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第4話金色の尾が揺れた夜
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政宗さんの屋敷で迎える二日目の夜。
夕食を終えて部屋へ戻る前、政宗さんが私の名を呼んだ。
「椿様。少し、外を散歩しませんか?」
夜の散歩なんて、八代家では許されなかった。
けれど政宗さんの声には逆らえなくて、自然とうなずいていた。
「……はい。行きたいです」
そう言うと、政宗さんは嬉しそうに目を細めた。
その瞳があまりにも綺麗で、胸の奥がじんと熱くなる。
◆
屋敷の庭は、月光に照らされて幻想的だった。
薄い霧が地面を這うように揺れている。
夜風は冷たいのに、不思議と寒くなかった。
政宗さんが隣にいるだけで、まるで空気の温度が違うみたい。
「椿様。……怖がらないで聞いていただきたい」
政宗さんが足を止めた。
私の方を向き、そっと手を伸ばす。
「私は、貴女に本当の私を知っていただきたいのです」
「本当の……?」
問い返すより早く、風が止んだ。
庭全体が静かになり、何かが満ちていく気配がした。
次の瞬間――
月が揺れたように見えた。
いや、違う。政宗さんの身体から、金色の光が溢れ出したのだ。
光がゆっくりと形を変え、彼の背後に――大きな尾が現れる。
一本、二本……
九本の尾が夜空を切り裂くように広がっていく。
その光景は恐ろしいほど美しくて、私は息を飲んだ。
「……これが、私の真の姿。九尾――政宗です」
九本の尾がゆらりと揺れ、その金色の光が私を包み込む。
怖くない。
むしろ、懐かしい。
胸の奥がざわざわして、涙が浮かびそうになる。
「椿様。あの日も……この姿で、貴女に助けられました」
政宗さんがそっと私の手を取る。
その手は温かくて、震えていたのは私の方だった。
「本当に……私が?」
「ええ。貴女は小さな手で、必死に私の尾を押さえてくれた。
涙で顔をぐしゃぐしゃにして、震えながら……それでも逃げなかった」
――その言葉と同時に、頭の中に光景が流れ込んできた。
泣きながら九尾の尾を抱きしめる小さな私。
金色の目で怯えながらも、手を伸ばす私。
そして、私の手に触れた瞬間に静かになる九尾――。
「……っ、思い出した……」
喉の奥が熱くなり、涙が溢れそうになった。
どうして忘れていたんだろう。
ずっと昔、確かに私はこの光に触れたのに。
「椿様、泣かなくていい。恐れさせたわけではありません」
政宗さんがそっと、私の頬に触れた。
指先がやさしく涙を拭う。
「貴女のおかげで、私は救われた。
だから――貴女が出来損ないなんて、絶対に言わせない」
「……政宗さん……」
「椿様。私はここで誓います。
貴女を守り、支え、二度と孤独にはさせないと」
その言葉に胸が震えた。
今まで誰からも言われたことのない、あたたかい言葉だった。
「怖くないですか? この姿の私が」
「……怖くないです。むしろ……少し、安心するんです」
自分でもなぜそんな言葉が出たかわからない。
けれど、九本の尾の光に包まれると、心が落ち着くのだ。
すると政宗さんは驚いたように目を瞬かせ、そしてゆっくり微笑んだ。
「……そう言われるのは、初めてです」
九尾の尾がふわりと私の背中を包む。
あたたかくて、まるで抱きしめられているみたいだった。
「椿様。私は貴女を……ずっと傍に置いていたい」
金色の瞳が、真っすぐに私だけを見ていた。
夜風の中、その言葉が胸の奥にじんわりと染み込んでいく。
――私は、この人のそばにいたい。
気づけば、自然とつぶやいていた。
「……私も、もっと……政宗さんを知りたいです」
政宗さんの尾がわずかに揺れ、彼は小さく息を吐いた。
「光栄です。椿様」
その声は震えていて、でも誰より優しかった。
その夜――
私は初めて、政宗というあやかしの“本当の姿”に触れた。
