ヒーロー・チェーン: 伝染する呪い、選ばれた者が死ぬ都市伝説

清泪─せいな

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Ep.3 自己

.2 愚妹

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 なんかわーわー言うとります。

 引きこもりの兄貴なんて放っておけばいいのに、クソ妹はどうも俺を引きずり出したいらしくてね。
 傍観決め込んだ両親様と、毎日毎日、不毛な対立。

 俺がニートになったのは、そもそも両親様のせい。
 お金払って養うのも、罪滅ぼしの一環だろ?
 だったら、俺がそれに甘んじて何が悪い?

 兄だけ甘やかされるのは不公平?
 ふーん。そう思うなら、てめぇもどん底味わってみろや、クソ妹。

 ああ、殴りたい。
 わーわーうっせぇ。
 妹、ぶん殴りてぇ。

 ボコボコにすれば静かになるか?
 いや、静かになるまでボコボコにしてやるか?

 ……けどな。

 部屋を出たら負けなわけよ。
 両親様の贖罪も、そこで終わるわけ。
 それは駄目でしょ。

 家族としてね、罪の重さをしっっっかり理解させてやらんと。
 だから俺は出ん。
 一歩たりとも、出ん。

「オイ、クソ兄貴! 出てこい!!」

 ……ついに乗り込んで来やがった。
 ここまで来るとは思わなかった。
 いや、勝手に思い込んでただけか。

「起きてんでしょ! 出て来いって言ってんの!」

 ドアを壊す勢いのノック。
 最終的には蹴破るつもりか?

「ねぇ、お願いだから! 出てきてよ!!」

 うるせぇな……。
 なんか、必死すぎて気持ち悪いんだが。

「お願い、お願いだから、早く!!」

→わかったよ、出ればいいんだろ?
 だが、断る。

 ──と思ったのに。

 俺は、嫌々ながらドアを開けた。
 そしたら、そこには──

 全身、真っ赤に汚れたクソ妹が立っていた。

 ──は?

 おい、なんだ、その血。
 なんでお前、そんな真っ赤に染まってんだ?

 そもそも、なんでお前が俺に──
 そんなにもたれかかってくる?

 俺の胸に額を押し付けるようにして。
 ぐらぐらと震えながら。

 おい。

 何して──

 腹に。

 冷たくて、痛い、何かが。
 ずぶり、と。

 突き刺さった。

「やっぱり。やっぱりだ」

 ゆっくりと、一歩。
 クソ妹が後ずさる。

 充血しきった目。
 涙を流しながら、それでも俺を睨みつけて。

 ──は?

 やっぱりって、何だよ?

 腹が痛くて、上手く声が出せねぇ。
 俺の腹には、冷たい何かが突き刺さってる。
 それが、俺の血で生温かくなるのがわかる。

「首筋の痣」

 痣?

 言われて、首筋を触る。
 ざらり、とした感触。
 ……これが、痣?

「ヒーロー・チェーンって知ってる?」

 ああ。
 マジか。

 ステマじゃなかったのかよ、クソ。

「兄貴、どうせクソだから自分のことしか考えてないんでしょ?」

 は?
 自分の兄貴を刺したヤツが、クソ呼ばわり?

 おいおい、ふざけんなよ。
 リア充イベントじゃねぇのかよ。
 オナニーも許されねぇのかよ。
 理不尽どころかどん詰まりじゃねぇか。

 ──自分を助けたければ、変身して死ね、ってか。

「さっきね、お母さん、モンスターに喰われたよ」

 ……は?

「きっとお父さんも玄関先で喰われてる。モンスターの口元に、足、引っ掛かってた」

 さっきの騒ぎ。
 それか。

 モンスターは標的の俺を殺すまで、通りすがりを殲滅する。

「私ね、死にたくないの」

 クソ妹は、俺の腹に刺した何かを、ぐいと引き抜く。

「こんなクソ兄貴のせいで、死にたくないの!」

 また、突き刺す。

 痛い。

 もう痛すぎて、一周回って、また痛い。
 感覚なんて、さっさと消えてくれりゃいいのに。
 痛さだけが、鮮明に残ってやがる。

「死にたくないの。だから早く死んでよ!」

 グシャ、グシャ、グシャ。

 よくもまぁ、刺しやがる。

 でもな、妹よ。
 すまんが、俺はしぶといらしい。

 ──ほら。

 聞こえるか、妹よ。
 足音だ。
 唸り声だ。

 もう、間に合わん。

 ……なぁ、バカかお前。
 刺しにくる暇があったなら、逃げればよかっただろ?

 ──ああ。
 やっぱり、クソだな。

 お前は。
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