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第8話
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「こちらがユリアーナ様のお部屋になります。お隣はもちろんトール様のお部屋ですよ」
ユリアーナの為に用意された部屋にマーサが案内して告げる。部屋の中に通され中を見て
「すごい、奇麗だわ」
ユリアーナが呟いた。部屋に入ってすぐに目がいったのは大きな窓から広がる外の世界だった。ユリアーナが屋敷に到着したのはすでに日が暮れかかった時刻。トールとの謁見を終え部屋に案内された頃にはすでに日が暮れ夜になっていた。そして、黒色に染まった空に輝く小さな光。まるで宝石を散りばめたジュータンの様に広がる星空を見て、ユリアーナが歓喜の声を上げる。屋根裏部屋から見ていた空とは到底比べ物にならない星空。
「我が国は星空がすごくキレイに見えるんですよ。勿論、昼間の空もキレイです」
窓の外を見てるユリアーナにマーサが後ろから声を掛ける。
「すごいわ」
ユリアーナは外の凄さに釘付けで動こうとしない。そんなユリアーナをよそにマーサは一緒についてきた侍女の2人に指示をしていく。
「さぁ、ユリアーナ様。まずはその身体を清めて疲れを落としましょう」
「えっ?あっ、でも…」
マーサな言葉にユリアーナは戸惑う。まだ、外を見ていたいという気持ちと、自身の身体にある傷などを見られてしまうというふたつの気持ちが入り混じっていた。
「大丈夫です、外は逃げません。それに、ユリアーナ様には最高のおもてなしをさせていただきます」
マーサはユリアーナの手を取ると戸惑ったままのユリアーナを浴室へと連れ込んだ。
そして、マーサは侍女2人と共にユリアーナを清めるために、お風呂へと入れ、垢すり、シャンプー、マッサージ、エステ、諸々のことをしていった。
ユリアーナが部屋に戻るころには、ユリアーナがこの屋敷へ来た時とは違う姿になっていた。
「さぁ、最後の仕上げをしてお食事にしましょう」
ユリアーナを鏡の前に座らせるとマーサは楽しそうに支度を始める。
「マーサさ…マーサたちはすごく嬉しそう。なんていうのかな…遠くに離れていた人と再会したような…そんな感じがするわ」
ユリアーナはついそんなことを口にしてしまった。そう、お風呂で作業をしてる時からユリアーナは感じていたのだ。マーサたちがすごく嬉しそうにしているのを…。
「トール様のお嫁様が来られたですから、喜ばないわけがありません。それにユリアーナ様はとてもキレイな方ですので、我々もついつい力が入ってしまいました」
マーサは一瞬、驚いた顔をするが嬉しそうに笑ったままで、ユリアーナの髪を結い、肌が荒れない様に保湿のクリームを塗っていく。そして、まるでユリアーナの為に用意したかのように、サイズの合ったドレスを着せていく。
「さぁ、完成ですよユリアーナ様」
マーサの言葉に自分の姿を鏡で見たユリアーナは言葉を失った。
そこに写っているのは、やんわりと結われた薄紫色の髪、透き通るような白い肌。
あれだけ薄く黒く染まっていた自分の姿がここまで違っているのに本気で驚いた。輿入れだというのに、あの家ではちゃんとお湯を使ってお風呂に入れさせてもらえなかったのだ。元々、あの家にいたときは屋根裏に閉じ込められていたので、お風呂などまともに入れさせてもらっていなかったのだが…。
「この姿をすぐにトール様にお見せ出来ないのは残念ですが、今夜は軽くお食事をとって、ゆっくり身体を休ませましょう」
ふふふとマーサは笑いながらユリアーナを食事の用意されている場所へと移動させた。
「まるで別人だわ」
場所を移動してからやっとユリアーナが呟いた。
「ユリアーナ様はキレイなので、磨けばもっと輝きますよ。さぁ、熱いうちにお食べください」
椅子に座ったユリアーナの前にサラダとスープとパンを置いていく。
リオンたちにユリアーナの食事事情を聞いていたからこそのメニューだ。ここへ来る道中、ユリアーナはまともに食べられなかったのだ。いじめにあい、ちゃんとした食事を与えられてこなかったのだ、胃が受け付けれなかった。
「食べれなければ、残して大丈夫ですからね。無理してまで食べないでくださいねユリアーナ様」
これもリオンに聞いた話だ。無理して食べようとして、戻してしまったと…。
