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プロローグ、ペンは剣よりも強し編
小鬼のコニー。
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エリスと美裸が戻ってくると、途端にギルドがざわつき始めた。二人は特に気にする事もなく、だいふくとコニーを連れてカウンターへと向かう。
「…エリス、大丈夫だったの!?」
「うん。大丈夫。ミカさん、これ依頼主が探してたネックレスね」
エリスはネックレスを渡すと、続けて報告をする。ダンジョンでの入り口でネックレスを回収後、続けてフロアボスを撃破した事。更に地下2階に降りて昆虫型モンスターを退治、ダンジョンボス『インセクトクイーン』を倒してダンジョン踏破したと報告した。
ミカは戸惑いつつも、書類に記入していく。この世界ではダンジョンに潜ると必ず、行った所まで報告する義務があった。
それは後からダンジョンに潜る者達の為に、資料として残して置く為だ。
今回は出来立てダンジョンとは言え、『完全踏破』したのである。今までのエリスを考えると不可能に近い結果だった。
「…エリス、Cランクのヤツらが行ってたと思うけど…?」
ミカの問いに、エリスはチラッと美裸を見る。
「…どうする美裸。一応ギルドには正確に報告を、って言う決まりがあるんだけど…」
「良いんじゃない?でもさ~、そのまま話しちゃうとあの人達の立場が無いよね~(笑)。正確に話していいんだか悪いんだか(笑)」
そう言いつつ悪魔の様な笑いを浮かべる美裸。その不気味な笑顔に一瞬、ミカもエリスも引いてしまった…。
「…立場も何も…全裸でパニックのまま戻って来てる時点で、もうみんな知ってるからね…」
そんなミカの言葉に、美裸が答える。
「あのPTはわたし達を助けに来てくれたんですけどね~。最初は良かったんですよ、最初はね~…」
続けて話をする美裸。
「ただ、成体ゴブリン30体を半分ほど減らした所で…。あれは武器や防具の修理を怠っていたんですかねぇ~。突然、全装備が弾け飛んで壊れちゃいましてね~、あははっ(笑)!!」
美裸はそう言うが、百歩譲って全装備が突然、同時に壊れたとしても、何故インナーまでもが全て破れ弾け飛んだのか…。エリスにそんな事をする力がない事は誰よりもミカが一番良く知っている。
ミカは、目の前の美裸が、『CランクPT全裸逃走の件』に関わっていると見たが、その笑いが不気味過ぎてそれ以上、突っ込んで聞けなかった…。
◇
続いてエリスが、コニーを抱き上げてミカに見せる。
「この子のハンター登録もお願い。コニーって言うのよ」
それを聞いたミカが顔を曇らせる。
「…エリス、正気なの!?そんな小さな子にハンターさせるなんて…」
「大丈夫。この子、レベルがわたし達より高いのよ。能力値測定機で計って貰えば判るから…」
半信半疑のままのミカが、後ろの棚から能力測定器を出すとコニーに手を乗せるように言う。コニーは言う通りに小さな手をぺちっと計測器に乗せた。
その瞬間、最初の力(STR)の項目で一気に計測器が振り切れて壊れた…。
(…あれ?コレ、デジャヴかな?…前にもこんな事あったような…)
ミカはそんな事を考えながら、チラッと美裸を見る。
「コニーは小っちゃいけど強いからね~。ミカさん、旧式の測定器持ってきた方がいいかもよ~(笑)」
笑いながら言う美裸にミカは戦慄した。
(…まさか、この美裸って子…コニーの能力が見えてるとか…?)
