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episode6:レダ・ハーケン救出作戦
第36話 生還へのSamba Adagio ②
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スコッツブラフの麓斜面を駆け上がり、高所に陣取る。ここからなら敵の動きがよく見えるはずだ。
野盗たちは南東からやってきた。地図によればその方角には、平地を挟んで旧バッファロークリーク――かつての野生動物保護区だった、入り組んだ丘陵地が拡がっている。
案外その辺りに、彼らの秘密の居留地があるのかも知れないが、この際興味は惹かれなかった。
ネオンドーザーのシルエットを視認したらしく、タタラ三機はやや速度を緩めて散開する様子を見せた。警戒しているらしい――それはそうだ。
〈案外冷静だなあ……どうする? 威嚇してみようか?〉
レダから暗号化通信。
「いや、威嚇はよそう。追い返してしまったら燃料電池が手に入らない」
〈だよね……! じゃあ、もう少し引き付けてから……前腕式火砲で間に合わない程度に追尾してみる〉
俺はちょっと眉をしかめた。今のネオンドールは装甲の半分ほどを失っていて、被弾時の危険性が高いのだ。これでレダが死んでは結局二人とも助からない。
「死角に廻られないように気をつけろよ」
〈おう。じゃあしっかり守ってくれよな、おっさん〉
「まあ、出来る限りフォローはする」
性能はこっちのケイビシがタタラより圧倒的に上だが、いつぞやの盾持ちの例もある。油断はできないのだ。
野盗どもはジリジリと距離を詰めてきた。モニターの映像を拡大するが、見た限り盾の類は装備していない。手持ちの装備は例の無反動砲が一機、残りは見たことのない火器だ。
〈おっさん、あの無反動砲持ってるやつから優先で。あれはヤバいんだ!〉
以前に相手した印象からすると、弾速が遅く命中率の悪い武器という印象しかなかったが。
(レダがそういうなら――!)
指示された通りの機体を二十ミリ・セミオートで狙う。やや重めに作られたこの火器は、連射力はないが射程と命中率が信頼できるとされていた。ホグマイト事件ではほとんど撃つ機会がなかったから、これが実質、初の本格戦闘だ。
(戦車ほどではないにしろ向こうも装甲はそれなりにある……まずは動きを封じる!)
お互いに同一メーカーの系列機体、基本構造は把握済みだ。ケイビシのライフルから放たれた弾は、一発がタタラの頭部アンテナを破損させて二発目がすっぽ抜け。三発目で本命の頭部カメラを撃ち抜いた。
〈やるじゃん! 助かったぜ。こっちは動けないから、あの無反動砲で狙われたら盾が間に合わない限り確実に命中する〉
「食らうとまずいか」
〈あんなんでも、一応九十ミリの対戦車多目的榴弾だからね。コクピットにメタルジェット喰らったらたぶん助からない〉
「おおう……」
残り二機がこちらに注意を向け、手にした武器を発砲してきた。十二.七ミリあたりの重機関銃らしいが、銃身は短く切り詰めてある。俺の背後の岩壁が弾着で火花と共に弾けた。
「おお、嫌だ嫌だ!」
俺はうめきながら左腕の盾に機体を隠した。
短機関銃に似て集弾率が低下しているようだが、あれも近距離で食らいたい代物ではない。カメラにでもあたればこっちの身動きが取れなくなるし、関節部でもやられれば転倒必至だ。何より――
「腕を吹っ飛ばされたら作業できなくなるからなぁ……!」
そう、俺はこの戦闘を勝つだけではダメなのだ。ケイビシの両腕を温存して、あのタタラどもからもぎ取った燃料電池をネオンドーザーに取り付けなければならないのである。
とはいえ、高所に陣取ったアドバンテージは大きかった。こちらは機体を盾と斜面の段差に隠せるのに対して、敵は坂道を登ってこなければならない。そして、タタラの機動性ではこの斜面を移動するには速度の低下が避けられない。
「むやみな殺生はしたくないんだがなあ。さっさと降りて、タタラを置いて撤収してくれれば助かるんだが」
言いつつも盾を構えて斜面を下り、片方のタタラに肉薄した。挟撃を防ぐために敵の片割れを遮蔽に取る戦法だ。レダから教えられた戦い方の一つだった。
接近を嫌って牽制に放たれた機銃弾が盾の表面に弾けた。神経に響く騒音に思わず目を瞬いてしまう。
次の瞬間、モニターを見て愕然とする――タタラが、いない。
〈左だ! 避けろおっさんッ!!〉
レダの鋭い叫びと、コンソールから警告音。キムラに貰ったARゴーグルに矢印マーカーが浮かぶ。左手の操縦レバーを思いっきり倒しながら、左人差し指でトリガーを引いた。
ライターに着火する音を数百倍にも拡大したような噴射音――市長のセンテンスから借りて左肩に装備しておいた、ロケットランチャーだ。とっさのことに効果は期待しなかったが――命中していた。
至近距離で爆発。盾を構えていたのが幸いしてこちらのダメージは最小限で済んだが、機体がバランスを失った。
「やべぇ……!」
新撰組もののドラマでおなじみの、池田屋の階段を転げ落ちるシーンを連想する。
冗談じゃない。必死に右脚部を突っ張ろうと足掻く。オートバランサーの助けもあって、どうにか山側に倒れた。
そこにもう一機のタタラが登ってきた。盾を手から離したケイビシに銃口が向けられる――
