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Act 4

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最近、わけもわからず追いかけ回されて俺は逃げに逃げて、風紀のところに駆け込んだ。


「何してんだお前?」
部屋の中に飛び込んだ俺を見て矢岳が不思議そうな顔をする。
「なんかしんねぇけど、最近、追いかけられるから逃げてきた」

息絶え絶えで答えれば眉間に皺がよる。なんかちょっと怖い顔。

無言で顎で指示する所なんてヤクザかなんかかよ。

それに従う風紀のヤツらもだけどさ。


「後で生徒会に送る。そこで座ってろ」
そういって指差されたのはソファだった。俺は言われるままに座った。

イヤ、こういうときになんか言うと倍になって色々言われるから黙ってる方が身のためだったりする。


外に出ていったヤツが戻って来て矢岳に何か耳打ちしてる。


俺はそれをじっと見てた。何かあれば必ず何か言うはずだから…。


会話を終えた矢岳が大きく溜息をついた。それだけでビクッて身体が飛び跳ねた。別になんも悪いことしてないけど…。


「生徒会室に送る」
俺の傍に来てそう告げてくる矢岳の顔は少し険しい。
「えっと…なんか問題でも?」
立ち上がりながら聞いてみるけど何も答えてくれそうになかった。


これってもしかしなくても俺が原因なんだろうな…。


「変に人気があるのも大変だな。あいつらは全員お前を手に入れたいみたいだぞ」
道すがら矢岳がさっきの険しい顔の理由を教えてくれた。
「…俺は普通に恋愛したいんですけど?強引は好きじゃない」
ポツリそんなことを口走っていた。


「諦めろ。誰がなんと言おうともお前は人気がありすぎる。昔も今もな」
人気があってもしょうがないじゃないか。自分がしたいと思う恋愛があるんだ。相手がちゃんと決まってるんだから。


自分で考えておきながら


あれ?


って思った。


決まった相手がいる?誰だ?


自分で自分の考えがわからなくて頭を傾げた。


「何頭傾げてんだお前は?また自分一人の考えに浸って悩んだのか?」
頭を傾げたままの俺を見て矢岳が聞いてくる。
「イヤ、うん、そうだな…。自分で自分の考えに悩んだ」
否定しようかと思ったけどこの男には通用しないので諦めて本当のことを話した。


「案外お前の中にはちゃんとした相手がいるんだろうな。本人が誰かってのを気付けてないだけで」
矢岳の口から出た言葉に驚いて
「なんでわかった!」
つい叫んじまった。

「うるせぇ叫ぶな。今の会話でお前が悩むっつったらそれぐらいだろう。人気者だってのはお前自信もわかってんだからよぉ」
呆れながら言う矢岳の言葉は俺をよく知ってるからこその言葉。

「イヤ、だからこそ自分でビックリしてるし、その存在が誰だ?って悩んでる」
悩むってわけじゃないけど、これは間違ってない。

「案外、すっげぇ近くにいるのかもな。まぁ、お前の理想は俺じゃないから俺じゃねぇけどな」
なんてあっさり言われた。

「理想じゃないからって矢岳が除外とは限らないんじゃないのか?」
俺はついムキになったわけじゃないけど、なんだか決めつけられた感がして言い返してしまった。

「さぁな、そればっかりは俺にもわからねぇよ。結局はお前ん中にしか答えはねぇからな」
何て言いながら突然、壁に押さえつけられ首筋にキスをされ

「なっ、ちょ、や、矢岳」
俺はどうしてこうなってんのかわかんなくて一人でテンパってたら
「しっ、黙って俺の背に腕回して服掴めや」
ボソボソと俺にしか聞こえないような小さな声で言われ俺はおとなしくそれにしたがった。

「っ、やっ、ん」
キスだけだと思ったら熱い舌で舐められて変な声が出た。ゾクゾクとする。気持ち悪いんじゃなくて、気持ちいいって感じた。


ホント、マジでヤバいってこんなの…。


「っ、や、たっ、やめっ、っ」
矢岳を引き剥がそうとギュッと手に力を入れた瞬間、バタバタと走り去っていく足音が聞こえた。
「ちったぁ、虫よけにはなるだろ」
なんて、何事もなかったように言う矢岳。

「ふざけんなよ、なんだよもぉ」
俺はズルズルと崩れ落ちキスされた首を押さえ蹲る。


まじで、勘弁してくれよ。ホント、どうしちゃんてんだよ俺。


「そんなところで蹲るな。襲われるぞお前」
なんて言いながら俺の腕を掴み無理やり立たせてくる。
「誰のせいだよ。ホント、なんでこんな…」
首を押さえたままで文句を言えば

「お前が狙われてるからだろうが。あいつらはお前を狙って襲っちまいたい奴らだ」
矢岳から出た言葉にショックだった。
「なんで…俺はただ普通に恋がしたかっただけだ…」
そう、本当にただ、少女漫画のような恋がしたかっただけだ。

「だから言っただろうが、お前は人気者だから狙われやすいんだよ」
少しだけ呆れながら言われる言葉。
「そんなの俺のせいじゃない」
俺は別に人気になるようなことは何もしてないんだ。ただ、生徒会長になっただけだ。

「お前はそう思うだろうな。だが、他のヤツはお前と恋人になりたいとか、襲っちまいたいとか、邪まなことを考えるってことだ」
俺の腕を掴んだまま歩き始める矢岳の顔は少し疲れていた。
「でも、一番俺に邪まなことしてるのは矢岳じゃないか…」
ついそんなことを言ってしまった。言ってからヤバイっと思ったが言ってしまったものはしょうがない。怒られる覚悟はしよう。

「お前がくだらねぇ夢見てるからな。現実を見ろ。お前は人気者で狙われてるってことにちゃんと気がつけ」
怒られると思ったけど意外に真面目な返事が返って来て驚いた。でもやっぱり少し疲れてる感じがする。
「…だったら…矢岳が守ってくれればいいじゃんか」
きっと断られるって思ったんだ。めんどくせぇとかなんとかいいってさ…。

「俺が傍にいたらお前の望む恋愛はできねぇぞ」
ってはっきりと言われた。だから俺は悩むことになった。


自分の夢のような恋愛を望むか、俺自身の身の安全を望むのか、を真剣に悩むことになったのだ。



「少し考える。時間をくれ…」
俺はそうとしか言えなかった。すぐに返事が出来なかったんだ。
「まぁ、しばらくは風紀で保護はしてやる。覚悟が決まったら教えろ」
矢岳は俺の返事を聞く前に、俺を生徒会室の中へ押し込んでいってしまった。


「ホント、どうすんだよぉ」
俺は閉められた扉に凭れズルズルとその場に崩れ落ち首筋を押さえ蹲った。


矢岳に色んなことされるけど、イヤじゃないんだよ…。


ドキドキして心臓が痛くなるけど…。


イヤじゃないんだよ…。


ホント、色々と考えなきゃいけなくなって頭が痛くなってきた…。


マジで勘弁してくれよ。


Fin

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