53 / 63
スタンピード編
におう。
しおりを挟む
翌日、一行は美裸のスキルで、帝国の地方領であるシオーレル渓谷に飛んだ。ペニンスジール帝国のコーガーン洞窟ダンジョンに到着した一行は、そこで問題が発生しているのを見ていた。
美裸、エリス、コニー、だいふくを乗せたぺろす、ヒューガーがシオーレル渓谷を見下ろしている。シルガモレルから情報を貰った時より、ここのスタンピードはかなり悪化していた。前日の情報では洞窟入り口からモンスターが数体確認されていただけだったが、たった1日で凄まじい状況に変わっていた。
この谷は侵入出来る通路が南側に一つしかない。そこから北にいくとコーガーン洞窟がある。
問題は洞窟入り口からモンスターが溢れだして渓谷から出ようとしているのだ。それを必死に止める帝国兵達。出口が一方向しかないのでモンスターが出で来るところを3方向から攻撃出来る。
しかし魔力異常の影響を受けていたモンスター達は兵士が3人束になって一体のモンスターを攻撃しても歯が立たなかった。一体仕留めても同族の死体を超えて溢れ返ってくるのだ。人間達からすれば恐怖でしかなかった。
更に帝国兵達にとって最悪だったのは溢れて来るモンスターが硬い甲殻を持つ昆虫系モンスターと言う事だった。一般兵士では全く歯が立たない状況だった。
ペニンスジール帝国は大陸中央を閉める広大な領地を持つ国である。峻険な山などもあり情報の伝達速度が遅かった。
帝都に救援要請しても距離がある為に救援部隊が到着する頃には全滅しているだろう。今はスキル持ちの将校達が必死に戦っている最中だった。
相手のモンスターはトンボの様な細長い身体、苦い手足には棘、更に両前脚には蟹ハサミを持つ『蟹虫』と呼ばれる大型犬サイズの昆虫モンスターだった。
何とかモンスター達が出ないように帝国兵達が食い止めているが前線崩壊は時間の問題だろう。
「…うわ~、やってるね~(笑)」
下を見た美裸は驚きつつも笑っていた。
「…美裸、笑ってる場合じゃないよ…帝国兵の首が飛んでるでしょ…。早く助けに行った方が良いんじゃない?」
「コニーも行ってボカンする!!」
そう話すエリスとコニーにヒューガーが待ったを掛ける。
「待て!!このまま出て行くのはマズイ…今は停戦しているがペニンスジール帝国のヤツらは他国の者の侵入に厳しいんだ…」
そう言いつつヒューガーは美裸を見る。
「…見られるとまずいって事ですよね~。まずはあそこに降りてから時間を止めてそれから…」
ブツブツ呟きながら考える美裸。まずはあの前線の後ろに移動した後、モンスターと帝国兵の時間を止めるのが良いだろう。
「…まずは降りるよ~。皆、戦闘準備ね~…」
各それぞれに戦闘の準備を促した美裸がスキルを発動する。その瞬間、帝国兵達が防衛する後ろに降り立つ。
帝国兵達はモンスターを押し戻す事に必死で美裸達の出現に気が付いていなかった。美裸が一気に周辺の時間を全て止める。
「…やれやれ、酷い事になってるな…」
呟くヒューガーの目の前では、今にも蟹虫によって首を斬り落とされそうな兵士や、既に鎧を破壊されて心臓を貫かれている兵士がいた。
「まずはモンスターを退かさないと洞窟まで到達できないよね?」
「…そうだね~。でもこんなにギッチギチのギュウギュウに詰まってたら退かしにくいよね~…(笑)」
エリスと苦笑いの美裸が話している様に、防衛の前線から洞窟まで蟹虫がびっしり詰まっていたのである。
「みら、どうする?」
コニーに問われた美裸がう~んと唸る。
「…わたしがスキルで退かしても良いんだけどね~…スキル上のフィールドでも触りたくないんだよね~(笑)」
「…あれ?美裸、昆虫ダメだっけ(笑)?」
エリスに問われた美裸は笑いながら言う。
「いや、嫌いとかダメとかは無いんだけど…中途半端に気持ち悪いのがうじゃうじゃいるからね~(笑)」
