貴方の傍に…

槇瀬陽翔

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テストも終え、2学期の授業も残り少なくなってきた頃、学院中に噂が広まった。

『東條菫は魏壌屋で売春夫をやっていた。生徒会長とは赤の他人』

あぁ。やっぱり俺はここにいていい人間じゃないんだ。

噂が流れたその日からみんなの俺を見る目が変わった。まぁ分かりきっていたことだ。世間がどんな顔をするかなんて。それに、遙はこの学院の人気者だからさ。

俺も遙も噂に関しては沈黙を保っている。というか俺は真澄さんと遙に何も喋るなと言われたから黙ってるだけなんだけど。

でも悪いことは続くって言うけど、それはどうやら本当らしい。

俺は土曜日の午後に一人で街に出た。ただあの場所から離れたかっただけ。街をぶらついていてあるアクセサリー店に心惹かれ中に入った。そこで見つけたペンダントがどうしても欲しくてクリスマスプレゼントとして購入したのだ。それはクロスと月をモチーフにしたもの。真ん中には遙の誕生石。無性に今までのお礼に渡したくなったのだ。俺はそれを買い、浮かれ気分で店を出てまたぶらついていたら不意に背後から声をかけられた。
「菫くん。菫くんじゃないか。お店辞めちゃったんだって?ってことは今自由だよね?もうあんな高額なお金払わなくてもいいわけだよね?今からホテル行こうよ。お金払うからさ」
あの店の常連客に捕まった。しかもそれを学院の奴に見られていたみたいだ。
「離して下さい。もう俺には関係ないことですから」
俺はそう言い男の手を振り払い寮に逃げ帰った。

翌日からだった。

俺を罵る奴。罵声を浴びせる奴。貶す奴。見下す奴。

そして何よりも

『君が遙様の弟だなんて汚らわしい。君なんて居なくなってしまえばいい』

その言葉を投げつけられた。俺自身がヒシヒシと感じていた気持ちを叩きつけられた。この学院にとって遙は神に近い存在なのかもしれない。それだけみんなに親しまれ尊敬されているんだ。その遙の顔に俺は泥を塗ってしまった。ただでさえ弟だと偽り続けていたばかりに…

俺はどんなに罵られても貶されても見下されたって構わない。俺の過去は変えることが出来ないのだから。でも…遙にこれ以上迷惑をかけるのだけは避けたい。かけるわけにはいかない。

俺の恋心は実ることないのは初めから分かりきってることだし…だったら今が一番いいのかもしれない。本当に潮時かもしれない。

俺は誰にもバレないように荷造りを始めた。誰にも気付かれないようにここを出て行こう。

「あ…ごめん。忘れ物した。とってくる」
俺は学院に向かう途中、わざと遙にそう告げて、遙を先に学院に行かせ、俺は寮に戻った。

自分の部屋に入り、制服から私服に着替え、机の上に東條家から貰った携帯や通帳などをきちんと置き、
遙のために買ったプレゼントもそこに置いた

『お世話になりました。
遙へ一足早いけど俺からのクリスマスプレゼント。いらなかったら捨ててくれればいい。
今までありがとうございました。兄さん。
さよなら・・・菫』

さよならの手紙を残し誰にもばれないようにたった一つのカバンを持ち寮を抜け出し学院も抜け出した。

かと言って行く当てがあるわけじゃない。あの店にはもう戻らないと決めたわけだし…
俺はカバンを持ってブラブラと歩いて歩いて歩き疲れて、ふと目に留まった公園に入りベンチに座った。
カバンを置きそれを枕に横になって空を見上げた。
「あ…雪だ…」
ちらちらと雪が降り始めた。俺はそれをじっと眺めていた。雪なんて何年ぶりに触るんだろう? なんて思いながら自分の頬や身体に降り積もってくる雪の冷たさを感じながらそっと目を閉じた。

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