2 / 4
2
しおりを挟む
シルヴァ・サリオンの日記は、一ページ目から陰々滅々としていた。
『もしこんな価値のない俺でも役に立てるなら、もちろん、婚姻くらいなんてことはない。今すぐに嫁いだっていい。だが、相手があのユエ・オーレルだと思うと、どうしても身がすくむ。この国の大英雄と俺がつりあうわけはない。彼はどうして俺のような人間を迎え入れようとしているんだろうか?』
『兄上が追い出し会だといってパーティーを開いてくれたが、途中で抜けてきてしまった。兄上の婚約者を見ていると、どうしても自分との違いが気になってしまう。双子だというのに、どうしてこんなにも差があるんだろう。兄上は父や母に愛され、そのうえ婚約者はあの美しいリズリエール! 俺は? 俺にはなにもない。愛されたこともなく、家を追い出され、どういうわけか知らないが、会ったこともない男と結婚しようとしている』
こんなのはまだかわいい方で、おそらく彼が階段で身を投げる直前の日記なんて読んでいるこっちの気が参りそうだ。俺はシルヴァの日記を閉じ、机の引き出しにしまって、厳重に鍵をかけた。これは俺の日記じゃないが、シルヴァの体を借りている以上、なにが弱みになるかわからないからな。
恐ろしいことに、夫であるユエ・オーレルは俺が目覚めてから三日の間、一度も顔を見せに来なかった。
あのふてぶてしい、冷たく、整ってはいるが無表情な顔が思い起こされる。自分で迎え入れた配偶者にすらこの仕打ちとは。普通、伴侶が階段から落ちて寝込んでいたら見舞いくらいするだろう。思わずシルヴァに同情した。俺がユエを殺しておかなかったばかりにみじめな思いをして死を選ぶとは。
霧吹きでしゅっと部屋に飾った木の葉を濡らす。シルヴァの部屋には植物が多く飾られ、どれもよく手入れされていた。自分で死を選ぶような愚か者だが、ユエよりは良い人間らしい。あの男は新芽を踏み潰すことに気づきもしないからな。
「フォランさま、おはようございます。お加減はいかがですか?」
茶の乗ったカートを押しながら部屋に入ってきたのは、例の老婆である。彼女は他の人間からモルガナ夫人と呼ばれていた。敬われているようだったので、屋敷では高い位置にいるのだろう。
「悪い。最悪だ。話したくないし茶もいらないからさっさと出ていけ」
「まあ、いけませんわ、せめてお茶は召し上がっていただかなくては! フォランさま、もう二日もお食事をとっていらっしゃいませんのよ」
そうだったか? 言われてみれば、人間は食べないと死ぬから、具合が悪いのはそのせいかもしれない。俺は渋々ため息をついてから、仕方なく椅子に座った。
一人用の円卓にモルガナ夫人が手早く食事の準備を整えていく。茶のほかにも、湯気の立つパン粥が用意されていた。木の匙をもって口に運ぶと、山羊の乳の匂いがする。黙々と口を動かして咀嚼した。食事、まったく楽しさがわからんな。
目覚めた最初の日に全く同じパン粥を提供されたとき、一口食べてあまりのまずさに衝撃を受けた俺は、以来あらゆる食事を拒否してきたのだった。
しかし、食べないと死ぬとは不便すぎる。しかも、こんなに不味いものを日に三回も……。
モルガナ夫人は嫌がりながら匙を動かす俺を感涙しながら見ている。年のせいで涙もろいのだろうか? 見られながらだと食べにくい。
食べ終わった食器をモルガナ夫人に渡しながら、俺は次の食事はまた二日後にする、と言った。
夫人は目を大きく見開いて「毎日きちんとお食べにならなくては」と小言をいったが、実際二日食べなくても多少気分が悪くなる程度で平気だったんだから絶対に食べない。手のひらを下にして払うように動かすと、彼女はため息をつきながらカートを押して部屋を出て行った。
三日間、時間を無駄にしていたわけではない。
とにかく体を取り戻さねば話が始まらないと、隠した場所へ行こうとしたのだが部屋を出る前に使用人どもがわらわらと集まってきて止められてしまった。
俺本来の体であれば意にも介さなかっただろうが、シルヴァの体は脆弱で、男数人がかりで止められるとさしもの俺でも精神力だけでは跳ねのけられなかった。
モルガナ夫人が言うには、体がすっかり治れば外に出てもいいらしいが、外に出るか出ないかを決めるのは俺だ。
とにかく、妨害をかいくぐって外に出る力を得る必要がある。俺は座禅を組み、精神を集中させてなにか少しでもいいから権能が残っていないかを探った。
シルヴァの体は、才能不足ではあるが、まるきり枯渇しているというわけでもなく、多少であれば法術の類も使えそうだ。それがわかると、今度はこの少ない才能をどうやりくりするべきかを考えた。
ためしに風を起こして物を倒そうとしてみたが、そよ風しか起こらず、部屋にあるすべての物が微動だにしなかった。苛立たしさで発狂しそうになったが、なんとか耐えた。
