ヒーロー・チェーン: 伝染する呪い、選ばれた者が死ぬ都市伝説

清泪─せいな

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Ep.2 恋人

.10 事後報告

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「ヒーロー・チェーン?」

 事後報告にはなるけど、今日織田翔と会ったことを滴に話した。
 別れ話の延長線上――というか延長戦みたいな内容だったけど、話さないのも滴に対して裏切り行為な気がした。
 いつものように滴の家で食事を終えた後、私は話を切り出した。
 適当に流していたテレビの音に紛れても構わない程度の話題だと、私は思っていた。
 滴はTVの音量を少し下げて話に集中しようという姿勢になった。

「ふーん、初めて聞いたなぁ、そんな噂話」

 滴はリビングでくつろぎながら、リモコンでチャンネルを次々と変えた。
 夜の報道番組の時間帯とはいえ、都市伝説を取り上げる番組は無かった。

「流石に無いでしょ。ワイドショーのひとネタレベルだもん」

「あ、じゃあネットで調べてみますか」

 そう言って、滴はスマートフォンを操作しだした。
 滴は、織田翔について何も聞かなかった。
 元カレとこっそり会っていたことを快く思っていない素振りは、微塵も見せなかった。
 信頼されてるというのだろうか。
 嫉妬されないというのも、それはそれで淋しい。

「お、これかな?」

 検索結果がヒットしたのだろう。
 滴が少し嬉しそうに呟いた。
 今のところは、都市伝説レベルとして信じていないようだ。
 話のネタぐらいに思ってるのかもしれない。

「その彼も首筋に痣、あったの?」

「うん、右側に、縦に細長いの」

「へぇー、えっと、冷たかった?」

「冷たい?」

 予想外の質問に私は驚いて安易なオウム返しをした。
 痣に温度なんてあるのだろうか?
 あったとしても体温と同じだろうから、生温かいとかだろうし。
 逆に冷たいってことは、痣ができた人の体全体も冷たくなったりするのだろうか?
 あれか、ヒーロー云々の話からして、もう人間ではないって設定なのかな?

「痣。触ると冷たいんだって」

 滴は首筋を擦りながら言った。
 彼の首筋には痣はない。
 細く白い、綺麗な首筋。
 その綺麗なラインに、汚すような痣はなかった。

「わかんない、触ってないし」

「うーん、じゃあ真偽はわかんないねぇ」

「真偽って。冷たかったら信じてた?」

 私の問いに、うーんと唸りながら滴は前髪を軽くかきあげた。
 ちょっとした思考時間に取る癖だ。
 大きな悩みではなく、例えば晩御飯を何にするかといった簡単な悩みのときにする仕草だった。

「丸ごとは信じられないけど、その彼みたいに來未を守る準備はするかな?」

「準備って?」

「うーん、ちょっとスタンガン買ってこようかな」

「モンスターにスタンガン効くのかなぁ?」

 スタンガンって、そんなに簡単に買えるものなのだろうか?
 痴漢対策に持ってる人もいるって聞くし、お手軽でお手頃なのかもしれない。
 それに、スタンガン程度でモンスターを退治できるのなら、都市伝説の怪異としてはあまりにも弱すぎる。
 口裂け女とかてけてけとかそういうのを想像するに、スタンガンで退治できるならこんなにネットで流行るぐらいの話にはならないだろうし。
 むしろ、それならスタンガンが流行っているはずだ。

 要するに、滴もまともにこの話を捉えてないのだろう。
 織田翔の無理くり持ってきた足掻きみたいな話だと、思ってるのかもしれない。
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