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ACT2:妖魔王の旌旗
マーガンディ、再起動
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* * * * * * *
「スィナン! そこのリフト、あと半タラット持ち上げて!」
パキラは口に手を当てて叫んだ。
大地に仰向けに横たえられた渉猟械マーガンディを挟んで反対側、四足型輜重械のデッキからスィナンが了解の合図に手を振る。
輜重械の貨物用リフトからはキリアン麻の太いロープが垂れ下がり、その先はマーガンディの脚部装甲に結び付けられていた。重量にして10トングを超える分厚い鋼鉄の鍛造品がゆっくりと吊り上げられていく。
その下で、破損した絹糸束筒、大小合わせて10本近くを交換する難作業が進められていた。
「もっと引けぇええ!」
――えーいっと、引けぇえ。
地上ではサイードの号令に合わせ、沿道の商人や住民たちが、総勢50人ほど集まって別のロープを引いていた。
熱水管を通じて熱と潤いが与えられるまでは、絹糸束筒はその伸縮ストロークのちょうど中間の長さで硬直している。護令械の駆動装置として取り付けるには、一度これを引き伸ばし、取り付けできる長さまで変形させてやらなければならない。
普通ならこれは工房に設置された専用の機械や、作業用の小型護令械を動員して行われる作業だ。だが今この場では、それは一部を人力によって代行されていた。
二重構造の筒が引き伸ばされるにしたがって、械匠助手が操る作業用護令械の手で、きついカーブを描く三日月形の止め具が次々とはめ込まれていく。
ロープを引く側との呼吸が合わなければ、恐るべき力で撚り合された白玉巨蚕の糸はその瞬発性を望まれぬ形で発揮し、重い金属製の止め具をあたり一面に跳ね飛ばしながら捻じれ上がって縮んでしまうことだろう。
そうなればもちろん、大勢の負傷者が出るのだ。
――ぐーいっと、引けええ!
引き伸ばされた束筒の両端は、脚部骨格の規定位置に目釘で留められる。
目釘、といってもそれは、大人の太ももほどの直径をもつ、特殊鋼の円材だ。パキラはもう一台の小型護令械を操り、その目釘をハンマーでしっかりと打ちこんだ。
無事セットされた束筒には、熱水循環系の軟質管が真鍮の口金を介して取り付けられていく。管は何頭分にも及ぶ牛の皮を材料に緻密に縫い上げ、鉱油で防水したものだ。
「その主束筒の復路熱水管は、取り付けをちょっと待って! 先に爪先側の第三束筒をとりつけて、その外側に回すのよ!」
それは、このタイプの渉猟械の脚部駆動系について、ダールハムがパキラに教えたささやかな秘訣の一つだった。
マーガンディが属する系列の遊猟械は、脚部ひざ下外側の主束筒がやや細い。敏捷な動きを追求し、軽量化のために装甲の外形を絞った結果なのだが、それだけに熱水循環系にトラブルが発生しやすいのだ。
ゆえに、整備しやすいようあらかじめ軟質管の取りまわしを変えておく、というわけだった。
「了解です、お嬢様!」
スィナンがにやりと笑った。第三束筒の外側を通すことで、整備の際の工程は十段階ほど省くことが可能になる。師の技の精髄は、未熟ながらパキラにもしっかりと受け継がれていた。
妹弟子にあたるこのダールハムの養女は、まるで鍛冶司本人がそこにいるかのような懐かしさと緊張感を、助手たちに与えていた。
ヴォルターたちが峠の向こうへ飛び立ってすでに4時間――修理の工程は見積もりよりもいくらか早く、その半ば程を消化しつつあった。
「……ッ!」
激しいのどの痛み――単なる渇きではなく、声を張り上げ続けたことによる炎症にパキラは顔をしかめた。水が飲みたい。だが、この大夏の北西街道ぞいではことさらに水は貴重だった。
フェルディナンドにはまだ水がいくらか積んである。だがそれもブルゼンで積み込んだ十日以上前の水だ。沸かさなければ飲めるものではない。
「すみません! 誰かみ……ゲホッ」
水売りを探そうとして声を張り上げかけ、喉に入ってきた空気の冷たくささくれた味に、パキラは激しく咳き込んだ。眼尻へとにじむはずの涙すら、この乾ききった夜気の中では涙腺を出たふりをするだけだ。なんとか冷たい水で喉のほてりを冷やし、潤したかった。
「械匠さま、お水をご所望ですか?」
背後からふとそんな声が聞こえた。玉を転がすような艶やかな女の声だった。
「――誰?」
ぎくりとして振り向くと、そこには色白な若い女が水差しをもって立っていた。肋骨の下辺あたりまでしか覆わない絹の胴着に、華やかな巻きスカート――美しく行き届いてなおかつ儚げな装いは、普通に考えればどこかの富豪の側仕えをする少女といった風情だ。
背にはゆるく筒状に巻いた布を籐の細い籠にさして背負っている。どうやら野外で食膳を広げる時に使う、薄い敷物であろうかと思われた。
「あ、ああ。確か長者様の……」
パキラはその少女に見覚えがあった。長者ゴータムの随員の一人だ。だが、長者の一行は既にダンバーへ向かって移動を始めていたはずではなかったか?