力ではどうにもならなさそうな以上、頭を使うしかない。
俺は使用人たちを観察することにした。隙をついて抜け出すためだ。二日の観察の結果、いくつかのことがわかった。
まず、屋敷の人間には三種類いる。
ひとつはモルガナ夫人のように、昔からこの屋敷に仕えている者。次に、最近新しく雇われた者。三つ目が、屋敷で雇われているわけではなく、ユエ・オーレルの仕事関係の者。
最初と最後は役に立たないとして、狙うべきなのは最近雇われた人間だった。彼らは忠誠心が薄く、仕事にも不慣れで、手際も悪ければ屋敷の地理にも疎い。
俺は下働きの子どもに目をつけ、こいつを出し抜いて屋敷を出ようと考えた。ずいぶん大人たちに可愛がられているから、食器を割って手でも切れば騒ぎになるに違いない。その混乱に乗じて外に出る。なに、子どもは体も小さい。後ろから蹴飛ばしてやればすむ。
子どもはトアという名で、年の頃は十ほどだった。体は小柄で、黒い髪を後ろで雑に束ねている。丸みの残る頬には薄くそばかすがあった。
この子どもは小さい体ですばしこく動くのだが、速度のわりに要領が悪く、俺が手を出さずともヘマばかりする。あまりに出来が悪いので、俺は苛立たしさで死ぬかと思った。
仕事だけではない。トアは仕事の合間、休憩時間にどうやら法術を練習しているようだったが、これも下手くそだった。まず、気の練り方がなっていない。姿勢も悪く、呼吸もめちゃくちゃだった。俺は法術に関しては超一流の自覚があるので、下手くそを見ると腹が立つ。
数時間ほど見ていたがとうとう我慢できず、裏庭でうずくまって修練するトアの前に立ちはだかった。
おもむろに陰った視界に、子どもが素早く顔を上げる。俺はその小さい頭をぎろりとにらみつけた。
「し、シルヴァさま?」
「フォランと呼べ。おい、お前、誰に術を習ったんだ? 言っておくが、お前の師匠は最悪だ。そのやり方を続けてるんじゃ、お前は千年経ったって下手くそのままだろうよ」
トアは突然乱暴な言葉をぶつけられ、かっと顔を赤くして言い返そうとしたようだったが、にわかにうつむき、肩を落とした。胸の前で短い指を組み合わせ、消え入りそうな声で言う。
「習ってない、誰にも……。兄ちゃんのを見ただけだから……」
なるほどな。道理でめちゃくちゃなわけだ。
腕組みをしたまま周囲を見回すと、花壇に立てかけられた箒を見つけた。俺はそれを手に取ると、柄でうずくまるトアの尻を叩き、彼を立たせた。飛び上がった小さな背中をまた柄で打ち、「わあっ」と悲鳴が上がるのにも構わず膝、肩、と叩く。
やっと納得のいく姿勢になったトアを見て、今度は腹に柄を当てて押し込むように力を込めた。
「下手くそがいきなり気を練ろうとするな。まずは呼吸の仕方を学べ。いいか? ゆっくり、鼻で吸って口で吐くんだ」
言いながら、こんなことも教わらないと出来ない人間へ憐憫の情が沸いた。妖精であれば生まれた瞬間おのずとわかるものだ。
トアは箒で叩かれたせいで涙目になっていたものの、俺の顔をちらっと見て、素直に言うことを聞いた。唇がつんと尖り、ゆっくりと息を吐く。
しばらく見守ってやると、徐々に上達してきた。今度は座禅の組み方を教えてやりながら、俺は記憶の奥底から、かなり古い思い出が浮かんでくるのを感じた。そういえば、以前にもこんな風にしてやったことがあるような……。
「あの、フォランさま、次はどうすればいいんですか?」
トアがおずおずと聞いてきて、俺はハッと彼の顔を見つめた。
見ると、ちょっと前とは見違えるほどきれいに座っている。俺は満足して、今日はもう終わりだ、と言った。いつまでもこんなガキに構っていられない。よくよく考えたら、ガキを蹴飛ばして外に出る作戦も無理があるしな。箒を地面に捨てる。
トアはしばらく追い縋ってうるさかったが無視して部屋に戻った。シルヴァの体は虚弱なので、たったこれだけ歩いただけでもう疲れた。
翌日、モルガナ夫人の「朝食を食え」という要求をはねのけて部屋に籠城していると、不意に庭へ繋がる窓がコツコツと鳴った。見ると、ガラスの向こうにトアが立っている。俺は眉を顰めた。手で払うしぐさをするが、トアは首を振っていつまでも立っていた。
目障りなのに耐え兼ね、乱暴に窓を開ける。トアはすぐに地面に膝をつき、俺に向かって頭を下げた。
「フォランさま、俺に稽古をつけてください! 強くなりたいんです!」
「絶対に嫌だ。さっさと仕事に戻れ。モルガナに言いつけるぞ」
「昨日教えてもらった通りに修練していたら、ちょっとだけど風が起こせたんです、どうかもっと教えてください!」
風を? 俺はガラスを動かす手を止め、トアを見た。あれっぽっち教えてやっただけで風を起こせるとは、少なくともシルヴァよりは才能が有るらしい。
