人はそれを愛と呼び、彼は迷惑だと叫ぶ。

槇瀬陽翔

文字の大きさ
174 / 185

腕の中の存在

しおりを挟む
ふと、夜中に目が覚めた。


腕の中で眠る存在は寝てる間にまた発熱したようだ。


腕の中の存在を起こさぬように動いて、ベッドの脇にあるテーブルに手を伸ばす。そこに置いてあるのは熱さまシート。起こさぬように気をつけながらシートを額に貼ってやる。


「んっ」
小さな声が上がり起こしたか?って心配になったが大丈夫だったようだ。

「ったく、余計なことをしてくれやがって…」
そうぼやくのも許してほしいもんだ。


腕の中で眠る存在の厄介な体質を知っているのはごくわずかだ。俺はずっと一緒にいたから知っているのは当たり前だが、ナベや二村は最近になって知った。風紀委員としてこの男を守ることで知ったんだ。


「んっ、ゆぅ、じぃ」
小さな呟きに気付き
「どうした?」
返事をしながらその顔を見れば熱で潤んだ瞳がジッと俺を見ていた。

「どうした?」
俺の問いに小さく首を振る。さっきの俺の言葉が聞こえていたのかもしれねぇな。なんて思った。
「ヒナ、どうした?」
だからもう一度、同じ言葉を口にした。

「ごめん…」
小さな呟き。
「ばーか。謝んな。別にお前には怒っちゃねぇよ」
頭を撫でて答えればソロッと手を伸ばす。でも、触れそうなところで怯えたように止まった。

「触れねぇの?」
だからそう聞いてみた。もう一度、手を伸ばし、触れそうで触れない位置で止まった。
「ヒナ」
だから俺はその手を掴んで、手のひらに唇を寄せる。

「ゆぅ、」
少しだけ驚いた声。手を引っ込めようとするから
「お前の特権だろ?」
掴んだ手をそのまま自分の頬に触れさせる。俺に触れてほぅと小さく息を吐いた。

「ヒナ、少し熱が上がったみてぇだ。だからもう一度寝ろ」
手を握ったままその肩を抱きしめてやれば
「ゆぅ、じぃ」
俺の名を呟く。何か言いたげで、それでも言葉にできぬ顔。

「ん?どうした?」
小さく首を振り俺の胸に顔を埋めてくる。
「陽葵。好きだ」
伝えたいことは色々とあるが、今はこの言葉だけで十分だ。

「んっ、ぉれも、すき、だ」
少し鼻声で返事が返ってきた。俺はなにも言わずに腕の中の存在を強く抱き締めた。


狂暴な面を持ってるくせに、変なところで弱くなる。


だが、それも全部、俺の前でだけ晒しだす。


それで十分だと俺は思う。


この男がそれを許してるのは俺自身なんだからな。


さて、本気であのクソどもを処分しねぇとなんねぇなぁ


じゃねぇと梅村が復活出来ねぇからな。


これ以上この男を干渉できねぇようにしてやらねぇとな。



俺は腕の中で再び眠りについた存在を起こさぬようにそっとキスを一つ贈った。



Fin



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

処理中です...