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最終章 焼きそばパン大戦争
第百三十八話 一息
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もぐもぐもぐもぐ。
「私がここに来たのは、花菜さんに《お手伝い》を頼まれたから」
もぐもぐもぐもぐ。
「錫杖に四神の力を集めて奈菜に届けてくれって」
もぐもぐもぐもぐ。
「それで、その今奈菜が食べてる焼きそばパンはそのついで」
もぐもぐもぐもぐ。
「四神の力を集めるのに市内を移動することになるから、そのついでに奈菜達のお母さんが経営してるパン屋さんに寄って焼きそばパン持っていってやってくれって、花菜さんからのパシり受けたの」
もぐもぐもぐもぐ。
「というわけで、ハイ、これ」
もぐもぐもぐもぐ。
和美に口に突っ込まれた焼きそばパンを頬張りきった奈菜は、飲み物が無いことを僅かに不満に思いつつ、和美が差し出した金色の錫杖を受け取った。
「花菜さんに初めに渡された時は、神社のお土産みたいなミニチュアサイズだったんだけど、最後に訪れた白虎の力を授かった途端、大きいままになっちゃって」
ミニチュアサイズの時は上着なりなんなりのポケットに入れておけたのだが、大きくなってしまってからはずっと手に持ち運ぶしかなくなってしまった。白虎の試練場となった乃木やすらぎ霊園から中央の小山までの間、金色の錫杖を手に持ち歩く姿は変な目立ち方をしただろう。
「分家の人らが使う錫杖やん。何でこれ、今ウチに?」
渡された錫杖をまじまじと見つめる奈菜。分家の者らが戦闘にと使ってる様は散々見てきたが、手に持ってじっくり見たことは今まで無かった。
金色の錫杖は分家の者──総本家からの繋がりが薄い従者の血を受け継ぐ者たちが、本家より足りない力を補う為に使用しているものである。
時に物理的に、時に霊力的に、金色の錫杖は分家の者へと力を与え、力の使い方を指南する。
「ほら、奈菜って格闘術とかも学んできたんでしょ? その中に棍術とか杖術とかもあるんじゃないの? それで武器として──」
映画か何かで見た覚えのある格闘術を頭に浮かべ、和美は錫杖の有効性を奈菜に提案するが、言い切る前に奈菜は首を横に振った。
「そんなん習ってへんよ、ジャッキーやあるまいし・・・・・・いや、ジャッキーが使えてたんかも、イメージの話やけれども。でもほら、映画のイメージからすると使ってそうやん、棍とか杖とかって。椅子アクションの次ぐらいに、棒っぽい何かで戦ってる感じするやん?」
「ジャッキーの真偽は今必要ないでしょ!? 武器として使うんじゃなかったら、祓い師としての力を増幅させる何かがあるとか?」
和美の言葉を受けるものの、うーんと唸る奈菜。とりあえず自身の身体を起こす為の支えとして、錫杖はひとまず役に立った。焼きそばパン効果で動かせるようになったとはいえ、身体中傷だらけで自力で立ち上がるには一苦労だった。
体重を支える杖としては、その頑丈さはとにかく頼りになりそうだ。
「うーん、錫杖のことをわかりやすく説明するとなぁ、パワーアップアイテムやなくて、サポートアイテムなんよ。分家の人らが持ってるのは、その祓い師としての力を増幅する為にやなくて、力の流れをより明確にイメージして具現化する補助機みたいな理由なんよね」
地を揺らす衝撃として、地にめぐらす糸として、宙を飛ぶ閃光として、魔を穿つ弾丸として、拒絶する結界として。
祓い師の力はあらゆる形に成るのだが、それは使用者が具現化出来るかに寄るものである。
総本家に連なるもの達はその具現化に長けていて、分家となったもの達はその具現化が自由に出来なかった。
「別に力使えてるウチが錫杖持つ意味って、あんま無い気がすんねんけどなぁ。お姉ちゃん、何で和美にわざわざ持ってこさせたんやろ? あ、もしかして、これ、和美が持つとか?」
