会長様を手に入れたい

槇瀬陽翔

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54話

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「中学の時からずっと好きだった。唯斗が第2の性に覚醒した時、すぐに唯斗が俺にとっての番だって気が付いた。本当はずっと唯斗のことが好きだって黙ってるつもりだったんだ」
急にそんなことを言い始める大我。

「えっ?俺と付き合う気がなかったってこと?」
それってちょっとショックなんだけど…。

「唯斗が自分のことが好きだって気付いた時に、その考えは消えた。唯斗が曖昧な関係のままでいいって言ったときはマジで頭にきた。答えを出すって言ってるのに諦めようとする唯斗に腹がたった」
あの時、大我って本気で怒ってたんだ。普段とあまり変わらなかったから、わからなかった。

「俺が本気で諦めてたらこうなってないってことだよな?」
確認の意味を込めて聞けば小さく笑い首を振る。

「いいや、唯斗が諦めてたとしても、俺は唯斗を手に入れてた。唯斗を絶対に自分のモノにする気でいたんだ」
意外な言葉に驚いた。


だって、今まで俺の発情になんも反応しなかった大我が実はそんなことを考えてたなんて驚くだろ?


「唯斗」
「はっ、はい」
急に真面目に名を呼ばれ何故か俺はピシッと背を正す。


「俺は聖唯斗が欲しい。俺の番という意味も込めて、俺は聖唯斗が欲しい。俺だけのモノにしたい」
ジッと見つめるその瞳は碧で、いつになく強い意志を宿している。


でも、ヤバいって思った。


「あっ、たい、がぁ、ごめ、ん」
自分でも意図せずに発情が始まった。発情の暴走が治まってもまだ発情はするかもって言ってたから大我はわかってることだとは思うけど…。

「ホントに急だな。多分、その原因は俺にもあるから大丈夫だ」
苦笑しながら言われる言葉に首を傾げる。


自分では理由がわからないから…。


「嬉しかったんだろ?俺の言ったことが」
頬を撫でながら紡がれる言葉に小さく頷けば
「多分、それが引き金になったんだと思う。愛情に飢えてる唯斗の心が嬉しくて、悲鳴を上げて、もっと欲したんだ」
苦笑したままで告げられる言葉。


確かに今の俺は大我の言葉に驚き、それと同時に嬉しくて大我に抱き着きたいって思った。泣きそうだとも思った。まさか自分の知らない所で大我が俺のことをこんな風に思ってくれてたんだって知って。


中学の時、初めて自分が第2の性に覚醒するって知った時からずっと傍にいてくれたのは他でもないもないこの男だ。
自分がオメガだと知ってから自棄を起こしてるときも、必ずこの男が俺を見つけて連れ戻され、何かをするわけでもなく俺自身が落ち着くまで傍にいて、癇癪起こしてキスせがんでって自分勝手なことをしてる時もただ、苦笑を浮かべながらも俺に付き合ってくれてたのはこの男なんだ。
中学の時からだからゆうに3年以上はそんな俺に付き合ってくれていたことになる。

高校に上がってからの俺は特に酷くなったのを自覚してる。

反応を返さない大我にイラ立ち、色々と無茶をしてた気もする。発情が終わる頃には本当に自分には記憶が無くて、傍にいてくれていたという事実しかなくて、自分が何をしたかまでは覚えていない。

ただ、発情した時まだ記憶があるときに大我が反応をしないから寂しいと思う部分は確実にあって、それが自分の中で消化しきれなくて溜まっていってたのは自覚してる。
だから、あの日、初めて大我が俺に目に見えて反応したとわかる証拠を残したあの時から、大我に対しての感情が酷くなったのは自分でも驚いたし納得もした。

俺は神尾大我が欲しかったんだ。と…


「たぃ、がぁ、俺、たい、ががぁ、好き、もっと、一緒に、いたい」
だからどうか伝わって欲しい。俺がずっと欲しがっていたものが大我からの深い愛情だっていうのを…。
「おいで」
小さく笑いながら両手を広げてくれるから俺はその胸に飛び込んだ。


ずっと一緒にいてくれたから、大我は俺の気持ちがわかるんだ。自分が愛情に飢えてるっていうのも、大我からの愛情が欲しいっていうのも…。


「ゆい、ゆいが今して欲しいことは?」
俺を抱きしめながら問われる。
「キス、もっと、ギュって、して、たぃ、が、が、欲しぃ、して」
俺は素直に自分のして欲しいことを口にする。


キスもしたい、もっと抱きしめて欲しい、大我に抱かれたい、大我が欲しい。発情するとそういった欲求が強くなる。

あぁ、だから発情と普段の時の落差が激しんだって今更ながら思った。


「わかった。じゃぁ、全部な」
「ぅん」
俺の言葉に笑いながら答えてくれる。俺は頷いた。


だって、俺がして欲しいと言ったことを大我は必ずしてくれるのを知ってるから、わかってるから。


「好きだよ」
もう一度、好きだと告げ少しだけ熱い唇が重なった。


俺はやっぱり大我が好きだ。もっと一緒にいたい。


大我だから俺は欲してるんだ。


神尾大我だから…



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