「…確かに。男の俺でも間近で見ると気持ち悪いからな(笑)!!鳥肌もんだよ(笑)」
ヒューガーの言葉に美裸を見上げたコニーが言う。
「コニー、だいじょうぶだぞ?ボカンして良いか?」
「コニー、ちょっと待って!!」
今にも飛び出しそうなコニーを止めたエリスが言う。
「美裸、あの前にいるヤツだけ縮小すれば良いんじゃない?」
「あぁ、そうだったね~余りに気持ち悪いから縮小忘れてたよ~(笑)!!」
そう言いつつ美裸はスキルを使って帝国兵達を後ろに下げる。その後、前にいる蟹虫を縮小した。出来たスペースに、ぺろすに乗ったコニーが突っこんだ。
ぺろすの『ヘルフレイムブレス』にコニーが『おにふうじん』で火炎の勢いを付けた。
虫が焼けこげる臭いか辺りに漂う。酷い臭いに苦戦しながらもエリス、ヒューガー、だいふくも参戦して洞窟までの蟹虫を掃討した。
◇
全ての蟹虫を排除した一行はレベルが上がった。
美裸のレベル396、スキルで視認出来る距離が上がった。絶対強制停止範囲をスキルの全体に拡げる事が出来るようになった。
エリスのレベルは変わらず102のままだ。マンスジーの闘技場遺跡と鉱山洞窟ダンジョン、その後の監視者達と戦闘続きだったので、今回の蟹虫退治は皆に任せて見ていた。
コニーのレベルが103に上がった。雷呪の効果と力、バイタル、防御の数値が大幅に上がった。
ぺろすのレベル87、地獄の火炎効果と瞬発力と敏捷性が上がった。瞬発力は一瞬の力の爆発力、敏捷性は動きの速さと正確さの数値だ。だいふくのレベル83、無限悪食の吸収スピードが大幅にアップした。
ヒューガーのレベル65、スキル『鑑定眼』による鑑定できる範囲が拡がった。ガンブレイド気闘術の剣撃の破壊力が上昇、銃砲撃の攻撃威力と攻撃可能範囲が拡大した。
レベルが上がった一行だったが、辺りに漂う凄まじい悪臭に閉口していた。
「…やれやれ、全部片づけたのは良いがこの臭いはキツイな…」
「…そうですね…大量に沸いた蟹虫の焼けた死骸と爆散した死骸、斬られた死骸の山ですからね…」
ヒューガーとエリスが話す前で美裸もブツブツと呟いていた。
「…うーん、この臭いはヤバいよ~…臭いが服に付きそうだよね~」
この臭いで一番、被害を被っていたのはぺろすだった。
嗅覚が一番強いぺろすは、この臭いでダメージを喰らってグッタリしていた。全く臭いが気にならないのはコニーとだいふくだけだ。
片手で口と鼻を塞ぎつつ、右手で蟹虫の死骸をスキルで範囲指定した美裸は全て消していく。だいふくには蟹虫の死骸は吸収しないように指示した。
「…こんな臭いの食べたらダメだからね~…」
こんなに臭う大量の昆虫モンスターの死骸を吸収させてだいふくが悪臭を放つようになると困るからだ。何でもかんでも食べさせればいいというものではない。
ぴょんぴょんと跳ねて戻ってきただいふくは美裸のポケットに潜り込んだ。
すべての蟹虫の死骸を消し去ってようやく臭いが晴れた。
「…いや~臭いがこんなに人にダメージ与えるとは思わなかったよね~(笑)」
「…だね~(笑)。今でも鼻の奥がおかしいもんね…」
話す美裸とエリスをコニーが見上げる。
「コニー、ぜんぜん臭わない。なんでだ?」
「コニーのお嬢ちゃんはオーラを纏ってるから平気なんだよ。俺達はそういうスキルは持ってないからな…」
そう言われてヒューガーを見上げるコニー。
「じゃあ、かかさまのおかげだな」
「コニーのお嬢ちゃんのお母さんはそのスキルを持っているのか?」
「かかさま、オーラ、コニーにいでんしてる、いうた」
「そう言えばそんな事言ってたね~。コニーのお母さん、凄い人なんだね(笑)」
そう言われたコニーがエリスを見上げて聞く。
「いでんってなんだ?」
「遺伝って言うのはお父さんやお母さんの能力が子どもにも伝わって現れる、って事で良いのかな(笑)?」
