31 / 42
31話
しおりを挟む
「来客中に突然、押しかけてくるなんて何事ですか。出て行ってください」
突然、押しかけてきた人物に三枝さんが毅然と言い放つ。
「俺だって大事な話があるって言ってるだろ。それに本人がここにいるみたいだから話は早いだろ」
チロリと俺の方を見て怒鳴りながら言う男。出来れば逢いたくなかった人。
「彼からは2週間待って欲しいとお願いがあったと伝えたはずですが?」
三枝さんは男に向かって言い放つ。男が言葉を発する前に
「三枝さん、その人の事情っていうのを話してもらうのはどうですか?」
静かに告げる大我。その言葉には怒りが込められていた。
「ですが…」
一瞬だけ俺の方を見る三枝さん。わかってる、俺がこの場所にいるから追い出そうとしてるのを…。
「大丈夫です。理由も知らずに一方的に金を返せと言われてもこっちは納得できませんからね。その人の事情というのをキッチリ聞かせてもらいましょうか」
言葉の節々に怒りが込められている。それでも俺を撫でる手はいつものように温かくて優しい。
「それなら、大我、唯斗の隣に座りなさい。あなたが聞く権利あるもの」
いつもなら愛称で呼んでるのに、名前をちゃんと呼びながらみきママが場所を大我と変わった。俺の隣に座った大我はギュッと俺の手を握りしめてくれた。一緒に話を聞くから大丈夫だと言わんばかりに…。
「わかりました。では、今回の件の理由を本人から説明していただきますね」
三枝さんは溜め息をつき、本来の予定とは違うが、今回話さなくてはならないかったことについて、本人からの説明を聞くという形で話を進めることになった。
「3ヶ月前に妻の病気が発覚したんだ。その治療には莫大の費用がかかることがわかって、まだ子供たちにも金ががかかるんだ。だから、君に出していた養育費を回収したいんだ」
その言葉を聞き、大我の周りの空気が冷たくなった気がする。ううん、違う。この部屋の温度が下がったんだ。だって、俺以外のみんなが静かに怒ってるから…。
「自分勝手だな」
ポツリと大我が呟いた。
「なっ、お前には関係ないことだろ。俺はこの子に言ってるんだ!」
大我の呟きを拾った男、内藤さんが大我に怒鳴りながら俺を指さす。
「俺に関係があるからこの場所にいるんだが?それに、唯斗は俺の家族だ」
いつになく冷たい瞳で内藤さんを見て、俺の頭を撫でていく。
「…っ…たい、がぁ…」
言葉がうまく続かない。
「大丈夫だ、すぐ済ませる。もう少しだけ我慢してくれ」
俺の目を見て告げてくる大我の瞳はいつもと同じで優しい色を灯していた。俺は何度も頷いた。
「本来、あんたは里親になった時点で、自分の子供が生まれたとしても唯斗を育てなければならなかったはずだ、それを一方的に放棄した。その条件として、唯斗が高校を卒業するまでの養育費を払うというのを条件にこの施設と契約したはずだが?」
俺の頭を撫でたままで、静かに言葉を紡ぐ大我。この言葉には怒りが込められている。
「自分の子供ができたんだ、よその子供なんて捨てても問題ないだろ!」
その言葉に部屋の中の空気が固まった。幼い頃に聞いたその言葉をまた言われると辛い。胸が苦しい。
「ゆい、大丈夫だから…深呼吸をするんだ」
軽く頬を叩かれ、そんな言葉を投げかけられる。
「…っ…ぁ…たい、が…」
大我の服をギュッと掴み見上げれたらボロボロと涙が零れ落ちた。
「大丈夫、ここにいる。ゆっくり吸って、ゆっくり吐くんだ」
大我に言われるままにゆっくりと息を吸って、吐いていく。
「あなた方ご夫妻が捨てた代償がこれです。彼は傷つき、精神的に病み、何度も自分の命を捨てようとしました。その現状をあなた方ご夫妻は受け入れることもせず、尚もまた彼を傷付けるつもりですか!」
いつになく怒った声で三枝さんが言っている。この場所に戻って来た時の俺をずっと見て、支えてくれていたのは他でもない三枝さんだったんだ。中学に上がってからは大我が常にいてくれるようになった。そんなことも忘れるぐらい大我たちと過ごす時間が好きだったのに…。大我の服を掴む手に力が入った。