そのことを尋ねると、少女は少し頬を赤らめて笑った。
「ぎゅうぎゅう詰めの乗り物の上で、少し気分が悪くなってしまいまして。それで、騎士様や械匠の皆様のお世話をするという名目で、残らせて頂いたのですよ」
「そうだったの……逃げ出したのかと思っちゃった」
少女は手に捧げ持った水差しで口元を隠し、くすくすと笑った。
「まあ、そんなこと……あり得ませんわ、私たちは長者様の奴隷というわけではありませんし、ましてやひどい仕打ちをされている身でもありませんもの。図々しいとお思いでしょうが、良かったら後でダンバーまでご一緒させてくださいまし――お水は、ほら、こちらに」
彼女は腰の小物入れからガラス造りの小ぶりな椀を取り出し、水を注いでパキラに手渡した。
「橘香草の若葉で香りと甘みを付けてあります。のどの痛みも取れますよ」
「ありがとう!」
喉を滑り落ちる水の冷たさと、それでいて柔らかなのどごしに、パキラは蘇生した思いだった。椀を少女に返すと、再び作業に戻る。
長者の側女は再び水差しを胸に抱き、フェルディナンドから降ろした荷物の側で見張りをする兵士たちのところへと歩いていくようだった。
さらに一時間――
「騎士様……ガラヴェイン卿! こちらの作業はもう大丈夫です。マーガンディの操縦籠へお入りください、脚部駆動系の最終調整をします!」
パキラが叫んだ。絹糸束筒の取り付けは完了、あとは調整と装甲の取り付けだけが残っていた。
「おお、ついに……!」
ガラヴェインは一か月にわたる憤懣を喜色に変換して満面に浮かべた。飛ぶように走り、渉猟械の操縦籠に躍り込む。
「械匠資格者以外の人は退避させてあります――起動して!」
操縦籠の蓋を閉じ、操縦桿の間に突き出た台座の上、水晶の擬宝珠にガラヴェインは手をかざした。
「我は盾! 我は剣! 必滅のこの身に、されど戴くは不滅の法身――マーガンディ、参陣!」
渉猟械に共通の起動詠唱とともに操縦籠の内壁前面が晴れあがり、仰向けに横たわる械体を照らす無数の星々が映った。
フフフ……ハハハハハハハ……ワハハハハハハハハ……!
夜空の下で、伝声管から奇怪な音が響いた。それは他の渉猟械と異なる奇妙な特徴だった。
――マーガンディは、起動時に吼えない。
笑うのだ。
足首の動きは軽く、そして力強いものに見えた。ここまでは問題ない。
パキラは口に手を当て、ガラヴェインに叫んだ。
「問題なさそうです! 立ってみて!」
「――お嬢様! 注水終わっております!」
スィナンが鋭く叫んだ。パキラはその一瞬、びくりと硬直し内心でほぞをかんだ。
熱水循環系に水を補充させる指示を出していなかったのだ。スィナンの叫びは、報告の形をとった厳しくも温かい叱咤だった。
「……ありがとう、スィナン!」
(マーガンディだって、喉が渇くわよね――しっかりしなきゃ、私!)