「その説明で間違ってないだろう。それよりぺろすがかなりグロッキーだぞ?やはり犬型モンスターだからな、この臭いはキツイだろう…」
ヒューガーに言われた一行が伏せて動かないぺろすを見る。
「ん?ぺろすげんきない、どうした?」
「犬は人間の何倍も嗅覚が良いからね~。確かにぺろすにはこの臭いはキツイよね~…わたしもかなりキツイからね~…」
そう言いつつ美裸はぺろすを縮小するとだいふくの体内にぺろすを隔離する様に頼んだ。
「だいふく、しばらくぺろすに臭いが行かないように全体を囲んでくれる?」
美裸に言われただいふくが美裸のポケットから、もそもぞ出てくるとぴょんぴょんと跳ねた。そして小さくなったぺろすを包み込んでから、再び美裸のポケットに戻った。
◇
何とか、コーガーン洞窟の入り口まで大量の蟹虫を掃除した美裸達だったが、入り口から洞窟を覗き込んで辟易していた。
「…トキシックキャタピラー(毒イモムシ)か。レベルは48…これまた気持ち悪いくらい、うじゃうじゃいるね~…」
いつも余裕の美裸の顔から笑いが消えている。大きさは中型犬サイズで、さほど大きくはなかったがその毒イモムシが大量に沸いていたのだ。
『トキシックキャタピラー』毒性を持つイモムシで体液が毒性を持っている。口から糸の様に毒液を吐き出して飛ばしてくるモンスターだ。
このモンスターの厄介な所は毒液を飛ばす事もそうだが、問題は攻撃して身体に傷が付くと破裂して酸性の毒液を撒き散らす所にある。
単体では遠距離攻撃で何とかなるが、今、毒イモムシ達は密集している。酸性の毒液が飛び散り、仲間に付着。その瞬間、毒イモムシの体皮が溶けて爆発するのだ。
ヒューガーが鑑定眼でおおよその数を確認した。
「…トキシックキャタピラー、約500体。さて、どうする?このコーガーン洞窟はかなり厄介だな…」
ヒューガーはジャンケンでカインと勇護の二人に勝ってしまった事を後悔していた。確かに順調に行けばレベルはかなり上がっていくだろう。
しかし目の前の毒イモムシを見てこの先の展開が見えてしまう為に、テンションは下がる一方だった。そしてそれは美裸とエリスも同じだった。蟹虫にあれだけ労力を使い、結果は臭いでダメージを喰らうと言うなんとも納得のいかないものだった。
今回もどうするか考える美裸、エリス、ヒューガーの足元で今回も平気なのはただ一人、コニーだけだった。
「みら、コニー行っていいか?」
「…いや~コニー、あれはヤバいよ~(笑)。止めといた方が良いね~(笑)」
速く敵に突進したいコニーを苦笑いで止める美裸。恐らく突進した瞬間に毒イモムシ達は連鎖爆発を起こし、この辺り一帯に毒液を撒き散らすだろう。
しかも毒イモムシ達は洞窟入り口から少し下った場所に所狭しとひしめいているのだ。確かにコニーなら大量の毒液を浴びても平気かもしれないが、酸性の毒液である。あれだけの数が連鎖爆発を起こせば洞窟ダンジョン内への侵入が難しくなるだろう。
毒イモムシ達全体を完全停止させているので襲ってくる事はなかったがここは慎重に考える必要があった。
「…まさかこんな事で足止め喰らうとはね~…」
そう言いつつ、今にも突っ込みそうなコニーを止めるエリス。
「…美裸、アレを刺激しないようにそっくりそのまま移動させる事は出来ないのか…?」
ヒューガーに問われて考える美裸。
移動させるのは美裸も既に考えていたので良いのだが、問題はどこに移動させるか?である。
「…さて、どうしますかね~…」
そう言いながら考える美裸。その時、美裸はふと思い出した。マンチラー島の地下のオカマーンの財宝がある場所だ。あそこはトラップだらけだし到達出来る人間などいないだろう。
あそこなら毒イモムシ達を停止させたまま移動させても大丈夫だろう。