「大丈夫よマーサ。さすがに自分で学習したわ」
そう、ユリアーナは道中で痛感したのだ。自分が辛いだけじゃなくて、リオンたちにも迷惑をかけてきたのだと…。
ユリアーナは自分の為に用意してくれた食事をゆっくりと食べ始めた。
ゆっくりと、少しだけ時間がかかったがユリアーナは出されたものを残さずに食べ終えた。
「美味しかったわ」
ほうっと息を吐きながらユリアーナが呟きマーサが入れた紅茶の入ったカップに手をのばす。
「大丈夫ですか?」
心配でマーサが聞けば
「えぇ、大丈夫。無理してないし、お腹が痛かったりもしないわ」
ユリアーナは本当に大丈夫だと答えた。
「本来ならテラスに準備したかったのですが、本日は少々、風が出てるのでこちらでゆったりとお茶を飲みながら過ごしてくださいね」
ユリアーナが夜空を見えるようにとマーサたちが準備した場所は部屋の中だが、外の景色がよく見える場所だった。
「ありがとう。ここで大丈夫よ。だってここからでもキレイに見えるわ」
ユリアーナは窓の外を見て嬉しそうに答えた。そんなユリアーナにマーサはストールを掛けた。夜になれば少し冷える。このままだとユリアーナはしばらくこの場所から離れないかもしれないとマーサは思ったのだ。ただ、ユリアーナを休ませるようにとトールに言われているので、頃合いを見て、ユリアーナを寝室へと連れて行かなければと考えていた。
「ユリアーナ様、そろそろおやすみになる時間です。明日はトール様との食事の約束もしてますので、今夜は寝てください」
食事を終えてから2時間近く、窓の外を見ていたユリアーナにマーサが声を掛けた。
「ついつい、キレイな空に見入ってしまったわ。それに暖かくて…眠気が…」
うつうつと始めていたユリアーナは目を擦り答えた。
「この場所で寝てしまう前に移動しましょう」
マーサはユリアーナの手を取り、寝室へと案内する。そして、ユリアーナを寝間着に着替えさせて、結った髪の毛も外した。ユリアーナがベッドの上で横になると
「今夜はゆっくりとお休みくださいね」
ユリアーナにしっかりと布団を掛け、部屋の明かりを消して部屋を出ていった。布団の上に横になった瞬間、急激な眠気に襲われ眠ってしまったユリアーナにはもうマーサの言葉は届いていなかった。
ユリアーナの為に用意された部屋にマーサが案内して告げる。部屋の中に通され中を見て
「すごい、奇麗だわ」
ユリアーナが呟いた。部屋に入ってすぐに目がいったのは大きな窓から広がる外の世界だった。ユリアーナが屋敷に到着したのはすでに日が暮れかかった時刻。トールとの謁見を終え部屋に案内された頃にはすでに日が暮れ夜になっていた。そして、黒色に染まった空に輝く小さな光。まるで宝石を散りばめたジュータンの様に広がる星空を見て、ユリアーナが歓喜の声を上げる。屋根裏部屋から見ていた空とは到底比べ物にならない星空。
「我が国は星空がすごくキレイに見えるんですよ。勿論、昼間の空もキレイです」
窓の外を見てるユリアーナにマーサが後ろから声を掛ける。
「すごいわ」
ユリアーナは外の凄さに釘付けで動こうとしない。そんなユリアーナをよそにマーサは一緒についてきた侍女の2人に指示をしていく。
「さぁ、ユリアーナ様。まずはその身体を清めて疲れを落としましょう」
「えっ?あっ、でも…」
マーサな言葉にユリアーナは戸惑う。まだ、外を見ていたいという気持ちと、自身の身体にある傷などを見られてしまうというふたつの気持ちが入り混じっていた。
「大丈夫です、外は逃げません。それに、ユリアーナ様には最高のおもてなしをさせていただきます」
マーサはユリアーナの手を取ると戸惑ったままのユリアーナを浴室へと連れ込んだ。
そして、マーサは侍女2人と共にユリアーナを清めるために、お風呂へと入れ、垢すり、シャンプー、マッサージ、エステ、諸々のことをしていった。
ユリアーナが部屋に戻るころには、ユリアーナがこの屋敷へ来た時とは違う姿になっていた。
「さぁ、最後の仕上げをしてお食事にしましょう」
ユリアーナを鏡の前に座らせるとマーサは楽しそうに支度を始める。
「マーサさ…マーサたちはすごく嬉しそう。なんていうのかな…遠くに離れていた人と再会したような…そんな感じがするわ」
ユリアーナはついそんなことを口にしてしまった。そう、お風呂で作業をしてる時からユリアーナは感じていたのだ。マーサたちがすごく嬉しそうにしているのを…。