俺が手を止めたのを見て、トアは両手を顔の前で組んでこちらを見上げた。
「お願いします、師匠……」
まあ、こいつを手なずければ、体を探すために外に出る助けにはなるかもしれないな。
俺は子どもを部屋に入れてやり、ためしに風を起こしてみるように言った。
子どもは昨日教えたとおりの姿勢で立ち、腹に力を込めて呼吸した。すると、彼の足音から立ち上るようにつむじ風が立ち、ふわっとトアの前髪を舞い上がらせた。子どもが期待に目を輝かせて俺を見る。
たしかに、かなり上達している。
少し考えてから、簡単な術を教えてやろう、と思いついた。トアの後ろに立ち、身をかがめて顔を彼の頭の横に並べる。見ていろ、と言ってから、ふっと短く息を吐く。すると、かろうじてシルヴァの魔力が練り上げられ、吐き出された息がきらきらと雪の結晶のように宙を舞った。
「わあっ!」
「やってみろ。すぐにできるから」
トアが勢いよくうなずき、唇を尖らせたとき、窓のちょうど反対側にあるドアが叩かれた。仕事を放りだしてきていたらしいトアが慌てた様子でドアを見る。俺がとっさに彼を背中の後ろに隠すのと、ドアの向こうから声がかかるのが同時だった。
「フォランさま、モルガナでございます。入ってもよろしいでしょうか?」
老いてはいるが艶のある、女にしては低い声が聞こえた。俺は「待て」と言ってからトアを窓から外に出してやった。向き直って入室の許可を与えると、モルガナ夫人が部屋に入ってきた。
「ずっとお部屋にいても退屈でしょうから、街へ出てみませんか? 旦那様に観劇に行く許可を頂いて参りました」
頼みもしないのに余計なことを。観劇など、なんの興味もない。
断ろうと思ったが、ずっと部屋にいるよりは街の様子を見た方が後々役に立つかもしれない、と思い改めた。
夫人を部屋から追い出し、身だしなみを整える。
あまりにシルヴァと服の趣味が合わないので、ユエの金で死ぬほど新しい服を買った。使用人たちが「階段から落ちたばかりに、シルヴァさまがご乱心だ」と嘆くほど金を使ったが、ユエから特にたしなめられはしなかった。
一番気に入っている濃い紫色の服を取り出して身に着け、鏡の前で髪をまとめる。金色の髪紐で結うと、本来の俺ほど美しくはないが、まあ見れないほどでもない格好になった。
観劇小屋は街の中央公園に開かれており、深紅の大きな垂れ幕の中に客席と舞台が設けられていた。
モルガナ夫人に手を引かれて中に入ると、薄暗い空間の中で、中央の舞台だけが煌々と輝いている。案内されるまま高い場所にある席に座った。良い席なのか、舞台が真正面から見える。
演目は『大長老と王妃』で、どうやら悲劇らしい。道ならぬ恋に落ちた若い男の話だった。あまりにもくだらないので途中で寝そうだったが、どうやら主役の男の『ユイ・オーレン』があのユエ・オーレルをもじっているらしいと気付くと、愉快でたまらなくなった。
ユエは劇の中で、王妃であるルナに恋をして身を滅ぼす男として描かれていた。彼は激しくルナに懸想するが、妖艶で美しいルナはユエの思いには応えず、結局彼の恋は実らないのだった。
大筋で言えば、これはまだ俺が大妖精だった時代にあった愚王レオニスと毒婦ルナの焼き直しと言えるだろう。主役がレオニスからユエに代わっているだけだ。そもそも、あれだって別にルナが毒婦と呼ばれるほど悪いことをしたわけではなく、ただレオニスが馬鹿だっただけだ。
劇が終わり、モルガナ夫人と一緒に外へ出ると数時間ぶりにあたる日差しが目に染みた。
「あんな劇を作られるなんて、ユエはよほど民衆に嫌われているんだな」
俺が感心を込めて呟くと、モルガナ夫人は「まあ!」と言って眉をひそめた。
「違いますわ、フォランさま。むしろ、ユエさまはとても人気がありますのよ。人気者だからこそ、みんなユエさまの恋に興味があるのです」
「そうか? 俺だったら好きなやつの無様な姿を劇にしようとは思わんが」
言いながら歩いていると、舞台小屋の近くに露店があることに気づいた。どうやら、劇にまつわる小物や絵を売っているらしい。
歩いていると、通行人たちの会話が不意に耳に飛び込んできた。彼らがクレアの名前を出したからだった。
「クレアさまもひどいよな。いくら言い寄られて迷惑だからって、陛下に頼んでユエ様を結婚させるなんて。好きでもない、それも適当な男と結婚させられるなんて気の毒だ」
「いくらお子が出来て国の火種になったら困るからって、ひどい仕打ちだ」
まさか、その『好きでもない適当な男』がここにいるとは思いもしないのだろう、彼らは最終的に自分だったら死ぬより嫌だと言って笑い声をあげていた。くだらない人間どもめ。
だが、クレアとユエの結婚に、一体何の関係があるっていうんだ? 捕まえて聞いてみようと振り返るが、有象無象の人間どもはすぐにどれが誰だか分からなくなってしまう。
