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Ep.4 兄弟
.1 尊敬する兄
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僕は兄のことを尊敬している。
僕には八つ上の兄がいる。
藤崎界。
身長は高く、学校では大体最後尾に並ばされることが多く、その高身長を活かしてバスケ部に所属して目覚ましい活躍を見せていた。
文武両道で、学業も優秀。
成績は常にトップクラスだった。
運動も出来て頭も良いとなると持て囃される代わりに妬まれる対象になりやすいのだけれど、界はその成績を努力して手にしたのだと隠すことなく見せていたので、妬んでくる相手も言葉を失った。
異様なまでの努力というものは盲目に突っ走っているようにも見えるのだと思われる。
誰も軽々しく羨むことができなかった。
真似することなどしたくないと思わせるほど、不格好な様を妬む矛先として捉えようとしないのだろう。
妬むならもっとわかりやすく簡単そうに見えるものを選ぶのだとか。
界が天才肌なら、逆に救われた人間は多いのだろうと思う。
諦めもつくし、妬みやすかったのだと思う。
自分の能力の無さを棚に上げて、たどり着けない理由として界を祭り上げるなんてことも出来ただろう。
ただ、界は血のにじむ様な努力をこれでもかと見せつけていたので、自分達が出来ないことの理由への身代わりにはできなかったのだろう。
そんなわけで僕の兄、藤崎界は高身長で眉目秀麗でいて、文武両道といった漫画に出てくる鼻につくエリートみたいな人物だが、敵をあまり作らずに生きていて、それは学生時代だけに留まらず社会に出ても同じように続いていた。
完璧超人みたいな兄に対して、それでもめげずに敵に回ろうとする人物も中にはいたが、敵う相手では無いことは一目瞭然で、何より界自身がまともに相手にしていなかったので、虚しくその敵意は空回りしていた。
対して僕はというと、八つも歳が離れたせいか兄とは似ても似つかない存在だった。
冴えない男、藤崎或人、僕の名前だ。
父親に似て高身長に育った兄とは違い、母親に似て低身長に育った僕は学生生活で列を並んだ際は先頭ら辺を並ばされることが多く、運動神経は無い方なので部活動に励むことはしなかった。
運動部がダメなだけで、文化部に入れば良かったのにと言われたりしたのだが、そもそも人と交流することに苦手意識があるので部活に入るということすら嫌だった。
学業は授業内容に辛うじて追いついているぐらいで、成績は中の下ぐらいの位置をキープしていた。
兄の出来が良すぎたせいか、両親からは最初から期待されていない節があって、成績が中途半端でも特に何か言及されることは無かった。
兄が両親の期待に応え続けてくれるおかげで満足しているらしく、後発の僕には、自由にさせてやる、という名目の放ったらかしを実践しているようだ。
おかげで伸び伸びとやらしてもらっているので、僕は努力というものをしたことがない。
別に天才肌という訳では無いので、何の成果も残さない怠け者ではあるのだけど、兄の異様な努力の様子を見てきたものとしてあの道を倣って進む勇気は無かった。
兄の存在だけで、僕は思いもよらぬところから妬まれたり見下されたりした。だが、すぐに『取るに足らない』と判断され、対象から外された。
もし僕が兄と正反対の成績最下位だったら、気持ちよく見下げられただろう。
けれど、中途半端に真ん中あたりだから、同情票が生まれたのかもしれない。
敵にするにも、サンドバッグにするにも歯応えが無いぞと判断されたのかもしれない。
そんなわけで、僕の周りにも敵はあまりいなかった。
兄とは違い味方もいなかったのだけれど、それは僕自身が積極的に作ろうとしなかった賜物なので仕方がなかった。
そんな僕が大学を卒業して、父親の経営する会社に就職した頃、兄はすでにその会社で役職に就いていた。
親子ということで会社での地位を渡される程、父親は甘い親では無いので兄はちゃんと成果を上げて役職に就いたのだと思う。
努力を重ね、きっちりと期待に応える。
藤崎界という人物はそうしたことを零すことなく行える人物で、僕の尊敬する兄である。
僕には八つ上の兄がいる。
藤崎界。
身長は高く、学校では大体最後尾に並ばされることが多く、その高身長を活かしてバスケ部に所属して目覚ましい活躍を見せていた。
文武両道で、学業も優秀。
成績は常にトップクラスだった。
運動も出来て頭も良いとなると持て囃される代わりに妬まれる対象になりやすいのだけれど、界はその成績を努力して手にしたのだと隠すことなく見せていたので、妬んでくる相手も言葉を失った。
異様なまでの努力というものは盲目に突っ走っているようにも見えるのだと思われる。
誰も軽々しく羨むことができなかった。
真似することなどしたくないと思わせるほど、不格好な様を妬む矛先として捉えようとしないのだろう。
妬むならもっとわかりやすく簡単そうに見えるものを選ぶのだとか。
界が天才肌なら、逆に救われた人間は多いのだろうと思う。
諦めもつくし、妬みやすかったのだと思う。
自分の能力の無さを棚に上げて、たどり着けない理由として界を祭り上げるなんてことも出来ただろう。
ただ、界は血のにじむ様な努力をこれでもかと見せつけていたので、自分達が出来ないことの理由への身代わりにはできなかったのだろう。
そんなわけで僕の兄、藤崎界は高身長で眉目秀麗でいて、文武両道といった漫画に出てくる鼻につくエリートみたいな人物だが、敵をあまり作らずに生きていて、それは学生時代だけに留まらず社会に出ても同じように続いていた。
完璧超人みたいな兄に対して、それでもめげずに敵に回ろうとする人物も中にはいたが、敵う相手では無いことは一目瞭然で、何より界自身がまともに相手にしていなかったので、虚しくその敵意は空回りしていた。
対して僕はというと、八つも歳が離れたせいか兄とは似ても似つかない存在だった。
冴えない男、藤崎或人、僕の名前だ。
父親に似て高身長に育った兄とは違い、母親に似て低身長に育った僕は学生生活で列を並んだ際は先頭ら辺を並ばされることが多く、運動神経は無い方なので部活動に励むことはしなかった。
運動部がダメなだけで、文化部に入れば良かったのにと言われたりしたのだが、そもそも人と交流することに苦手意識があるので部活に入るということすら嫌だった。
学業は授業内容に辛うじて追いついているぐらいで、成績は中の下ぐらいの位置をキープしていた。
兄の出来が良すぎたせいか、両親からは最初から期待されていない節があって、成績が中途半端でも特に何か言及されることは無かった。
兄が両親の期待に応え続けてくれるおかげで満足しているらしく、後発の僕には、自由にさせてやる、という名目の放ったらかしを実践しているようだ。
おかげで伸び伸びとやらしてもらっているので、僕は努力というものをしたことがない。
別に天才肌という訳では無いので、何の成果も残さない怠け者ではあるのだけど、兄の異様な努力の様子を見てきたものとしてあの道を倣って進む勇気は無かった。
兄の存在だけで、僕は思いもよらぬところから妬まれたり見下されたりした。だが、すぐに『取るに足らない』と判断され、対象から外された。
もし僕が兄と正反対の成績最下位だったら、気持ちよく見下げられただろう。
けれど、中途半端に真ん中あたりだから、同情票が生まれたのかもしれない。
敵にするにも、サンドバッグにするにも歯応えが無いぞと判断されたのかもしれない。
そんなわけで、僕の周りにも敵はあまりいなかった。
兄とは違い味方もいなかったのだけれど、それは僕自身が積極的に作ろうとしなかった賜物なので仕方がなかった。
そんな僕が大学を卒業して、父親の経営する会社に就職した頃、兄はすでにその会社で役職に就いていた。
親子ということで会社での地位を渡される程、父親は甘い親では無いので兄はちゃんと成果を上げて役職に就いたのだと思う。
努力を重ね、きっちりと期待に応える。
藤崎界という人物はそうしたことを零すことなく行える人物で、僕の尊敬する兄である。
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