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第31話 百聞はボサノバにしかず 7
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女性に手を引っ張られて文哉はついていくと、ビルとビルの間に女性は駆け込んだ。
ここなら大丈夫、と息を切らしながら女性は言った。
「あんなことあったばかりで、男とこんな人目のつかないとこで大丈夫?」
「貴方は変なことしない人でしょ?」
掴まれた震えた手に文哉は気を遣ったつもりだったが、妙な信頼を寄せられて逆に困ってしまった。
確かに文哉は女性に対して変な気を起こしたりはしないが、人助けをするやつが必ずしも良い人というわけでもないし、下手すればさっきのヤクザたちと裏では繋がってるなんてこともありえるかもしれない。
ということを、説明しようかと思ったが女性の手の震えが止まらないので文哉は口に出さなかった。
「それで・・・・・・あー、良かったらなんだけど、なんでああいうことになったのか教えてくれる? 強引なナンパってわけじゃなさそうだったけど?」
女性の手が文哉の手から離れる。
その手は女性の胸の辺りを押え、ゆっくりと深呼吸を繰り返す。
あの、と声をかける文哉に女性はもう片方の手を伸ばしそれを制止するように遮った。
「順を追って説明するね。とりあえず、名前。私は村山愛依。さっきは助けてくれてありがとう」
「あ、えっと、俺は平田文哉。あんま気にしないでいいよ、たまたま通りすがっただけだから」
「何それ、イケメン過ぎない? 平田さんはいつもこんなことやってんの?」
愛依が笑う。
まだ恐さが残っているのか、ぎこちなく、それでも少し安堵を滲ませて笑った。
「いつも、はやってないよ。面倒ごとに巻き込まれるのは嫌いなんだよ、今日はたまたま」
「じゃあ、私はラッキーだったんだね」
「あんなのに絡まれてラッキーだったなんて、ポジティブ過ぎるでしょ」
「ははは、確かに。ポジティブっていうか能天気っていうか」
「・・・・・・それで?」
「あ、ごめん、話進んでないね」
話の進みを催促する文哉に、愛依は手の平を重ねて合わせ謝るポーズをとった。
「あの引かないで聞いてほしいんだけど、私ね、前にクスリ買ったことがあって」
「は?」
「いやだから、引かないでって、話進まなくなっちゃうから」
「んじゃあ、自業自得的な話? 因果応報的な事?」
「いや、違うんだって、そういうトラブルじゃなくて。クスリも興味本意で買った一回だけだし、その時に友達の女の子にめちゃくちゃ怒られたからやってないし買ってないの」
文哉は想像してた以上の面倒ごとに首を突っ込んでしまったなと、少し後悔した。
「トラブルじゃなかったら、なんでヤクザに絡まれてたんだ?」
「その・・・・・・その、友達がさ、誘拐されたらしくて」
「誘拐? ヤクザに?」
文哉はそう問いを口にして、しかしそれがおかしい話だと気がついた。
あの二人組のヤクザこそ、その誘拐犯というのを探していると主張していたはずだ。
「違うの。えっと、あの二人が言うには若い男の人だって。確か赤いジャケット着てるとか言ってたけど」
赤いジャケット、というと休憩時間に聞いた伊知郎の話の中に出てきた男を思い浮かべた。
どういう理由があるかわからないがクスリの売人狩りみたいなことをしてる物好き、もしくは酔狂なイカれ野郎。
五円玉のヒーローみたいに伊知郎は語っていたが、文哉には荒れた街に現れた頭のおかしな奴にしか思えなかった。
「それで、なんで、えっと、村山さんがあのヤクザに絡まれることになるんだ?」
「それは、そのヤクザの人たちが男の人のことをクスリ絡みの人だって考えてたらしくて、それで以前買ったことのある私を探して話を聞きに来たって」
「なんか、すげぇリサーチ力っていうか、購入者リストでも流れてんのか? 村山さんは名前名乗ってクスリ買ったの?」
もしくは興味本意で買ったクスリのことをSNSかなにかで自慢でもしてたか。
それでもヤクザのリサーチ力が妙に高いな、と文哉は訝しげに愛依の話を聞いていた。
「んー、そういうことじゃなくて、私がクスリ買ってたのはその拐われた友達からわかったっていうか」
「は? どういうこと?」
「その拐われた友達っていうのがね、千代田組の組長さんの娘なの。森川八重、って普段はお母さんの旧姓名乗ってるんだけど。その子が赤いジャケットの男の人に連れられていくのを組の人が見かけて、最近クスリ売買に街を荒らしてるって若い連中に拐われたって探し回ってるらしいの」
文哉が介入する前、愛依が声をあげる前にそんなやり取りがあったのかと文哉は感心する。
ヤクザがベラベラとよく喋ったもんだなとも思う。
察するに愛依がクスリを購入した際に怒ったという八重という組のお嬢さんが組員に話を通したりしたことがあったのだろう。
それで、あの二人組は愛依にたどり着いたのだろう。
売人狩りのイカれ野郎が今度は千代田組のお嬢さんを誘拐。