そして心のどこかで確信した。
この人は、私の人生を変える。
出来損ないだと言われ続けた私を、初めて肯定してくれた人だから。
夕食を終えて部屋へ戻る前、政宗さんが私の名を呼んだ。
「椿様。少し、外を散歩しませんか?」
夜の散歩なんて、八代家では許されなかった。
けれど政宗さんの声には逆らえなくて、自然とうなずいていた。
「……はい。行きたいです」
そう言うと、政宗さんは嬉しそうに目を細めた。
その瞳があまりにも綺麗で、胸の奥がじんと熱くなる。
◆
屋敷の庭は、月光に照らされて幻想的だった。
薄い霧が地面を這うように揺れている。
夜風は冷たいのに、不思議と寒くなかった。
政宗さんが隣にいるだけで、まるで空気の温度が違うみたい。
「椿様。……怖がらないで聞いていただきたい」
政宗さんが足を止めた。
私の方を向き、そっと手を伸ばす。
「私は、貴女に本当の私を知っていただきたいのです」
「本当の……?」
問い返すより早く、風が止んだ。
庭全体が静かになり、何かが満ちていく気配がした。
次の瞬間――
月が揺れたように見えた。
いや、違う。政宗さんの身体から、金色の光が溢れ出したのだ。
光がゆっくりと形を変え、彼の背後に――大きな尾が現れる。
一本、二本……
九本の尾が夜空を切り裂くように広がっていく。
その光景は恐ろしいほど美しくて、私は息を飲んだ。
「……これが、私の真の姿。九尾――政宗です」
九本の尾がゆらりと揺れ、その金色の光が私を包み込む。
怖くない。
むしろ、懐かしい。
胸の奥がざわざわして、涙が浮かびそうになる。
「椿様。あの日も……この姿で、貴女に助けられました」
政宗さんがそっと私の手を取る。
その手は温かくて、震えていたのは私の方だった。
「本当に……私が?」
「ええ。貴女は小さな手で、必死に私の尾を押さえてくれた。
涙で顔をぐしゃぐしゃにして、震えながら……それでも逃げなかった」
――その言葉と同時に、頭の中に光景が流れ込んできた。
泣きながら九尾の尾を抱きしめる小さな私。
金色の目で怯えながらも、手を伸ばす私。
そして、私の手に触れた瞬間に静かになる九尾――。
「……っ、思い出した……」
喉の奥が熱くなり、涙が溢れそうになった。
どうして忘れていたんだろう。
ずっと昔、確かに私はこの光に触れたのに。
「椿様、泣かなくていい。恐れさせたわけではありません」
政宗さんがそっと、私の頬に触れた。
指先がやさしく涙を拭う。
「貴女のおかげで、私は救われた。
だから――貴女が出来損ないなんて、絶対に言わせない」
「……政宗さん……」
「椿様。私はここで誓います。
貴女を守り、支え、二度と孤独にはさせないと」
その言葉に胸が震えた。
今まで誰からも言われたことのない、あたたかい言葉だった。
「怖くないですか? この姿の私が」
「……怖くないです。むしろ……少し、安心するんです」
自分でもなぜそんな言葉が出たかわからない。
けれど、九本の尾の光に包まれると、心が落ち着くのだ。
すると政宗さんは驚いたように目を瞬かせ、そしてゆっくり微笑んだ。
「……そう言われるのは、初めてです」
九尾の尾がふわりと私の背中を包む。
あたたかくて、まるで抱きしめられているみたいだった。
「椿様。私は貴女を……ずっと傍に置いていたい」
金色の瞳が、真っすぐに私だけを見ていた。
夜風の中、その言葉が胸の奥にじんわりと染み込んでいく。
――私は、この人のそばにいたい。
気づけば、自然とつぶやいていた。
「……私も、もっと……政宗さんを知りたいです」
政宗さんの尾がわずかに揺れ、彼は小さく息を吐いた。
「光栄です。椿様」
その声は震えていて、でも誰より優しかった。
その夜――
私は初めて、政宗というあやかしの“本当の姿”に触れた。
そして心のどこかで確信した。
この人は、私の人生を変える。
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