そう言って奈菜は自分の体の支えにしていた錫杖を和美へと向ける。じわじわと体力回復を得ている焼きそばパン効果のおかげで、数秒の間に真っ直ぐ立てるだけの体力は帰ってきたようだ。
奈菜に錫杖を向けられた和美は首を横に振った。
「それは四神の力が入った錫杖だから、私が使うには適してないんだって」
「誰に聞いたん、それ?」
「白虎。実は四神の力が入った錫杖なんて強そうだなと思ったから、もう一本サービスで渡してくれないかと頼んでみたんだけどさ──」
「何のがめつさなん、それ?」
「──私は白鬼、つまり白虎の下にいる存在だから他の三神の力の恩恵は得れないどころか弾かれる可能性もあるんだって。だから、その錫杖は私にとって白虎分引く三神分のマイナス装備らしい」
「呪いの装備化してもうてるやん、それ!」
呪いの装備と言われ奈菜は和美に錫杖を向けるのを止める。再び、自身の身体を支える杖として活用し始めた。
「そういうの含め、お姉ちゃんは知ってるやろうし、ウチに錫杖を渡してきたワケやねんな。ってことは、何かしら意味があると思って探らなあかんわけやな」
直接説明してくれれば話は早いのに、という愚痴を零したくなったが奈菜は、姉である花菜が自分に何かを期待しているのではないかとも感じていた。それこそ期待なのではあるが、花菜がこの事態にただ付け焼き刃を和美を巻き込んで渡してくるとも思えなかった。
ふー、と一息、奈菜は深く深く息を吐く。ボロボロの身体が震えるほど痛む。焼きそばパンの回復効果は確実にあるが、それでも全回復には程遠い。
それでもじっと回復を待っている時間は無い。
小山を彩る紅葉が揺れる。
その木の下に、小鬼が複数、生えだした。
「一息入れる暇だけは、くれたわけやね」
「感謝する?」
「アホかいな。殴り飛ばすだけや」
意味を探る、その為にまずは小鬼をこの錫杖で殴ってやろう。
奈菜はそう気持ちを昂らせると、傷ついた身体の痛みに歯を食いしばりながら駆け出した。
隣には友達──高城和美が共に駆け出していた。
「私がここに来たのは、花菜さんに《お手伝い》を頼まれたから」
もぐもぐもぐもぐ。
「錫杖に四神の力を集めて奈菜に届けてくれって」
もぐもぐもぐもぐ。
「それで、その今奈菜が食べてる焼きそばパンはそのついで」
もぐもぐもぐもぐ。
「四神の力を集めるのに市内を移動することになるから、そのついでに奈菜達のお母さんが経営してるパン屋さんに寄って焼きそばパン持っていってやってくれって、花菜さんからのパシり受けたの」
もぐもぐもぐもぐ。
「というわけで、ハイ、これ」
もぐもぐもぐもぐ。
和美に口に突っ込まれた焼きそばパンを頬張りきった奈菜は、飲み物が無いことを僅かに不満に思いつつ、和美が差し出した金色の錫杖を受け取った。
「花菜さんに初めに渡された時は、神社のお土産みたいなミニチュアサイズだったんだけど、最後に訪れた白虎の力を授かった途端、大きいままになっちゃって」
ミニチュアサイズの時は上着なりなんなりのポケットに入れておけたのだが、大きくなってしまってからはずっと手に持ち運ぶしかなくなってしまった。白虎の試練場となった乃木やすらぎ霊園から中央の小山までの間、金色の錫杖を手に持ち歩く姿は変な目立ち方をしただろう。
「分家の人らが使う錫杖やん。何でこれ、今ウチに?」
渡された錫杖をまじまじと見つめる奈菜。分家の者らが戦闘にと使ってる様は散々見てきたが、手に持ってじっくり見たことは今まで無かった。
金色の錫杖は分家の者──総本家からの繋がりが薄い従者の血を受け継ぐ者たちが、本家より足りない力を補う為に使用しているものである。
時に物理的に、時に霊力的に、金色の錫杖は分家の者へと力を与え、力の使い方を指南する。
「ほら、奈菜って格闘術とかも学んできたんでしょ? その中に棍術とか杖術とかもあるんじゃないの? それで武器として──」