そんな事を考え得つつ、ミカは言われた通り旧式測定器を持ってきた。そして再びコニーが手を乗せた瞬間、ミカの顔が引き攣った。
「…エリス…この子どこから連れて来たの…?」
「…ん?何で?コニーは美裸がスカウトしたんだけど…」
そう言いつつ、計測器の表示を見たエリスは思わず声を上げた。
「…はぁッ!?こッ、これって…まさかッ…!!」
「…そのまさかよ。美裸さんの時と同じ…。力(STR)の測定値が上限で更に振動してる…。つまりこの子、『力』が異常に強いのよ…」
この世界における最高レベルは現英雄、カイン・ストラウスのレベル63である。そのカインの『力』における測定値でさえ156だった。
その話をミカから聞かされたエリスは、コニーを抱っこする手が震えていた。
「エリス、ふるわすの、やめる。コニー、こそばい(くすぐったい)」
抱き上げるエリスを見上げながら言うコニーを、代わって美裸が抱っこする。
「さぁ、どんどん計測していきましょ~(笑)」
こうなる事を予測していたかのような美裸の楽しそうな言葉に、二人は顔を引き攣らせていた…。最終的にコニーの能力値は、バラツキはあったものの平均して高かった。
力(STR)1,000以上。攻撃力に直結する。
知力(INT)/7。魔術知識の高さではなく、発動できる魔法のランクに影響する。
敏捷(AGI)182。動きの速さ。
体力(VIT)160。バイタルの高さ。この数値が高い程HPが多い。
防御(DEF)367。防御力に直結する。
思念力(SPI)3。魔法、思念力の威力とMP、SPに影響する。
レベル65。
コニーの能力値は、そこらのSランクーやAランクハンターを、普通に倒せる数値だった。それを見たミカは、思わず呟いた。
「…類は友を呼ぶ…」
◇
コニーの能力測定を終わらせた後、思い出した様に美裸が声を上げる。
「あっ、そうだ!!ミカさん、わたしもレベル上がったんですよ。再測定して貰えます(笑)?」
そんな美裸の言葉に、不安を隠せないミカ。一瞬、悪寒が走り、何故だか恐ろしい予感がした。差し出された測定機に手を乗せる美裸。思った通り、どんどん数値が上がっていく。
「…あの~美裸さん…午前中は確かレベル23でしたよね…(笑)?」
最早、苦笑いしか出てこないミカを見たエリスが、横から美裸のレベルを確認する。
「…げッ!!レベルがもう55まで上がってる…。インセクトクイーン倒したからだ…」
エリスも苦笑いしか出て来なかった…。その後、エリスも能力値を再測定した。
「…エリスは…レベル28ね。エリスもかなりレベル上がって良かったね…」
そう言って、何事も無かったかの様にPT再編成書類を取り出すミカ。
「…えェッ、ちょッ…ミカさんッ!!わたしも凄くないッ!?レベル15から28だよ!?スキルも結構付いたし、もうちょっとこう…驚いても良いんじゃない?」
しかし、ミカの口から当然の答えが返って来た。
「…前の二人が凄過ぎて…エリスが頑張ったのは解るんだけど…。全然、驚きが沸いて来ないのよ…(笑)」
「…ぁ、そうですか…(笑)」
ミカに言われてエリス自身も、妙に納得した…。
「それじゃ、PT再編成で登録し直すから…。リーダーは引き続きエリスで良いのね?」
「…うん、それで良いです…」
「わたしも異論はないナリ~(笑)」
そう言いながら美裸は、だいふくも一緒に登録して貰う為に、手に乗せて見せる。
「ミカさん、この子も登録出来ます?名前はだいふくって言うんですけど。こどもスライムなんですよ」
「…スライムですか。美裸さんの従魔という扱いになりますがよろしいですか?」
「うん、それで良いです(笑)」
改めて、美裸のハンター情報に従魔としてだいふくが付け加えられた。
「それでは探し物依頼とダンジョン踏破でエリスPTのランクはEとなります。エリスのハンターランクはDに、美裸さんはEに上がります。コニーちゃんはまずはFからになりますのでご了承下さい。PTランクが上がれば受けられる依頼なども増えますので今後も頑張って下さい」
コニーのハンター登録、PT再編成の申請と、エリスと美裸のハンター情報修正、だいふくの従魔登録の後、ミカの説明を聞いた二人は依頼達成の賞金とギルドからの報奨金を受け取る。
賞金と報奨金を貰った二人は、コニーとだいふくを連れてさっきまでいたカフェに向かった。
◇
3人と一匹が去った後、ギルドの飲食スペースの角で酒を呑んでいた壮年の男が、ミカの受付スペースに近づいて来る。
男はボロボロのガウチョハット(カウボーイの帽子)を被り、マントを羽織っていた。身長は180程でガッチリとした体格だ。マントの間から見える剣と防具はかなり年季が入っていた。
「…ヒューガーさん、お戻りになられていたんですか…?」
「…あぁ、ついさっきな…」
彫りが深く、頬に傷がある顎髭を生やしたヒューガーと呼ばれた眼光鋭い男が、溜息交じり呟く。
「しかしさっきの騒がしいのはなんだ?依頼でしばらく席を空けてるうちにここは子供の遊び場にでもなったのか?」
ミカは苦笑いを浮かべつつ、ヒューガーの出した退治依頼達成の為のアイテムを受け取る。
「今回もご苦労様でした。ご無事で何よりです」
そう言いつつ、賞金と報奨金の計算を始めるミカ。
「ヒューガーさんはエリスをご存じですよね?」
「あぁ、エルフの嬢ちゃんだろ?何も出来ないんじゃハンターは無理だ。早めに引導を渡してやれ…」
ヒューガーの言葉に苦笑いを見せつつ、話すミカ。
「…それがですね、エリスPTが探し物依頼ついでにダンジョン踏破しまして…」
「…ほぅ、何も出来ない嬢ちゃんがどうやってダンジョン踏破した…?」
「発生して間もないダンジョンだったんですがエリスが新メンバーの美裸という子を連れてきまして…」
更に、と言いつつミカが話を続ける。
「ずっと停滞していたエリスのレベルが大幅に上がっていました。今日の探し物依頼、そしてダンジョン踏破で15からレベル28まで上がっています。これは異常と言っても良い成長率です…」
「出来て間もないダンジョンとはいえ何も出来なかった嬢ちゃんがいきなりのレベルアップか…何かありそうだな…?」
ミカの話を聞いたヒューガーは興味を引かれたのか、話の続きを促す。
「…えぇ、『鍵』は一緒にいる美裸さんだと思います。美裸さん自身も今日初めてここに来ましたがその時はレベルが23でした。それがですね…戻ってきた時にはレベルが…」
「…レベルが?どうなってた?」
「…55になってました…」
ミカの言葉に驚きで目を見開くヒューガー。レベル55と言えばこの世界では上位に食い込めるレベルである。今日初めて来た少女がレベル23から一気にレベル55に上がったと聞いたヒューガーは無言のまま、新世代の登場を予感した。
「…ミカ。その話は他にはするなよ?他のヤツらがちょっかい出すかもしれんからな…」
ヒューガーの忠告に、苦笑いを隠せないミカ。
「…それがですね。既にちょっかい出してやられてるPTがいまして(笑)」
「…ほぅ、どこのバカ共だ?」
「例のCランクPTです。下位PTの邪魔をしている話は掴んでいたんですが中々現場を抑える事が出来なくてですね(笑)。今回はギルドからの者が確認に行く前に痛い目を見たようです(笑)」
ミカの話を聞いたヒューガーがフッと鼻を鳴らして笑う。
「あの調子に乗ってたガキ共か…。全くザマァ無いな…」
詳しい話を聞いたヒューガーは笑いながら、酒を煽っていた。
◇
先程のカフェに戻ってきた三人と一匹は角のテーブルで話をしていた。
「…美裸、わたしは半分もお金貰えないよ。ほとんど何もしてないし…」
「エリス、これから強くなるには相応の装備がいると思うよ~?わたしは副業もするつもりだからお金の事は心配しなくても良いよ~(笑)」
エリスにとってはありがたい申し出だ。今の装備はこの世界に来た時の初期装備だった。より軽くて丈夫な革防具、鋭利なタガー、強力な弓があり、レベルも上げて行けばPTリーダーとしてのメンツも保てる。
今のままだと美裸とコニーの二人におんぶにだっこ状態なので、エリス自身がもっと上を目指すならお金が必要だった。
