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プロローグ、ペンは剣よりも強し編
ぺろぺろす。
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ケルベロスの右の犬頭、真ん中の犬頭を殴り飛ばしたコニーの小さな右腕に、左の犬頭が歯を立てて咬み付いた。
「…コニーッ…!!」
慌ててコニーを助けに入ろうとしたエリスをランスと美裸が止める。
「エリスさんッ、待って下さい!!今、助けに入るとコニーちゃんが失格になります!!」
「…でもそんな事言ってる場合じゃ…」
言い募るエリスに美裸が余裕の表情でエリスを止める。
「エリス、コニーなら大丈夫よ。あの子、身体の周りに変わったエネルギーを纏っているからね…」
「…変わったエネルギー…って何よ?」
二人のやり取りを見ていたランスが、美裸に確認をする。
「…美裸さんには見えているんですね?」
「うん。あの子と最初に出会った時からね。得体の知れないオーラみたいなものかな?わたしにも良く解らないけど防御か何かのエネルギーだと思う…」
「…ランスさんも…それが見えてるんですか?」
エリスに問われて頷くランス。
「…見えていますよ?コニーちゃんは戦闘と防御両方に使えるオーラを薄く纏っていますね。かなりのセンスがなければアレは難しいんですよ…」
そう言いつつ、『鑑定』を持っていたランスはコニーより、美裸の能力の方が気になっていた。今朝、初めて会った時点で、美裸はこの王国における最高レベル保持者であるカイン・ストラウスを、遥かに凌駕していた。
しかも朝、71だったはずのレベルが73まで上がっていた。
まだ戦っていないにも関わらずである。
ランスは、マスターのガルロから美裸の能力を良く見て来いと指令を受けていた。しかし、鑑定持ちのランスは、美裸のスキルが見えていても、それがどんな能力で、戦っていないのに何故レベルが上がるのかは全く解らなかった。
その横で、改めてコニーを見直したエリスが呟く。
「…コニーって凄いんだね…」
「そうだね~。まぁ、コニーがピンチになったとしてもわたしの能力でどうにでもなるからね(笑)?心配しなくても良いよ~(笑)」
「…もしかして美裸…またスキルの範囲が拡がったとか…?」
「うん。そこの洞窟の中くらいまでは拡がってるよ~(笑)」
そんな美裸の言葉に思わず呟くエリス。
「…相変わらず反則過ぎるスキルだよね…」
二人の会話を聞いていたランスは表情には出さなかったものの、かなり驚いていた。その範囲がかなり広いからである。
洞窟からここまで、ゆうに100メートル以上は離れている。かなりの広範囲をカバー出来るとしたら遠隔操作型スキルではないかとランスは予想した。
三人が見守る中、コニーは咬み付いていた左の犬頭を、左拳で猛烈な勢いで殴り始めた。
「おにらっしゅっ!!」
ガンガン殴られたケルベロスは、堪らずコニーの右腕を離す。ケルベロスはよろけて後退したが、右の頭と真ん中の頭がコニーに向かって口から火炎を吐き出した。
しかし、火炎にも怯む事無く、コニーは大きく息を吸い込む。
「おにふうじんっ!!」
大きな声を上げると、コニーは火炎に向かってぷうっと勢い良く息を噴き出した。コニーの強い呼気によって煽られた火炎は、それを吐き出したケルベロス自身に返る。
思わず面食らったケルベロスに、素早い動きで右、真ん中、左の犬頭を殴り飛ばし、その身体を蹴り上げるコニー。
「…キャン、キュウ…キャワン…」
小さな子犬の様な声を上げて鳴いたケルベロスは、小さなコニーを前にして戦意喪失してしまった。近づいてくるコニーを恐れて後退りを始めるケルベロス。
そんなケルベロスに、どこから出したのかコニーがロープで輪を作り、真ん中の犬頭に、投げ縄を掛けると強く引いた。
「…美裸、ちょっと聞いて良い?」
「何ですかな?エリスさんや(笑)?」
「…あのロープ、美裸が渡したんでしょ…(笑)?」
「いかにも!!わたしがコニーに持たせたんですけど~(笑)」
「…コニーは何をしようとしているのよ…?」
「まぁ、見ててよ。面白い事になるよ~(笑)」
二人の会話を聞いていたランスもまた、コニーの行動を注視していた。初動でいきなり正面から向かって行ったのはまずかったが、その後の反撃と攻撃に対する反応速度は良かった。
しかしロープで投げ縄をしてケルベロスを捕えてからの行動が全く読めない。エリスと同じく、コニーが何をしようとしているのかランスには理解不能だった。