思い付いた美裸はすぐに毒イモムシ全体をスキルで指定範囲するとそれをそのままスキル上でマンチラ―島の地下まで移動させた。
そっくりそのまま消えた毒イモムシ達にホッとするエリスとヒューガー。その足元でちょっと不満そうなコニーがいた。
「…コニーたたかいたい!!これだとレベルあがらない!!」
「コニーには次のヤツを任せるからね~。さっきのは弱いから無視して良いんだよ~(笑)」
「ん?そうか?なら次のやつボカンする!!」
機嫌を直して意気揚々と洞窟内に入っていくコニー。その後を苦笑いしつつ一行は付いて行った。
◇
一行は洞窟入り口にあるダンジョンゲートに入っていく。コーガーン洞窟ダンジョン第一階層。
「…シルガモレル帝の情報だとこのフロアはゾンビフライが出るそうです…」
それを聞いたヒューガーが真っ先に顔をしかめた。
「…ゾンビフライか…今回はツイてないな…」
「ヒューガーさんはそのモンスター知ってるんですか?」
「…あぁ、別のダンジョンで退治した事がある。それがだな…」
そう言いつつ、ヒューガーはゾンビフライについて説明を始めた。
『ゾンビフライ(腐蝕蠅)』名前そのままのハエのゾンビである。腐蝕した臭いを強く発散しながら飛んで来る恐怖の腐った蠅である。飛行スピードが速く触れられるとその部分が腐蝕。口腔部の舌で刺されると全身が腐蝕して死に至る。
その説明に美裸もエリスもゲンナリする。
「…このダンジョン、何でこんなのしかいないのよ…」
「…だよね~(笑)。外れも良いトコだわ~(笑)」
「…激しく同感だ…まぁ、ここはコニーのお嬢ちゃんに何とかして貰おう(笑)!!」
そう言いつつもエリス、美裸、ヒューガーは戦闘準備をする。鳩サイズのゾンビフライに突進していた。
「…ゾンビフライ、レベル52、約800体…来るぞッ!!」
鑑定しつつ、銃砲撃で構えるヒューガーの言葉に、美裸、エリスもコニーを援護するべく戦闘体勢に入った。
美裸、エリス、コニー、だいふくを乗せたぺろす、ヒューガーがシオーレル渓谷を見下ろしている。シルガモレルから情報を貰った時より、ここのスタンピードはかなり悪化していた。前日の情報では洞窟入り口からモンスターが数体確認されていただけだったが、たった1日で凄まじい状況に変わっていた。
この谷は侵入出来る通路が南側に一つしかない。そこから北にいくとコーガーン洞窟がある。
問題は洞窟入り口からモンスターが溢れだして渓谷から出ようとしているのだ。それを必死に止める帝国兵達。出口が一方向しかないのでモンスターが出で来るところを3方向から攻撃出来る。
しかし魔力異常の影響を受けていたモンスター達は兵士が3人束になって一体のモンスターを攻撃しても歯が立たなかった。一体仕留めても同族の死体を超えて溢れ返ってくるのだ。人間達からすれば恐怖でしかなかった。
更に帝国兵達にとって最悪だったのは溢れて来るモンスターが硬い甲殻を持つ昆虫系モンスターと言う事だった。一般兵士では全く歯が立たない状況だった。
ペニンスジール帝国は大陸中央を閉める広大な領地を持つ国である。峻険な山などもあり情報の伝達速度が遅かった。
帝都に救援要請しても距離がある為に救援部隊が到着する頃には全滅しているだろう。今はスキル持ちの将校達が必死に戦っている最中だった。
相手のモンスターはトンボの様な細長い身体、苦い手足には棘、更に両前脚には蟹ハサミを持つ『蟹虫』と呼ばれる大型犬サイズの昆虫モンスターだった。
何とかモンスター達が出ないように帝国兵達が食い止めているが前線崩壊は時間の問題だろう。
「…うわ~、やってるね~(笑)」
下を見た美裸は驚きつつも笑っていた。
「…美裸、笑ってる場合じゃないよ…帝国兵の首が飛んでるでしょ…。早く助けに行った方が良いんじゃない?」
「コニーも行ってボカンする!!」
そう話すエリスとコニーにヒューガーが待ったを掛ける。
「待て!!このまま出て行くのはマズイ…今は停戦しているがペニンスジール帝国のヤツらは他国の者の侵入に厳しいんだ…」
そう言いつつヒューガーは美裸を見る。
「…見られるとまずいって事ですよね~。まずはあそこに降りてから時間を止めてそれから…」
ブツブツ呟きながら考える美裸。まずはあの前線の後ろに移動した後、モンスターと帝国兵の時間を止めるのが良いだろう。
「…まずは降りるよ~。皆、戦闘準備ね~…」
各それぞれに戦闘の準備を促した美裸がスキルを発動する。その瞬間、帝国兵達が防衛する後ろに降り立つ。
帝国兵達はモンスターを押し戻す事に必死で美裸達の出現に気が付いていなかった。美裸が一気に周辺の時間を全て止める。
「…やれやれ、酷い事になってるな…」
呟くヒューガーの目の前では、今にも蟹虫によって首を斬り落とされそうな兵士や、既に鎧を破壊されて心臓を貫かれている兵士がいた。
「まずはモンスターを退かさないと洞窟まで到達できないよね?」
「…そうだね~。でもこんなにギッチギチのギュウギュウに詰まってたら退かしにくいよね~…(笑)」
エリスと苦笑いの美裸が話している様に、防衛の前線から洞窟まで蟹虫がびっしり詰まっていたのである。
「みら、どうする?」
コニーに問われた美裸がう~んと唸る。
「…わたしがスキルで退かしても良いんだけどね~…スキル上のフィールドでも触りたくないんだよね~(笑)」
「…あれ?美裸、昆虫ダメだっけ(笑)?」
エリスに問われた美裸は笑いながら言う。
「いや、嫌いとかダメとかは無いんだけど…中途半端に気持ち悪いのがうじゃうじゃいるからね~(笑)」
「…確かに。男の俺でも間近で見ると気持ち悪いからな(笑)!!鳥肌もんだよ(笑)」
ヒューガーの言葉に美裸を見上げたコニーが言う。
「コニー、だいじょうぶだぞ?ボカンして良いか?」
「コニー、ちょっと待って!!」
今にも飛び出しそうなコニーを止めたエリスが言う。
「美裸、あの前にいるヤツだけ縮小すれば良いんじゃない?」
「あぁ、そうだったね~余りに気持ち悪いから縮小忘れてたよ~(笑)!!」
そう言いつつ美裸はスキルを使って帝国兵達を後ろに下げる。その後、前にいる蟹虫を縮小した。出来たスペースに、ぺろすに乗ったコニーが突っこんだ。
ぺろすの『ヘルフレイムブレス』にコニーが『おにふうじん』で火炎の勢いを付けた。
虫が焼けこげる臭いか辺りに漂う。酷い臭いに苦戦しながらもエリス、ヒューガー、だいふくも参戦して洞窟までの蟹虫を掃討した。
◇
全ての蟹虫を排除した一行はレベルが上がった。
美裸のレベル396、スキルで視認出来る距離が上がった。絶対強制停止範囲をスキルの全体に拡げる事が出来るようになった。
エリスのレベルは変わらず102のままだ。マンスジーの闘技場遺跡と鉱山洞窟ダンジョン、その後の監視者達と戦闘続きだったので、今回の蟹虫退治は皆に任せて見ていた。
コニーのレベルが103に上がった。雷呪の効果と力、バイタル、防御の数値が大幅に上がった。
ぺろすのレベル87、地獄の火炎効果と瞬発力と敏捷性が上がった。瞬発力は一瞬の力の爆発力、敏捷性は動きの速さと正確さの数値だ。だいふくのレベル83、無限悪食の吸収スピードが大幅にアップした。
ヒューガーのレベル65、スキル『鑑定眼』による鑑定できる範囲が拡がった。ガンブレイド気闘術の剣撃の破壊力が上昇、銃砲撃の攻撃威力と攻撃可能範囲が拡大した。
レベルが上がった一行だったが、辺りに漂う凄まじい悪臭に閉口していた。
「…やれやれ、全部片づけたのは良いがこの臭いはキツイな…」
「…そうですね…大量に沸いた蟹虫の焼けた死骸と爆散した死骸、斬られた死骸の山ですからね…」
ヒューガーとエリスが話す前で美裸もブツブツと呟いていた。
