貴方の傍に…

槇瀬陽翔

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act28

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「兄さん?」
俺は遙に問いかけてみる。遙は俺をソファに押さえつけ
「てめぇ何を逃げてんだよ?このままでいいのか?」
怒鳴り気味に聞いてくる。
「あの…意味が判りません。俺は俺のままです。逃げてませんよ?」
俺はそう言い返す。遙の眉間の皺がますます酷くなって行く。
「それが逃げてんだろうが!」
なんでここまで遙が怒るんだろう?
「退いて下さい兄さん。自分の部屋に戻りたいので…」
俺は必要以上に関わらないと決めたんだ。
「ふざけんな!」
遙はそう怒鳴ると俺の顎を掴みキスをしてきた。な…なんで?…なんでこんなことするんだよ?
激しく唇を奪われ強引に舌が入り込み絡めてくる。
「…ん…ふっ…」
逃げようとすればするほど激しく唇を重ねられる。息もままならないほど激しく…。
俺は力一杯、遙を押しのけ
「いい加減にしろよ!これ以上俺を掻き乱すな!赤の他人なら赤の他人のままほっとけよ!誰も家族が欲しいなんていってねぇよ!あんたらの都合で俺を振り回すなよ!」
遙にそう怒鳴り逃げるように部屋を飛び出て自分の部屋に入り鍵を閉めベッドに駆け寄り布団に潜り込んだ。
「…っ…バカヤ…っ…」
もう泣かないと決めたのに…涙が勝手に出てくる。俺はそれを拭うこともせずそのまま横になり目を閉じた。

俺はただの人形。生きた人形。感情なんかいらない。俺は生きた人形でいい。ただ息をしているだけの人形。

俺はその日からまた食事とお風呂以外はベッドで眠り、自分の感情を仕舞い込んだ。


「今日みんなで初詣に行こうと思うんだけど菫くんも行くよね?」
食事を終えたとき真澄さんが突然そう聞いてきた。
「すみません。俺は行きません。人混みに入ると酔ってしまうんです。ですから行けません。先に部屋に戻ります。失礼します」
俺はそう答え、その場を離れようとした
「どうして敬語のままなんだい?敬語なんて使う必要ないんだよ?」
真澄さんが問いかけてくる。俺は彼の方を見て
「子供の頃からです。突然、自分で思ってることと話す言葉が違うようになったのは…。原因なんてわかりません。だから気にしないでください。失礼します」
そうとだけ告げ俺は足早に階段を上がり自分の部屋に入り鍵を掛けた。

「心が何処かに行ってしまったから…もう俺には戻れないんです」
独り言のように呟きベッドに行き布団に潜りいつものように目を閉じた。自分の感情を出さないために…。

自分の感情を封印すると同時に、俺は人との接触も拒んだ。

この家には俺の居場所なんてない。何処へ行っても居場所なんてないのだけど…。

気が付けば冬休みも終わりを告げ、学院に戻ってきた。

新学期。俺はまた転入当時と同じで浮いた存在になっていた。まぁ俺の素性がばれた訳だし当たり前といえば当たり前だけど…。
俺は唯の人形。だから何も感じない。一人浮いていようが他人から冷たい眼で見られようが気にならない。
気にする必要なんかない。俺は元々ここに居るべき人間じゃないのだから…。

寮に戻っても、遙とは必要最低限の会話しかしない。勿論、俺はいまだ敬語のままだから遙の機嫌は非常に悪いが…。
俺は俺のまま。これ以上深く関わることなんて必要ないんだ。俺は元売春夫だから…
俺に関われば遥かの経歴に傷が付く。だから俺が拒み続ければいいんだ。

俺の小さな恋心も一緒に…拒んで無くしてしまえばいい…。

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