映画か何かで見た覚えのある格闘術を頭に浮かべ、和美は錫杖の有効性を奈菜に提案するが、言い切る前に奈菜は首を横に振った。
「そんなん習ってへんよ、ジャッキーやあるまいし・・・・・・いや、ジャッキーが使えてたんかも、イメージの話やけれども。でもほら、映画のイメージからすると使ってそうやん、棍とか杖とかって。椅子アクションの次ぐらいに、棒っぽい何かで戦ってる感じするやん?」
「ジャッキーの真偽は今必要ないでしょ!? 武器として使うんじゃなかったら、祓い師としての力を増幅させる何かがあるとか?」
和美の言葉を受けるものの、うーんと唸る奈菜。とりあえず自身の身体を起こす為の支えとして、錫杖はひとまず役に立った。焼きそばパン効果で動かせるようになったとはいえ、身体中傷だらけで自力で立ち上がるには一苦労だった。
体重を支える杖としては、その頑丈さはとにかく頼りになりそうだ。
「うーん、錫杖のことをわかりやすく説明するとなぁ、パワーアップアイテムやなくて、サポートアイテムなんよ。分家の人らが持ってるのは、その祓い師としての力を増幅する為にやなくて、力の流れをより明確にイメージして具現化する補助機みたいな理由なんよね」
地を揺らす衝撃として、地にめぐらす糸として、宙を飛ぶ閃光として、魔を穿つ弾丸として、拒絶する結界として。
祓い師の力はあらゆる形に成るのだが、それは使用者が具現化出来るかに寄るものである。
総本家に連なるもの達はその具現化に長けていて、分家となったもの達はその具現化が自由に出来なかった。
「別に力使えてるウチが錫杖持つ意味って、あんま無い気がすんねんけどなぁ。お姉ちゃん、何で和美にわざわざ持ってこさせたんやろ? あ、もしかして、これ、和美が持つとか?」
そう言って奈菜は自分の体の支えにしていた錫杖を和美へと向ける。じわじわと体力回復を得ている焼きそばパン効果のおかげで、数秒の間に真っ直ぐ立てるだけの体力は帰ってきたようだ。
奈菜に錫杖を向けられた和美は首を横に振った。
「それは四神の力が入った錫杖だから、私が使うには適してないんだって」
「誰に聞いたん、それ?」
「白虎。実は四神の力が入った錫杖なんて強そうだなと思ったから、もう一本サービスで渡してくれないかと頼んでみたんだけどさ──」
「何のがめつさなん、それ?」
「──私は白鬼、つまり白虎の下にいる存在だから他の三神の力の恩恵は得れないどころか弾かれる可能性もあるんだって。だから、その錫杖は私にとって白虎分引く三神分のマイナス装備らしい」
「呪いの装備化してもうてるやん、それ!」
呪いの装備と言われ奈菜は和美に錫杖を向けるのを止める。再び、自身の身体を支える杖として活用し始めた。
「そういうの含め、お姉ちゃんは知ってるやろうし、ウチに錫杖を渡してきたワケやねんな。ってことは、何かしら意味があると思って探らなあかんわけやな」
直接説明してくれれば話は早いのに、という愚痴を零したくなったが奈菜は、姉である花菜が自分に何かを期待しているのではないかとも感じていた。それこそ期待なのではあるが、花菜がこの事態にただ付け焼き刃を和美を巻き込んで渡してくるとも思えなかった。
ふー、と一息、奈菜は深く深く息を吐く。ボロボロの身体が震えるほど痛む。焼きそばパンの回復効果は確実にあるが、それでも全回復には程遠い。
それでもじっと回復を待っている時間は無い。
小山を彩る紅葉が揺れる。
その木の下に、小鬼が複数、生えだした。
「一息入れる暇だけは、くれたわけやね」
「感謝する?」
「アホかいな。殴り飛ばすだけや」
意味を探る、その為にまずは小鬼をこの錫杖で殴ってやろう。
奈菜はそう気持ちを昂らせると、傷ついた身体の痛みに歯を食いしばりながら駆け出した。
隣には友達──高城和美が共に駆け出していた。
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