団長、それはやり過ぎです。

たまる

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番外編 猫と王子 <押し込められた欲望と愛> *

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 イスラが片手でいきなり自分のいきり勃っているものをぐっと掴んだ。
 あまりにもの衝撃で体がぐっと動いてしまう。
 だが、快感に震えてしまう自分もいた。

 「……イスラ……本当は、君が最初でありたかった……」

 そう息も絶え絶えにいうとイスラが優しく口づけをしてきた。
 
 「そう、私としたいの?……」

 イスラがそのドレスを脱ぎ捨てた。
 美しい肢体が目の前に現れた。

 そのツンと張っている胸の先にはまるで食べ頃なフルーツの実が付いているように美味しそうだった。
 ただ、まだ体の痺れと熱が取れないでいるために、もがいていると、イスラがそれをじっと見ているだけで、そのリボンが解けて手が自由になった。

 先ほどから触りたくてたまらなかったその芳醇な胸に手を置いた。
 やはりイスラのは特別だ。

 イスラがその柔らかな体を自分に押し付けてきた。
 甘い柔らかな唇が自分の体を侵食していく。
 全てはイスラの思うがままであった。

 「ああ、イスラ、もう待てない。君のなかに入りたい……」
 「……どうしようかしら……」

 それを乞うように彼女の胸の頂きにむしゃぶりつく。
 はあっと吐息が彼女から漏れるだけで、自分の高まりはもっと一層強くなっていく。
 もうこれ以上に興奮は出来ないと思うぐらいに、体が熱くなってきた。
 媚薬のせいなのか、それともイスラのせいなのか全くわからなくなっていた。

 「……さっきの女は貴方の何?」
 「……あ、あれは、遊びだ……」

 男のプライドがまさか犯されたとは言えなかった。

 ああ、このまま彼女の中に自分を埋め込めたいと欲望が迸った。
 彼女の紫紺の目が冷たく光ったような気がした。

 イスラが突然動きをやめた。 

 誰かが激しくドアを叩くのだ。
 その激音が、イスラと自分を現実の世界に引き戻した。
 ドアが今にも破られそうだった。

 「もうね。カイル……」
 「え? イスラ、なんだって?」

 にっこりとイスラが微笑んだ。
 そこにはなんの悪意も悲しみも喜びも感じられないようなただの微笑だった。

 「……そう、私は魔女よ。カイル殿下。それでも、私を自信があって?」

 風がまた吹き荒れた。
 瞬時にイスラのドレスが舞う。
 バタンという大きな音がしてドアがぶち破られた。
 イーサンが馬鹿力で叩き破ったらしい。
 殿下の半裸の姿を見て、驚愕したイーサンは他のものが部屋に進入するのを防いだ。ドアから離れろとも指示している。

 「……イーサン!」

 思わず自分が声を出してしまう。
 知らぬ間に窓の脇にドレスを着て立っていたイスラが、イーサンに話しかけた。

 「……ああ、貴方がイーサン。ふーん、面白いわね」

 嫌な予感がして、思わずカイルが叫んだ。
 でも、その言葉をカイルは一生後悔することになるとは、いまは全く気がついていなかった。

 「イスラ! イーサンには手出しをするな……。私の大切な部下であり、親友なんだ……」
 「……そう、わかったわ。じゃあ、私は貴方の何なのかしら? その怯えている様子、よく覚えておくわ……友達とかって、やっぱり無理みたいね……」
 「殿下! こやつ、不審者ですか?」

 違うっと、答えようとした瞬間、また突風が吹き、今度はイーサンをふき飛ばして、部屋の角にぶち当てる。
 どんな強い騎士だろうが、彼女の相手にはならなかった。
 相手に剣を抜く隙さえ、与えないのだから。
 「イーサン!」と、いいながら寝台から急いで降りて、彼を助けようとする。
 彼を介抱しているうちに、イスラは消え去った。

 あっと言う間だった。

 自分でもよくわかった。
 さっきの言葉がイスラを傷つけたのだ。
 友達以上の関係でありながら、魔女としてのイスラを脅威として扱った。
 しかも、自分の友達に危害を与えるものとして扱ったのだ。

 自分自身の行為に絶句した。

 すぐにイーサンも意識を取り戻した。イーサンも驚いているが遠くから来た魔法師の隠者なのかと言っている。
 
 「殿下、大丈夫ですか?」
という、イーサンの問に、自分の体の不調が一気になくなっていたのを感じた。

 イスラが治してくれたのか?