何とか引かれまいと足に力を入れて耐えるケルベロスだったが、コニーとの力比べに負けて、素直に傍まで歩いて近づく。
しかし、最後の抵抗を見せたケルベロスは三頭が一気にコニーに咬み付こうと牙を剥き出しにして向かって来た。
ロープを持ったまま、すぐにジャンプして攻撃を避けると、コニーは空中で華麗に身体を捻り、ケルベロスの背中に乗った。
背中に乗り、ロープを短く持ったコニーが、グイッとローブを強く引く。
「ぺろぺろすっ、コニーの言うこときくっ!!」
ケルベロスの三つの頭に、コニーが順番に拳骨を落していく。
初めて背中に乗られたケルベロスは驚いて、何とかコニーを振り落そうと藻掻き暴れる。
しかし、コニーは振り落とされまいと両脚と両腿に力を入れて上手くバランスを取っていた。ロデオさながらの光景に、エリスとランスは呆気にとられ、美裸は笑っていた。
「…美裸。アンタ、コニーに何させようとしてるのよ?」
呆れ気味に聞くエリス。
「…クククっ、あの狂暴な見た目の犬をペットにすればわたしらのPTにも箔が付くってもんでしょ(笑)」
「…そう言う訳ね。でもアンタ、これだとコニーの試験が失敗になるけど?どうするのよ?」
エリスの問いに、美裸に代わってランスが、その予想する所を述べた。
「…美裸さんは再試験を見越してケルベロスをペットにしようとしてるんですよね?」
「そうでーっす!!コニーには別のモンスターで再試験して下さいな(笑)!!」
その答えに、呆れて苦笑いしか出ないランスとエリスだった。
三人が話している中、暴れて疲れ切ったケルベロスが、ようやく抵抗を諦めて疲れ切った顔で伏せた。
◇
「おぉ~、コニーかっこいいね~」
コニーはロープを短く持ち、ケルベロスの背中に乗って得意気な顔で戻ってきた。
「ぺろす、コニーのペットなった。いうこときく」
そう言うと、コニーはロープを持ったまま、さっとケルベロスの背中から降りるとランスを見上げる。
「コニーのしけん、どうなった?」
コニーの問いに、ランスは苦笑いを浮かべる。
「…うーん。最初に正面から向かったのはまずかったですね。その後のコニーちゃんの攻撃は良かったです。しかしですね…」
言葉を濁しつつ、ランスは説明を続ける。
「戦闘は良いんですが、退治の対象をペットにして連れてきちゃったので…今回の退治は失敗です…」
「…ん?みら、いうとおりしたら、コニー、ダメなった。どうする?」
「コニー、大丈夫よ~。この後、別のヤツ、倒しちゃって(笑)」
美裸にそう言われたコニーは、再びランスを見上げると再試験を頼む。
「コニー、もいっかい、たいじやる。べつのどこいる?」
「はい。この後、洞窟の中へ侵入します。洞窟の奥にいるメタルカイマン(ワニ)を退治して下さい」
「わかった。コニー、それげんこつする」
再試験が決まった所で、その後の予定について、ランスが説明をする。
「このまま洞窟内に侵入します、メタルカイマンの他は特にこれと言って危険なモンスターはいません。カイマンが生息している場所の奥に、大きな空洞があります。その中に美裸さんが退治する『イビルロード』が封印されていますので完全消滅させて下さい」
ランスの説明に、美裸が頷く。
「…では進みましょうか」
続けて洞窟内を案内しようとするランスに待ったを掛ける美裸。
「ちょっと待って下さいな。コニーの『ぺろす』をもっとかっこよくするので(笑)!!」
「…そ、そうですか。ではここで少し小休止としましょう…」
洞窟前で少し休憩という事になったので、美裸はコニーのペットとなった『ぺろす』にスキルを使って補助装備品を作る事にした。
「コニーの乗り心地を良くしてあげるからね~」
そう言うと、3人と1匹が見ている前で、ケルベロスを強制停止させてその背中に『鞍』を付ける。そして三っつの犬の首に首輪を付けると、そこからそれぞれ統制用のリードを付けた。
「街中でこのままだとまずいからね~。取り外し可能な咬み付き防止の口輪を付けて…と、出来たよ~(笑)」
「おぉ~、良いね~(笑)。馬でも裸馬より鞍があると乗りやすいからね~」
エリスの意外な言葉に、美裸が突っ込む。
「エリス、馬乗った事あるの(笑)?」
美裸は、続くエリスの答えに驚いた。
「あるよ?わたし、イギリスの田舎町に住んでたからね。家の近くに大きな厩舎もあったし…」
道理で日本の漫画とか知らない訳だ。美裸は今更ながら納得した。
そんな美裸を見ていたランスは驚いていた。美裸の周りに、スキルの残滓が強く残っているのが見える。
(…これは…魔法に近い現象を起こしているのか…?)
美裸はスキル発動中、右手にペンの様なものを持っていた。魔法のステッキの可能性も考えたが、それにしても魔法のステッキにしては短すぎた。
これは恐らくサイキック能力だろう。
何もない所から突然、ケルベロス用の鞍、首輪、リード、咬み付き防止の口輪を具現化し、出現させた。
そして美裸のレベルを見たランスは更に驚いた。レベルが73からもう75になっていたのだ。スキルを使っただけで、上がっていたのである。
この現象をガルロにどう報告して良いものか考え込むランス。
その前でコニーを『ぺろす』に乗せて鞍を調整する美裸。3本のリードもコニーに持たせて、統制しやすい様に確認していた。
一行はコニーをケルベロスの『ぺろす』に乗せて、エリスがリードを持ち、その両脇を美裸とランスが固めると言う西遊記スタイルで洞窟の中へと侵入した。
◇
「…うわっ!!うじゃうじゃいるね…」
先頭を歩くエリスは、メタルカイマンの群れを見て思わず呟いた。その横でランスがメタルカイマンについて説明を始める。
「メタルカイマンはワニとしては小型ですが、体皮も牙もかなり硬く、噛む力もかなり強いので、囲まれない様に上手く…」
ランスの説明が終わらないうちに、ケルベロスからサッと降りたコニーは、メタルカイマンの群れに突進した。
「…あらら、行っちゃいましたか。仕方ないですね、それでは再試験開始とします!!」
再試験開始の声と共に、三人がコニーを見る。突進するコニーに気が付いたカイマン達は水辺からゾロゾロと這い上がり、迫って来た。
その数、30体。コニーは硬い体皮と鋭い無数の牙を持ったカイマンに躊躇する事無く突っ込んだ。
「おりゃーっ」
元気な掛け声と共に、そのままカイマンの群れを突っ切るコニー。数体のカイマンが吹っ飛ばされて宙を舞う。
群れの中央に到達したコニーは、一体のカイマンの尻尾を掴むと、前後に振り回して地面に何度も叩き付ける。続けて周辺にいたカイマンに、掴んだカイマンを叩き付けて攻撃した。
カイマンの鋭い牙が、叩き付けられたカイマンの硬い体皮を貫き、裂いていく。掴んでいるカイマンの牙がボロボロになると、コニーは別のカイマンを捕まえて振り回し、叩き付けて行った…。
前代未聞のカイマン退治に、ランスは呆然としていた。エリスは顔を引き攣らせ、美裸はケラケラと笑っていた。
Sランクハンターでも、硬い体皮と牙に苦戦するメタルカイマンの群れを、コニーはカイマンを使って5分掛からず退治してしまった。
走って戻ってきたコニーがランスを見上げる。
「しけん、どうなった?」
「…はい。合格です…」
その答えに喜ぶ美裸とエリス。だいふくも嬉しそうにぺろすの上でぴょんぴょん跳ねていた。
◇
エリスとコニーの昇級試験が終わり、いよいよ美裸の番になった。
カイマンがいた水辺の向こう側に、無数の呪文が書かれた黄色いテープでグルグル巻きにした大きな岩がどっかりと置かれていた。
「…アレが数年前に古戦場跡から現れた『イビルロード』です。無数の悪霊や怨念が集合体となり実体化した所を封印したものです…」
ランスが続けて話す。
「このイビルロードに関して言える事は、いまだ誰も討伐に成功していないという事です。では美裸さんご自身のタイミングで始めて下さい…」
頷いた美裸はイビルロードが封印されているという大きな岩に近づいていく。その瞬間、美裸は岩から噴き出してきた濃く黒い霧に一気に囲まれてしまった。
「…コニーッ…!!」
慌ててコニーを助けに入ろうとしたエリスをランスと美裸が止める。
「エリスさんッ、待って下さい!!今、助けに入るとコニーちゃんが失格になります!!」
「…でもそんな事言ってる場合じゃ…」
言い募るエリスに美裸が余裕の表情でエリスを止める。
「エリス、コニーなら大丈夫よ。あの子、身体の周りに変わったエネルギーを纏っているからね…」
「…変わったエネルギー…って何よ?」
二人のやり取りを見ていたランスが、美裸に確認をする。
「…美裸さんには見えているんですね?」
