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それは予感だった
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それはある種の予感だったのかもしれない。
こいつとは長い付き合いになるなと…
「だから、これは俺たちの仕事じゃねぇだろが」
ブツブツと文句を言ったところでどうにかできるんじゃない。
一般公開された文化祭会場。
この学園の文化祭は地域の住人にも人気で毎年、開催されるとかなりの人数の一般客が訪れる。今年は一般客の来場が例年よりも多くて予定外の反響だった。
そのためか、会場内での迷子が多く、会場の警備に当たっている風紀委員がそっちに駆り出されることとなった。
いや、ちゃんと迷子など対応する他の委員たちがいるのだが、迷子や落とし物などの対応がいつも以上に多すぎて手が回らなくなったと泣きの連絡が入ったのがつい30分ほど前。
そこから班の編成を再度することになり、現在に至ってるわけだが各々の休憩や教室ごとの役割もあるため、それににも参加できるようにと頭をフル回転させて指示をしつつ自分の仕事をこなしていくのもかなり疲れる。
「おら、やんのか」
「んだとぉ!」
そういいう時に限って余計な仕事を増やす奴らもいるわけで…。喧嘩を始めようとする生徒たちの周りをウロウロとする人物を見つけて盛大に溜め息をついた。
この学園の生徒会長である南田滉也だ。生徒会長としての責任は誰よりもあるが…。彼にはある欠点があった。
身長が低く、声も小さい、体力もないし、力も弱い。
そう、身長が低いため高身長の連中の中に紛れてしまうと埋もれてしまい姿が見えなくなってしまう。
そして本人は精一杯、大声を出しているのだが、怒鳴りあう連中の声にかき消され聞こえなくなってしまうのだ。
ウロウロしてる理由は南田なりに喧嘩を止めようとしてるのだが、喧嘩を始めようとしてる二人の眼中に入っていないし声すらも届いていない。
傍から見れば喧嘩に出くわしてオロオロしてる人物だが、これでも南田は彼なりに喧嘩を止めようとしている最中だった。
俺はもう一度盛大に溜め息をつき
「おい、お前らなにしてやがる」
喧嘩をおっぱじめようとしてる二人の肩を掴み強引に引きはがした。
「んだてめっ…あっ…」
「んだ…あっ…」
引きはがされてこっちを見た瞬間に相手が俺だと気が付いたのと、俺の腰に抱き着く格好で睨んでいる南田を見て二人が言葉を失う。
それもそのはずだ、南田の額にはきれいに2か所くっきりと青い痣ができていたのだから…。
「す…すみません。会長、大丈夫ですか?」
「ホント、すみません。委員長もすいません」
喧嘩をしていた二人は土下座をせん勢いで腰に抱き着く南田に頭を下げる。南田は言葉を発せずにただ二人を睨みつけるばかりだ。
「こいつのことはこっちで何とかするから、お前たちは行け。このクソ忙しいときに俺の仕事を増やすな。あー後、一般客には手ぇ出すなよ」
二人はまだ喧嘩を始めようとしてただけでしてたわけじゃないので注意だけで解放した。それよりも問題なのが腰に抱き着いてるやつだ。
言葉に出してはいないが、それなりに怒ってるのがわかる。俺はもう一度、溜め息をつきポッケトの中から携帯を取り出し副委員長である神西に
『会長を保健室に連れてく。フォローしてくる』
とだけメールを入れ、腰に抱き着いたままの南田を連れて保健室へと向かった。
「失礼します」
声をかけて保健室の中に入れば誰もいなかった。南田を適当に椅子に座らせて
「ちょっと触るぞ」
一言断ってから前髪を上げれば
「っ、っ、」
痣の部分に触れたのか地団太を踏みながらバシバシと叩かれた。
「あぁ、悪い。気を付けてたけど触っちまったんだな。少しの間こうやって前髪を上げててくれ」
南田自身に前髪を上げてるように告げれば口を尖らせた状態で前髪を上げて押さえる。
南田の額は痣ができてるだけで傷ができてるわけじゃなかった。棚の中を色々と漁れば冷えピタがあったのでそれを使って南田の額を冷やすことにした。
「痛むかもしれないけどちょっと我慢してくれよ」
返事を聞く前にさっさと冷えピタを額に貼ってしまう。触れた部分が痛かったのか涙目になって睨みつけてくるが、その顔は小動物並みで可愛い。内心深く溜息をつく。
本当に色々と毒されてるな俺も…。
男子ばっかりの学校にいればそっち系に走るやつも少なからずいるわけで、付き合ってるやつらも何人かは見てきた。別にそれを軽蔑するとかそんなつもりはない。
現に俺はつい先日、目の前の男に告白をされたばかりだからだ。
答えは保留にしてはもらってあるが…。自分の気持ちがはっきりしない以上、断るのも違う気がするし、ズルズル付き合うのも違う気がしたからだ。
だから考える時間が欲しいと伝えたのだ。真剣に南田の気持ちと向き合うために。
冷えピタをつけたせいで前髪がおかしくなった南田を見て笑みが零れた。
「むー、なんだよ」
それが気に入らなかったのかますます拗ねた顔になる。
「前髪がおかしくなってる」
そういいながら、痣に触れないように気を付けながら前髪をきれいに直してやる。
「おし、キレイになった。南田は片方だけ前髪あげてる方が可愛くて似合うな」
そんなことを言いながら片方だけ前髪を上げて少し俯いてるその顔が可愛いと思ったのを口にすればポカポカと殴られた。
ヤバぁ、これは宥めるのが大変だ…
