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純白
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かくして、私の尽力により、翔太はようやく別の学校へ転校することができました。とは言えさしもの私も、やはり不安はあったのですが……いくら私だって完璧な人間ではありませんから。しかし私の努力が正しかったことはすぐに証明されました。翔太に一人の、それも女の子の友達ができたからでございます。
翔太が言うには、翔太は最初、やはり上手く自己紹介ができなかったようでございます。自分を物珍しげに眺めてくる児童達の目が恐ろしく、自分の名前を言う間、翔太はずっと床の方を見ていたそうでございます。こういう他愛ないエピソードにも、翔太の奥ゆかしさが存分に現れているとは思いませんか? 相手の目を見て話せなどと教える輩もいるようですが、私に言わせればじろじろと人の顔を覗き込むなど、失礼だし気味が悪いし無作法だと思うのです。その点翔太は、押しつけがましい有象無象の説法になぞ耳を貸さず、あの幼さで自分を持ち、礼儀正しく振る舞っている。まったく、本当に翔太は私に似て、利発で賢く、よくできた息子だと思います。
自己紹介を終えた翔太は、一番後ろの空いている席に座ることになりました。二年生に上がったと同時に転校したので、教科書がないという問題だけは起きなかったようですが、翔太はこの先上手く馴染めるか、今度こそ友達ができるかどうか、そういうことばかりを気にしていたそうでございます。
しかし、翔太のその悩みごとは、完全な杞憂に終わりました。一時間目が終わり、二時間目が終わり、三時間目が終わり、昼休みになった頃、ひとりの少女が近付いて、翔太に声を掛けてきました。その少女は微笑みながら「はじめまして」と挨拶をして、「学校を案内してあげる」と申し出てくれました。もちろん、覚えておりますでしょう? そうです。他でもない、小学校二年生のあなたのことでございます。翔太はあなたの申し出にいたく感激したそうです。母親である私以外に、そのように優しく声を掛けてくれた人間ははじめてのことだったし、またその少女は今までに見た誰よりも可愛らしく、美しかったと。そんな美辞麗句がするりと喉から出てくるのだから、翔太は心根が優しいだけでなく、お世辞も大層上手だと我が子ながら惚れ惚れしました。
あなたは勝手のわからぬ翔太を学校案内に誘いますと、あちこちの教室を見学させ、わからないことがあったらなんでも聞いてくれと最後に締めくくりました。翔太は本当に感激して、私に何度も何度もそのことを熱心に語っておりました。あんなに優しくて親切で、その上可愛い女の子ははじめて見たと。私は、翔太の物言いを大袈裟過ぎるように感じましたが、そうやって何の衒いもなく人を賞賛するところも、翔太の美徳だと思って黙って聞いておりました。
とは言え、翔太がそれほど褒める少女が気にならないわけではなく、私は体育の時間を覗くべく、たまたま通りがかることにしました。運動場を覗くと翔太は、私の愛情と栄養たっぷりの立派な身体を揺らしつつ、ぜいぜいと喘ぎながらも一生懸命走っていました。私はフェンスにしがみつきながら翔太を応援していたのですが、すると走り終えた翔太が美しい汗を拭いつつ、座って見ていた一人の少女に近付いていくのが見えました。あれが翔太の言っていた少女だとすぐにわかりました。だって翔太が、私にも見せたことのないような笑顔で少女に話し掛けたのですから。
私は邪魔なフェンス越しに少女の顔をじっと見ました。もちろん、翔太に相応しい女かを見極めるためにです。結果としては合格でした。あなたは誇りに思うべきです。確かに、翔太と比べると随分と劣っていましたけれど、それでも他の有象無象に比べればなかなかの器量好しでしたし、これなら翔太の友達になっても構わないと思ったのです。
翔太が言うには、翔太は最初、やはり上手く自己紹介ができなかったようでございます。自分を物珍しげに眺めてくる児童達の目が恐ろしく、自分の名前を言う間、翔太はずっと床の方を見ていたそうでございます。こういう他愛ないエピソードにも、翔太の奥ゆかしさが存分に現れているとは思いませんか? 相手の目を見て話せなどと教える輩もいるようですが、私に言わせればじろじろと人の顔を覗き込むなど、失礼だし気味が悪いし無作法だと思うのです。その点翔太は、押しつけがましい有象無象の説法になぞ耳を貸さず、あの幼さで自分を持ち、礼儀正しく振る舞っている。まったく、本当に翔太は私に似て、利発で賢く、よくできた息子だと思います。
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しかし、翔太のその悩みごとは、完全な杞憂に終わりました。一時間目が終わり、二時間目が終わり、三時間目が終わり、昼休みになった頃、ひとりの少女が近付いて、翔太に声を掛けてきました。その少女は微笑みながら「はじめまして」と挨拶をして、「学校を案内してあげる」と申し出てくれました。もちろん、覚えておりますでしょう? そうです。他でもない、小学校二年生のあなたのことでございます。翔太はあなたの申し出にいたく感激したそうです。母親である私以外に、そのように優しく声を掛けてくれた人間ははじめてのことだったし、またその少女は今までに見た誰よりも可愛らしく、美しかったと。そんな美辞麗句がするりと喉から出てくるのだから、翔太は心根が優しいだけでなく、お世辞も大層上手だと我が子ながら惚れ惚れしました。
あなたは勝手のわからぬ翔太を学校案内に誘いますと、あちこちの教室を見学させ、わからないことがあったらなんでも聞いてくれと最後に締めくくりました。翔太は本当に感激して、私に何度も何度もそのことを熱心に語っておりました。あんなに優しくて親切で、その上可愛い女の子ははじめて見たと。私は、翔太の物言いを大袈裟過ぎるように感じましたが、そうやって何の衒いもなく人を賞賛するところも、翔太の美徳だと思って黙って聞いておりました。
とは言え、翔太がそれほど褒める少女が気にならないわけではなく、私は体育の時間を覗くべく、たまたま通りがかることにしました。運動場を覗くと翔太は、私の愛情と栄養たっぷりの立派な身体を揺らしつつ、ぜいぜいと喘ぎながらも一生懸命走っていました。私はフェンスにしがみつきながら翔太を応援していたのですが、すると走り終えた翔太が美しい汗を拭いつつ、座って見ていた一人の少女に近付いていくのが見えました。あれが翔太の言っていた少女だとすぐにわかりました。だって翔太が、私にも見せたことのないような笑顔で少女に話し掛けたのですから。
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