チャイルドパニック

槇瀬陽翔

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蒼樹と手を繋いで学園の近くまで来たが突然、蒼樹が繋いでいた手を振りほどき俺のブレザーの中に隠れた。

離れないっていう意味はこれのことか…。

俺は小さく息を吐き、ブレザーのボタンを全部外した。少しでも蒼樹がきつくないように。
蒼樹の手はしっかりと俺の首に回されていた。ちょっと苦しいがまぁ我慢だな。

下駄箱の前で、
「蒼樹、足」
俺が言うと片方の足ずつニュッと出てきた。俺は靴を脱がし、上履きを履かせ、蒼樹の下駄箱にしまう。
今度は自分の下駄箱に向かい履き替えると
「金城、その背中なんだ?」
数名のクラスメイトが不思議そうに聞いてくる。
「ん?あぁ。気にするな」
俺はそう言い残し、教室ではなく職員室へと向かった。

「真辺先生、吉田先生ちょっといいですか?」
職員室に入るなり、にっこりと笑い挨拶をする。
「お…おう」
「あぁ、わかった」
二人は青ざめて引きつった笑みを浮かべた。

俺たちは蒼樹ご用達の生徒指導室へと来ていた。蒼樹は机の上に座って吉田と遊んでいる。
「どうするつもりですか?」
俺は真辺に詰め寄っていた。
「や…あの…まさかマジで薬作るとか思わなかったし、勝が飲ますとか思いもしないだろ」
真辺は焦ってる。非常に焦ってる。言いだしっぺだからな。
「織田~可愛いなぁ~お前~」
吉田に至ってはこんな状態だ。いや被害にあうのはあんただったんだからな!
「吉田、よかったね子供になんなくて。あっ、でも真辺がいるから大丈夫かぁ」
なんて爆弾発言。二人の顔が引きつる。
「お…織田なにいって…」
おぉ。吉田が焦ってんな。
「ん?んふふ。だって二人は付き合ってるじゃない。だから子供になったら真辺が面倒を見てくれてたね」
蒼樹はまたもや爆弾発言。この二人が付き合ってるのは極一部しか知らない情報だ。
「知ってたのかよ。なんでいつ?」
吉田が真面目に聞いてる。
「ん?んふふ。秘密。教えたら意味ないも~ん」
出たな小悪魔蒼樹が。

クソ、その顔は反則だっての。可愛いんだよお前は!!!

「ま、まぁその話は置いておいて織田の身体が治るまでうちのクラスで面倒を見ればいいんだろ?」
真辺が咳払いをして言ってくる。
「当たり前でしょう。狼の中にこんな可愛い顔をしたウサギを放り込む気ですか?」
俺は真辺を睨みつける。
「わかったって。吉田それでいいだろ?」
真辺は吉田に聞いてる。
「まぁ、しかたがないよな。織田は頭もいいし、本来なら特Aにいてもおかしくない人物だし大丈夫だろ…身体の大きさを除いては…」
吉田も納得したのかそんなことを言う。確かに蒼樹の成績は特Aにいても問題はないものだ。
「じゃぁ、後で誰かに織田の机を運ばせる。それでいいか?」
吉田が俺に聞いてくる。
「いいですよ。あっ、真辺先生、元に戻るまで俺たち後ろの席でいいですか?織田は窓辺の方がいいんですけどね」
吉田に返事をしながら真辺に聞く。
「あぁ。構わないが…。確か金城は今、窓辺の後だろ?」
そう幸いのことに今の俺の席は窓辺の一番後ろだ。
「そうですよ。だからお願いしてるんですよ」
俺ははっきりと言う。
「まぁそれはお前に任せる。織田ごめんな」
真辺が突然、蒼樹に謝る。多分、薬の事だろう。
「ん~。今さらいいよ。起きちゃったことは仕方ないしね。ってことでしばらく先生よろしくね」
蒼樹らしい返事が返ってきた。こいつは気にしないからな。こういうの。
「わかった。じゃぁ金城、後は頼む」
「苗代とかに頼めば運んでもらえると思うから」
二人はそれだけ言い残し部屋を出て行った。
「怒らないんだな」
俺が聞いてみたら
「だって、怒っても元に戻るわけじゃないからね。ってことでおんぶ」
蒼樹はそう言って苦笑いを浮かべた。まぁそうだけどな。

俺は蒼樹に背を向けると、蒼樹はまた朝と一緒に俺のブレザーの中に潜り込んできた。
ばれるまでずっとここにいるつもりだな、こいつ。

俺は小さく息を吐き教室に向かうべく部屋を出た。

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