ヒーロー・チェーン: 伝染する呪い、選ばれた者が死ぬ都市伝説

清泪─せいな

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Ep.2 恋人

.9 虚ろに揺らぐ

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 私を守るということは、自身の命を投げ出すということ。

「だからさ、暫くそばにいてほしい。全てが終わるまで、俺に守らせて欲しい」

 モンスターがいつ現れるかは、ワイドショーでは言ってなかった。
 元から決まってないのか、誰も証言できていないのか。
 そもそもモンスターなんてモノがいるかどうかも、怪しい話なんだ。

「あのね、翔。私ね、付き合っている人がいるの」

「そ、そっか。そうだよな」

 正直、ヒーロー・チェーンとかいう都市伝説も、織田翔のことも信じられない。
 姑息だとは思わないけど、しつこい性格の織田翔が、嘘を並べて私を口説こうとしてるのかもしれない。
 だから、私は試した。
 滴のことを言えば、織田翔はどう反応するのか。

「じゃあ、その彼氏にも説明させてくれないか。ヒーロー・チェーンのこと」

「説明、って。ねぇ、何でそんなにヒーロー・チェーンのこと信じられるの?」

 あまりに嘘臭い都市伝説を、こんなに信じられるのは不思議だ。
 私なら例え痣が出来たって、偶然で済ますし、馬鹿らしくて人に話そうなんて思わない。

「俺さ、やっぱりまだ來未のことが好きなんだよ」

 織田翔は首筋を擦りながらそう言った。
 それ以上、何も言わなかった。
 まるで、それが全てだと言わんばかりに。

 やめてほしい。
 そういうことを真っ直ぐな瞳で言うのは。
 さっきまで虚ろな瞳だったのに、一瞬かつての力強さを取り戻していた。 
 あのキラキラした、瞳。
 夢を追う、瞳。
 今はその対象が私なのだろうか?
 私を守ることが、彼の夢になったのだろうか?

 織田翔は、今、私を選んだのか。
 全てを捨てて。

 私は――私は何を選ぶ?

 織田翔。
→佐波滴。

「ごめんね、翔。私、翔の言ってること信じられない」

 輝いていた瞳が、再び虚ろに揺らぐ。
 織田翔の瞳を曇らせているのは、私のせいなのだろうか?

「そっか……そうだよな。久しぶりに会っていきなりこんな話、信じられないよな」

 織田翔に嘘をつかれたことは無かった。
 だけど、あまりにもあまりな話だ。

 ヒーロー・チェーン?
 都市伝説?
 なんだそれは、としか言いようが無い。
 
 織田翔はアメリカに渡り、夢に破れ、疲れ果て、壊れてしまったのだろう。
 だから、ありえないヒーローごっこにすがってるのかもしれない。

「ねぇ、話はそれで終わり?」

 そう思うと、急に冷めた。
 いや、最初から冷めていたことに気づいただけかもしれない。
 私は、織田翔との恋愛ごとからすっかり覚めてしまっている。
 その感覚は、自分でも驚くほど言葉として音に乗る。

「ああ、終わり、だ」

 織田翔の歯切れが悪くなった。
 私に取りつく島もないことを理解したのだろう。
 虚ろに揺らぐ瞳に、悲哀の色が混ざる。
 今すぐ泣き出してしまいそうだった。
 元カレのそんなみっともない姿を見たくなかったので、私は早々にこの場を去ることにした。

「もうこれで最後だから。さようなら」

 織田翔は返事もろくにせず、頷くだけだった。
 一発ぶん殴ってやれる空気じゃなかった。
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