「…うーん、この臭いはヤバいよ~…臭いが服に付きそうだよね~」
この臭いで一番、被害を被っていたのはぺろすだった。
嗅覚が一番強いぺろすは、この臭いでダメージを喰らってグッタリしていた。全く臭いが気にならないのはコニーとだいふくだけだ。
片手で口と鼻を塞ぎつつ、右手で蟹虫の死骸をスキルで範囲指定した美裸は全て消していく。だいふくには蟹虫の死骸は吸収しないように指示した。
「…こんな臭いの食べたらダメだからね~…」
こんなに臭う大量の昆虫モンスターの死骸を吸収させてだいふくが悪臭を放つようになると困るからだ。何でもかんでも食べさせればいいというものではない。
ぴょんぴょんと跳ねて戻ってきただいふくは美裸のポケットに潜り込んだ。
すべての蟹虫の死骸を消し去ってようやく臭いが晴れた。
「…いや~臭いがこんなに人にダメージ与えるとは思わなかったよね~(笑)」
「…だね~(笑)。今でも鼻の奥がおかしいもんね…」
話す美裸とエリスをコニーが見上げる。
「コニー、ぜんぜん臭わない。なんでだ?」
「コニーのお嬢ちゃんはオーラを纏ってるから平気なんだよ。俺達はそういうスキルは持ってないからな…」
そう言われてヒューガーを見上げるコニー。
「じゃあ、かかさまのおかげだな」
「コニーのお嬢ちゃんのお母さんはそのスキルを持っているのか?」
「かかさま、オーラ、コニーにいでんしてる、いうた」
「そう言えばそんな事言ってたね~。コニーのお母さん、凄い人なんだね(笑)」
そう言われたコニーがエリスを見上げて聞く。
「いでんってなんだ?」
「遺伝って言うのはお父さんやお母さんの能力が子どもにも伝わって現れる、って事で良いのかな(笑)?」
「その説明で間違ってないだろう。それよりぺろすがかなりグロッキーだぞ?やはり犬型モンスターだからな、この臭いはキツイだろう…」
ヒューガーに言われた一行が伏せて動かないぺろすを見る。
「ん?ぺろすげんきない、どうした?」
「犬は人間の何倍も嗅覚が良いからね~。確かにぺろすにはこの臭いはキツイよね~…わたしもかなりキツイからね~…」
そう言いつつ美裸はぺろすを縮小するとだいふくの体内にぺろすを隔離する様に頼んだ。
「だいふく、しばらくぺろすに臭いが行かないように全体を囲んでくれる?」
美裸に言われただいふくが美裸のポケットから、もそもぞ出てくるとぴょんぴょんと跳ねた。そして小さくなったぺろすを包み込んでから、再び美裸のポケットに戻った。
◇
何とか、コーガーン洞窟の入り口まで大量の蟹虫を掃除した美裸達だったが、入り口から洞窟を覗き込んで辟易していた。
「…トキシックキャタピラー(毒イモムシ)か。レベルは48…これまた気持ち悪いくらい、うじゃうじゃいるね~…」
いつも余裕の美裸の顔から笑いが消えている。大きさは中型犬サイズで、さほど大きくはなかったがその毒イモムシが大量に沸いていたのだ。
『トキシックキャタピラー』毒性を持つイモムシで体液が毒性を持っている。口から糸の様に毒液を吐き出して飛ばしてくるモンスターだ。
このモンスターの厄介な所は毒液を飛ばす事もそうだが、問題は攻撃して身体に傷が付くと破裂して酸性の毒液を撒き散らす所にある。
単体では遠距離攻撃で何とかなるが、今、毒イモムシ達は密集している。酸性の毒液が飛び散り、仲間に付着。その瞬間、毒イモムシの体皮が溶けて爆発するのだ。
ヒューガーが鑑定眼でおおよその数を確認した。
「…トキシックキャタピラー、約500体。さて、どうする?このコーガーン洞窟はかなり厄介だな…」
ヒューガーはジャンケンでカインと勇護の二人に勝ってしまった事を後悔していた。確かに順調に行けばレベルはかなり上がっていくだろう。