「うん。あの子と最初に出会った時からね。得体の知れないオーラみたいなものかな?わたしにも良く解らないけど防御か何かのエネルギーだと思う…」
「…ランスさんも…それが見えてるんですか?」
エリスに問われて頷くランス。
「…見えていますよ?コニーちゃんは戦闘と防御両方に使えるオーラを薄く纏っていますね。かなりのセンスがなければアレは難しいんですよ…」
そう言いつつ、『鑑定』を持っていたランスはコニーより、美裸の能力の方が気になっていた。今朝、初めて会った時点で、美裸はこの王国における最高レベル保持者であるカイン・ストラウスを、遥かに凌駕していた。
しかも朝、71だったはずのレベルが73まで上がっていた。
まだ戦っていないにも関わらずである。
ランスは、マスターのガルロから美裸の能力を良く見て来いと指令を受けていた。しかし、鑑定持ちのランスは、美裸のスキルが見えていても、それがどんな能力で、戦っていないのに何故レベルが上がるのかは全く解らなかった。
その横で、改めてコニーを見直したエリスが呟く。
「…コニーって凄いんだね…」
「そうだね~。まぁ、コニーがピンチになったとしてもわたしの能力でどうにでもなるからね(笑)?心配しなくても良いよ~(笑)」
「…もしかして美裸…またスキルの範囲が拡がったとか…?」
「うん。そこの洞窟の中くらいまでは拡がってるよ~(笑)」
そんな美裸の言葉に思わず呟くエリス。
「…相変わらず反則過ぎるスキルだよね…」
二人の会話を聞いていたランスは表情には出さなかったものの、かなり驚いていた。その範囲がかなり広いからである。
洞窟からここまで、ゆうに100メートル以上は離れている。かなりの広範囲をカバー出来るとしたら遠隔操作型スキルではないかとランスは予想した。
三人が見守る中、コニーは咬み付いていた左の犬頭を、左拳で猛烈な勢いで殴り始めた。
「おにらっしゅっ!!」
ガンガン殴られたケルベロスは、堪らずコニーの右腕を離す。ケルベロスはよろけて後退したが、右の頭と真ん中の頭がコニーに向かって口から火炎を吐き出した。
しかし、火炎にも怯む事無く、コニーは大きく息を吸い込む。
「おにふうじんっ!!」
大きな声を上げると、コニーは火炎に向かってぷうっと勢い良く息を噴き出した。コニーの強い呼気によって煽られた火炎は、それを吐き出したケルベロス自身に返る。
思わず面食らったケルベロスに、素早い動きで右、真ん中、左の犬頭を殴り飛ばし、その身体を蹴り上げるコニー。
「…キャン、キュウ…キャワン…」
小さな子犬の様な声を上げて鳴いたケルベロスは、小さなコニーを前にして戦意喪失してしまった。近づいてくるコニーを恐れて後退りを始めるケルベロス。
そんなケルベロスに、どこから出したのかコニーがロープで輪を作り、真ん中の犬頭に、投げ縄を掛けると強く引いた。
「…美裸、ちょっと聞いて良い?」
「何ですかな?エリスさんや(笑)?」
「…あのロープ、美裸が渡したんでしょ…(笑)?」
「いかにも!!わたしがコニーに持たせたんですけど~(笑)」
「…コニーは何をしようとしているのよ…?」
「まぁ、見ててよ。面白い事になるよ~(笑)」
二人の会話を聞いていたランスもまた、コニーの行動を注視していた。初動でいきなり正面から向かって行ったのはまずかったが、その後の反撃と攻撃に対する反応速度は良かった。
しかしロープで投げ縄をしてケルベロスを捕えてからの行動が全く読めない。エリスと同じく、コニーが何をしようとしているのかランスには理解不能だった。
何とか引かれまいと足に力を入れて耐えるケルベロスだったが、コニーとの力比べに負けて、素直に傍まで歩いて近づく。
しかし、最後の抵抗を見せたケルベロスは三頭が一気にコニーに咬み付こうと牙を剥き出しにして向かって来た。
ロープを持ったまま、すぐにジャンプして攻撃を避けると、コニーは空中で華麗に身体を捻り、ケルベロスの背中に乗った。
背中に乗り、ロープを短く持ったコニーが、グイッとローブを強く引く。
「ぺろぺろすっ、コニーの言うこときくっ!!」
