会長様はいちゃつきたい!

槇瀬陽翔

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抱きしめてほしい

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抱きしめてほしい


ただそれだけだった



「ゆい?どうしたんだ?」
ボーっとしていたらヒョイッと大我に顔を覗き込まれた。
「うわっ、びっくりした」
ボーっとしてる所に急に大我のカッコい顔が現れて本当にびっくりした。俺の心臓が止まる。
「いや、何度か呼んだんだけど反応しなかったのはお前だぞ」
なんて笑いながら言われてびっくり。全然気づかなかった。
「うそぉ、気付かなかったよ俺」
ガックリと肩を落とせば
「で?何かあったのか?」
自然な流れで俺の頭を撫でて隣に座った。イヤ、うん。ここが大我の部屋だっての忘れてたよ俺。
「これと言ってあったわけじゃないんだ」
うん。これも嘘じゃない。
「ならいいけど、ゆいはたまに隠すからな」
なんて言われた。よくわかってますね大我さん。
「いや、今日は本当になんもないって。ただボーっとしてただけだから」
うん。本当にただボーっとしてただけ。
「疲れてるならもう寝たらどうだ?寝なくても横になるとか」
俺を心配してくれてるからこその言葉。やっぱり大我って優しいよなぁ。
「じゃぁ…一緒に寝てくれ」
なんて甘えてみた。甘えれば甘えた分だけ大我は甘やかしてくれるけどさ。
「わかった。じゃぁベッドに行こう」
なんてやっぱり、あっさりと返事をして大我は俺の手を取って立ち上がり寝室へと向かう。


「ほら、横になれ」
布団をまくり上げ、俺が入れるようにしてくれるから、俺は素直にそれに従った。そんな俺の隣には当然とばかりに大我が入り横になる。
「…本当は…」
そこまで口にして俺は唇を噛み締める。
「唯斗は俺の抱き枕だからな」
なんて言いながら俺は大我の腕の中に抱きしめられた。


なんでわかるんだろう?俺がしてほしいと思ったこと…


「本当は抱きしめてほしかったんだろ?」
耳元で囁くように言われた言葉に驚きながらも小さく頷いた。
「ボーっとしてるときは大概ゆいは不安定に陥ってるときだからな」
なんて言いながらもっと密着するように抱きしめられた。
「なんでわかるだよ」
なんて文句を言うみたいに言いながらも俺は大我の服をギュッと握りしめる。離れていかないように…
「んー、唯斗の表情とか?雰囲気とか?そんな感じかな」
なんて小さく笑いながらそっと優しい手つきで撫でられていく頭。それが気持ちいい。
「大我にはかなわないな…全部バレてるんだ…」
大我の胸にスリッとすり寄れば
「そりゃぁ、唯斗くんを幸せにするために日々研究中ですからね。どんな変化も見落とさないように」
なんて言われてびっくり。
「今まで俺に無反応だったくせに…」
なんてつい拗ねたのは許してほしい。
「あの頃は色々と我慢しないとダメだったからな」
その言葉につい
「じゃぁ、今は?」
なんて聞いてしまった。
「ん?んー、今は半々かな?しなきゃダメな時もしなくていい時もある。でも今は唯斗を抱きしめるのが忙しい」
なんて、少しだけ考えて返事をくれる。
「ん、今は俺も抱き締めててほしい」
本当に今はただ抱きしめていてほしいから素直に自分の気持ちを口にした。
「このまま寝ちまえ。朝までずっとこうしててやるから」
俺の額に小さなキスを落としながら言われる言葉に小さく頷く。
「ん、おやすみ大我」
「あぁ、おやすみ」
俺は大我の言葉通り、抱きしめられたまま眠るためにそっと目を閉じた。


大我の温もりと規則正しい心音を子守歌にしながら俺は何時になく深い眠りへと堕ちていった。


ただ、抱きしめてほしかった。


何も聞かずに、言わずにただその温もりに包まれたかった。


ただそれだけ。


俺を思う大我の愛情に包まれていたかったんだ。



Fin

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