「大丈夫、ゆっくりでいいから、ちゃんと呼吸をするんだ」
自分の胸に俺の頭を抱きしめ背中をそっと何度も優しく撫でていく。俺が落ち着けるように…。
「さっきから黙って聞いていれば、本当に自分勝手な言い分だこと」
「本当にな」
まさパパとみきママの言葉。
「自分たちの都合だけで一方的に施設と交わした契約を破棄してまでも取り戻そうとするなんて、強欲だこと」
「そうでもしなければ養っていけないのなら、最初から子供なんて作らなければいい。養子をもらおうなんて考えなければいい」
なおパパとゆきママの言葉。
「この施設にいる子たちはそれぞれ事情があってこの場所に預けられてるっていうのを知らないわけじゃないだろうに。そんな知識も情報もないのに、里親になろうなんて考えるな」
大我の冷たい言葉。
「うっ、うるさい、そもそも、お前たちには関係ないことだろう!」
内藤さんが怒鳴り返す。その度にビクッて身体が揺れてしまう。そんな俺を落ち着かせるように大我の手が背中を優しく撫でていく。
「関係なくないから言ってるんだ。この子は俺たちの子供だ」
まさパパの言葉に嬉し涙が零れる。
「唯斗くんは誰がなんと言おうとも俺たちの家族だ」
なおパパの言葉にますます涙が零れ落ちた。
「あなたたち家族の状況なんて俺たちには関係ないことだ。だけど、俺の家族である唯斗に被害がいくのなら、悪いが容赦はしない」
俺を抱きしめながら言う大我の言葉には強い力が込められている。
俺はこんなにも大我に、大我たち家族に大切にされてるんだって思った。
気付かないうちに俺はこんなにも大我に愛されて、家族にも愛をもらってたんだって気が付いた。
突然、押しかけてきた人物に三枝さんが毅然と言い放つ。
「俺だって大事な話があるって言ってるだろ。それに本人がここにいるみたいだから話は早いだろ」
チロリと俺の方を見て怒鳴りながら言う男。出来れば逢いたくなかった人。
「彼からは2週間待って欲しいとお願いがあったと伝えたはずですが?」
三枝さんは男に向かって言い放つ。男が言葉を発する前に
「三枝さん、その人の事情っていうのを話してもらうのはどうですか?」
静かに告げる大我。その言葉には怒りが込められていた。
「ですが…」
一瞬だけ俺の方を見る三枝さん。わかってる、俺がこの場所にいるから追い出そうとしてるのを…。
「大丈夫です。理由も知らずに一方的に金を返せと言われてもこっちは納得できませんからね。その人の事情というのをキッチリ聞かせてもらいましょうか」
言葉の節々に怒りが込められている。それでも俺を撫でる手はいつものように温かくて優しい。
「それなら、大我、唯斗の隣に座りなさい。あなたが聞く権利あるもの」
いつもなら愛称で呼んでるのに、名前をちゃんと呼びながらみきママが場所を大我と変わった。俺の隣に座った大我はギュッと俺の手を握りしめてくれた。一緒に話を聞くから大丈夫だと言わんばかりに…。
「わかりました。では、今回の件の理由を本人から説明していただきますね」
三枝さんは溜め息をつき、本来の予定とは違うが、今回話さなくてはならないかったことについて、本人からの説明を聞くという形で話を進めることになった。
「3ヶ月前に妻の病気が発覚したんだ。その治療には莫大の費用がかかることがわかって、まだ子供たちにも金ががかかるんだ。だから、君に出していた養育費を回収したいんだ」
その言葉を聞き、大我の周りの空気が冷たくなった気がする。ううん、違う。この部屋の温度が下がったんだ。だって、俺以外のみんなが静かに怒ってるから…。
「自分勝手だな」
ポツリと大我が呟いた。
「なっ、お前には関係ないことだろ。俺はこの子に言ってるんだ!」
大我の呟きを拾った男、内藤さんが大我に怒鳴りながら俺を指さす。
「俺に関係があるからこの場所にいるんだが?それに、唯斗は俺の家族だ」
いつになく冷たい瞳で内藤さんを見て、俺の頭を撫でていく。