ケルベロスの三つの頭に、コニーが順番に拳骨を落していく。
初めて背中に乗られたケルベロスは驚いて、何とかコニーを振り落そうと藻掻き暴れる。
しかし、コニーは振り落とされまいと両脚と両腿に力を入れて上手くバランスを取っていた。ロデオさながらの光景に、エリスとランスは呆気にとられ、美裸は笑っていた。
「…美裸。アンタ、コニーに何させようとしてるのよ?」
呆れ気味に聞くエリス。
「…クククっ、あの狂暴な見た目の犬をペットにすればわたしらのPTにも箔が付くってもんでしょ(笑)」
「…そう言う訳ね。でもアンタ、これだとコニーの試験が失敗になるけど?どうするのよ?」
エリスの問いに、美裸に代わってランスが、その予想する所を述べた。
「…美裸さんは再試験を見越してケルベロスをペットにしようとしてるんですよね?」
「そうでーっす!!コニーには別のモンスターで再試験して下さいな(笑)!!」
その答えに、呆れて苦笑いしか出ないランスとエリスだった。
三人が話している中、暴れて疲れ切ったケルベロスが、ようやく抵抗を諦めて疲れ切った顔で伏せた。
◇
「おぉ~、コニーかっこいいね~」
コニーはロープを短く持ち、ケルベロスの背中に乗って得意気な顔で戻ってきた。
「ぺろす、コニーのペットなった。いうこときく」
そう言うと、コニーはロープを持ったまま、さっとケルベロスの背中から降りるとランスを見上げる。
「コニーのしけん、どうなった?」
コニーの問いに、ランスは苦笑いを浮かべる。
「…うーん。最初に正面から向かったのはまずかったですね。その後のコニーちゃんの攻撃は良かったです。しかしですね…」
言葉を濁しつつ、ランスは説明を続ける。
「戦闘は良いんですが、退治の対象をペットにして連れてきちゃったので…今回の退治は失敗です…」
「…ん?みら、いうとおりしたら、コニー、ダメなった。どうする?」
「コニー、大丈夫よ~。この後、別のヤツ、倒しちゃって(笑)」
美裸にそう言われたコニーは、再びランスを見上げると再試験を頼む。
「コニー、もいっかい、たいじやる。べつのどこいる?」
「はい。この後、洞窟の中へ侵入します。洞窟の奥にいるメタルカイマン(ワニ)を退治して下さい」
「わかった。コニー、それげんこつする」
再試験が決まった所で、その後の予定について、ランスが説明をする。
「このまま洞窟内に侵入します、メタルカイマンの他は特にこれと言って危険なモンスターはいません。カイマンが生息している場所の奥に、大きな空洞があります。その中に美裸さんが退治する『イビルロード』が封印されていますので完全消滅させて下さい」
ランスの説明に、美裸が頷く。
「…では進みましょうか」
続けて洞窟内を案内しようとするランスに待ったを掛ける美裸。
「ちょっと待って下さいな。コニーの『ぺろす』をもっとかっこよくするので(笑)!!」
「…そ、そうですか。ではここで少し小休止としましょう…」
洞窟前で少し休憩という事になったので、美裸はコニーのペットとなった『ぺろす』にスキルを使って補助装備品を作る事にした。
「コニーの乗り心地を良くしてあげるからね~」
そう言うと、3人と1匹が見ている前で、ケルベロスを強制停止させてその背中に『鞍』を付ける。そして三っつの犬の首に首輪を付けると、そこからそれぞれ統制用のリードを付けた。
「街中でこのままだとまずいからね~。取り外し可能な咬み付き防止の口輪を付けて…と、出来たよ~(笑)」
「おぉ~、良いね~(笑)。馬でも裸馬より鞍があると乗りやすいからね~」
エリスの意外な言葉に、美裸が突っ込む。
「エリス、馬乗った事あるの(笑)?」
美裸は、続くエリスの答えに驚いた。
「あるよ?わたし、イギリスの田舎町に住んでたからね。家の近くに大きな厩舎もあったし…」
道理で日本の漫画とか知らない訳だ。美裸は今更ながら納得した。
そんな美裸を見ていたランスは驚いていた。美裸の周りに、スキルの残滓が強く残っているのが見える。
(…これは…魔法に近い現象を起こしているのか…?)
