人はそれを愛と呼び、彼は迷惑だと叫ぶ。

槇瀬陽翔

文字の大きさ
170 / 184

気怠い身体

しおりを挟む
「んっ」
フワフワと闇の中に落ちていた意識が戻ってきた。ゴロリと寝返りを打てばコツリと何かにあたって重たい瞼を開ければ見慣れた傷跡が目に飛び込んできた。
「んっ、ゆぅ…」
名前を呼んでみたが思ってた以上に声が掠れ小さかった。だから届かないかもしれない。
「起きたか。まだ寝ててもいいぞ。今日も休みだからな」
そんな言葉と共にそっと頭を撫でられる。
「ゆぅじは?」
菊池はどうするのかって意味で聞けば
「今日も傍にいてやるから余計なことは気にせずに寝てろ。まだ熱が高いからな」
傍にいてくれるという言葉を聞き俺は素直に頷いた。


ただ、ただ、今は傍にいてほしかったんだ。


頷いてまた目を閉じれば俺の意識はまた闇の中へと飲まれていった。


どれだけ経ったのかふっと目が覚めて周りを見渡せば菊池の姿はなかった。あいつはあれでも風紀委員長だから本当は俺の看病してる時間なんてないはずなんだ。昨日のこともあるし…

「…っ…ダルっ…」
身体を起こそうとしてそれは失敗に終わった。熱を持った身体は思って以上に怠くて重くなっていた。
「起きてたのか。無理して起きるなよ。せっかく下がりだした熱がぶり返すぞ」
俺がベッドに倒れたのを見計らったように声がしてビックリしてみたら、丁度、菊池がなにかを持って戻ってきたところだった。
「怠い…」
ついそんなことを呟いたら
「熱が上がりすぎたからな。薬を飲まなきゃいけねぇから粥を少しでも食べろ」
そんなこと言いながら菊池は俺の身体を起こし、背中に何やら押し込み座らせて俺の脚の上に盆を落ちた。
「食欲ないのに…」
って文句が出たのは許せ。
「そんなことはわかってる。だけど熱を下げるためだ一口二口で構わねぇから食え」
俺の気持ちはわかるが食えと差し出される茶碗の中に入ってる粥は本当に少量で小さい子が食べるような量だった。俺は小さく息を吐きだされたかゆを食べ始めた。出された量が本当に少なくて、俺は全部食べることができた。
「よし、食べれたな。ほら薬。ちゃんと医者の薬だから効くはずだ」
脚に乗っていた盆を片付けるとクスリと水をくれた。
「ありがと…後…ごめん…」
俺が謝れば
「気にするな。お前を守るのは俺の役目だからな。こうやって看病するのも俺の仕事だ。だから、今は薬飲んでゆっくり休め。こんな時じゃなきゃゆっくり甘えれないだろお前」
クシャリと頭を撫でられた。この男が言ってることは正しい。普段、俺は甘えたくても甘えれないことが多い。菊池に依存はしてるけど、自分の中でストップをかけるときがある。


人に干渉されるのが嫌いだ。でも菊池には干渉されたい。でも自分の両親みたいな関係にはなりたくない。


そんな思いは自分の中にあるのが原因だ。それを菊池は知ってるし、気付いてた。だから菊池は必要以上に干渉はしないし、俺をかまわない。部屋にいるからベタベタするわけじゃない。俺の想いと気持ちを理解したうえで菊池は俺に適度な距離感を持って接してくれているんだっていうのを知った。菊池に聞いたわけでも、言われたわけでもなく、俺が自分で気がついて知った。菊池の想いと優しさを…。


「…侑司…傍にいてくれ…」
だから、今はお前の腕の中で眠らせてくれ。この気怠い身体をお前の温もりで包んでほしい。
「薬を飲んで少しだけ待ってろ。片付けてくるから」
俺の言葉に小さく笑いながら答えてくれるから俺は素直に頷いて出された薬を飲んだ。


「ほら、もう少しゆっくり寝ろ」
片づけを終えて戻ってきた菊池は俺の隣に横になりそっと抱き締めてくれた。
「ゆぅ、ありがと…」
俺は菊池の温もりに包まれて再び眠りの中に落ちていった。



Fin

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。 漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。 陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。 漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。 漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。 養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。 陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。 漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。 仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。 沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。 日本の漁師の多くがこの形態なのだ。 沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。 遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。 内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。 漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。 出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。 休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。 個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。 漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。 専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。 資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。 漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。 食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。 地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。 この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。 もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。 翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。 この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

男子寮のベットの軋む音

なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。 そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。 ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。 女子禁制の禁断の場所。

処理中です...