夜空に浮かぶあの月のように…

槇瀬陽翔

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お祭りの後は…

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「南田そろそろ会場に戻らないと他の役員たちが心配する」
保健室で痣の手当てをして、何とか南田の気持ちを落ち着かせてから声をかければ
「わかってる…」
少し嗄れた声で拗ねた返事が返ってきた。さっきのことで色々とまだ納得できない部分がるんだろうが、今回の文化祭が終わる時間まで後1時間ぐらいある。
文化祭が終わってからも片付けなど色々とあるので、南田自身もここにいる場合じゃないのはわかってるのだが気持ちが整理できてないんだろう。
「文化祭の片づけとかが終わったらちゃんと話は聞くから、今は会場に戻るぞ」
文化祭後に話を聞くという約束をし、無理やり南田に納得させて俺は保健室を出て会場へと向かった。


南田を副会長たちの場所に送り届けてから俺も自分の持ち場へと戻った。


自分の持ち場に戻ってから神西に聞いた話だが、南田は休憩中で俺を探してる最中だったらしい。

だからか、いつにもまして納得いってなかったのは…。

「後でちゃんとあいつには謝っとくし、話は聞いておく」
「何か言いたかったことがあるみたいだからな。ちゃんと聞いてやってくれ」
神西にちゃんと話すと告げれば南田には話したいことがあったらしいと教えてくれた。

これはちゃんと話を聞かないとますます拗ねそうだな…。

南田の話はここで終え会場の警備や一般客の方の対応へ集中することにした。

文化祭の時間が終わりを告げようとしても一般客は中々帰ろうとはせず、誘導をするのが少々困難だった。
『本日のご来場ありがとうございます。ただいまの時間を持ちまして一般公開の時間を終了さえていただきます』
文化祭実行委員会からの放送が入りやっと一般客が帰宅し始める。


「校内を見回りして一般客が残ってないか確認しに行くぞ」
本部に集合した風紀委員たちに見回り場所を振り分け万が一にも一般客が校内に取り残されていないかを確認するために最終の確認を指示して風紀委員全員でそれぞれの場所に移動した。
勿論、委員長である俺自身も校内の見回りへと参加した。

見回りを終えた仲間からの連絡を受けて正門を管理してる実行委員に門を閉めても大丈夫だと連絡をした。

さて、ここからが大変なのだ。

文化祭は例年以上に反響を受け大成功だったと言えるが、片付けが地獄なのだ。

実行委員などに配役されている生徒以外はそれぞれ自分たちの教室を片付けていけばいいのだが、我々委員は校庭などの片付けをすることになる。それが意外に大変なのだ。

祭り騒ぎの後は見事なまでに大惨事だ。飲食のゴミなどが多く落ちているので、それを拾うのも一苦労だ。勿論、他にも文化祭の片付けは残っているので全部のゴミは片づけれないが、ある程度のゴミを片付け終えると本部の解体や片づけをする。
ある程度、片付け終えるとそれぞれの委員の部屋へと別れた。


「今日は急な班編成などあったが、みんな迅速に対応してくれて助かった。ありがとうな」
風紀委員室に戻り風紀委員全員が集まったのを確認してから労いを込めてお礼を口にする。色々と大変だったのはわかっているからな。
「急な変更でもこっちが戸惑わないように対応してくれてるのは委員長であるお前のおかげだからな。こっちこそありがとう」
神西の言葉にうんうんと他のヤツらが何度も頷く。
「上に立つ以上、下のやつらが働きやすくるもんだろ。各自、報告書に必要事項記入したら帰る準備して帰ってくれ」
事前に作成しておいた文化祭用の報告書。文化祭に関しての反省点や、些細な事件などを書くためのもの。決して難しいものではなく、感想文程度の簡単なものだからそこまで時間はかからないだろう。それに班同士で書けるようにしてある分簡単なはずだ。

30分もしないうちに報告書を書き終え、俺を残す全員が返っていった。

「これをまとめるのは明日でも大丈夫なんだが…」
みんなが書き上げた報告書を前にして溜め息をつく。簡単なものとはいえ、ざっと目を通すとみんな意外にまじめに書いてあり内容が濃かった。
「それだけ今回は忙しかったわけだ」
机の上に書類を置き深々と椅子に凭れた。

ふと窓の外に視線を移せばすっかり暗くなり満月が顔を覗かせていた。


その月を見ながら思い出すのは南田の笑顔。

みんなの前で笑っているときの顔は太陽のように輝いていて、俺といるときの笑顔は月のように少し儚い。

その答えが俺への告白だと知ったのはつい先日。

だが俺は太陽のような笑顔も、月のような笑顔も南田には似合ってると思う。


「こう考えてるってことは嫌いじゃないのは確かなんだよ」
南田が嫌いかと問われれば違う。好きかと問われればわからない。そんな宙ぶらりんな状態だ。
「早く答えを出してやりたいんだけどな…」
考えれば考えるほどわからなくなるのだ。


ホント…優柔不断だな俺は…


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