ヒーロー・チェーン: 伝染する呪い、選ばれた者が死ぬ都市伝説

清泪─せいな

文字の大きさ
13 / 54
Ep.2 恋人

.4 丘の上の公園

しおりを挟む
 大学からしばらく歩いた先にある、丘の上の公園。
 少し高くなった位置から、街を見渡せる見晴らしのいい場所で、きっと夜になるとデートスポットとかになったりするんだろうけど、平日昼間、周りに人は居なかった。
 青空の下でベンチに座ってのんびりするのが最高だろうな、とか今から聞くだろう話とは違う感想をあえて考えながら、私は前を行く織田翔の後をついて行った。

「あのさ、話ってのはさ……」

 織田翔は深呼吸をひとつし、ゆっくりと振り返った。
 頬を赤らめながら、真剣な面持ちでそう切り出した。

「俺と付き合ってくれないか? 俺、木根の事、前からずっと、好きなんだ!」

 チャラくてウザい、なんて思っていた織田翔が直球で告白してきて少し驚いた。
 そして、嬉しかった。
 私は、はい、と返事して頷く。

「あ、え、本当に? 本当に、今、はい、って言ったの?」

「はい」

 わざとらしく、返事を繰り返す。

「うおおおおおおおおおお!! やったーー!!」

 織田翔は今まで見たことないぐらいのガッツポーズと、聞いたことないぐらいの大声を上げて喜んでいた。
 まるで、見渡せる街中にその喜びを伝えようとしてるみたいだ。

 喜びたいのは、私も同じだ。
 けど、二人して大声を上げてはしゃぎまくるのには、場面として間違っている気がした。
 女子として、嬉しさを恥じらいと重ねて表現しなければ。

 モジモジ。

「ちょっ、正直、大学合格より嬉しいんだけど! うわっ、やべぇ、すげぇ!!」

 受験戦争への努力も報われたからか、織田翔のコメントは若干バカっぽかった。
 ただ、それさえ可愛く見えるのは、惚れた方の負けなんだろう。

 そうやって無邪気にはしゃぐ織田翔が、急に驚いた顔をして私の方を見つめる。

「あ、え、木根、どうしたの? なんで泣いてるの?」

 言われて私は自分の頬を触り、初めて自分が涙を流している事に気づいた。

「あ、えっと……その……私も、なの……」

 涙に気づけば、その理由など簡単にわかってしまう。
 はしゃぎたい気持ちを押さえつけたものだから、溢れる感情を言葉にするのに少し戸惑う。

「え?」

 心配するようにぐっと顔を近づける織田翔。
 少し前なら、嫌がっていた距離感も今は嬉しさで満たされる。

「私も、ずっと、好きだったの」

 一言、一言、区切って整理する溢れる感情。

 ずっと、好きだったから。
 きっと、それがこの涙の答えだろう。
 やっと、思いは通じて。
 もっと、織田翔を好きになれる。

 その嬉しさに、涙は勝手に零れ落ちた。

 こうして、私と織田翔は付き合うことになった。

 それから、私達は順風満帆な大学生ライフを過ごしていた。
 ダンスバカな織田翔も、ダンス関係以外のデートコースを組めるようになったし。
 お互いにバイトもしだしたので、お金に余裕があって、デートプランに幅も出来た。
 もちろん、織田翔は相変わらずダンスイベントに参加していて、私はそれを観に行ったりしていた。
 何度かローカルテレビ局主催のダンスイベントに出て、深夜帯だけどテレビ放送されたこともある。
 そういう時は織田翔はガチガチに緊張するので、結果としては散々なことが多いけど。

 安いアパートの一室を借りて、二人で住むことになった。
 私の中に小さな憧れがあって、アパートというのは私の提案だった。
 同棲については、両親の了解を得れた。
 織田翔は付き合うことになってから、私の家に足を運ぶことが多くなり、すっかり私の両親と溶け込んでいた。
 結果、両親はすっかり結婚を前提としたお付き合いだとして、同棲を認めてくれた。
 織田翔の両親には会えずではあったが、多忙な方々らしく子育ては放任主義なのだとか。

 狭い部屋に、二人。
 寄り添い合う、二人。
 憧れていた関係性は、しかしながら近くなりすぎた距離から問題が発生しだした。
 お互いを理解出来るあまり、喧嘩の数が増えた。
 喧嘩の理由は大小様々で、どっちが悪かったのかも言い合いの中でうやむやになっていった。
 解決方法は大体、怒りのやり場がなくなった私が家を飛び出し、いつものあの丘の公園に辿り着いて、それを織田翔が追いかけてきて、謝ってくれて、おしまい、だった。

 私が原因だとわかりきってる時も、言い方が悪かっただの、わかってやれなくて悪かっただの、どうにかして謝ってくれていた。
 ただ、私が原因で喧嘩になるということは、ほとんど無かったけれど。

 そういうひと騒動も、山あり谷あり、なんて軽く受け止めれるぐらい、私達は順風満帆だった。

 ――いや、《だった》、はずだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

皆さんは呪われました

禰津エソラ
ホラー
あなたは呪いたい相手はいますか? お勧めの呪いがありますよ。 効果は絶大です。 ぜひ、試してみてください…… その呪いの因果は果てしなく絡みつく。呪いは誰のものになるのか。 最後に残るのは誰だ……

悲報 スライムに転生するつもりがゴブリンに転生しました

ぽこぺん
ファンタジー
転生の間で人間以外の種族も選べることに気付いた主人公 某人気小説のようにスライムに転生して無双しようとするも手違いでゴブリンに転生 さらにスキルボーナスで身に着けた聖魔法は魔物の体には相性が悪くダメージが入ることが判明 これは不遇な生い立ちにめげず強く前向き生きる一匹のゴブリンの物語 (基本的に戦闘はありません、誰かが不幸になることもありません)

処理中です...