寄せ集めの短編集

槇瀬光琉

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傍にいて

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最近、お互いが忙しくてすれ違い。仕事が終わって家に帰っても疲れてまともに飯も食わずにシャワー浴びて速攻で寝てしまう。


そんな状態だからあいつとは音信不通状態。


連絡も出来ない状態だからそろそろ連絡しないとマズイとは思うんだが...


あいつがキレてるだろうなとか、愛想つかされそうとか、考えなくもないんだが行動に移せなくて我ながら情けない。


1ヶ月、2ヶ月と音信不通状態が続けば流石にヤバイとは思う。

このまま音信不通を続けていたら自然消滅しそうだなとか思い始めるんだが、色々とたて込んでてて連絡も出来ない。


フラれたらそれまでか...



なんて絶望的な考えが浮かぶ。それも仕方がないことなんだろう。



あいつとは高校の時からの付き合いで、お互い違う仕事へと進んだ。

高校の時の俺たちはお互いいがみ合っていた、ケンカだって何度もしてきた。
お互いが役職もちで対立してしまうのは仕方がないとは思っていた。
ただ、あいつは仕事は出来るしっかりしたヤツなのでそこはリスペクトしていた。


そんな関係だった俺たちが付き合うなんて思いもよらなかったがな。


きっかけは転校生か。なにかと問題を起こすヤツが転校してきてあいつが被害にあった。
一番弱ってるときに俺が手を貸して助けたのがきっかけで付き合い始めたんだっけ...。


物思いに耽りながらマンションの階段を上がって自分の部屋へと向かえば玄関の前で佇む姿が見えた。


誰だ?


なんて思いながら近づけばあいつだった。


「おかえり」
俺に気が付いたのか小さく笑い言ってくる。
「おう、ただいま。悪い待たせただろ?入れよ」
急いで鍵を開けて中に入るように促せば小さく頷いて中に入る。俺も入り扉を閉めて鍵を掛ければ、コツリと背中に何かがあった。

「会いたかった」
ポツリと呟かれた言葉が重くのし掛かった。
「悪い、全然連絡できなくて」
俺の言葉に首を振る。

「なぁ、ちょっと放せ」
俺が言えば素直に放すから俺は向きを変え抱き締めた。

ほぅと小さくは吐き出される吐息。
「会いたかった、こうやって抱き締めたかった」
抱き締めたその身体の肩に顔を埋め告げる。背中に回された手がぎゅっと服を掴む。

「今夜はずっと傍にいて欲しい」
こいつにしては珍しい言葉を口にする。


それは、こいつをそれだけ放置して寂しい思いをさせたと言うこと。

「泊まってけよ。今夜はずっと傍にいるから」
俺が言えばコクリと頷く。

俺は抱き締めてる身体を放し頬に手を添えそっとキスをした。


部屋の中に入り、俺はこいつが満足するまで、納得するまで抱き締めていた。


久しぶりに会ったあいつは少し痩せてたけどあの頃と変わらぬ笑みを浮かべていた。



Fin

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