そんな話に首を突っ込んでしまったというわけか。
「あーあ、やっちまった」
文哉はため息を吐いて首を振り天を仰いだ。
ここなら大丈夫、と息を切らしながら女性は言った。
「あんなことあったばかりで、男とこんな人目のつかないとこで大丈夫?」
「貴方は変なことしない人でしょ?」
掴まれた震えた手に文哉は気を遣ったつもりだったが、妙な信頼を寄せられて逆に困ってしまった。
確かに文哉は女性に対して変な気を起こしたりはしないが、人助けをするやつが必ずしも良い人というわけでもないし、下手すればさっきのヤクザたちと裏では繋がってるなんてこともありえるかもしれない。
ということを、説明しようかと思ったが女性の手の震えが止まらないので文哉は口に出さなかった。
「それで・・・・・・あー、良かったらなんだけど、なんでああいうことになったのか教えてくれる? 強引なナンパってわけじゃなさそうだったけど?」
女性の手が文哉の手から離れる。
その手は女性の胸の辺りを押え、ゆっくりと深呼吸を繰り返す。
あの、と声をかける文哉に女性はもう片方の手を伸ばしそれを制止するように遮った。
「順を追って説明するね。とりあえず、名前。私は村山愛依。さっきは助けてくれてありがとう」
「あ、えっと、俺は平田文哉。あんま気にしないでいいよ、たまたま通りすがっただけだから」
「何それ、イケメン過ぎない? 平田さんはいつもこんなことやってんの?」
愛依が笑う。
まだ恐さが残っているのか、ぎこちなく、それでも少し安堵を滲ませて笑った。
「いつも、はやってないよ。面倒ごとに巻き込まれるのは嫌いなんだよ、今日はたまたま」
「じゃあ、私はラッキーだったんだね」
「あんなのに絡まれてラッキーだったなんて、ポジティブ過ぎるでしょ」
「ははは、確かに。ポジティブっていうか能天気っていうか」
「・・・・・・それで?」
「あ、ごめん、話進んでないね」
話の進みを催促する文哉に、愛依は手の平を重ねて合わせ謝るポーズをとった。
「あの引かないで聞いてほしいんだけど、私ね、前にクスリ買ったことがあって」
「は?」
「いやだから、引かないでって、話進まなくなっちゃうから」
「んじゃあ、自業自得的な話? 因果応報的な事?」
「いや、違うんだって、そういうトラブルじゃなくて。クスリも興味本意で買った一回だけだし、その時に友達の女の子にめちゃくちゃ怒られたからやってないし買ってないの」
文哉は想像してた以上の面倒ごとに首を突っ込んでしまったなと、少し後悔した。
「トラブルじゃなかったら、なんでヤクザに絡まれてたんだ?」
「その・・・・・・その、友達がさ、誘拐されたらしくて」
「誘拐? ヤクザに?」
文哉はそう問いを口にして、しかしそれがおかしい話だと気がついた。
あの二人組のヤクザこそ、その誘拐犯というのを探していると主張していたはずだ。
「違うの。えっと、あの二人が言うには若い男の人だって。確か赤いジャケット着てるとか言ってたけど」
赤いジャケット、というと休憩時間に聞いた伊知郎の話の中に出てきた男を思い浮かべた。
どういう理由があるかわからないがクスリの売人狩りみたいなことをしてる物好き、もしくは酔狂なイカれ野郎。
五円玉のヒーローみたいに伊知郎は語っていたが、文哉には荒れた街に現れた頭のおかしな奴にしか思えなかった。
「それで、なんで、えっと、村山さんがあのヤクザに絡まれることになるんだ?」
「それは、そのヤクザの人たちが男の人のことをクスリ絡みの人だって考えてたらしくて、それで以前買ったことのある私を探して話を聞きに来たって」
「なんか、すげぇリサーチ力っていうか、購入者リストでも流れてんのか? 村山さんは名前名乗ってクスリ買ったの?」
もしくは興味本意で買ったクスリのことをSNSかなにかで自慢でもしてたか。
それでもヤクザのリサーチ力が妙に高いな、と文哉は訝しげに愛依の話を聞いていた。
「んー、そういうことじゃなくて、私がクスリ買ってたのはその拐われた友達からわかったっていうか」
「は? どういうこと?」
「その拐われた友達っていうのがね、千代田組の組長さんの娘なの。森川八重、って普段はお母さんの旧姓名乗ってるんだけど。その子が赤いジャケットの男の人に連れられていくのを組の人が見かけて、最近クスリ売買に街を荒らしてるって若い連中に拐われたって探し回ってるらしいの」
文哉が介入する前、愛依が声をあげる前にそんなやり取りがあったのかと文哉は感心する。
ヤクザがベラベラとよく喋ったもんだなとも思う。
察するに愛依がクスリを購入した際に怒ったという八重という組のお嬢さんが組員に話を通したりしたことがあったのだろう。
それで、あの二人組は愛依にたどり着いたのだろう。
売人狩りのイカれ野郎が今度は千代田組のお嬢さんを誘拐。
そんな話に首を突っ込んでしまったというわけか。
「あーあ、やっちまった」
文哉はため息を吐いて首を振り天を仰いだ。
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