「…っ…たい、がぁ…」
言葉がうまく続かない。
「大丈夫だ、すぐ済ませる。もう少しだけ我慢してくれ」
俺の目を見て告げてくる大我の瞳はいつもと同じで優しい色を灯していた。俺は何度も頷いた。
「本来、あんたは里親になった時点で、自分の子供が生まれたとしても唯斗を育てなければならなかったはずだ、それを一方的に放棄した。その条件として、唯斗が高校を卒業するまでの養育費を払うというのを条件にこの施設と契約したはずだが?」
俺の頭を撫でたままで、静かに言葉を紡ぐ大我。この言葉には怒りが込められている。
「自分の子供ができたんだ、よその子供なんて捨てても問題ないだろ!」
その言葉に部屋の中の空気が固まった。幼い頃に聞いたその言葉をまた言われると辛い。胸が苦しい。
「ゆい、大丈夫だから…深呼吸をするんだ」
軽く頬を叩かれ、そんな言葉を投げかけられる。
「…っ…ぁ…たい、が…」
大我の服をギュッと掴み見上げれたらボロボロと涙が零れ落ちた。
「大丈夫、ここにいる。ゆっくり吸って、ゆっくり吐くんだ」
大我に言われるままにゆっくりと息を吸って、吐いていく。
「あなた方ご夫妻が捨てた代償がこれです。彼は傷つき、精神的に病み、何度も自分の命を捨てようとしました。その現状をあなた方ご夫妻は受け入れることもせず、尚もまた彼を傷付けるつもりですか!」
いつになく怒った声で三枝さんが言っている。この場所に戻って来た時の俺をずっと見て、支えてくれていたのは他でもない三枝さんだったんだ。中学に上がってからは大我が常にいてくれるようになった。そんなことも忘れるぐらい大我たちと過ごす時間が好きだったのに…。大我の服を掴む手に力が入った。
「大丈夫、ゆっくりでいいから、ちゃんと呼吸をするんだ」
自分の胸に俺の頭を抱きしめ背中をそっと何度も優しく撫でていく。俺が落ち着けるように…。
「さっきから黙って聞いていれば、本当に自分勝手な言い分だこと」
「本当にな」
まさパパとみきママの言葉。
「自分たちの都合だけで一方的に施設と交わした契約を破棄してまでも取り戻そうとするなんて、強欲だこと」
「そうでもしなければ養っていけないのなら、最初から子供なんて作らなければいい。養子をもらおうなんて考えなければいい」
なおパパとゆきママの言葉。
「この施設にいる子たちはそれぞれ事情があってこの場所に預けられてるっていうのを知らないわけじゃないだろうに。そんな知識も情報もないのに、里親になろうなんて考えるな」
大我の冷たい言葉。
「うっ、うるさい、そもそも、お前たちには関係ないことだろう!」
内藤さんが怒鳴り返す。その度にビクッて身体が揺れてしまう。そんな俺を落ち着かせるように大我の手が背中を優しく撫でていく。
「関係なくないから言ってるんだ。この子は俺たちの子供だ」
まさパパの言葉に嬉し涙が零れる。
「唯斗くんは誰がなんと言おうとも俺たちの家族だ」
なおパパの言葉にますます涙が零れ落ちた。
「あなたたち家族の状況なんて俺たちには関係ないことだ。だけど、俺の家族である唯斗に被害がいくのなら、悪いが容赦はしない」
俺を抱きしめながら言う大我の言葉には強い力が込められている。
俺はこんなにも大我に、大我たち家族に大切にされてるんだって思った。
気付かないうちに俺はこんなにも大我に愛されて、家族にも愛をもらってたんだって気が付いた。
1
あなたにおすすめの小説
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
夜が明けなければいいのに(洋風)
万里
BL
大国の第三皇子・ルシアンは、幼い頃から「王位には縁のない皇子」として育てられてきた。輝く金髪と碧眼を持つその美貌は、まるで人形のように完璧だが、どこか冷ややかで近寄りがたい。
しかしその裏には、誰よりも繊細で、愛されたいと願う幼い心が隠されている。
そんなルシアンに、ある日突然、国の命運を背負う役目が降りかかる。