「コニーには次からお金分けるからね~?それとは別にお小遣い上げとくよ~(笑)」
「おこづかいってなんだ?」
「これでコニーの好きなお菓子いっぱい買ってきて良いよ~。だから変な人におやつ上げるって言われても付いて行っちゃダメよ~(笑)」
「…あいがとう。みら、いいやつ。だいふくのおやつも買っていいか?」
「いいよ~(笑)」
そんな遣り取りを見て、エリスはようやくちゃんとしたPTが出来たんだと実感した。その時、エリスはふと、美裸の『副業』というワードを思い出した。
「所で美裸、『副業』って何するのよ?わたしも手伝おうか?」
「いや、副業は一人でやるよ~。危険だからね~(笑)」
「…危険…。美裸、アンタ何やる気よ…?」
「それは秘密ナリよ~(笑)」
エリスには美裸の言葉が本気かどうか解らなかったが、美裸なら絶対に何か良からぬ事をやりそうだと不安を隠せなかった。
「…エリス、大丈夫だったの!?」
「うん。大丈夫。ミカさん、これ依頼主が探してたネックレスね」
エリスはネックレスを渡すと、続けて報告をする。ダンジョンでの入り口でネックレスを回収後、続けてフロアボスを撃破した事。更に地下2階に降りて昆虫型モンスターを退治、ダンジョンボス『インセクトクイーン』を倒してダンジョン踏破したと報告した。
ミカは戸惑いつつも、書類に記入していく。この世界ではダンジョンに潜ると必ず、行った所まで報告する義務があった。
それは後からダンジョンに潜る者達の為に、資料として残して置く為だ。
今回は出来立てダンジョンとは言え、『完全踏破』したのである。今までのエリスを考えると不可能に近い結果だった。
「…エリス、Cランクのヤツらが行ってたと思うけど…?」
ミカの問いに、エリスはチラッと美裸を見る。
「…どうする美裸。一応ギルドには正確に報告を、って言う決まりがあるんだけど…」
「良いんじゃない?でもさ~、そのまま話しちゃうとあの人達の立場が無いよね~(笑)。正確に話していいんだか悪いんだか(笑)」
そう言いつつ悪魔の様な笑いを浮かべる美裸。その不気味な笑顔に一瞬、ミカもエリスも引いてしまった…。
「…立場も何も…全裸でパニックのまま戻って来てる時点で、もうみんな知ってるからね…」
そんなミカの言葉に、美裸が答える。
「あのPTはわたし達を助けに来てくれたんですけどね~。最初は良かったんですよ、最初はね~…」
続けて話をする美裸。
「ただ、成体ゴブリン30体を半分ほど減らした所で…。あれは武器や防具の修理を怠っていたんですかねぇ~。突然、全装備が弾け飛んで壊れちゃいましてね~、あははっ(笑)!!」
美裸はそう言うが、百歩譲って全装備が突然、同時に壊れたとしても、何故インナーまでもが全て破れ弾け飛んだのか…。エリスにそんな事をする力がない事は誰よりもミカが一番良く知っている。
ミカは、目の前の美裸が、『CランクPT全裸逃走の件』に関わっていると見たが、その笑いが不気味過ぎてそれ以上、突っ込んで聞けなかった…。
◇
続いてエリスが、コニーを抱き上げてミカに見せる。
「この子のハンター登録もお願い。コニーって言うのよ」
それを聞いたミカが顔を曇らせる。
「…エリス、正気なの!?そんな小さな子にハンターさせるなんて…」
「大丈夫。この子、レベルがわたし達より高いのよ。能力値測定機で計って貰えば判るから…」
半信半疑のままのミカが、後ろの棚から能力測定器を出すとコニーに手を乗せるように言う。コニーは言う通りに小さな手をぺちっと計測器に乗せた。
その瞬間、最初の力(STR)の項目で一気に計測器が振り切れて壊れた…。
(…あれ?コレ、デジャヴかな?…前にもこんな事あったような…)
ミカはそんな事を考えながら、チラッと美裸を見る。
「コニーは小っちゃいけど強いからね~。ミカさん、旧式の測定器持ってきた方がいいかもよ~(笑)」
笑いながら言う美裸にミカは戦慄した。
(…まさか、この美裸って子…コニーの能力が見えてるとか…?)