俺は自分で口にした言葉に後悔をするのだった。
本当に可愛かったんだけどなぁ…。
こいつとは長い付き合いになるなと…
「だから、これは俺たちの仕事じゃねぇだろが」
ブツブツと文句を言ったところでどうにかできるんじゃない。
一般公開された文化祭会場。
この学園の文化祭は地域の住人にも人気で毎年、開催されるとかなりの人数の一般客が訪れる。今年は一般客の来場が例年よりも多くて予定外の反響だった。
そのためか、会場内での迷子が多く、会場の警備に当たっている風紀委員がそっちに駆り出されることとなった。
いや、ちゃんと迷子など対応する他の委員たちがいるのだが、迷子や落とし物などの対応がいつも以上に多すぎて手が回らなくなったと泣きの連絡が入ったのがつい30分ほど前。
そこから班の編成を再度することになり、現在に至ってるわけだが各々の休憩や教室ごとの役割もあるため、それににも参加できるようにと頭をフル回転させて指示をしつつ自分の仕事をこなしていくのもかなり疲れる。
「おら、やんのか」
「んだとぉ!」
そういいう時に限って余計な仕事を増やす奴らもいるわけで…。喧嘩を始めようとする生徒たちの周りをウロウロとする人物を見つけて盛大に溜め息をついた。
この学園の生徒会長である南田滉也だ。生徒会長としての責任は誰よりもあるが…。彼にはある欠点があった。
身長が低く、声も小さい、体力もないし、力も弱い。
そう、身長が低いため高身長の連中の中に紛れてしまうと埋もれてしまい姿が見えなくなってしまう。
そして本人は精一杯、大声を出しているのだが、怒鳴りあう連中の声にかき消され聞こえなくなってしまうのだ。
ウロウロしてる理由は南田なりに喧嘩を止めようとしてるのだが、喧嘩を始めようとしてる二人の眼中に入っていないし声すらも届いていない。
傍から見れば喧嘩に出くわしてオロオロしてる人物だが、これでも南田は彼なりに喧嘩を止めようとしている最中だった。
俺はもう一度盛大に溜め息をつき
「おい、お前らなにしてやがる」
喧嘩をおっぱじめようとしてる二人の肩を掴み強引に引きはがした。
「んだてめっ…あっ…」
「んだ…あっ…」
引きはがされてこっちを見た瞬間に相手が俺だと気が付いたのと、俺の腰に抱き着く格好で睨んでいる南田を見て二人が言葉を失う。
それもそのはずだ、南田の額にはきれいに2か所くっきりと青い痣ができていたのだから…。
「す…すみません。会長、大丈夫ですか?」
「ホント、すみません。委員長もすいません」
喧嘩をしていた二人は土下座をせん勢いで腰に抱き着く南田に頭を下げる。南田は言葉を発せずにただ二人を睨みつけるばかりだ。
「こいつのことはこっちで何とかするから、お前たちは行け。このクソ忙しいときに俺の仕事を増やすな。あー後、一般客には手ぇ出すなよ」
二人はまだ喧嘩を始めようとしてただけでしてたわけじゃないので注意だけで解放した。それよりも問題なのが腰に抱き着いてるやつだ。
言葉に出してはいないが、それなりに怒ってるのがわかる。俺はもう一度、溜め息をつきポッケトの中から携帯を取り出し副委員長である神西に
『会長を保健室に連れてく。フォローしてくる』
とだけメールを入れ、腰に抱き着いたままの南田を連れて保健室へと向かった。
「失礼します」
声をかけて保健室の中に入れば誰もいなかった。南田を適当に椅子に座らせて
「ちょっと触るぞ」
一言断ってから前髪を上げれば
「っ、っ、」
痣の部分に触れたのか地団太を踏みながらバシバシと叩かれた。
「あぁ、悪い。気を付けてたけど触っちまったんだな。少しの間こうやって前髪を上げててくれ」
南田自身に前髪を上げてるように告げれば口を尖らせた状態で前髪を上げて押さえる。
南田の額は痣ができてるだけで傷ができてるわけじゃなかった。棚の中を色々と漁れば冷えピタがあったのでそれを使って南田の額を冷やすことにした。
「痛むかもしれないけどちょっと我慢してくれよ」
返事を聞く前にさっさと冷えピタを額に貼ってしまう。触れた部分が痛かったのか涙目になって睨みつけてくるが、その顔は小動物並みで可愛い。内心深く溜息をつく。
本当に色々と毒されてるな俺も…。
男子ばっかりの学校にいればそっち系に走るやつも少なからずいるわけで、付き合ってるやつらも何人かは見てきた。別にそれを軽蔑するとかそんなつもりはない。
現に俺はつい先日、目の前の男に告白をされたばかりだからだ。
答えは保留にしてはもらってあるが…。自分の気持ちがはっきりしない以上、断るのも違う気がするし、ズルズル付き合うのも違う気がしたからだ。
だから考える時間が欲しいと伝えたのだ。真剣に南田の気持ちと向き合うために。
冷えピタをつけたせいで前髪がおかしくなった南田を見て笑みが零れた。
「むー、なんだよ」
それが気に入らなかったのかますます拗ねた顔になる。
「前髪がおかしくなってる」
そういいながら、痣に触れないように気を付けながら前髪をきれいに直してやる。
「おし、キレイになった。南田は片方だけ前髪あげてる方が可愛くて似合うな」
そんなことを言いながら片方だけ前髪を上げて少し俯いてるその顔が可愛いと思ったのを口にすればポカポカと殴られた。
ヤバぁ、これは宥めるのが大変だ…
俺は自分で口にした言葉に後悔をするのだった。
本当に可愛かったんだけどなぁ…。
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