長年対立してきた隣国との和平の証として、敵国の大公令嬢への婿入り――実質的な“人質”としての政略結婚が正式に決まったのだ。
「名誉ある生贄」。
それが自分に与えられた役割だと、ルシアンは理解していた。
部屋に戻ると、いつものように従者のカイルが静かに迎える。
黒髪の護衛騎士――幼い頃からずっと傍にいてくれた唯一の存在。
本当は、別れが怖くてたまらない。
けれど、その弱さを見せることができない。
「やっとこの退屈な城から出られる。せいせいする」
心にもない言葉を吐き捨てる。
カイルが引き止めてくれることを、どこかで期待しながら。
だがカイルは、いつもと変わらぬ落ち着いた声で告げる。
「……おめでとうございます、殿下」
恭しく頭を下げるその姿は、あまりにも遠い。
その淡々とした態度が、ルシアンの胸に鋭く突き刺さる。
――おめでとうなんて、言わないでほしかった。
――本当は、行きたくなんてないのに。
和風と洋風はどちらも大筋は同じようにしようかと。ところどころ違うかもしれませんが。
お楽しみいただければ幸いです。
【完】君に届かない声
未希かずは(Miki)
BL
内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。
ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。
すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。
執着囲い込み☓健気。ハピエンです。
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
【完結】恋した君は別の誰かが好きだから
花村 ネズリ
BL
本編は完結しました。後日、おまけ&アフターストーリー随筆予定。
青春BLカップ31位。
BETありがとうございました。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
俺が好きになった人は、別の誰かが好きだからーー。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
二つの視点から見た、片思い恋愛模様。
じれきゅん
ギャップ攻め
のろまの矜持 恋人に蔑ろにされすぎて逃げた男の子のお話
月夜の晩に
BL
イケメンエリートの恋人からは、雑な扱いばかり。良い加減嫌気がさして逃げた受けくん。ようやくやばいと青ざめた攻めくん。間に立ち塞がる恋のライバルたち。そんな男の子たちの嫉妬にまみれた4角関係物語です。
転化オメガの優等生はアルファの頂点に組み敷かれる
さち喜
BL
優等生・聖利(ひじり)と校則破りの常習犯・來(らい)は、ともに優秀なアルファ。
ライバルとして競い合ってきたふたりは、高等部寮でルームメイトに。
來を意識してしまう聖利は、あるとき自分の身体に妙な変化を感じる。
すると、來が獣のように押し倒してきて……。
「その顔、煽ってんだろ? 俺を」
アルファからオメガに転化してしまった聖利と、過保護に執着する來の焦れ恋物語。
※性描写がありますので、苦手な方はご注意ください。
※2021年に他サイトで連載した作品です。ラストに番外編を加筆予定です。
☆登場人物☆
楠見野聖利(くすみのひじり)
高校一年、175センチ、黒髪の美少年アルファ。
中等部から学年トップの秀才。
來に好意があるが、叶わぬ気持ちだと諦めている。
ある日、バース性が転化しアルファからオメガになってしまう。
海瀬來(かいせらい)
高校一年、185センチ、端正な顔立ちのアルファ。
聖利のライバルで、身体能力は聖利より上。
海瀬グループの御曹司。さらに成績優秀なため、多少素行が悪くても教師も生徒も手出しできない。
聖利のオメガ転化を前にして自身を抑えきれず……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる