアのコウの力を借りた。
裏の情報筋にコウの力は欠かせないのだ。
ブラックシャドウとして彼にコンタクトする分には蓮司も、文句は言わせないはずだ。
しかも、コウは蓮司の大ファン。
蓮司の寝起きの写真一枚で手を打ってくれた。
大丈夫、蓮司様の顔は見えない。
ただ、コウには悶絶ものだろう。
真田は、口に含んだスパークリングウォーターを飲み込んだ。
最後まで終わらせないければ、本当の祝杯はあげられない。
少々卑怯なやり方だが、まさか外国から外国行きは先に調べないだろうと思い、時間差を考えてそう計画した。しかもアベルはヘリコプター嫌いだ。
四国は直通の新幹線がない。
時間稼ぎにまんまと引っかかった。
しかも、心配していた飛行機の国内便の使用は、蓮司様が解決してくれたようだ。
先ほど連絡があったのだ。
すでにアベルが四国へ向かっていると……。
自分は大丈夫ですっと言っているのに、
「友人としての行いだ。ちょっと国内便がシステム障害起こしているらしいぞ。使わない方がためだな……あ、あと衛星回線の受信妨害も一応、つけといた。餞別だ……」
などと蓮司が言っている。
ありがたい処置に感謝を述べて、また電話口の見えない相手にお辞儀をした。
本当にこの人は身内には甘すぎる……。
もうひと組、偽カップルを東京に送り込んだが、街に紛れ込み成功と先ほど連絡があった。
フランスに留学中の庭師の福嶋拓と、大原のメイド長で長期休みを取ってフランスにいた丸山女史を仕事として一時帰国させていた。
これは密偵として欧州で活動している光樹の提言を受けて本人達の承諾を取ってから実行されていた。
光樹曰く、もうあの二人は出来てますから、会長も、もうそろそろ拓を日本に帰してやってくださいよっと蓮司に助言していたらしい。もちろん、自分の耳にも入っていた。
だから、それを聞いた自分が、彼らに話を持ちかけた。
「二人に協力して欲しいことがあります。連絡が入ったら、この装いに変装して出かけて欲しいんですが……」
二人は喜んで助けてくれた。
拓が二輪の免許を持っているのは知っていたし、その運転もかなり上手なことは周知の事実だった。
囮のバイクが高速の休憩所で休んでいる時に、彼らを同じところに現れさせる。
アベルの追っ手を拡散させるためだ。二台の似たようなバイクとカップルが違う方向へ行くとなったら、追っ手も二手に別れなくてはいけない。
丸山女史も、私の提案に快く応じてくれた。
でも、念を押された。
「拓は、もう蓮司会長には無害だから、こっちに戻してあげるように、助言してね」
遠距離恋愛って辛いんだからっと丸山女史に何度も愚痴られた。
どうやら、福嶋拓があのフランスの学校に半強制的に留学が決まった後から、何度も丸山女史が、日本食を郵送したり、メールでやり取りし、愛を育んでいたらしかった。
拓は知らないが、丸山女史はずっと拓のことが好きだったのだ。
でも、丸山女史は、拓が蓮司の逆鱗の触れて飛ばされたことも知っていた。それは、彼女にとってはある意味、幸運だった。いいチャンスだったのだ。彼を自分に振り向かせるのに……。
真田が丸山女史に声をかけた。
「……申し訳なかったです。あの時は、もうあれしか方法が思いつかなくてですね……。一応、良い条件のところまで譲歩したんですよ……」
と真田が言う。
すると、丸山女史が、笑いながら、
「……え? 全く私は大丈夫です。蓮司様は先見の明がありますね。ご存知かもしれませんが、拓、すごいんですよ」
ああ、あのことかと真田は思った。
結構最近雑誌で、Mr. Bonsaiと言われ、拓は新しい気鋭の庭師とまで呼ばれていたのだ。
頑固なところは親父さんにそっくりで、日本の庭師が身につける作業着で、全ての実技をこなしていたら、最初は、忍者などと言われていたらしい。
だが、語学はまるっきしダメだが、技術と知識は先生の舌を巻くほどだった。
