ファンキー・ロンリー・ベイビーズ

清泪─せいな

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第40話 飛んで火に入るダブステップ 5

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 ──金属バットの薙ぎ払いを佐山勝は屈んで避ける。

「だから、バットは人を殴る為の道具じゃねぇって!!」

「うるせぇ、死ね!!」

 青髪のソフトモヒカンというパンクロッカーみたいな風貌の若者が一心不乱にバットを振り回し、勝はそれを間一髪で避けていく。

 真盛橋羽音町六丁目、朝九時。

 電車の駅があり、交通の便が長けた地域でカプセルホテルなどの宿泊施設も集中して経営している。
 駅の裏側に回るとマンション、貸ビル、ラブホテルと雑多に背の高い建物が並んでいた。

 勝と八重は、八重の服を着替えたいという希望により八重の自宅付近まで来ていた。
 父親と離れて暮らしたいという希望が尊重されて一人暮らしをしているらしい。
 セキュリティのしっかりしたオートロックな高級マンションを前にして勝が驚いていると、見知らぬ若者三人に突然襲撃された。

 若者が洩らす言葉からして八重のことを狙っているらしいとわかるや、勝は一人二人と的確に顎を殴って相手を気絶させた。
 仲間があっという間にのされる光景に残った若者は驚きながら、手に持った金属バットで応戦するよう気持ちを切り替えたのがつい先程のことである。

「この子拐おうとする狙いはなんだ?」

「知るかよ、てめぇも女拐ってるんじゃねぇかよ!?」

「はぁ? んなわけあるか!」

 避ける勝の上半身、特に頭を狙うために避けた先を追いかけるように振り回す金属バット。
 軌道が読みやすく避けるには容易い。
 若者は金属バットで頭をかちわることに必死で自分の無防備さに気が回っていなかった。
 ブンブンと大振りに振り回される金属バット、そしてそのために疲労していく筋肉。
 勤勉な野球少年ならば素振り百回だろうと千回だろうと、それほど速度を落とさずにいれたのだろうが、襲撃者である若者はそんな野球少年には見えなかった。
 あからさまに遅くなる振る速度。
 腕の筋肉と背中と腰に疲労感が蓄積していった結果。

「はい、お疲れさん」

 そういうと勝は若者の鼻をジャブで軽く小突いた。
 弱いパンチに当てられた怒りがこみ上げて前のめりになる若者の顔面に、今度は鋭くストレートがぶち当たる。

しょうって喧嘩強いんだね」

 おお、と軽く拍手しながら八重が電信柱の影から声をかける。
 危ないからと少し離れた場所から勝の闘いっぷりを見ていたが、あっという間の出来事で三人の若者がのされていた。

「今さらかよ」

「いやだってさ、ドラッグの取引場所とかいうあのキャバクラの裏口からボロボロな姿で出てきてからさ、ボコボコにやられて出てきたのかと思ってた」

「あー、うん、それはそう見えるかも」

 ボコボコにやっつけて、ボコボコにやられて。
 八重の見立てもあながち間違いではない。

「あとしょうって呼び捨てにすんな、森川」

「いいじゃん、そんな歳離れてないんだしさ」

「四つも離れてたら結構なもんだろうが」

「そういう年齢差で敬語使えとかいうタイプじゃないと思ってた」

「年齢差じゃなくても敬語使えよって今初めて思ってるよ、俺は」

 なんで舐めた態度を取られてるか、それは数時間行動をともにして勝がずっと抱いてる疑問だった。
 普段は自分が出来てない敬語などの行為等を相手に求めることなどしないのだが、八重に対しては妙に舐められてるという感覚があったために気になってしまっていた。

「まぁ、それはおいおいとして、早く家に戻って服着替えてこいよ。俺はこいつらから聞ける情報ないか探っておくから」

「それがさ、ちょっと無理っぽいんだよね」

「何、どういうことだよ?」

 勝の問いに八重はマンションの入り口を指差した。
 派手な色の背広姿の男たちが三人。
 厳つい顔のがたいのいい男たちは見た目からして普通のサラリーマンとは違うようだ。
 キョロキョロと辺りを見回していて、その視線から八重は隠れるような位置に移動していたようだ。

「やな予感しかしないけど、森川、お前友達がドラッグ買わされたのに腹立って売人に文句言いにあそこに現れたとか言ってたの、嘘じゃないよな」

「嘘じゃないよ、本当にムカついてさ。元締めぶん殴ってやろうかと思って」

 一晩、危ないからと説得して帰らせようと試みた勝は八重の作る握り拳にため息をついた。
 自分以上に無謀な女子高生を放っておけなくなった勝は、家まで送ると強引に話を進めたのだが、夕方になるまでには何故だか二人して追われる身になっていた。
 自分のせいなのか、この女子高生のせいなのか。
 チンピラ襲撃者はあとをたたず、撃退と逃走を繰り返していつの間にやら夜が明けた。

「じゃあ、アレか、その話は氷山の一角的なヤツで色んなところ荒らしまくってるとか」

「それは勝のことでしょ。私そんな喧嘩強くないし」

「はぁー、じゃあ、あのスジモンっぽいのがどうしたんだ?」

「あのさ、スッゴく言いにくいんだけどさ、あの人たちさ、ウチの組の人たちなの」

「組の人?」

「私ね、千代田組の一人娘なんだ、てへ」

「はぁ!?」

 舌を出してふざけて誤魔化そうとする八重。
 頭を抱える勝は、まさかの事実に色々と後悔することになった。
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