美裸はスキル発動中、右手にペンの様なものを持っていた。魔法のステッキの可能性も考えたが、それにしても魔法のステッキにしては短すぎた。
これは恐らくサイキック能力だろう。
何もない所から突然、ケルベロス用の鞍、首輪、リード、咬み付き防止の口輪を具現化し、出現させた。
そして美裸のレベルを見たランスは更に驚いた。レベルが73からもう75になっていたのだ。スキルを使っただけで、上がっていたのである。
この現象をガルロにどう報告して良いものか考え込むランス。
その前でコニーを『ぺろす』に乗せて鞍を調整する美裸。3本のリードもコニーに持たせて、統制しやすい様に確認していた。
一行はコニーをケルベロスの『ぺろす』に乗せて、エリスがリードを持ち、その両脇を美裸とランスが固めると言う西遊記スタイルで洞窟の中へと侵入した。
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先頭を歩くエリスは、メタルカイマンの群れを見て思わず呟いた。その横でランスがメタルカイマンについて説明を始める。
「メタルカイマンはワニとしては小型ですが、体皮も牙もかなり硬く、噛む力もかなり強いので、囲まれない様に上手く…」
ランスの説明が終わらないうちに、ケルベロスからサッと降りたコニーは、メタルカイマンの群れに突進した。
「…あらら、行っちゃいましたか。仕方ないですね、それでは再試験開始とします!!」
再試験開始の声と共に、三人がコニーを見る。突進するコニーに気が付いたカイマン達は水辺からゾロゾロと這い上がり、迫って来た。
その数、30体。コニーは硬い体皮と鋭い無数の牙を持ったカイマンに躊躇する事無く突っ込んだ。
「おりゃーっ」
元気な掛け声と共に、そのままカイマンの群れを突っ切るコニー。数体のカイマンが吹っ飛ばされて宙を舞う。
群れの中央に到達したコニーは、一体のカイマンの尻尾を掴むと、前後に振り回して地面に何度も叩き付ける。続けて周辺にいたカイマンに、掴んだカイマンを叩き付けて攻撃した。
カイマンの鋭い牙が、叩き付けられたカイマンの硬い体皮を貫き、裂いていく。掴んでいるカイマンの牙がボロボロになると、コニーは別のカイマンを捕まえて振り回し、叩き付けて行った…。
前代未聞のカイマン退治に、ランスは呆然としていた。エリスは顔を引き攣らせ、美裸はケラケラと笑っていた。
Sランクハンターでも、硬い体皮と牙に苦戦するメタルカイマンの群れを、コニーはカイマンを使って5分掛からず退治してしまった。
走って戻ってきたコニーがランスを見上げる。
「しけん、どうなった?」
「…はい。合格です…」
その答えに喜ぶ美裸とエリス。だいふくも嬉しそうにぺろすの上でぴょんぴょん跳ねていた。
◇
エリスとコニーの昇級試験が終わり、いよいよ美裸の番になった。
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「…アレが数年前に古戦場跡から現れた『イビルロード』です。無数の悪霊や怨念が集合体となり実体化した所を封印したものです…」
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最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
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ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
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