俺を忘れないで下さい。

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迷いウォーキング。

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俺の家に、何故か有給を取って三人が泊まることになった。
風祭曰く、急に倒れられても困るかららしい。
だが、坂丈さんと羽島さんは揃って難しい顔をしていた。
どうやら、有給を取ったはいいが思った以上に俺の家が狭かったらしい。
それは悪いことをした。
所詮は男の一人暮らしだからと、1LDKだったのが良くないんだろう。
四人で暮らすにはせめてもう二部屋ほど欲しいところだ。
結局、四人で仲良く床に布団を敷いて寝ることになった。
風祭のテンションはいつに無くハイで、坂丈さんも心無しかか楽しそうだ。
其れから深夜二時を周って、やっと四人は寝る体制に入った。


朝起きて何時も異常に身体が怠い事に気が付いた。
もう末期何だと、坂丈さんと居られる時間が少ないんだと悟った。
あーあ、眠い。
まあ、要らない心配掛けさせる訳には行かないから黙って起きてよ。
外はまだ薄暗いけど、ベランダに出て日が昇るのを待つ。
羽島さんと風祭の二人は一つの布団に包まって、仲良く引っ付いて寝ている。
同じ部屋の坂丈さんは、何処かへ行ってしまったみたいだ。
布団も丁寧に片付けられた状態だったから結構前に退出したらしかった。
ボンヤリと外を見つめる俺の耳に、聞き慣れた音楽が飛び込んでくる。

「日々を磨り潰していく貴方との時間は、
 簡単なことじゃ許せないくらいに、
 おかしくなってしまった。
 ‎安心したいだけの口先だけじゃいや。
 ‎どこまでも単純だ。
 ‎ここまでと悟った。
 座り込んでもう歩けなくなる。」

何処迄も澄んだ朝に、聴き馴染んだ高音ボイスが響く。
朝練?
解らないけど、いつも通り。
平常運転の彼とは何処までも違う俺がいた。
何処までも暗い俺とは裏腹に透き通った彼奴等。
一緒に居られる自信がなくて、

俺は家から抜け出した。

事の重大さに気付いたのは、それから二時間後のことで。
羽島さんが、中村が、走り回って俺の名前を呼んでいる。
来たLINEだって多かった。
でも、文字が読めなくなった俺には、なんて言ってるかなんて解らない。

ふらふらと当てもなく歩いて着いた寂れた神社で、腕を引かれる。
振り向いて、息を切らしていたのは、風祭だった。
その隣には、坂丈さんが立っていた。

「どんだけ心配したと思ってるん?」

弱った心に、その震えた声は良く応えた。
怒ってる?悲しんでる?
どれでも良いや。
心配したと叫ぶ君の声が聞こえにくくなってる何て、言えるわけない。
抱きしめる君の温もりも解らない何て、言えないから。
そんな君にただ一言。

「ごめんなさい」

そう呟いて、目を閉じた。
もう、身体は動かない。
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