「トール様のお嫁様が来られたですから、喜ばないわけがありません。それにユリアーナ様はとてもキレイな方ですので、我々もついつい力が入ってしまいました」
マーサは一瞬、驚いた顔をするが嬉しそうに笑ったままで、ユリアーナの髪を結い、肌が荒れない様に保湿のクリームを塗っていく。そして、まるでユリアーナの為に用意したかのように、サイズの合ったドレスを着せていく。
「さぁ、完成ですよユリアーナ様」
マーサの言葉に自分の姿を鏡で見たユリアーナは言葉を失った。
そこに写っているのは、やんわりと結われた薄紫色の髪、透き通るような白い肌。
あれだけ薄く黒く染まっていた自分の姿がここまで違っているのに本気で驚いた。輿入れだというのに、あの家ではちゃんとお湯を使ってお風呂に入れさせてもらえなかったのだ。元々、あの家にいたときは屋根裏に閉じ込められていたので、お風呂などまともに入れさせてもらっていなかったのだが…。
「この姿をすぐにトール様にお見せ出来ないのは残念ですが、今夜は軽くお食事をとって、ゆっくり身体を休ませましょう」
ふふふとマーサは笑いながらユリアーナを食事の用意されている場所へと移動させた。
「まるで別人だわ」
場所を移動してからやっとユリアーナが呟いた。
「ユリアーナ様はキレイなので、磨けばもっと輝きますよ。さぁ、熱いうちにお食べください」
椅子に座ったユリアーナの前にサラダとスープとパンを置いていく。
リオンたちにユリアーナの食事事情を聞いていたからこそのメニューだ。ここへ来る道中、ユリアーナはまともに食べられなかったのだ。いじめにあい、ちゃんとした食事を与えられてこなかったのだ、胃が受け付けれなかった。
「食べれなければ、残して大丈夫ですからね。無理してまで食べないでくださいねユリアーナ様」
これもリオンに聞いた話だ。無理して食べようとして、戻してしまったと…。
「大丈夫よマーサ。さすがに自分で学習したわ」
そう、ユリアーナは道中で痛感したのだ。自分が辛いだけじゃなくて、リオンたちにも迷惑をかけてきたのだと…。
ユリアーナは自分の為に用意してくれた食事をゆっくりと食べ始めた。
ゆっくりと、少しだけ時間がかかったがユリアーナは出されたものを残さずに食べ終えた。
「美味しかったわ」
ほうっと息を吐きながらユリアーナが呟きマーサが入れた紅茶の入ったカップに手をのばす。
「大丈夫ですか?」
心配でマーサが聞けば
「えぇ、大丈夫。無理してないし、お腹が痛かったりもしないわ」
ユリアーナは本当に大丈夫だと答えた。
「本来ならテラスに準備したかったのですが、本日は少々、風が出てるのでこちらでゆったりとお茶を飲みながら過ごしてくださいね」
ユリアーナが夜空を見えるようにとマーサたちが準備した場所は部屋の中だが、外の景色がよく見える場所だった。
「ありがとう。ここで大丈夫よ。だってここからでもキレイに見えるわ」
ユリアーナは窓の外を見て嬉しそうに答えた。そんなユリアーナにマーサはストールを掛けた。夜になれば少し冷える。このままだとユリアーナはしばらくこの場所から離れないかもしれないとマーサは思ったのだ。ただ、ユリアーナを休ませるようにとトールに言われているので、頃合いを見て、ユリアーナを寝室へと連れて行かなければと考えていた。
「ユリアーナ様、そろそろおやすみになる時間です。明日はトール様との食事の約束もしてますので、今夜は寝てください」
食事を終えてから2時間近く、窓の外を見ていたユリアーナにマーサが声を掛けた。
「ついつい、キレイな空に見入ってしまったわ。それに暖かくて…眠気が…」
うつうつと始めていたユリアーナは目を擦り答えた。
「この場所で寝てしまう前に移動しましょう」
マーサはユリアーナの手を取り、寝室へと案内する。そして、ユリアーナを寝間着に着替えさせて、結った髪の毛も外した。ユリアーナがベッドの上で横になると
「今夜はゆっくりとお休みくださいね」
ユリアーナにしっかりと布団を掛け、部屋の明かりを消して部屋を出ていった。布団の上に横になった瞬間、急激な眠気に襲われ眠ってしまったユリアーナにはもうマーサの言葉は届いていなかった。
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