しかし目の前の毒イモムシを見てこの先の展開が見えてしまう為に、テンションは下がる一方だった。そしてそれは美裸とエリスも同じだった。蟹虫にあれだけ労力を使い、結果は臭いでダメージを喰らうと言うなんとも納得のいかないものだった。
今回もどうするか考える美裸、エリス、ヒューガーの足元で今回も平気なのはただ一人、コニーだけだった。
「みら、コニー行っていいか?」
「…いや~コニー、あれはヤバいよ~(笑)。止めといた方が良いね~(笑)」
速く敵に突進したいコニーを苦笑いで止める美裸。恐らく突進した瞬間に毒イモムシ達は連鎖爆発を起こし、この辺り一帯に毒液を撒き散らすだろう。
しかも毒イモムシ達は洞窟入り口から少し下った場所に所狭しとひしめいているのだ。確かにコニーなら大量の毒液を浴びても平気かもしれないが、酸性の毒液である。あれだけの数が連鎖爆発を起こせば洞窟ダンジョン内への侵入が難しくなるだろう。
毒イモムシ達全体を完全停止させているので襲ってくる事はなかったがここは慎重に考える必要があった。
「…まさかこんな事で足止め喰らうとはね~…」
そう言いつつ、今にも突っ込みそうなコニーを止めるエリス。
「…美裸、アレを刺激しないようにそっくりそのまま移動させる事は出来ないのか…?」
ヒューガーに問われて考える美裸。
移動させるのは美裸も既に考えていたので良いのだが、問題はどこに移動させるか?である。
「…さて、どうしますかね~…」
そう言いながら考える美裸。その時、美裸はふと思い出した。マンチラー島の地下のオカマーンの財宝がある場所だ。あそこはトラップだらけだし到達出来る人間などいないだろう。
あそこなら毒イモムシ達を停止させたまま移動させても大丈夫だろう。
思い付いた美裸はすぐに毒イモムシ全体をスキルで指定範囲するとそれをそのままスキル上でマンチラ―島の地下まで移動させた。
そっくりそのまま消えた毒イモムシ達にホッとするエリスとヒューガー。その足元でちょっと不満そうなコニーがいた。
「…コニーたたかいたい!!これだとレベルあがらない!!」
「コニーには次のヤツを任せるからね~。さっきのは弱いから無視して良いんだよ~(笑)」
「ん?そうか?なら次のやつボカンする!!」
機嫌を直して意気揚々と洞窟内に入っていくコニー。その後を苦笑いしつつ一行は付いて行った。
◇
一行は洞窟入り口にあるダンジョンゲートに入っていく。コーガーン洞窟ダンジョン第一階層。
「…シルガモレル帝の情報だとこのフロアはゾンビフライが出るそうです…」
それを聞いたヒューガーが真っ先に顔をしかめた。
「…ゾンビフライか…今回はツイてないな…」
「ヒューガーさんはそのモンスター知ってるんですか?」
「…あぁ、別のダンジョンで退治した事がある。それがだな…」
そう言いつつ、ヒューガーはゾンビフライについて説明を始めた。
『ゾンビフライ(腐蝕蠅)』名前そのままのハエのゾンビである。腐蝕した臭いを強く発散しながら飛んで来る恐怖の腐った蠅である。飛行スピードが速く触れられるとその部分が腐蝕。口腔部の舌で刺されると全身が腐蝕して死に至る。
その説明に美裸もエリスもゲンナリする。
「…このダンジョン、何でこんなのしかいないのよ…」
「…だよね~(笑)。外れも良いトコだわ~(笑)」
「…激しく同感だ…まぁ、ここはコニーのお嬢ちゃんに何とかして貰おう(笑)!!」
そう言いつつもエリス、美裸、ヒューガーは戦闘準備をする。鳩サイズのゾンビフライに突進していた。
「…ゾンビフライ、レベル52、約800体…来るぞッ!!」
鑑定しつつ、銃砲撃で構えるヒューガーの言葉に、美裸、エリスもコニーを援護するべく戦闘体勢に入った。
0
あなたにおすすめの小説
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
