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君を想う
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夕食の時間になった。
今晩は、その百人、いやトップテンになったお祝いで、松田さんが色々作ってくれていた。
メインはミニ会席弁当だ。
四角い、まるで料理屋さんのお弁当の形に色とりどりのものが入っている。
お赤飯まである!
お吸い物やら、煮物、うーん、お刺身まであって、なぜかちょっとお得な気分だ。
少し雨が降っていたようで、今帰ってきたばかりの蓮司の肩には雨の雫が掛っていた。
前髪と肩が濡れている蓮司は、コートを脱ぎながら、部屋に入ってきた。
急いでいたようで、玄関先で脱がなかったようだ。
美代は知らないが、一刻も早く美代に会いたい気持ちが先走りして、コートでさえも脱ぐ時間が惜しかったようだ。
真田はもう早く帰宅している。
身重の歩美の為だ。
光希はまだ大原の会社で仕事が残っているらしく、まだ帰宅していなかった。
「あ、蓮司さん、お帰りなさい。あれ、でもどうして濡れているの?」
「ああ、ちょっとな……」
美代はそんな蓮司を横目に見ながら、タオルを持ってきて、彼の肩を拭いてあげる。
クッという押し殺したような声が聞こえた。
「くるな……」
「え、なに?」
蓮司が美代の手首を抑えて、その指に口づけをする。
「お前が俺をかいがいしく世話してくれるのが、グッとくるんだよ」
その色気のある表情で言われて赤面する。
「今日はおめでとう。美代。選ばれたお前のこと、本当にすごいと思うよ。二人で祝おうな……」
え、それを仕組んだのは貴方でしょと言いたかったが、あまりに幸せそうな顔をしている蓮司の前ですぐには聞けない。
ミニ懐石のような献立で二人で祝う。
ちょっとだけ、お酒を飲む。
でも、多くはダメだと言われる。
どうせ飲むなら、ベットの上にしろとまで言われた。
な!!と思ったが、数々の失態の思い出がある以上、何も言えない。
今日は学校で歩美ちゃんがわざわざ心配してくれてきた。
そのことを話していると、蓮司がワイングラスを傾けながら、聞いてくる。
ああ、話はそれてしまうが、いまだに信じられない。
この美形御曹司が自分の旦那だなんて!!
「美代、羨ましいか?」
「え?」
「子供、欲しいのか?」
「ええ!ああ、あの、まあ将来的には……」
赤面している美代を見ながら、蓮司が一気に残りのワインを飲み干した。
ああ、前に歩美ちゃんが指摘していたけど、この大原邸の地下に眠るワイン貯蔵庫、すっごいお宝よとまで言われた。
御曹司に愛想尽きたら、まず、これらのワインを持ち出せとまで、言われた。
いかほどのワインなんですか?
それをあんなガブ飲みだなんて……。
「でも、それは学校終わってからだな……」
「……うん、私もそう思う」
「蓮司も、その、将来的に、子供欲しい?」
「……そうだな。お前の子供だったら、目の中に入れてもおかしくないくらい欲しいと思うよ」
赤面する美代が、いそいそと会席弁当をつまむ。
ちょっと嬉しくなる美代がいた。
子供は可愛いと思う。
でも、正直、学校は卒業したい。
歩美のように、決断して、学校をやめるとまではできなかった。
「まあ、もう少し、二人だけの時間を楽しみたいかな。俺は……」
「!!!」
「なんだ? その言葉だけで赤面するのか? まだまだ足りないのか?美代は?」
その足りないものの意味を男の密やかに燃える瞳を見て悟った美代は焦り出す。
「えええ! 足りていますよ!! 十分です!」
「ダメだよ。美代。誘うなよ」
「さ、誘っていないです!!!」
「ふーーん、そうか。寂しいな、俺」
「!!!」
そっぽを向いている蓮司が目線を合わせない。
「違います。その、ちょっと色々、気持ちも体も追いつかなくて……」
「……! 美代、そんな顔するな。もうちょっと待て。ああ無理だ!」
「え、なに!」
「早く食べろ。いいから!!」
ほとんど、食べ終わらないうちに蓮司に抱っこされた。
ジャケットを脱いだ蓮司の白いシャツからは、馴染んだムスクの香りが美代の鼻をつく。
厨房からそっと松田が顔を出す。
「あとで、残りお届けしますよ……」
「ああ、廊下の外に置いておいてくれ」
「かしこまりました」
美代は、あああ!と思う。
何度もこれにあったからだ。
本来なら、新婚カップルはあの蓮司のプライベートなリビングルームが併設されている東の棟で食べるはずだった。
でも、あまりにも、二人きりだと蓮司がまともにご飯を食べさせてくれないのだ。
愛の確認作業が、熱心な蓮司にいつもヤラれてしまう。
それで、美代の提案で、人目があるダイニングで食事は取ることになったのだ。
そうやって抱かれて、自分たちのプライベートな空間に入る。
先ほどから、彼の厚い胸板を横に感じて、頬が熱い。
何度も同じ目に合いながらも、やはり自分はもう蓮司の虜だった。
独り立ちなんて、したくない。
なぜ、今そんなことを言うの?
彼の真意を探りたかったが
寝室にてっきり落とされると思っていた美代が、置かれた場所がリビングの大きなソファーだったことにちょっと驚いた。
蓮司が何かをドアの方に取りに行く。
目の前に急に出されたものは、可愛らしい花束だった。
「はい、美代。おめでとう」
「ええ?」
まだ誕生日は先だった。
どうやら本当にこの偉業?を祝っているようだった。
何故か蓮司は少し寂しそうな顔をした。
実は、本来なら会社から自宅まで濡れないで帰れるはずの蓮司が、肩を濡らした原因はこの花束だった。
美代を想う気持ちが抑えられずに、帰りに小雨の中、車を待機させて、傘を出そうとする矢崎を背に、花屋へ駆け込んだのだ。
どうか美代が全てを持っても、自分を選んでくれますようにと、願いを込めて……。
だが、まだそのことを全く気がつかない美代はただ驚いているだけだった。
「もう、君は一人前だ……まだ危なっかしいがな」
「あ……」
そうだ、自分は蓮司に聞きたいことがあったのだと美代は思い出した。
「あの、蓮司さん、そのお話があります……」
その顔を見た蓮司は、少し驚いた表情で美代を見つめた。
今晩は、その百人、いやトップテンになったお祝いで、松田さんが色々作ってくれていた。
メインはミニ会席弁当だ。
四角い、まるで料理屋さんのお弁当の形に色とりどりのものが入っている。
お赤飯まである!
お吸い物やら、煮物、うーん、お刺身まであって、なぜかちょっとお得な気分だ。
少し雨が降っていたようで、今帰ってきたばかりの蓮司の肩には雨の雫が掛っていた。
前髪と肩が濡れている蓮司は、コートを脱ぎながら、部屋に入ってきた。
急いでいたようで、玄関先で脱がなかったようだ。
美代は知らないが、一刻も早く美代に会いたい気持ちが先走りして、コートでさえも脱ぐ時間が惜しかったようだ。
真田はもう早く帰宅している。
身重の歩美の為だ。
光希はまだ大原の会社で仕事が残っているらしく、まだ帰宅していなかった。
「あ、蓮司さん、お帰りなさい。あれ、でもどうして濡れているの?」
「ああ、ちょっとな……」
美代はそんな蓮司を横目に見ながら、タオルを持ってきて、彼の肩を拭いてあげる。
クッという押し殺したような声が聞こえた。
「くるな……」
「え、なに?」
蓮司が美代の手首を抑えて、その指に口づけをする。
「お前が俺をかいがいしく世話してくれるのが、グッとくるんだよ」
その色気のある表情で言われて赤面する。
「今日はおめでとう。美代。選ばれたお前のこと、本当にすごいと思うよ。二人で祝おうな……」
え、それを仕組んだのは貴方でしょと言いたかったが、あまりに幸せそうな顔をしている蓮司の前ですぐには聞けない。
ミニ懐石のような献立で二人で祝う。
ちょっとだけ、お酒を飲む。
でも、多くはダメだと言われる。
どうせ飲むなら、ベットの上にしろとまで言われた。
な!!と思ったが、数々の失態の思い出がある以上、何も言えない。
今日は学校で歩美ちゃんがわざわざ心配してくれてきた。
そのことを話していると、蓮司がワイングラスを傾けながら、聞いてくる。
ああ、話はそれてしまうが、いまだに信じられない。
この美形御曹司が自分の旦那だなんて!!
「美代、羨ましいか?」
「え?」
「子供、欲しいのか?」
「ええ!ああ、あの、まあ将来的には……」
赤面している美代を見ながら、蓮司が一気に残りのワインを飲み干した。
ああ、前に歩美ちゃんが指摘していたけど、この大原邸の地下に眠るワイン貯蔵庫、すっごいお宝よとまで言われた。
御曹司に愛想尽きたら、まず、これらのワインを持ち出せとまで、言われた。
いかほどのワインなんですか?
それをあんなガブ飲みだなんて……。
「でも、それは学校終わってからだな……」
「……うん、私もそう思う」
「蓮司も、その、将来的に、子供欲しい?」
「……そうだな。お前の子供だったら、目の中に入れてもおかしくないくらい欲しいと思うよ」
赤面する美代が、いそいそと会席弁当をつまむ。
ちょっと嬉しくなる美代がいた。
子供は可愛いと思う。
でも、正直、学校は卒業したい。
歩美のように、決断して、学校をやめるとまではできなかった。
「まあ、もう少し、二人だけの時間を楽しみたいかな。俺は……」
「!!!」
「なんだ? その言葉だけで赤面するのか? まだまだ足りないのか?美代は?」
その足りないものの意味を男の密やかに燃える瞳を見て悟った美代は焦り出す。
「えええ! 足りていますよ!! 十分です!」
「ダメだよ。美代。誘うなよ」
「さ、誘っていないです!!!」
「ふーーん、そうか。寂しいな、俺」
「!!!」
そっぽを向いている蓮司が目線を合わせない。
「違います。その、ちょっと色々、気持ちも体も追いつかなくて……」
「……! 美代、そんな顔するな。もうちょっと待て。ああ無理だ!」
「え、なに!」
「早く食べろ。いいから!!」
ほとんど、食べ終わらないうちに蓮司に抱っこされた。
ジャケットを脱いだ蓮司の白いシャツからは、馴染んだムスクの香りが美代の鼻をつく。
厨房からそっと松田が顔を出す。
「あとで、残りお届けしますよ……」
「ああ、廊下の外に置いておいてくれ」
「かしこまりました」
美代は、あああ!と思う。
何度もこれにあったからだ。
本来なら、新婚カップルはあの蓮司のプライベートなリビングルームが併設されている東の棟で食べるはずだった。
でも、あまりにも、二人きりだと蓮司がまともにご飯を食べさせてくれないのだ。
愛の確認作業が、熱心な蓮司にいつもヤラれてしまう。
それで、美代の提案で、人目があるダイニングで食事は取ることになったのだ。
そうやって抱かれて、自分たちのプライベートな空間に入る。
先ほどから、彼の厚い胸板を横に感じて、頬が熱い。
何度も同じ目に合いながらも、やはり自分はもう蓮司の虜だった。
独り立ちなんて、したくない。
なぜ、今そんなことを言うの?
彼の真意を探りたかったが
寝室にてっきり落とされると思っていた美代が、置かれた場所がリビングの大きなソファーだったことにちょっと驚いた。
蓮司が何かをドアの方に取りに行く。
目の前に急に出されたものは、可愛らしい花束だった。
「はい、美代。おめでとう」
「ええ?」
まだ誕生日は先だった。
どうやら本当にこの偉業?を祝っているようだった。
何故か蓮司は少し寂しそうな顔をした。
実は、本来なら会社から自宅まで濡れないで帰れるはずの蓮司が、肩を濡らした原因はこの花束だった。
美代を想う気持ちが抑えられずに、帰りに小雨の中、車を待機させて、傘を出そうとする矢崎を背に、花屋へ駆け込んだのだ。
どうか美代が全てを持っても、自分を選んでくれますようにと、願いを込めて……。
だが、まだそのことを全く気がつかない美代はただ驚いているだけだった。
「もう、君は一人前だ……まだ危なっかしいがな」
「あ……」
そうだ、自分は蓮司に聞きたいことがあったのだと美代は思い出した。
「あの、蓮司さん、そのお話があります……」
その顔を見た蓮司は、少し驚いた表情で美代を見つめた。
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