 イーサンの目線に気がついて、自分の乱れた衣装を直した。

 「殿下、一体なにが?」

 彼の問には、いまは答えられなかった。

 すると、事の騒ぎを聞きつけた神官がそこに入ってきた。
 彼に、目の前の髪の毛を乱した、本当の魔女よりも魔女らしく振舞った女のことを伝えなくては、ならなかった。
 本人は意識を失しなったままだった。

 「……イーサン、この女を地下の牢獄へ入れろ……。エト、最悪だが、この女は今、妃の第一候補だ……」

 イーサンも神官のエトもなにか、信じられないと言った顔をカイルに向けた。
 今までのイスラに出会ってからの彩りあふれた世界が消えていくように感じた。

 やはり、自分はたぶらかされたのか?

 一抹の疑問がよぎった。
 なぜなら、あれ以降、一切イスラには会えなかった。
 あの後、周りのものが煩く色々小言を言ってきた。
 だいたいが、あの未亡人の取り扱いについての質問だった。

 「……なんども言わせるな。あの女は否定しているが、俺の子を妊娠しているが可能性が捨てきれん……。次の障りが来るまで、軟禁だ……」

 すると、だいたい、バカな神官が聞いてくる。
 残念だった。なぜこういう奴を俺は解雇出来ないのか?

 「未亡人とはいえ、殿下のお子がいるかもしれない女性をなぜ軟禁なんでしょうか? それなりの待遇を……」

 目の前の執務机を力ずくに叩いた。
 ああ、少し凹んだか……。

 「……私に恥をかかせるつもりか? お前は……?」

 まさかという顔で、神官が下がっていく。
 仕方がないので、帰り際の神官を呼び止めて、最低限のおもてなしだけしろと伝える。

 胸糞が悪くなった。



 もう、あの湖のほとりに行っても、イスラはいなかった。
 何カ月も通って何も出来ないと知り、カイルは荒れに荒れ始めた。
 あの未亡人は、結局、妊娠はしていなかった。

 その後、やはりちょっと精神的に病んでいる部分が露見されてきて、国の外れの修道院に入ることが決まった。
 まあ、カイルが本人を責め立てのだ。
 子供がいないとわかった以上、王子に毒物を混入させたものを飲ませた罪でここで死をもって償うか、修道院に入れと選択させたのだ。

 それから、カイルは荒れ始めた。
 いわゆる、女遊びをし始めたのだ。

 自分身分を偽り、妊娠しないように自分の目の前で、薬を飲まさせた。
 そして、とっかえ引っかえに商売女を抱きまくったのだ。
 法外なだけを女主人に持たせた。
 口封じの為だった。

 イーサンがその遊びに苦言をする。
 「殿下、これ以上、女遊びはよしてください。将来の妃選びにヒビが入りますよ……」

 好きな女が手に入らない、しかもそれは魔女だった。
 自分が魔女に溺れてしまうことも恥ずかしかったが、あのイスラの魔女の魔法を見て、知人に危害を加えるのではないかと疑ってしまった自分を恥じた。

 なぜあの時にイスラを信用できなかったのか。
 ああ、深酒をしてもう考えることをやめていた。

 もうやっぱり俺は魔女にのだ。
 そういう風に考え始めた。

 まさかその様子を影からじっと誰かが観察していたこともつゆ知らずに……。


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