仕方なく露店に視線を戻した。記念になにか一つ買おうと店に近寄ると、ちょうど入り口に小さな陶器の馬があるのを見つけた。
「プペ」
白い体に金色のたてがみ、切れ長の目をした、手のひらほどの置物を手に取る。
俺のプペにそっくりだ。なんて可愛いんだ。絶対に買って帰る。金を払おうと店内を見回すと、すぐそばの壁に掛けられた、ひときわ大きい絵が目についた。思わず声を失い、モルガナ夫人の肩を叩きながら絵を指さす。
「おい、これ、この絵は……」
「ああ、これはルナ=クレアさまの絵ですわ」
ルナ=クレア⁉ どう見ても俺の妹だが⁉
自分の妹が人間どもの手で描かれていることも、毒婦ルナ呼ばわりされていることにもまったく理解が追い付かない。額縁を両手で持ってぶるぶる震えている俺に、露天商が気さくに声をかけてきた。
「おっ、旦那、お目が高いですね。これはうちで扱っているルナ=クレアさまの絵の中でも、一番上等な絵ですよ」
返事をする気にもならない。俺はすっかり疲れてしまって、モルガナ夫人に言ってすぐに屋敷へ帰った。
聞けば、俺のクレアはどういうわけか今は国王アレインの妻となり、この国の諮問機関『枢月院』に所属する長老の一人なのだという。
枢月院の大長老ユエ・オーレルが彼女に懸想していること、それを知りながらクレアがユエの思いに応えず、どころかユエのことをひどく嫌っているということは全国民が知っているほど有名な話なのだとか。
千年の間に一体何があったんだ。
俺は頭を抱えた。
『もしこんな価値のない俺でも役に立てるなら、もちろん、婚姻くらいなんてことはない。今すぐに嫁いだっていい。だが、相手があのユエ・オーレルだと思うと、どうしても身がすくむ。この国の大英雄と俺がつりあうわけはない。彼はどうして俺のような人間を迎え入れようとしているんだろうか?』
『兄上が追い出し会だといってパーティーを開いてくれたが、途中で抜けてきてしまった。兄上の婚約者を見ていると、どうしても自分との違いが気になってしまう。双子だというのに、どうしてこんなにも差があるんだろう。兄上は父や母に愛され、そのうえ婚約者はあの美しいリズリエール! 俺は? 俺にはなにもない。愛されたこともなく、家を追い出され、どういうわけか知らないが、会ったこともない男と結婚しようとしている』
こんなのはまだかわいい方で、おそらく彼が階段で身を投げる直前の日記なんて読んでいるこっちの気が参りそうだ。俺はシルヴァの日記を閉じ、机の引き出しにしまって、厳重に鍵をかけた。これは俺の日記じゃないが、シルヴァの体を借りている以上、なにが弱みになるかわからないからな。
恐ろしいことに、夫であるユエ・オーレルは俺が目覚めてから三日の間、一度も顔を見せに来なかった。
あのふてぶてしい、冷たく、整ってはいるが無表情な顔が思い起こされる。自分で迎え入れた配偶者にすらこの仕打ちとは。普通、伴侶が階段から落ちて寝込んでいたら見舞いくらいするだろう。思わずシルヴァに同情した。俺がユエを殺しておかなかったばかりにみじめな思いをして死を選ぶとは。
霧吹きでしゅっと部屋に飾った木の葉を濡らす。シルヴァの部屋には植物が多く飾られ、どれもよく手入れされていた。自分で死を選ぶような愚か者だが、ユエよりは良い人間らしい。あの男は新芽を踏み潰すことに気づきもしないからな。
「フォランさま、おはようございます。お加減はいかがですか?」
茶の乗ったカートを押しながら部屋に入ってきたのは、例の老婆である。彼女は他の人間からモルガナ夫人と呼ばれていた。敬われているようだったので、屋敷では高い位置にいるのだろう。
「悪い。最悪だ。話したくないし茶もいらないからさっさと出ていけ」
「まあ、いけませんわ、せめてお茶は召し上がっていただかなくては! フォランさま、もう二日もお食事をとっていらっしゃいませんのよ」
そうだったか? 言われてみれば、人間は食べないと死ぬから、具合が悪いのはそのせいかもしれない。俺は渋々ため息をついてから、仕方なく椅子に座った。
一人用の円卓にモルガナ夫人が手早く食事の準備を整えていく。茶のほかにも、湯気の立つパン粥が用意されていた。木の匙をもって口に運ぶと、山羊の乳の匂いがする。黙々と口を動かして咀嚼した。食事、まったく楽しさがわからんな。
目覚めた最初の日に全く同じパン粥を提供されたとき、一口食べてあまりのまずさに衝撃を受けた俺は、以来あらゆる食事を拒否してきたのだった。
しかし、食べないと死ぬとは不便すぎる。しかも、こんなに不味いものを日に三回も……。
モルガナ夫人は嫌がりながら匙を動かす俺を感涙しながら見ている。年のせいで涙もろいのだろうか? 見られながらだと食べにくい。
