僕とネコと君

槇瀬陽翔

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第10話

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「櫂莉、あんたのパソコン片付けて。商売道具を壊すわけにはいかないから」
美都はテーブルの上に2人の為のご飯を用意しながら櫂莉に声をかける。
「あー、昨夜は眠くてそのままで寝ちまったからな。わりぃ片付ける」
櫂莉は頭を掻きながらテーブルの上に置いたままのパソコンを違う場所へと移動させた。

「知宙くん、ご飯食べて」
美都は子猫たちと遊んでいる知宙を呼びご飯を食べるように促した。
「あっ、はい。ありがとうございます」
知宙は子猫たちを箱の中に戻して、手を洗いに行き昨日、座った席に座った。
「急がなくていいからちゃんと食べてね」
美都が笑いかければ
「はい、いただきます」
知宙は返事をしてご飯を食べ始めた。


知宙と櫂莉がご飯を食べてる間に子供たちも起きたのか、子猫たちを遊び始めた。



『なんかいいなぁ、こういうの…なんかすごく落ち着く…』


知宙はご飯を食べながら、このゆったりとした時間が好きだった。自分の家にいるよりも、この場所で、みんなと一緒にいる時間の方が落ち着けて嬉しく思った。


知宙と櫂莉がご飯を食べ終えてから、当初、予定していた買い物へと出かけた。


子猫たちの為に必要なものを買いに行くのが今日の予定だったのだ。出発する時間が予定の時間よりも2時間ぐらい遅くはなったが予定通りみんなで買い物へと出かけたのだった。


家族とでさえ買い物に出かけた記憶があまりない知宙にとって櫂莉たちとの買い物はすごく嬉しかったし、楽しかったのである。お昼ご飯もみんなで外食をしてワイワイと楽しく過ごせて知宙は幸せだった。


それと同時に帰りたくないと思う気持ちもあった。


買い物を済ませ、櫂莉の家に戻って来て、子猫の為に買ったものを色々と設置したりして子猫たちの寝場所も作った。
「柚子ちゃん、凌くん子猫の名前決まったよ」
知宙は子猫と遊んでいる2人に声をかけた。
「ほんとぉ?」
「何て名前なのぉ?」
2人がワクワクとしながら聞いてくる。

「こっちのはちわれの子がリルで、こっちのキジトラの子がルイでどうかな?」
知宙が子猫を見せながら2人に言えば
「りーちゃんとるーちゃん」
「可愛いねぇ~」
嬉しそうに笑う。

「りーちゃんとるーちゃんをよろしくね」
そんな2人に知宙が言えば
「うん」
2人が大きく返事をした。


「知宙くん、晩御飯どうする?ここで食べていく?」
美都が知宙に声をかけると
「あっ…いえ、今日はこのまま帰ります」
知宙は小さく首を振りもう帰ると告げた。その顔は悲しげである。

「そう、じゃぁ、また遊びに来てね。またリクエストされたご飯作ってあげるわ」
美都はそんな知宙に掛ける言葉が出てこず、また遊びに来てとだけ伝えた。
「はい、ありがとうございます」
知宙は小さく笑って答えた。


『ホントは帰りたくない。でも…帰らなきゃ…』


知宙は小さく息を吐き
「じゃぁ、2人ともまた遊んでね」
柚子と凌に声をかける。
「バイバイちーちゃん」
「また遊んでね」
2人もまた遊んでねと返事をした。

「じゃぁ、昨日からずっとありがとうございました」
知宙は頭を下げ自分の荷物を取ろうとすれば
「そこまで送ってく」
この家に来た時をと同じように櫂莉に持っていかれてしまう。
「えっ、ちょ、藍原、自分で持てるって…」
知宙は慌ててそんな櫂莉の後を追った。

「なんだか本当に帰るのがイヤそうだわ知宙くん」
「辛いんだろうねきっと」
知宙の背を見送り美都と雅人が呟いた。本当はもっとここで過ごさしてあげたい。でも、知宙の家庭の事情もあるので、そう言ってはいられないと2人が考えていた。ならせめて、この家に来た時だけは知宙が楽しく過ごせるようにしてあげようと2人で決めたのだった。


櫂莉に荷物を持たれたまま知宙は家まで送られて帰ることになった。


「そんなに重くないから自分で持てるのに…」
知宙がブツブツと言えば
「こういう時は甘えて持ってもらっとけ。こういう経験はそうそうないからな」
櫂莉はそんな知宙に小さく笑いながら言う。

「いや、でも、俺、男だし」
「男だっていいじゃねえか。経験したことねぇこと経験するのは楽しいだろ」
知宙が反論すれば反対に櫂莉にそんなことを言われてつい、知宙は頷いてしまう。
「ならいいじゃねぇか。ほら、着いた。ここからは気を付けて帰れよ」

帰りは数日前、知宙を送り届けた場所まで来て荷物を知宙に返す。
「ありがとう。本当に色々とありがとう」
知宙は自分の荷物を受け取りお礼を口にする。
「おう、明日からベビーシッターのバイト頼むな。じゃぁ、またな」
櫂莉はポンポンと知宙の頭を軽く叩き手を小さく振って帰って行った。


「ありがとう」
知宙は小さくなっていく櫂莉の背に呟き、気乗りしない自分の家へと帰って行った。


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