そんな事を考え得つつ、ミカは言われた通り旧式測定器を持ってきた。そして再びコニーが手を乗せた瞬間、ミカの顔が引き攣った。
「…エリス…この子どこから連れて来たの…?」
「…ん?何で?コニーは美裸がスカウトしたんだけど…」
そう言いつつ、計測器の表示を見たエリスは思わず声を上げた。
「…はぁッ!?こッ、これって…まさかッ…!!」
「…そのまさかよ。美裸さんの時と同じ…。力(STR)の測定値が上限で更に振動してる…。つまりこの子、『力』が異常に強いのよ…」
この世界における最高レベルは現英雄、カイン・ストラウスのレベル63である。そのカインの『力』における測定値でさえ156だった。
その話をミカから聞かされたエリスは、コニーを抱っこする手が震えていた。
「エリス、ふるわすの、やめる。コニー、こそばい(くすぐったい)」
抱き上げるエリスを見上げながら言うコニーを、代わって美裸が抱っこする。
「さぁ、どんどん計測していきましょ~(笑)」
こうなる事を予測していたかのような美裸の楽しそうな言葉に、二人は顔を引き攣らせていた…。最終的にコニーの能力値は、バラツキはあったものの平均して高かった。
力(STR)1,000以上。攻撃力に直結する。
知力(INT)/7。魔術知識の高さではなく、発動できる魔法のランクに影響する。
敏捷(AGI)182。動きの速さ。
体力(VIT)160。バイタルの高さ。この数値が高い程HPが多い。
防御(DEF)367。防御力に直結する。
思念力(SPI)3。魔法、思念力の威力とMP、SPに影響する。
レベル65。
コニーの能力値は、そこらのSランクーやAランクハンターを、普通に倒せる数値だった。それを見たミカは、思わず呟いた。
「…類は友を呼ぶ…」
◇
コニーの能力測定を終わらせた後、思い出した様に美裸が声を上げる。
「あっ、そうだ!!ミカさん、わたしもレベル上がったんですよ。再測定して貰えます(笑)?」
そんな美裸の言葉に、不安を隠せないミカ。一瞬、悪寒が走り、何故だか恐ろしい予感がした。差し出された測定機に手を乗せる美裸。思った通り、どんどん数値が上がっていく。
「…あの~美裸さん…午前中は確かレベル23でしたよね…(笑)?」
最早、苦笑いしか出てこないミカを見たエリスが、横から美裸のレベルを確認する。
「…げッ!!レベルがもう55まで上がってる…。インセクトクイーン倒したからだ…」
エリスも苦笑いしか出て来なかった…。その後、エリスも能力値を再測定した。
「…エリスは…レベル28ね。エリスもかなりレベル上がって良かったね…」
そう言って、何事も無かったかの様にPT再編成書類を取り出すミカ。
「…えェッ、ちょッ…ミカさんッ!!わたしも凄くないッ!?レベル15から28だよ!?スキルも結構付いたし、もうちょっとこう…驚いても良いんじゃない?」
しかし、ミカの口から当然の答えが返って来た。
「…前の二人が凄過ぎて…エリスが頑張ったのは解るんだけど…。全然、驚きが沸いて来ないのよ…(笑)」
「…ぁ、そうですか…(笑)」
ミカに言われてエリス自身も、妙に納得した…。
「それじゃ、PT再編成で登録し直すから…。リーダーは引き続きエリスで良いのね?」
「…うん、それで良いです…」
「わたしも異論はないナリ~(笑)」
そう言いながら美裸は、だいふくも一緒に登録して貰う為に、手に乗せて見せる。
「ミカさん、この子も登録出来ます?名前はだいふくって言うんですけど。こどもスライムなんですよ」
「…スライムですか。美裸さんの従魔という扱いになりますがよろしいですか?」
「うん、それで良いです(笑)」
改めて、美裸のハンター情報に従魔としてだいふくが付け加えられた。
「それでは探し物依頼とダンジョン踏破でエリスPTのランクはEとなります。エリスのハンターランクはDに、美裸さんはEに上がります。コニーちゃんはまずはFからになりますのでご了承下さい。PTランクが上がれば受けられる依頼なども増えますので今後も頑張って下さい」
コニーのハンター登録、PT再編成の申請と、エリスと美裸のハンター情報修正、だいふくの従魔登録の後、ミカの説明を聞いた二人は依頼達成の賞金とギルドからの報奨金を受け取る。
賞金と報奨金を貰った二人は、コニーとだいふくを連れてさっきまでいたカフェに向かった。
◇
3人と一匹が去った後、ギルドの飲食スペースの角で酒を呑んでいた壮年の男が、ミカの受付スペースに近づいて来る。
男はボロボロのガウチョハット(カウボーイの帽子)を被り、マントを羽織っていた。身長は180程でガッチリとした体格だ。マントの間から見える剣と防具はかなり年季が入っていた。