食べ終わった食器をモルガナ夫人に渡しながら、俺は次の食事はまた二日後にする、と言った。
夫人は目を大きく見開いて「毎日きちんとお食べにならなくては」と小言をいったが、実際二日食べなくても多少気分が悪くなる程度で平気だったんだから絶対に食べない。手のひらを下にして払うように動かすと、彼女はため息をつきながらカートを押して部屋を出て行った。
三日間、時間を無駄にしていたわけではない。
とにかく体を取り戻さねば話が始まらないと、隠した場所へ行こうとしたのだが部屋を出る前に使用人どもがわらわらと集まってきて止められてしまった。
俺本来の体であれば意にも介さなかっただろうが、シルヴァの体は脆弱で、男数人がかりで止められるとさしもの俺でも精神力だけでは跳ねのけられなかった。
モルガナ夫人が言うには、体がすっかり治れば外に出てもいいらしいが、外に出るか出ないかを決めるのは俺だ。
とにかく、妨害をかいくぐって外に出る力を得る必要がある。俺は座禅を組み、精神を集中させてなにか少しでもいいから権能が残っていないかを探った。
シルヴァの体は、才能不足ではあるが、まるきり枯渇しているというわけでもなく、多少であれば法術の類も使えそうだ。それがわかると、今度はこの少ない才能をどうやりくりするべきかを考えた。
ためしに風を起こして物を倒そうとしてみたが、そよ風しか起こらず、部屋にあるすべての物が微動だにしなかった。苛立たしさで発狂しそうになったが、なんとか耐えた。
力ではどうにもならなさそうな以上、頭を使うしかない。
俺は使用人たちを観察することにした。隙をついて抜け出すためだ。二日の観察の結果、いくつかのことがわかった。
まず、屋敷の人間には三種類いる。
ひとつはモルガナ夫人のように、昔からこの屋敷に仕えている者。次に、最近新しく雇われた者。三つ目が、屋敷で雇われているわけではなく、ユエ・オーレルの仕事関係の者。
最初と最後は役に立たないとして、狙うべきなのは最近雇われた人間だった。彼らは忠誠心が薄く、仕事にも不慣れで、手際も悪ければ屋敷の地理にも疎い。
俺は下働きの子どもに目をつけ、こいつを出し抜いて屋敷を出ようと考えた。ずいぶん大人たちに可愛がられているから、食器を割って手でも切れば騒ぎになるに違いない。その混乱に乗じて外に出る。なに、子どもは体も小さい。後ろから蹴飛ばしてやればすむ。
子どもはトアという名で、年の頃は十ほどだった。体は小柄で、黒い髪を後ろで雑に束ねている。丸みの残る頬には薄くそばかすがあった。
この子どもは小さい体ですばしこく動くのだが、速度のわりに要領が悪く、俺が手を出さずともヘマばかりする。あまりに出来が悪いので、俺は苛立たしさで死ぬかと思った。
仕事だけではない。トアは仕事の合間、休憩時間にどうやら法術を練習しているようだったが、これも下手くそだった。まず、気の練り方がなっていない。姿勢も悪く、呼吸もめちゃくちゃだった。俺は法術に関しては超一流の自覚があるので、下手くそを見ると腹が立つ。
数時間ほど見ていたがとうとう我慢できず、裏庭でうずくまって修練するトアの前に立ちはだかった。
おもむろに陰った視界に、子どもが素早く顔を上げる。俺はその小さい頭をぎろりとにらみつけた。
「し、シルヴァさま?」
「フォランと呼べ。おい、お前、誰に術を習ったんだ? 言っておくが、お前の師匠は最悪だ。そのやり方を続けてるんじゃ、お前は千年経ったって下手くそのままだろうよ」
トアは突然乱暴な言葉をぶつけられ、かっと顔を赤くして言い返そうとしたようだったが、にわかにうつむき、肩を落とした。胸の前で短い指を組み合わせ、消え入りそうな声で言う。
「習ってない、誰にも……。兄ちゃんのを見ただけだから……」
なるほどな。道理でめちゃくちゃなわけだ。
腕組みをしたまま周囲を見回すと、花壇に立てかけられた箒を見つけた。俺はそれを手に取ると、柄でうずくまるトアの尻を叩き、彼を立たせた。飛び上がった小さな背中をまた柄で打ち、「わあっ」と悲鳴が上がるのにも構わず膝、肩、と叩く。
やっと納得のいく姿勢になったトアを見て、今度は腹に柄を当てて押し込むように力を込めた。
「下手くそがいきなり気を練ろうとするな。まずは呼吸の仕方を学べ。いいか? ゆっくり、鼻で吸って口で吐くんだ」
言いながら、こんなことも教わらないと出来ない人間へ憐憫の情が沸いた。妖精であれば生まれた瞬間おのずとわかるものだ。
トアは箒で叩かれたせいで涙目になっていたものの、俺の顔をちらっと見て、素直に言うことを聞いた。唇がつんと尖り、ゆっくりと息を吐く。
しばらく見守ってやると、徐々に上達してきた。今度は座禅の組み方を教えてやりながら、俺は記憶の奥底から、かなり古い思い出が浮かんでくるのを感じた。そういえば、以前にもこんな風にしてやったことがあるような……。