俺の家に異世界ファンタジーガチャが来た結果→現実世界で最強に ~極大に増えていくスキルの数が膨大になったので現実世界で無双します~
仮実谷 望
ファンタジー
ガチャを廻したいからそんな理由で謎の異世界ガチャを買った主人公はガチャを廻して自分を鍛えて、最強に至る。現実世界で最強になった主人公は難事件やトラブルを解決する。敵の襲来から世界を守るたった一人の最強が誕生した。そしてガチャの真の仕組みに気付く主人公はさらに仲間と共に最強へと至る物語。ダンジョンに挑戦して仲間たちと共に最強へと至る道。
ガチャを廻しまくり次第に世界最強の人物になっていた。
ガチャ好きすぎて書いてしまった。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
この世界にダンジョンが現れたようです ~チートな武器とスキルと魔法と従魔と仲間達と共に世界最強となる~
仮実谷 望
ファンタジー
主人公の増宮拓朗(ましみやたくろう)は20歳のニートである。
祖父母の家に居候している中、毎日の日課の自宅の蔵の確認を行う過程で謎の黒い穴を見つける。
試にその黒い穴に入ると謎の空間に到達する。
拓朗はその空間がダンジョンだと確信して興奮した。
さっそく蔵にある武器と防具で装備を整えてダンジョンに入ることになるのだが……
暫くするとこの世界には異変が起きていた。
謎の怪物が現れて人を襲っているなどの目撃例が出ているようだ。
謎の黒い穴に入った若者が行方不明になったなどの事例も出ている。
そのころ拓朗は知ってか知らずか着実にレベルを上げて世界最強の探索者になっていた。
その後モンスターが街に現れるようになったら、狐の仮面を被りモンスターを退治しないといけないと奮起する。
その過程で他にもダンジョンで女子高生と出会いダンジョンの攻略を進め成長していく。
様々な登場人物が織りなす群像劇です。
主人公以外の視点も書くのでそこをご了承ください。
その後、七星家の七星ナナナと虹咲家の虹咲ナナカとの出会いが拓朗を成長させるきっかけになる。
ユキトとの出会いの中、拓朗は成長する。
タクロウは立派なヒーローとして覚醒する。
その後どんな敵が来ようとも敵を押しのける。倒す。そんな無敵のヒーロー稲荷仮面が活躍するヒーロー路線物も描いていきたいです。
異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。
異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。
せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。
そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。
これは天啓か。
俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。
田舎おじさんのダンジョン民宿へようこそ!〜元社畜の俺は、民宿と配信で全国初のダンジョン観光地化を目指します!〜
咲月ねむと
ファンタジー
東京での社畜生活に心身ともに疲れ果てた主人公・田中雄介(38歳)が、故郷の北海道、留咲萌町に帰郷。両親が遺したダンジョン付きの古民家を改装し、「ダンジョン民宿」として開業。偶然訪れた人気配信者との出会いをきっかけに、最初の客を迎え、民宿経営の第一歩を踏み出す。
笑えて、心温かくなるダンジョン物語。
※この小説はフィクションです。
実在の人物、団体などとは関係ありません。
日本を舞台に繰り広げますが、架空の地名、建造物が物語には登場します。
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる