ヒーロー・チェーン: 伝染する呪い、選ばれた者が死ぬ都市伝説

清泪─せいな

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Ep.5 母子

.4 だいじょうぶ

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 剛志を後ろの席に乗せて自転車を漕いでいく帰り道。
 私はやっぱり気になってしまったので、保育園で何があったのか剛志に聞くことにした。
 剛志は同じ組の誰かを助けたヒーローだというのに、武勇伝を語るような素振りは見せず、何故だか悪いことをしたみたいに言いにくそうに詰まりながら、あったことを話し出した。

 同じ組にまさはる君という保育園児にしては体格の良い子がいるのだけど、その子はどうも普段からぼぉーっとしている所があって、悪い言い方をすれば鈍臭い男の子で、まさはる君よりほんの少し背の低いきょうへい君という子に何かと絡まれてるんだそうだ。
 どうやら剛志の言い方からすると、いじめに近いようなだる絡みらしい。
 そのきょうへい君のだる絡みが今日は一段と酷かったらしい。

「ダメだよ、っていったの」

 まさはる君へのきょうへい君のだる絡みに待ったをかけたのが、剛志なのだという。
 はたから見ていたら、もう絡みとかイジりとかのレベルを超えるとこまでになってしまってたのかもしれない。
 止めなきゃ、とか、助けなきゃ、とか思ってしまうレベルにだる絡みは変貌してたのかもしれない。
 私は直接見ていないし、保育士の先生方もそこの話はしてくれなかったので、私は剛志の言葉をただ信じることにした。
 何故だか言いにくそうにしているが、こんなに凝った嘘をつく必要はないだろうし、そんな嘘を思いつく子では剛志は無い。

「そしたら、きょうへいくんが、あそんでるのにじゃまするなって」

 だる絡みに割って入ってこられて、矛先が剛志に向いたということか。
 たちが悪い話じゃないか、それで剛志は怪我までしてるってのに何で剛志が喧嘩を仕掛けたみたいに言えたんだ、あの年配の保育士。
 手が当たっただけ、と説明されたが本当は殴ろうとして外しただけなんじゃないだろうか?

 剛志から話を聞いて、私は当然のようにイライラしてきた。
 これを怒らない親がいるのだろうか?
 いじめられそうになってた子を助けた名誉の負傷と褒めてお終いにしろというのだろうか?

 冗談じゃない!

 帰ったらすぐ保育園に連絡して、抗議してやろうか。
 とにかくどういう状況であったか把握してるのか、ちゃんと問い詰めてやろうか。

「ここちゃん」

 私の苛立ちは自転車を漕ぐスピードにしっかり乗ってしまい、後部座席に座る剛志が背中をギュッと掴んでくる。
 私は背中に伝わる剛志の手の感触で、ふと我に返って苛立ちをグッと堪え、自転車のスピードを緩める。

「ごめん、つよくん。速くて怖かったね、ごめんね」

「ううん、だいじょうぶ」

 だいじょうぶ、それは剛志の口癖で、私の口癖だったものだ。
 昨年、保育士の先生にそれを指摘されて、私は驚きと共に日頃の言動を反省することになった。
 私は何かと大丈夫と答えて、物事を誤魔化して生きてきたところがあって、平穏無事な人生も多分その誤魔化しの賜物だったと言える。
 だから些細なこともどうしようも無いことも、全部に対して大丈夫と答えてきたところを、剛志がずっと見ていて真似てしまっていたようだ。

 平穏無事な人生を剛志にも生きて欲しいとは思うのだけど、私の真似事みたいに誤魔化すような生き方をなぞって欲しい訳では無かったので、保育士の先生に指摘された後から意識して大丈夫という言葉を使うのを止めた。

 でも気づくのが遅すぎたのか、真似をしていた剛志は口癖になってしまうぐらいすっかり定着してしまっていた。
 どうしたらその口癖を止めさせることが出来るのか、そんな悩み事を抱えてる最中だって言うのにこうしてまた剛志にだいじょうぶと言わせてしまう。

 私自身の口癖だったはずなのに、剛志から聞かされると凄く嫌な言葉に聞こえた。
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