「あの、フォランさま、次はどうすればいいんですか?」
トアがおずおずと聞いてきて、俺はハッと彼の顔を見つめた。
見ると、ちょっと前とは見違えるほどきれいに座っている。俺は満足して、今日はもう終わりだ、と言った。いつまでもこんなガキに構っていられない。よくよく考えたら、ガキを蹴飛ばして外に出る作戦も無理があるしな。箒を地面に捨てる。
トアはしばらく追い縋ってうるさかったが無視して部屋に戻った。シルヴァの体は虚弱なので、たったこれだけ歩いただけでもう疲れた。
翌日、モルガナ夫人の「朝食を食え」という要求をはねのけて部屋に籠城していると、不意に庭へ繋がる窓がコツコツと鳴った。見ると、ガラスの向こうにトアが立っている。俺は眉を顰めた。手で払うしぐさをするが、トアは首を振っていつまでも立っていた。
目障りなのに耐え兼ね、乱暴に窓を開ける。トアはすぐに地面に膝をつき、俺に向かって頭を下げた。
「フォランさま、俺に稽古をつけてください! 強くなりたいんです!」
「絶対に嫌だ。さっさと仕事に戻れ。モルガナに言いつけるぞ」
「昨日教えてもらった通りに修練していたら、ちょっとだけど風が起こせたんです、どうかもっと教えてください!」
風を? 俺はガラスを動かす手を止め、トアを見た。あれっぽっち教えてやっただけで風を起こせるとは、少なくともシルヴァよりは才能が有るらしい。
俺が手を止めたのを見て、トアは両手を顔の前で組んでこちらを見上げた。
「お願いします、師匠……」
まあ、こいつを手なずければ、体を探すために外に出る助けにはなるかもしれないな。
俺は子どもを部屋に入れてやり、ためしに風を起こしてみるように言った。
子どもは昨日教えたとおりの姿勢で立ち、腹に力を込めて呼吸した。すると、彼の足音から立ち上るようにつむじ風が立ち、ふわっとトアの前髪を舞い上がらせた。子どもが期待に目を輝かせて俺を見る。
たしかに、かなり上達している。
少し考えてから、簡単な術を教えてやろう、と思いついた。トアの後ろに立ち、身をかがめて顔を彼の頭の横に並べる。見ていろ、と言ってから、ふっと短く息を吐く。すると、かろうじてシルヴァの魔力が練り上げられ、吐き出された息がきらきらと雪の結晶のように宙を舞った。
「わあっ!」
「やってみろ。すぐにできるから」
トアが勢いよくうなずき、唇を尖らせたとき、窓のちょうど反対側にあるドアが叩かれた。仕事を放りだしてきていたらしいトアが慌てた様子でドアを見る。俺がとっさに彼を背中の後ろに隠すのと、ドアの向こうから声がかかるのが同時だった。
「フォランさま、モルガナでございます。入ってもよろしいでしょうか?」
老いてはいるが艶のある、女にしては低い声が聞こえた。俺は「待て」と言ってからトアを窓から外に出してやった。向き直って入室の許可を与えると、モルガナ夫人が部屋に入ってきた。
「ずっとお部屋にいても退屈でしょうから、街へ出てみませんか? 旦那様に観劇に行く許可を頂いて参りました」
頼みもしないのに余計なことを。観劇など、なんの興味もない。
断ろうと思ったが、ずっと部屋にいるよりは街の様子を見た方が後々役に立つかもしれない、と思い改めた。
夫人を部屋から追い出し、身だしなみを整える。
あまりにシルヴァと服の趣味が合わないので、ユエの金で死ぬほど新しい服を買った。使用人たちが「階段から落ちたばかりに、シルヴァさまがご乱心だ」と嘆くほど金を使ったが、ユエから特にたしなめられはしなかった。
一番気に入っている濃い紫色の服を取り出して身に着け、鏡の前で髪をまとめる。金色の髪紐で結うと、本来の俺ほど美しくはないが、まあ見れないほどでもない格好になった。
観劇小屋は街の中央公園に開かれており、深紅の大きな垂れ幕の中に客席と舞台が設けられていた。
モルガナ夫人に手を引かれて中に入ると、薄暗い空間の中で、中央の舞台だけが煌々と輝いている。案内されるまま高い場所にある席に座った。良い席なのか、舞台が真正面から見える。
演目は『大長老と王妃』で、どうやら悲劇らしい。道ならぬ恋に落ちた若い男の話だった。あまりにもくだらないので途中で寝そうだったが、どうやら主役の男の『ユイ・オーレン』があのユエ・オーレルをもじっているらしいと気付くと、愉快でたまらなくなった。
ユエは劇の中で、王妃であるルナに恋をして身を滅ぼす男として描かれていた。彼は激しくルナに懸想するが、妖艶で美しいルナはユエの思いには応えず、結局彼の恋は実らないのだった。
