ヒーロー・チェーン: 伝染する呪い、選ばれた者が死ぬ都市伝説

清泪─せいな

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Ep.2 恋人

.3 大学受験

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 何か目標があるわけでもない私は、進学をギリギリまで悩んでいた。
 けれど、親の勧めもあって「一応大学ぐらいは出ておこう」と思い、受験戦争に参戦した。

 こんな軽い気持ちで大学受験ができる環境にいることに、私はとても感謝している。
 やりたいことがないなら、やりたいことが見つかるまで先延ばしにすればいい。
 でも、ニートや引きこもりになるのはさすがに世間体が悪いし、何より、織田翔に愛想を尽かされるのは嫌だった。

 ――そういう理由で選んだ進学。
 他の受験生に対して、後ろめたさを感じる。

 この考えを、数少ない友人に話してみたことがある。
 すると、彼女は笑いながら、あっけらかんとこう言った。

「大丈夫だよ、周りの受験生だって似たような考え方してる人いるって~」

 同類がいれば、それで許される?
 赤信号、みんなで渡れば怖くない、ってやつ?
 いや、怖いものは怖いし、私はそんな群れの中で歩きたいわけじゃない。

 そんな彼女は、しっかりとした人生設計をした上で受験を決めていた。
 私が受けたこの大学も滑り止め程度らしく、合格発表の日には姿を見せなかった。

 ――代わりに隣に立っていたのは、やっぱり、織田翔だった。

「おお! あったあった! 木根の番号、あったぜ! すげぇ!!」

 私より先に、自分の番号より先に、織田翔は私の番号を見つけてくれた。
 周りの誰よりも喜んでくれるその姿に、何故だか自分で見つけるよりも嬉しくなった。

 だから、今度は私が探す番だと思った。
 必死になって、織田翔の番号を探す。

「あ、あったよ! 織田君の番号!!」

 あった!

 呟いていた番号が目に飛び込む。
 確認するために、三度、数字を指でなぞる。

 あった――!

「お、おお! マジか!? やべぇ、ちょっと泣きそう」

 織田翔は、ダンスの憧れの先輩がいるからと、この大学を受験した。
 学力にはあまり自信がなく、進路指導の先生からも難色を示されていた。
 一芸合格が狙える別の大学を勧められたのに、それをキッパリと断って、
 この大学一本に絞り、勉強に励んでいた。

 私は、その努力をずっと見ていた。

「泣いても、いいんじゃない?」

「ん? んー、でもまだ泣くには早いよな」

 言いながら、彼は満面の笑みを浮かべる。
 まるで新しいダンスに挑戦する時みたいに、心底楽しそうな顔をしていた。

「……スタート?」

「そ。今までのは、スタート地点に立つための準備だったんだよ」

 そう言って、織田翔は上を指さした。
 つられて私も、空を見上げる。

 綺麗な、青空。

「おお、気持ちの良い空だな。合格日和だ!」

 吸い込まれそうなほど、青く澄んでいる。

「ねぇ、織田君?」

「何だ?」

「空って……遠いね」

 吸い込まれそうなのに、切なくなるほど遠い。
 どれだけ手を伸ばしても、届きはしない。

「ん? ……ああ、遠いな。まだまだ遠い」

 私の言葉の意図に気づいてくれたのか、織田翔はいつになく物憂げな顔をした。

「なぁ、木根」

「……何?」

「このあと、ちょっと話があるんだ」

「……わかった」

 青空に雲が流れていく。
 時は流れて、少しずつ変化を迎える。
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