〈おっさん! クソがぁ!!〉
タタラの足元で爆炎が上がった。足場を失いぐらりと後ろへ傾く三機目のタタラ――
まともに発射できるかも危ぶまれた、例の前腕式火砲をレダが撃ったのだと直感した。
野盗たちは南東からやってきた。地図によればその方角には、平地を挟んで旧バッファロークリーク――かつての野生動物保護区だった、入り組んだ丘陵地が拡がっている。
案外その辺りに、彼らの秘密の居留地があるのかも知れないが、この際興味は惹かれなかった。
ネオンドーザーのシルエットを視認したらしく、タタラ三機はやや速度を緩めて散開する様子を見せた。警戒しているらしい――それはそうだ。
〈案外冷静だなあ……どうする? 威嚇してみようか?〉
レダから暗号化通信。
「いや、威嚇はよそう。追い返してしまったら燃料電池が手に入らない」
〈だよね……! じゃあ、もう少し引き付けてから……前腕式火砲で間に合わない程度に追尾してみる〉
俺はちょっと眉をしかめた。今のネオンドールは装甲の半分ほどを失っていて、被弾時の危険性が高いのだ。これでレダが死んでは結局二人とも助からない。
「死角に廻られないように気をつけろよ」
〈おう。じゃあしっかり守ってくれよな、おっさん〉
「まあ、出来る限りフォローはする」
性能はこっちのケイビシがタタラより圧倒的に上だが、いつぞやの盾持ちの例もある。油断はできないのだ。
野盗どもはジリジリと距離を詰めてきた。モニターの映像を拡大するが、見た限り盾の類は装備していない。手持ちの装備は例の無反動砲が一機、残りは見たことのない火器だ。
〈おっさん、あの無反動砲持ってるやつから優先で。あれはヤバいんだ!〉
以前に相手した印象からすると、弾速が遅く命中率の悪い武器という印象しかなかったが。
(レダがそういうなら――!)
指示された通りの機体を二十ミリ・セミオートで狙う。やや重めに作られたこの火器は、連射力はないが射程と命中率が信頼できるとされていた。ホグマイト事件ではほとんど撃つ機会がなかったから、これが実質、初の本格戦闘だ。
(戦車ほどではないにしろ向こうも装甲はそれなりにある……まずは動きを封じる!)
お互いに同一メーカーの系列機体、基本構造は把握済みだ。ケイビシのライフルから放たれた弾は、一発がタタラの頭部アンテナを破損させて二発目がすっぽ抜け。三発目で本命の頭部カメラを撃ち抜いた。
〈やるじゃん! 助かったぜ。こっちは動けないから、あの無反動砲で狙われたら盾が間に合わない限り確実に命中する〉
「食らうとまずいか」
〈あんなんでも、一応九十ミリの対戦車多目的榴弾だからね。コクピットにメタルジェット喰らったらたぶん助からない〉
「おおう……」
残り二機がこちらに注意を向け、手にした武器を発砲してきた。十二.七ミリあたりの重機関銃らしいが、銃身は短く切り詰めてある。俺の背後の岩壁が弾着で火花と共に弾けた。
「おお、嫌だ嫌だ!」
俺はうめきながら左腕の盾に機体を隠した。
短機関銃に似て集弾率が低下しているようだが、あれも近距離で食らいたい代物ではない。カメラにでもあたればこっちの身動きが取れなくなるし、関節部でもやられれば転倒必至だ。何より――
「腕を吹っ飛ばされたら作業できなくなるからなぁ……!」
そう、俺はこの戦闘を勝つだけではダメなのだ。ケイビシの両腕を温存して、あのタタラどもからもぎ取った燃料電池をネオンドーザーに取り付けなければならないのである。
とはいえ、高所に陣取ったアドバンテージは大きかった。こちらは機体を盾と斜面の段差に隠せるのに対して、敵は坂道を登ってこなければならない。そして、タタラの機動性ではこの斜面を移動するには速度の低下が避けられない。
「むやみな殺生はしたくないんだがなあ。さっさと降りて、タタラを置いて撤収してくれれば助かるんだが」
言いつつも盾を構えて斜面を下り、片方のタタラに肉薄した。挟撃を防ぐために敵の片割れを遮蔽に取る戦法だ。レダから教えられた戦い方の一つだった。
接近を嫌って牽制に放たれた機銃弾が盾の表面に弾けた。神経に響く騒音に思わず目を瞬いてしまう。
次の瞬間、モニターを見て愕然とする――タタラが、いない。
〈左だ! 避けろおっさんッ!!〉
レダの鋭い叫びと、コンソールから警告音。キムラに貰ったARゴーグルに矢印マーカーが浮かぶ。左手の操縦レバーを思いっきり倒しながら、左人差し指でトリガーを引いた。
ライターに着火する音を数百倍にも拡大したような噴射音――市長のセンテンスから借りて左肩に装備しておいた、ロケットランチャーだ。とっさのことに効果は期待しなかったが――命中していた。
至近距離で爆発。盾を構えていたのが幸いしてこちらのダメージは最小限で済んだが、機体がバランスを失った。
「やべぇ……!」
新撰組もののドラマでおなじみの、池田屋の階段を転げ落ちるシーンを連想する。
冗談じゃない。必死に右脚部を突っ張ろうと足掻く。オートバランサーの助けもあって、どうにか山側に倒れた。
そこにもう一機のタタラが登ってきた。盾を手から離したケイビシに銃口が向けられる――
〈おっさん! クソがぁ!!〉
タタラの足元で爆炎が上がった。足場を失いぐらりと後ろへ傾く三機目のタタラ――
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