大筋で言えば、これはまだ俺が大妖精だった時代にあった愚王レオニスと毒婦ルナの焼き直しと言えるだろう。主役がレオニスからユエに代わっているだけだ。そもそも、あれだって別にルナが毒婦と呼ばれるほど悪いことをしたわけではなく、ただレオニスが馬鹿だっただけだ。
劇が終わり、モルガナ夫人と一緒に外へ出ると数時間ぶりにあたる日差しが目に染みた。
「あんな劇を作られるなんて、ユエはよほど民衆に嫌われているんだな」
俺が感心を込めて呟くと、モルガナ夫人は「まあ!」と言って眉をひそめた。
「違いますわ、フォランさま。むしろ、ユエさまはとても人気がありますのよ。人気者だからこそ、みんなユエさまの恋に興味があるのです」
「そうか? 俺だったら好きなやつの無様な姿を劇にしようとは思わんが」
言いながら歩いていると、舞台小屋の近くに露店があることに気づいた。どうやら、劇にまつわる小物や絵を売っているらしい。
歩いていると、通行人たちの会話が不意に耳に飛び込んできた。彼らがクレアの名前を出したからだった。
「クレアさまもひどいよな。いくら言い寄られて迷惑だからって、陛下に頼んでユエ様を結婚させるなんて。好きでもない、それも適当な男と結婚させられるなんて気の毒だ」
「いくらお子が出来て国の火種になったら困るからって、ひどい仕打ちだ」
まさか、その『好きでもない適当な男』がここにいるとは思いもしないのだろう、彼らは最終的に自分だったら死ぬより嫌だと言って笑い声をあげていた。くだらない人間どもめ。
だが、クレアとユエの結婚に、一体何の関係があるっていうんだ? 捕まえて聞いてみようと振り返るが、有象無象の人間どもはすぐにどれが誰だか分からなくなってしまう。
仕方なく露店に視線を戻した。記念になにか一つ買おうと店に近寄ると、ちょうど入り口に小さな陶器の馬があるのを見つけた。
「プペ」
白い体に金色のたてがみ、切れ長の目をした、手のひらほどの置物を手に取る。
俺のプペにそっくりだ。なんて可愛いんだ。絶対に買って帰る。金を払おうと店内を見回すと、すぐそばの壁に掛けられた、ひときわ大きい絵が目についた。思わず声を失い、モルガナ夫人の肩を叩きながら絵を指さす。
「おい、これ、この絵は……」
「ああ、これはルナ=クレアさまの絵ですわ」
ルナ=クレア⁉ どう見ても俺の妹だが⁉
自分の妹が人間どもの手で描かれていることも、毒婦ルナ呼ばわりされていることにもまったく理解が追い付かない。額縁を両手で持ってぶるぶる震えている俺に、露天商が気さくに声をかけてきた。
「おっ、旦那、お目が高いですね。これはうちで扱っているルナ=クレアさまの絵の中でも、一番上等な絵ですよ」
返事をする気にもならない。俺はすっかり疲れてしまって、モルガナ夫人に言ってすぐに屋敷へ帰った。
聞けば、俺のクレアはどういうわけか今は国王アレインの妻となり、この国の諮問機関『枢月院』に所属する長老の一人なのだという。
枢月院の大長老ユエ・オーレルが彼女に懸想していること、それを知りながらクレアがユエの思いに応えず、どころかユエのことをひどく嫌っているということは全国民が知っているほど有名な話なのだとか。
千年の間に一体何があったんだ。
俺は頭を抱えた。
16
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
僕はお別れしたつもりでした
まと
BL
遠距離恋愛中だった恋人との関係が自然消滅した。どこか心にぽっかりと穴が空いたまま毎日を過ごしていた藍(あい)。大晦日の夜、寂しがり屋の親友と二人で年越しを楽しむことになり、ハメを外して酔いつぶれてしまう。目が覚めたら「ここどこ」状態!!
親友と仲良すぎな主人公と、別れたはずの恋人とのお話。
⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。
片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。
はぴねこ
BL
高校生の頃、片想いの親友に告白した。
彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。
もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。
彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。
そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。
同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。
あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。
そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。
「俺もそろそろ恋愛したい」
親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。
不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
幼馴染がいじめるのは俺だ!
むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに...
「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」
「はっ...ぁ??」
好きな奴って俺じゃないの___!?
ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子
ーーーーーー
主人公 いじめられっ子
小鳥遊洸人
タカナシ ヒロト
小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。
姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。
高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、
脳破壊。
千透星への恋心を自覚する。
幼馴染 いじめっ子
神宮寺 千透星
ジングウジ チトセ
小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。
美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている)
転校生の須藤千尋が初恋である
囚われた元王は逃げ出せない
スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた
そうあの日までは
忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに
なんで俺にこんな事を
「国王でないならもう俺のものだ」
「僕をあなたの側にずっといさせて」
「君のいない人生は生きられない」
「私の国の王妃にならないか」
いやいや、みんな何いってんの?
運命の番は僕に振り向かない
ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。
それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。
オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。
ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。
ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。
ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。
ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。
黒獅子の愛でる花
なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。
中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。
深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。
サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。
しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。
毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。
そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。
王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。
王妃は現在、病で療養中だという。
幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。
サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる