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最終話 いつもの日常
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「もう一度言いますよ。美代様……」
燕尾服をきちんときた真田が美代に告げる。
今日はまだ午後からの授業だから、時間に余裕がある。
そういう時に限って、また蓮司が忘れ物をするのだ。
正直、面倒くさい。
「……うーーん、納得できない。朝確認したはずよ! どうしてまた忘れるの!」
「……それは忘れ物をお届けした時に、直接お伝えください……」
いそいそと自分の旦那の忘れ物を会社に届けにいく準備をする。
書類やらペンやら、まあ本当に呆れます。
思わず、思ったことが口に出てしまう。
「あのさ、この忘れ物お届け係って、単に奥さんが旦那さんの忘れ物を届けるようなものなんじゃん……」
歩美が隣で赤ちゃんを抱きしめながら、この会話を聞いていた。
「……まさか! 慎一郎……」
「……だ、ダメです!! 歩美さん、し、質問しないでください!!」
「美代、あんたもう最初から狙われていたのね……」
「……え?」
完全によくわかっていなそうな美代は、はあっとため息をつきながら、普通の奥さんがご主人の忘れ物を届けるように出かけて行く。
無邪気に「行ってくるね~!」と出て行く美代を歩美は細い目を凝らして見ていた。
彼女が出て行くと、歩美は殺気立つような視線を燕尾服の男に向けた。
「つまり、そういうことだったの?」
歩美がまだ乳幼児の可愛い男の子の我が子を抱きながら、真田を冷たい目で睨む……。
「そうよね、忘れ物お届け係、つまり、妻ってことよね……」
「……歩美さ、さん………どうか……」
「そうよね、嫁に貰いたいのに、まさかすぐに嫁に来いだなんて、言えないわよね……。誘拐になっちゃうからね……」
「………」
「忘れ物お届け係……よくよく考えたら、それは甲斐甲斐しくお世話している奥さんの姿だもんね……」
「!!」
「……お金が困っている少女に一目ボレして、奥さんにほしい……そんなことは、はっきり周りも言えない……」
「……あ、歩美さん!」
「ちょっと、これはあの変態の考え、それとも貴方なの!!?」
「……歩美……言えない……許してくれ……」
真田がますます顔を青くさせて、身体を萎縮させている……。
「……あ、こうちゃんのオムツ変えましょうか……」
そう言いながら、真田が我が子を奪って、「こうちゃん! キレイキレイしましょう~!」と言いながら逃げて行く。
はあ~っと呆れたため息をつきながら、歩美が一言漏らした。
「まあ、いっか。美代は幸せそうだから……」
一台の車が大原の本社の会社の前で止まる。
前のようなオレンジのつなぎはもういささかやめた。
なぜなら、流石に総裁の妻が配達員の格好ではまずいかなと美代も思ったからだ。
受付で一応、挨拶をする。
最近は裏口より正面から入れと蓮司に促される。
意味がわからないが、その方が、お前を守りやすいと言われる。
意図がよくわからない。
受付嬢は、皆美代に親切だ。
顔を見ただけで回線を上に繋げてくれる。
「ただ今、会長の奥様が、お忘れ物を持ってお越しになりました……」
それを聞きながら、美代は複雑な気持ちになった。
「……忘れ物お届け係……なんですけど………」
その声は受付嬢には聞こえない。
「まあ、いっか、似たようなもんか……」
SPに囲まれてエレベーターに繋がっている廊下をパタパタと小走りする美代は、多分、いま一世一代、気がつかないといけないところを思いっきり見逃しながら、愛する、でもでも、とっても執着心溢れる、策略家の旦那さまに忘れ物を届けに行くのでした。
終わり!
後、番外編が二編あります。
皆様長い間ありがとうございました。
まさかこんなに長く、続いてしまうとは、全くの想定外。
感想寄せてくださった方々にも感謝いたします。
とっても励みになりました。
たぶん、皆様の感想なしにはこの話は完結しませんでした。
良い年越しを……。
たまる
燕尾服をきちんときた真田が美代に告げる。
今日はまだ午後からの授業だから、時間に余裕がある。
そういう時に限って、また蓮司が忘れ物をするのだ。
正直、面倒くさい。
「……うーーん、納得できない。朝確認したはずよ! どうしてまた忘れるの!」
「……それは忘れ物をお届けした時に、直接お伝えください……」
いそいそと自分の旦那の忘れ物を会社に届けにいく準備をする。
書類やらペンやら、まあ本当に呆れます。
思わず、思ったことが口に出てしまう。
「あのさ、この忘れ物お届け係って、単に奥さんが旦那さんの忘れ物を届けるようなものなんじゃん……」
歩美が隣で赤ちゃんを抱きしめながら、この会話を聞いていた。
「……まさか! 慎一郎……」
「……だ、ダメです!! 歩美さん、し、質問しないでください!!」
「美代、あんたもう最初から狙われていたのね……」
「……え?」
完全によくわかっていなそうな美代は、はあっとため息をつきながら、普通の奥さんがご主人の忘れ物を届けるように出かけて行く。
無邪気に「行ってくるね~!」と出て行く美代を歩美は細い目を凝らして見ていた。
彼女が出て行くと、歩美は殺気立つような視線を燕尾服の男に向けた。
「つまり、そういうことだったの?」
歩美がまだ乳幼児の可愛い男の子の我が子を抱きながら、真田を冷たい目で睨む……。
「そうよね、忘れ物お届け係、つまり、妻ってことよね……」
「……歩美さ、さん………どうか……」
「そうよね、嫁に貰いたいのに、まさかすぐに嫁に来いだなんて、言えないわよね……。誘拐になっちゃうからね……」
「………」
「忘れ物お届け係……よくよく考えたら、それは甲斐甲斐しくお世話している奥さんの姿だもんね……」
「!!」
「……お金が困っている少女に一目ボレして、奥さんにほしい……そんなことは、はっきり周りも言えない……」
「……あ、歩美さん!」
「ちょっと、これはあの変態の考え、それとも貴方なの!!?」
「……歩美……言えない……許してくれ……」
真田がますます顔を青くさせて、身体を萎縮させている……。
「……あ、こうちゃんのオムツ変えましょうか……」
そう言いながら、真田が我が子を奪って、「こうちゃん! キレイキレイしましょう~!」と言いながら逃げて行く。
はあ~っと呆れたため息をつきながら、歩美が一言漏らした。
「まあ、いっか。美代は幸せそうだから……」
一台の車が大原の本社の会社の前で止まる。
前のようなオレンジのつなぎはもういささかやめた。
なぜなら、流石に総裁の妻が配達員の格好ではまずいかなと美代も思ったからだ。
受付で一応、挨拶をする。
最近は裏口より正面から入れと蓮司に促される。
意味がわからないが、その方が、お前を守りやすいと言われる。
意図がよくわからない。
受付嬢は、皆美代に親切だ。
顔を見ただけで回線を上に繋げてくれる。
「ただ今、会長の奥様が、お忘れ物を持ってお越しになりました……」
それを聞きながら、美代は複雑な気持ちになった。
「……忘れ物お届け係……なんですけど………」
その声は受付嬢には聞こえない。
「まあ、いっか、似たようなもんか……」
SPに囲まれてエレベーターに繋がっている廊下をパタパタと小走りする美代は、多分、いま一世一代、気がつかないといけないところを思いっきり見逃しながら、愛する、でもでも、とっても執着心溢れる、策略家の旦那さまに忘れ物を届けに行くのでした。
終わり!
後、番外編が二編あります。
皆様長い間ありがとうございました。
まさかこんなに長く、続いてしまうとは、全くの想定外。
感想寄せてくださった方々にも感謝いたします。
とっても励みになりました。
たぶん、皆様の感想なしにはこの話は完結しませんでした。
良い年越しを……。
たまる
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