「…ヒューガーさん、お戻りになられていたんですか…?」
「…あぁ、ついさっきな…」
彫りが深く、頬に傷がある顎髭を生やしたヒューガーと呼ばれた眼光鋭い男が、溜息交じり呟く。
「しかしさっきの騒がしいのはなんだ?依頼でしばらく席を空けてるうちにここは子供の遊び場にでもなったのか?」
ミカは苦笑いを浮かべつつ、ヒューガーの出した退治依頼達成の為のアイテムを受け取る。
「今回もご苦労様でした。ご無事で何よりです」
そう言いつつ、賞金と報奨金の計算を始めるミカ。
「ヒューガーさんはエリスをご存じですよね?」
「あぁ、エルフの嬢ちゃんだろ?何も出来ないんじゃハンターは無理だ。早めに引導を渡してやれ…」
ヒューガーの言葉に苦笑いを見せつつ、話すミカ。
「…それがですね、エリスPTが探し物依頼ついでにダンジョン踏破しまして…」
「…ほぅ、何も出来ない嬢ちゃんがどうやってダンジョン踏破した…?」
「発生して間もないダンジョンだったんですがエリスが新メンバーの美裸という子を連れてきまして…」
更に、と言いつつミカが話を続ける。
「ずっと停滞していたエリスのレベルが大幅に上がっていました。今日の探し物依頼、そしてダンジョン踏破で15からレベル28まで上がっています。これは異常と言っても良い成長率です…」
「出来て間もないダンジョンとはいえ何も出来なかった嬢ちゃんがいきなりのレベルアップか…何かありそうだな…?」
ミカの話を聞いたヒューガーは興味を引かれたのか、話の続きを促す。
「…えぇ、『鍵』は一緒にいる美裸さんだと思います。美裸さん自身も今日初めてここに来ましたがその時はレベルが23でした。それがですね…戻ってきた時にはレベルが…」
「…レベルが?どうなってた?」
「…55になってました…」
ミカの言葉に驚きで目を見開くヒューガー。レベル55と言えばこの世界では上位に食い込めるレベルである。今日初めて来た少女がレベル23から一気にレベル55に上がったと聞いたヒューガーは無言のまま、新世代の登場を予感した。
「…ミカ。その話は他にはするなよ?他のヤツらがちょっかい出すかもしれんからな…」
ヒューガーの忠告に、苦笑いを隠せないミカ。
「…それがですね。既にちょっかい出してやられてるPTがいまして(笑)」
「…ほぅ、どこのバカ共だ?」
「例のCランクPTです。下位PTの邪魔をしている話は掴んでいたんですが中々現場を抑える事が出来なくてですね(笑)。今回はギルドからの者が確認に行く前に痛い目を見たようです(笑)」
ミカの話を聞いたヒューガーがフッと鼻を鳴らして笑う。
「あの調子に乗ってたガキ共か…。全くザマァ無いな…」
詳しい話を聞いたヒューガーは笑いながら、酒を煽っていた。
◇
先程のカフェに戻ってきた三人と一匹は角のテーブルで話をしていた。
「…美裸、わたしは半分もお金貰えないよ。ほとんど何もしてないし…」
「エリス、これから強くなるには相応の装備がいると思うよ~?わたしは副業もするつもりだからお金の事は心配しなくても良いよ~(笑)」
エリスにとってはありがたい申し出だ。今の装備はこの世界に来た時の初期装備だった。より軽くて丈夫な革防具、鋭利なタガー、強力な弓があり、レベルも上げて行けばPTリーダーとしてのメンツも保てる。
今のままだと美裸とコニーの二人におんぶにだっこ状態なので、エリス自身がもっと上を目指すならお金が必要だった。
「コニーには次からお金分けるからね~?それとは別にお小遣い上げとくよ~(笑)」
「おこづかいってなんだ?」
「これでコニーの好きなお菓子いっぱい買ってきて良いよ~。だから変な人におやつ上げるって言われても付いて行っちゃダメよ~(笑)」
「…あいがとう。みら、いいやつ。だいふくのおやつも買っていいか?」
「いいよ~(笑)」
そんな遣り取りを見て、エリスはようやくちゃんとしたPTが出来たんだと実感した。その時、エリスはふと、美裸の『副業』というワードを思い出した。
「所で美裸、『副業』って何するのよ?わたしも手伝おうか?」
「いや、副業は一人でやるよ~。危険だからね~(笑)」
「…危険…。美裸、アンタ何やる気よ…?」
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高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
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