ある日、見学に来ていたガーデニング関係の編集者に目が止まって、日本式のガーデニングの特集に参加したのだ。
最初が盆栽の特集で出てしまったため、拓の強烈な格好と人懐っこさで一躍有名人となってしまったらしい。
二人がこうやって自分のために動いてくれたことは有り難かった。
「でも、ちょっと上手くいき過ぎじゃない?」
回顧に浸っていた私に、歩美が驚いたように聞いてくる。
もうすぐ、飛行機は離陸寸前だった。
「すごいわね。用意周到っていうの?」
「……これも歩美さんがきちんと、有効期間があるパスポートを持ってくれていたお陰ですよ……」
蓮司の美代を連れての強制ハネムーン作戦も、美代がパスポートを持っていないことで、おじゃんになってしまったのだから……と思い出していた。
本当は美代と蓮司の恋の成就が自分の先の使命なのに、なぜかこんなことになってしまった……その原因である自分の欲望を思い、胸を押さえながら、少し、ため息をついた。
蓮司様が了承してくれたから、良いものの、自分はまだ未熟者であるとしか言いようがない。
「大丈夫? 疲れたの?」
歩美が小さなため息をついている真田に気がついて心配そうに覗きこんできた。
いけない、この女性までも心配させてしまっては……と真田は自分を叱った。
「大丈夫ですよ。ご心配なさらないように……」
「ねえ、この飛行機、どこに行くの?」
「……秘密です。ついてからのお楽しみですよ……」
ちょっと考えている風の歩美がまた質問する。
「でも、このプライベートジェット、大原のもんなんでしょ? バレない?」
「大丈夫です。これは蓮司会長のものではありません……」
「なんなの、それ、やばい系な感じ?」
貴方はそんな心配しなくても大丈夫ですっと歩美の頭を撫でた。
「歩美さん、しばらく寝たほうがいいですよ。貴方はまだそんなに寝ていないはずだ……」
「そ、そんなことないわよ……真田さんの方が……」
と言いながら、歩美は大きな欠伸をした。
真田が、一杯のシャンパンをくれる。
飲みやすいですから……と真田が声をかけた。
その味は、何かさっぱりとした甘い中に、その気泡の味わいが歩美の身体を軽くさせた。
歩美は急に眠たくなる。
「……あ、なんだか、急に……」
横で真田が静かに微笑んだ。
「おやすみ、歩美。君の自由は私が守るから……」
しばらくして、寝息をたてながら眠っている歩美の頭にキスを落とす。
正直、歩美とあの場所に行ってみたいからこの計画を立てたと言ったら彼女は怒るだろうか。
きっと、このスパイのような逃走劇は、歩美のような性格なら絶対に好きかなと思ったら、案の上、かなりハマっていたようだった。
最初のクリーニング店へ行く途中のシーツの中で身を寄せてくる歩美は、思いのほか可愛過ぎて、抱きしめてしまいそうになった。シーツの中で歩美が呟いた姿を思い出した。
「ほ、本気でアベルが来たら、まずいわよ」
「大丈夫ですよ。本気の私もかなりやばいですから……」
歩美の額にキスをする。
歩美が驚いて、「うきゃーー!」と言いながら、シーツにまたくるまってしまう。
ああ、こうやって彼女とずっと逃げているのも楽しいかもと邪な考えが出てきてしまった。
そして、真田は、機内の足が伸ばせるゆったりとしたシートの上で、寝息をたてて寝始めた歩美を見つめた。
その様子をしばらく見守りながら、手持ち無沙汰を紛らわせるかのように、自分のポケットにある四角いものを転がして遊んでいた。
「エゴなのかもしれない……」
ただ、一言漏らしながら、彼女を抱き上げて、機内の後方部にあるベットに彼女を寝かせた。
置いた後に、また片手を自分のポケットに入れ、その物を確認しているようだった。
真田はその後、すぐさま席に戻り、持って来ていた資料を見合わせながら、電話を取り出す。
「さあ、もう一仕事ですね……」
そう言って、機内で誰かに電話をかけ始めた。
真田たちが逃走する前の話。
本社から急いで大原邸に着いた真田は、急病で急に来れなくなった身代わりのバイクのドライバーをどうしようかと思案していた。
急いで自分の私室に駈けもどる。
急遽変更をどうするか考えるためだ。
ドアを開けて、中にいる者が視界に入り、一瞬、目が見開いた。
鍵をかけてあったのに、誰かが入っていたのだ。
警戒の色が浮んだ目がすぐに懐かしい色へと変わっていく。
昔はよく見慣れた顔が大原邸の自分の私室で待っていた。
「よ、兄貴、久しぶり……」
自分によく似ていると言われる6歳年下の弟、光樹は相変わらず細身だった。
女装がよく似合う男なのだ。
でも、意外とこいつのパンチはかなり強いんだよなぁっと思い出す。
「光樹、すまんな。この度は……」
目の前に、真田の顔によく似た、少し髪の毛が茶色の男が立っていた。
男性的なと言うより、中性的な魅力が漂う男だった。
「いいよ、兄貴がまさかブラックシャドウを発動するまで、惚れた女が出来ただなんて信じられないがな……」
「……まあな……。自分でも、驚きだ」
始まりは、ブラックシャドウとは、法律的にグレイゾーンにも入り込む処置を示した。
どうやら、ヨーロッパでは、弟の光樹が、ある特定の地下組織を落とし入れるのに、それを使用し過ぎたために、ブラックシャドウという情報屋がいることになってしまったらしい。
最近では、真田が隠密に走るときの総称となった。
一度真田がこれに入ると、蓮司の管轄外となる。
全てブラックシャドウの責任で全てを動かさなくてはいけない。
「……いい女なのか?」
「……おまえに言いたくないが……。だが、俺が初めて、自分に惚れさせたいと思う女だ……」
「な、なんだよ。それ、すげーな……」
「だが、彼女には選択肢があまりないんだ。時間がない。説明はもうしてあると思うが、よろしく頼む……ただ、いま一人ドライバーが急病で、いないんだ。いまその人員を検討している……」
そうやって話していたら、思わぬ援軍が現れた。
ドアをノックするものがいて、開けたら長谷川が立っていた。
「……会長から許可はもらってます。手伝わせてください」
直前になって、長谷川は物事の進捗を知った。
館に深夜になってあの男がやって来て驚いたのだ。
懐かしい顏、真田の弟、光樹がいたからだ。
相変わらず細身な彼は、中性的な感じがする。だが、兄に似た見た目はさすが兄弟だと感じさせた。
真田家の次男は、長男の影武者的な存在だ。
長男にやむ得ない事態を考えて、長男と同じような教育がなされる。
実は長男は一時荒れていた時期があった。
その時、一時的に光樹が蓮司のお付きの第一候補になるほど、優秀であった。
まあ問題といえば、口の悪さだったが、歳を重ねるにつれて、まだマシになってきていた。
「……お久しぶりです。長谷川さん」
長谷川が新人研修の時に、あったきり本人とは全く会っていなかった。
「……君が呼び戻されたってことは……」
「……そういうことですね……」
それは、真田が蓮司からしばらく離れるという意味だった。
いつもは光樹は欧州を中心に諜報活動をしている。
すると、山川から長谷川に連絡がくる。
真田がそこに、もうすぐ来ること。
光樹が真田の身がわりとなってバイクで囮をする。片道7、8時間以上のかなりハードなスケジュールだ。
しかも、絶対についてくるやつらを巻かない程度に距離を保ちながら、逃げ切り、場所まで到着しなければならない。
その時、光樹の電話にもう一人来るはずだった歩美の代わりの者が急病で来れないと言われる。
それを横で聞いていた長谷川はすぐさま答えた。
「俺にやらしてください! 真田さん、手伝いたいです!」
「……これは大原の仕事ではないぞ」
光樹が目を光らせていう。
「いいんです。美代様は明日までならこのボルトの中にいれば、日本一安全ですし、明日は俺の部下がしっかりとデートの場所まで警護しますから……」
蓮司に連絡をすると、案外オッケーのサインが出た。
二人の体格差から、細身の光樹の方が歩美役になった。
そして、長谷川と光樹ペアが真田と歩美に成りすまして大原家を出発した。
………
「いえいえ、これが一番ですよ」
先ほどまでオートバイで逃げると思っていたのに、着替えさせられて、いきなりクリーニングのカートに入れと言われた。
業者用のシーツなどを入れ込むカートに歩美は文句を言いながら、紛れ込む。
大原邸のベットシーツやタオル類の洗濯物は業者に頼んである。
そのカートに真田と歩美は潜り込んだのだ。
真田と密着する部分が熱くなる。
もうすでに身がわりの二人組みのバイクは大原邸を出ていた。
そのシーツなど入れたカートを店員がクリーニングの車に乗せてクリーニング店へと行く。
これは万が一の時の大原邸からの脱出の手口の一つだ。
店の人もよくわかっている。
真田がクリーニング店のオーナーに掛け合い、脱走ルートを調整してもらったのだ。
クリーニング店は何かしら組合や横つながりでネットワークが広い。
しかも、全国各地に必ず配達がある。
また、小さなクリーニング店は色々な工場に客から預かった品物を出す。
ドライクリーニングなどのものや、特別な洗いが必要なものを別の工場に持っていくためだ。
それらのトラックに混ぎれこみやすい。
駆け落ちカップルを装い、どんどんと違うトラックに相乗りさせてもらう。
一応、社長からのメモが来ているので、皆友好的だ。
途中、配達がない時間、仮眠のために好意で貸してくれた工場の事務所のソファに肩を並べて二人で寝ていると、早朝担当のオバちゃんたちに囲まれていた。どうやら、真田はとっくに起きていたようだが、オバちゃん達に、まだ連れ合いが寝ているのでっと、人差し指を立ててくれたおかげで、彼女達は静かにしていてくれたらしい。
目の前の、好奇心旺盛そうなオバちゃん達を視線を感じ、起きたての歩美が目を見張る。
でも、すぐになにが起こっているのかを察知して、演技をする。
「駆け落ちなんですぅ……。厳しい実家が許してくれなくて……」
おばちゃんたちが「まあ、それは大変だ……」と言っては、お菓子や食べ物をくれる。
温かいお茶も出された。
真田がにっこりと笑っていた。
恰幅のいいおばちゃんの一人が真田の背中をバンっと叩いた。
「あんた、幸せにしなさいよ。女が全て捨てて、あんたみたいなのと一緒になるって言ってんだ。わかっているよね!」
「……もちろんです。命をかけてお守りして、幸せにするつもりです…」
そう言うと、聞いていたおばちゃんたちはみんな赤面して、わぁ~~と言い出した。
「若いっていいわね!」
「私ももう二十年若かったらね……」
などとガヤガヤ話し始めた。
歩美もこれ以上ないくらいに赤面していた。
「ば、馬鹿……真田……」
と、小さな声を漏らした。彼の黒いジャケットは自分の上にかけられていたのだが、その下のセーターを抗議のつもりで引っ張った。
そんな様子を見ていた真田はぎゅっと歩美の肩を自分に寄せて、彼女の頭にキスをした。
「……歩美、そんな他人行儀な名前で呼ぶなよ……。慎一郎って呼んでよ……」
その真田の言葉を聞いて、呆然としている歩美をまた真田が抱きしめた。
歩美はただただ、顔を真っ赤にさせながら全身がマネキンのように固まっていた。
おばちゃんたちは真田の答えと初々しい二人の様子がいたく気に入った様子で、ニコニコしながら、結婚できたら、手紙くらいよこしなさいよ!っとまた真田の肩をバシンとたたいていた。
硬直している歩美をよそに、真田は何故かとても幸せそうな笑みを浮かべて、オバちゃん達にもうそろそろ、行かなくては……と説明していた。
朝一の配達トラックで九州を目指した。
猛烈なオバちゃん達の別れのあと、二人は博多からフェリー高速船に乗り韓国の釜山まで行くことになっていた。3時間以内で韓国に着くはずですっと真田が歩美に言う。
ジェットフォイルと呼ばれるウォータージェット推進式の水中翼船は、まるで海の上に浮いているような感覚だ。ほとんどの船の本体が水面から出ているのだ。
先ほどの赤面地獄から復活した歩美が興味深々な面持ちで、窓から外を覗いていた。
出航した船は、水面からかなり浮いた状態で進むので、普通の船が感じるような水圧感が船から感じられないのだ。
「面白いわね。こんなの見たこともないわ……」
「……よかった。貴方を驚かせることが出来て……」
真田の言葉に対して、なぜか照れ臭くて、歩美は返事ができなかった。
人はそこそこは混んでいたが、満員と言うほどではなかった。
真田はわざわざグリーン席を用意してくれていたようだった。
窓から景色を眺める。高速で進んでいく船の振動と共に、水飛沫の音が混じり合い、自分の気持ちをざわつかせていた。
だが、ふと横を見ると隣には温かい紅茶のカップをアテンダントから買って自分のトレイに置く真田がいた。その落ち着きように驚いてしまった。
彼の微笑みは優しかった。
思わず胸が熱くなってしまう。
少し頬に熱を感じながら、もらった紅茶を口に含んだ。
「……ねえ、なんでそんなに、冷静なの?」
思わず嫌味っぽく歩美は言ってしまったと、言った瞬間、後悔した。
どうしてか、好きな人前だと、違う言葉が出てきてしまうらしい。
なぜ自分はもうちょっと優しく言えないんだろう、と歩美は少し反省していた。
そんな自分のモヤモヤとした気持ちを知ってかしらずか、真田がにこやかに答えた。
「え? 冷静に見えますか? それはありがたい。年の功かもしれませんね……」
「……もしかして、緊張しているの?」
「……あたり前じゃないですか……貴方とこうやっていれるのだから……」
真田がアームレストにある歩美の手を見ていた。
そして、それを優しく取り上げると、真田自身の胸に押し当てた。見た目よりもかなりかっちりとした筋肉が彼の胸板に付いているがよくわかる。
物凄い早い心音を手のひらに感じた。
微かに真田の頬の色がピンク色に染まったような気がした。
「……わかりますか?」
「……うん、まあ、はっ、早いわね……心音」
ただ、歩美は聞けなかった。
緊張しているのは、この逃亡劇のせい?
それとも二人でこうやって、まるでデートのように出かけて、席を隣に並べているせい?
恥ずかしくて、彼の手を振りほどいた。
真田がちょっと残念そうな笑みを浮かべていた。
歩美は急いで話題を変えた。
共通の話を言えば、美代と蓮司のことだった。
「……今日はデートなんだよね。美代……」
「そうらしいですね。蓮司様もかなり楽しみにされてましたよ……」
そのあと、いかに蓮司が変態で傲慢で、美代にはもったいないと歩美が力説しはじめると、それを楽しそうに真田は黙って聞いていた。そんな会話が続いている間に、船は韓国の釜山に到着した。
そこからは手配してある車で空港へ向かう。
金海国際空港には事前に用意しておいたプライベートジェットが待機していた。
驚いている歩美に対しては、ちょっと裏筋を使いましたっと真田は言った。
これは蓮司に怒られるかもしれないが、あのアジアでは幅を利かせているマフィアのコウの力を借りた。
裏の情報筋にコウの力は欠かせないのだ。
ブラックシャドウとして彼にコンタクトする分には蓮司も、文句は言わせないはずだ。
しかも、コウは蓮司の大ファン。
蓮司の寝起きの写真一枚で手を打ってくれた。
大丈夫、蓮司様の顔は見えない。
ただ、コウには悶絶ものだろう。
真田は、口に含んだスパークリングウォーターを飲み込んだ。
最後まで終わらせないければ、本当の祝杯はあげられない。
少々卑怯なやり方だが、まさか外国から外国行きは先に調べないだろうと思い、時間差を考えてそう計画した。しかもアベルはヘリコプター嫌いだ。
四国は直通の新幹線がない。
時間稼ぎにまんまと引っかかった。
しかも、心配していた飛行機の国内便の使用は、蓮司様が解決してくれたようだ。
先ほど連絡があったのだ。
すでにアベルが四国へ向かっていると……。
自分は大丈夫ですっと言っているのに、
「友人としての行いだ。ちょっと国内便がシステム障害起こしているらしいぞ。使わない方がためだな……あ、あと衛星回線の受信妨害も一応、つけといた。餞別だ……」
などと蓮司が言っている。
ありがたい処置に感謝を述べて、また電話口の見えない相手にお辞儀をした。
本当にこの人は身内には甘すぎる……。
もうひと組、偽カップルを東京に送り込んだが、街に紛れ込み成功と先ほど連絡があった。
フランスに留学中の庭師の福嶋拓と、大原のメイド長で長期休みを取ってフランスにいた丸山女史を仕事として一時帰国させていた。
これは密偵として欧州で活動している光樹の提言を受けて本人達の承諾を取ってから実行されていた。
光樹曰く、もうあの二人は出来てますから、会長も、もうそろそろ拓を日本に帰してやってくださいよっと蓮司に助言していたらしい。もちろん、自分の耳にも入っていた。
だから、それを聞いた自分が、彼らに話を持ちかけた。
「二人に協力して欲しいことがあります。連絡が入ったら、この装いに変装して出かけて欲しいんですが……」
二人は喜んで助けてくれた。
拓が二輪の免許を持っているのは知っていたし、その運転もかなり上手なことは周知の事実だった。
囮のバイクが高速の休憩所で休んでいる時に、彼らを同じところに現れさせる。
アベルの追っ手を拡散させるためだ。二台の似たようなバイクとカップルが違う方向へ行くとなったら、追っ手も二手に別れなくてはいけない。
丸山女史も、私の提案に快く応じてくれた。
でも、念を押された。
「拓は、もう蓮司会長には無害だから、こっちに戻してあげるように、助言してね」
遠距離恋愛って辛いんだからっと丸山女史に何度も愚痴られた。
どうやら、福嶋拓があのフランスの学校に半強制的に留学が決まった後から、何度も丸山女史が、日本食を郵送したり、メールでやり取りし、愛を育んでいたらしかった。
拓は知らないが、丸山女史はずっと拓のことが好きだったのだ。
でも、丸山女史は、拓が蓮司の逆鱗の触れて飛ばされたことも知っていた。それは、彼女にとってはある意味、幸運だった。いいチャンスだったのだ。彼を自分に振り向かせるのに……。
真田が丸山女史に声をかけた。
「……申し訳なかったです。あの時は、もうあれしか方法が思いつかなくてですね……。一応、良い条件のところまで譲歩したんですよ……」
と真田が言う。
すると、丸山女史が、笑いながら、
「……え? 全く私は大丈夫です。蓮司様は先見の明がありますね。ご存知かもしれませんが、拓、すごいんですよ」
ああ、あのことかと真田は思った。
結構最近雑誌で、Mr. Bonsaiと言われ、拓は新しい気鋭の庭師とまで呼ばれていたのだ。
頑固なところは親父さんにそっくりで、日本の庭師が身につける作業着で、全ての実技をこなしていたら、最初は、忍者などと言われていたらしい。
だが、語学はまるっきしダメだが、技術と知識は先生の舌を巻くほどだった。
ある日、見学に来ていたガーデニング関係の編集者に目が止まって、日本式のガーデニングの特集に参加したのだ。
最初が盆栽の特集で出てしまったため、拓の強烈な格好と人懐っこさで一躍有名人となってしまったらしい。
二人がこうやって自分のために動いてくれたことは有り難かった。
「でも、ちょっと上手くいき過ぎじゃない?」
回顧に浸っていた私に、歩美が驚いたように聞いてくる。
もうすぐ、飛行機は離陸寸前だった。
「すごいわね。用意周到っていうの?」
「……これも歩美さんがきちんと、有効期間があるパスポートを持ってくれていたお陰ですよ……」
蓮司の美代を連れての強制ハネムーン作戦も、美代がパスポートを持っていないことで、おじゃんになってしまったのだから……と思い出していた。
本当は美代と蓮司の恋の成就が自分の先の使命なのに、なぜかこんなことになってしまった……その原因である自分の欲望を思い、胸を押さえながら、少し、ため息をついた。
蓮司様が了承してくれたから、良いものの、自分はまだ未熟者であるとしか言いようがない。
「大丈夫? 疲れたの?」
歩美が小さなため息をついている真田に気がついて心配そうに覗きこんできた。
いけない、この女性までも心配させてしまっては……と真田は自分を叱った。
「大丈夫ですよ。ご心配なさらないように……」
「ねえ、この飛行機、どこに行くの?」
「……秘密です。ついてからのお楽しみですよ……」
ちょっと考えている風の歩美がまた質問する。
「でも、このプライベートジェット、大原のもんなんでしょ? バレない?」
「大丈夫です。これは蓮司会長のものではありません……」
「なんなの、それ、やばい系な感じ?」
貴方はそんな心配しなくても大丈夫ですっと歩美の頭を撫でた。
「歩美さん、しばらく寝たほうがいいですよ。貴方はまだそんなに寝ていないはずだ……」
「そ、そんなことないわよ……真田さんの方が……」
と言いながら、歩美は大きな欠伸をした。
真田が、一杯のシャンパンをくれる。
飲みやすいですから……と真田が声をかけた。
その味は、何かさっぱりとした甘い中に、その気泡の味わいが歩美の身体を軽くさせた。
歩美は急に眠たくなる。
「……あ、なんだか、急に……」
横で真田が静かに微笑んだ。
「おやすみ、歩美。君の自由は私が守るから……」
しばらくして、寝息をたてながら眠っている歩美の頭にキスを落とす。
正直、歩美とあの場所に行ってみたいからこの計画を立てたと言ったら彼女は怒るだろうか。
きっと、このスパイのような逃走劇は、歩美のような性格なら絶対に好きかなと思ったら、案の上、かなりハマっていたようだった。
最初のクリーニング店へ行く途中のシーツの中で身を寄せてくる歩美は、思いのほか可愛過ぎて、抱きしめてしまいそうになった。シーツの中で歩美が呟いた姿を思い出した。
「ほ、本気でアベルが来たら、まずいわよ」
「大丈夫ですよ。本気の私もかなりやばいですから……」
歩美の額にキスをする。
歩美が驚いて、「うきゃーー!」と言いながら、シーツにまたくるまってしまう。
ああ、こうやって彼女とずっと逃げているのも楽しいかもと邪な考えが出てきてしまった。
そして、真田は、機内の足が伸ばせるゆったりとしたシートの上で、寝息をたてて寝始めた歩美を見つめた。
その様子をしばらく見守りながら、手持ち無沙汰を紛らわせるかのように、自分のポケットにある四角いものを転がして遊んでいた。
「エゴなのかもしれない……」
ただ、一言漏らしながら、彼女を抱き上げて、機内の後方部にあるベットに彼女を寝かせた。
置いた後に、また片手を自分のポケットに入れ、その物を確認しているようだった。
真田はその後、すぐさま席に戻り、持って来ていた資料を見合わせながら、電話を取り出す。
「さあ、もう一仕事ですね……」
そう言って、機内で誰かに電話をかけ始めた。
真田たちが逃走する前の話。
本社から急いで大原邸に着いた真田は、急病で急に来れなくなった身代わりのバイクのドライバーをどうしようかと思案していた。
急いで自分の私室に駈けもどる。
急遽変更をどうするか考えるためだ。
ドアを開けて、中にいる者が視界に入り、一瞬、目が見開いた。
鍵をかけてあったのに、誰かが入っていたのだ。
警戒の色が浮んだ目がすぐに懐かしい色へと変わっていく。
昔はよく見慣れた顔が大原邸の自分の私室で待っていた。
「よ、兄貴、久しぶり……」
自分によく似ていると言われる6歳年下の弟、光樹は相変わらず細身だった。
女装がよく似合う男なのだ。
でも、意外とこいつのパンチはかなり強いんだよなぁっと思い出す。
「光樹、すまんな。この度は……」
目の前に、真田の顔によく似た、少し髪の毛が茶色の男が立っていた。
男性的なと言うより、中性的な魅力が漂う男だった。
「いいよ、兄貴がまさかブラックシャドウを発動するまで、惚れた女が出来ただなんて信じられないがな……」
「……まあな……。自分でも、驚きだ」
始まりは、ブラックシャドウとは、法律的にグレイゾーンにも入り込む処置を示した。
どうやら、ヨーロッパでは、弟の光樹が、ある特定の地下組織を落とし入れるのに、それを使用し過ぎたために、ブラックシャドウという情報屋がいることになってしまったらしい。
最近では、真田が隠密に走るときの総称となった。
一度真田がこれに入ると、蓮司の管轄外となる。
全てブラックシャドウの責任で全てを動かさなくてはいけない。
「……いい女なのか?」
「……おまえに言いたくないが……。だが、俺が初めて、自分に惚れさせたいと思う女だ……」
「な、なんだよ。それ、すげーな……」
「だが、彼女には選択肢があまりないんだ。時間がない。説明はもうしてあると思うが、よろしく頼む……ただ、いま一人ドライバーが急病で、いないんだ。いまその人員を検討している……」
そうやって話していたら、思わぬ援軍が現れた。
ドアをノックするものがいて、開けたら長谷川が立っていた。
「……会長から許可はもらってます。手伝わせてください」
直前になって、長谷川は物事の進捗を知った。
館に深夜になってあの男がやって来て驚いたのだ。
懐かしい顏、真田の弟、光樹がいたからだ。
相変わらず細身な彼は、中性的な感じがする。だが、兄に似た見た目はさすが兄弟だと感じさせた。
真田家の次男は、長男の影武者的な存在だ。
長男にやむ得ない事態を考えて、長男と同じような教育がなされる。
実は長男は一時荒れていた時期があった。
その時、一時的に光樹が蓮司のお付きの第一候補になるほど、優秀であった。
まあ問題といえば、口の悪さだったが、歳を重ねるにつれて、まだマシになってきていた。
「……お久しぶりです。長谷川さん」
長谷川が新人研修の時に、あったきり本人とは全く会っていなかった。
「……君が呼び戻されたってことは……」
「……そういうことですね……」
それは、真田が蓮司からしばらく離れるという意味だった。
いつもは光樹は欧州を中心に諜報活動をしている。
すると、山川から長谷川に連絡がくる。
真田がそこに、もうすぐ来ること。
光樹が真田の身がわりとなってバイクで囮をする。片道7、8時間以上のかなりハードなスケジュールだ。
しかも、絶対についてくるやつらを巻かない程度に距離を保ちながら、逃げ切り、場所まで到着しなければならない。
その時、光樹の電話にもう一人来るはずだった歩美の代わりの者が急病で来れないと言われる。
それを横で聞いていた長谷川はすぐさま答えた。
「俺にやらしてください! 真田さん、手伝いたいです!」
「……これは大原の仕事ではないぞ」
光樹が目を光らせていう。
「いいんです。美代様は明日までならこのボルトの中にいれば、日本一安全ですし、明日は俺の部下がしっかりとデートの場所まで警護しますから……」
蓮司に連絡をすると、案外オッケーのサインが出た。
二人の体格差から、細身の光樹の方が歩美役になった。
そして、長谷川と光樹ペアが真田と歩美に成りすまして大原家を出発した。
………
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