監禁

穏人(シズヒト)

文字の大きさ
3 / 6

3

しおりを挟む
 とは言え邪魔者がいなくなったのに違いはないので、私はまた改めて考えてみることにしました。とは言っても私の手が届くのはゴミ袋がひとつだけ。無いよりはマシだけど、私に使えそうなものはゴミ袋ひとつだけしかない。
 けれどそんなことを悲しんでいても仕方がないので、とりあえず布団の上を移動することにしました。両手両足を縛られていたのでとても大変だったけど、ズリズリと身体を動かせばなんとか移動することはできました。芋虫みたいに転がって転がって、やっとの思いでゴミ袋まで辿り着くと、袋を掴んで、結ばれている入り口を手探りで開けようとしました。ゴミ袋を開けたら、お兄さんは怒るだろうか。けれどなんとかしようと思うならやってみるより他にはない。藁にも縋るような思いで、私はゴミ袋に縋りました。なんにも見えない状態でなんとか開けようとしました。手がじんわり汗ばんで何度も滑ってしまったけれど、何度も何度も挑戦して、なんとかゴミ袋の結び目をほどくことができました。ほどけたと同時に、中のゴミが飛び出してきていくつかが手に当たって、私はそれを必死に触って使えそうなものを探しました。なんでもいい。なんでもいいから、何か使えるものが欲しい。そう思って、ベタベタしているものがついたゴミにも必死に触りました。
「何をしている!」
 でも、邪魔者はすぐに戻ってきてしまいました。いえ、ゴミ袋を開けるまでに結構時間が掛かっていたから、もしかしたら「すぐに」ではなかったかもしれないけれど、それでも、もっと時間の余裕があっても良かったんじゃないかと思います。私はお兄さんの声に、掴んだものを咄嗟に布団の下に隠しました。お兄さんが足音を立てて部屋の中に入ってきました。お兄さんはしゃがみ込むと私に向かって怒鳴りました。
「何をしていた! 何をしていた! 何をしていた! 何を」
「何もしてない! ゴミ袋が……ゴミ袋が突然破裂したの!」
 私は嘘をつきました。嘘をつくのは良くないってお母さんに言われていたけれど、ああいう状況でも嘘をついた私は悪い子なのでしょうか。お兄さんがびっくりしたみたいに黙り込んだので、その間に私は一生懸命言いました。
「ゴミが私の方に来て……汚いなと思って……か、片付けてくれませんか?」
 一瞬、このままにさせておいた方がいいかなとも思ったけれど、ゴミを嫌がってるフリをした方がやっぱりいいだろうなと思いました。もしこのままでいいと言って、せっかく手に入れたものを見つけられたら大変だ。もっとも、良い物を手に入れられた保証は何処にもなかったんですけれど。
 お兄さんはまたしばらく黙った後、「そ、そうだったんだ。ごめんね? 怒鳴ったりして」と言いながら、私の後ろに散らばったゴミを片付け始めました。私は隠したゴミが見つからないよう願いました。私の願いが通じたのか、お兄さんはゴミをゴミ袋に戻したら立ち上がりました。
「ええと……本当に、本当に、ごめんね? 怒鳴ったりして。何か……何か、して欲しいことはないかな?」
 その言葉に、私は瞬時に色々なお願いを思い浮かべました。手足を縛るのをやめてほしい。そもそも解放してほしい。でも、それを頼んだところで、叶えてくれるとは思えない。
 私はこれと言って良い返事が思い付けなくて、「いえ……特に……」なんて言葉を返しました。するとお兄さんは優しそうに見せたそうな笑顔を残して出て行きました。後には布団と、布団の上に転がっている私と、ゴミ袋と、宙に舞っているたくさんのホコリぐらいが残されました。もう一回ゴミ袋の中を漁ってみようか? でも、またゴミが散らばって、それをお兄さんに見られたらどんな反応をされるかわからない。しばらく時間を置いてみようか? すぐにゴミが飛び散ったら怪しまれるかもしれないけれど、ある程度時間を置いてなら、結び方が緩くて出てきたのかも……と思ってくれるかもしれない。
 そう考えた途端、急に眠気が襲ってきました。張り詰めていた気持ちが切れたのか、監禁されている状態に疲れが溜まったのか、両方か。抗っても仕方が無いし、時間潰しにはいいかもしれない。それに関しては丁度いいことに布団の上にいるわけだし、私は少し休むために意識を手放すことにしました。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

【1話完結】5分で人の怖さにゾッとする話

風上すちこ
ホラー
5分程度で読める1話完結のショートショートを載せていきます。主に、ヒトコワなホラー話です。

(ほぼ)5分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

意味が分かると怖い話【短編集】

本田 壱好
ホラー
意味が分かると怖い話。 つまり、意味がわからなければ怖くない。 解釈は読者に委ねられる。 あなたはこの短編集をどのように読みますか?

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

👨一人用声劇台本「寝落ち通話」

樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
恋愛
彼女のツイートを心配になった彼氏は彼女に電話をする。 続編「遊園地デート」もあり。 ジャンル:恋愛 所要時間:5分以内 男性一人用の声劇台本になります。 ⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠ ・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します) ・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。 その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。

意味がわかると怖い話

邪神 白猫
ホラー
【意味がわかると怖い話】解説付き 基本的には読めば誰でも分かるお話になっていますが、たまに激ムズが混ざっています。 ※完結としますが、追加次第随時更新※ YouTubeにて、朗読始めました(*'ω'*) お休み前や何かの作業のお供に、耳から読書はいかがですか?📕 https://youtube.com/@yuachanRio

処理中です...