マーガンディが膝を折り曲げて引き付け、足を踏ん張ってゆっくりと立ち上がる。
乗械壇が普及していることからわかるように、熟練の騎士でも普通は仰臥姿勢から直立への移行は避けたがる。高い技量を要求される、困難な動作なのだ。
だが、ガラヴェインはこともなげにやってのけた。沿道の群集から歓声が上がる。
〈よし、いける! 今こそこのひと月の無念を晴らし、峠の向こうで戦うヴォルター殿と不屈の騎士に肩を並べようぞ!〉
「――もう少しだけ待って、装甲をつけます! それにガラヴェイン卿、マーガンディの剣は……」
〈半月盾を持って行けばいい。手槍が二本ついている!〉
本来は投擲用として装備されているものだ。パキラは不安になったが、もはやガラヴェインは止められそうにもない。叫び出したいような気持を押し殺して、マーガンディの脚部に装甲を取り付けていく――
ふとその時、頭上で金属のこすれる音が響き、操縦籠の蓋が開いたのがわかった。
「ガラヴェイン卿、どうしたんですか?」
適当な武器が見つかるまで待ってくれるのだろうか? パキラはそんな期待を持ったが、騎士の意図はそうではなかった。
「パキラ殿! マーガンディの修理、大儀であった! 見事な仕上がりだ。この書状をもってダンバーの械匠ギルドへ出向かれよ、姫様の署名入りの推薦状だ!」
縁を金泥で飾られた上質紙の筒が、パキラの胸元に降ってきた。その閉じ紐に施された封蝋に、パキラは息をのんだ。
「……こ、これ! 王家の――!?」
〈マーガンディ、出立する!〉
赤毛の少女の問いに応えはなく、マーガンディはトラスカン峠への長く緩やかな上り坂を、飾り布をなびかせながら疾走し始めていた。
「スィナン! そこのリフト、あと半タラット持ち上げて!」
パキラは口に手を当てて叫んだ。
大地に仰向けに横たえられた渉猟械マーガンディを挟んで反対側、四足型輜重械のデッキからスィナンが了解の合図に手を振る。
輜重械の貨物用リフトからはキリアン麻の太いロープが垂れ下がり、その先はマーガンディの脚部装甲に結び付けられていた。重量にして10トングを超える分厚い鋼鉄の鍛造品がゆっくりと吊り上げられていく。
その下で、破損した絹糸束筒、大小合わせて10本近くを交換する難作業が進められていた。
「もっと引けぇええ!」
――えーいっと、引けぇえ。
地上ではサイードの号令に合わせ、沿道の商人や住民たちが、総勢50人ほど集まって別のロープを引いていた。
熱水管を通じて熱と潤いが与えられるまでは、絹糸束筒はその伸縮ストロークのちょうど中間の長さで硬直している。護令械の駆動装置として取り付けるには、一度これを引き伸ばし、取り付けできる長さまで変形させてやらなければならない。
普通ならこれは工房に設置された専用の機械や、作業用の小型護令械を動員して行われる作業だ。だが今この場では、それは一部を人力によって代行されていた。
二重構造の筒が引き伸ばされるにしたがって、械匠助手が操る作業用護令械の手で、きついカーブを描く三日月形の止め具が次々とはめ込まれていく。
ロープを引く側との呼吸が合わなければ、恐るべき力で撚り合された白玉巨蚕の糸はその瞬発性を望まれぬ形で発揮し、重い金属製の止め具をあたり一面に跳ね飛ばしながら捻じれ上がって縮んでしまうことだろう。
そうなればもちろん、大勢の負傷者が出るのだ。
――ぐーいっと、引けええ!
引き伸ばされた束筒の両端は、脚部骨格の規定位置に目釘で留められる。
目釘、といってもそれは、大人の太ももほどの直径をもつ、特殊鋼の円材だ。パキラはもう一台の小型護令械を操り、その目釘をハンマーでしっかりと打ちこんだ。
無事セットされた束筒には、熱水循環系の軟質管が真鍮の口金を介して取り付けられていく。管は何頭分にも及ぶ牛の皮を材料に緻密に縫い上げ、鉱油で防水したものだ。
「その主束筒の復路熱水管は、取り付けをちょっと待って! 先に爪先側の第三束筒をとりつけて、その外側に回すのよ!」
それは、このタイプの渉猟械の脚部駆動系について、ダールハムがパキラに教えたささやかな秘訣の一つだった。
マーガンディが属する系列の遊猟械は、脚部ひざ下外側の主束筒がやや細い。敏捷な動きを追求し、軽量化のために装甲の外形を絞った結果なのだが、それだけに熱水循環系にトラブルが発生しやすいのだ。
ゆえに、整備しやすいようあらかじめ軟質管の取りまわしを変えておく、というわけだった。
「了解です、お嬢様!」
スィナンがにやりと笑った。第三束筒の外側を通すことで、整備の際の工程は十段階ほど省くことが可能になる。師の技の精髄は、未熟ながらパキラにもしっかりと受け継がれていた。
妹弟子にあたるこのダールハムの養女は、まるで鍛冶司本人がそこにいるかのような懐かしさと緊張感を、助手たちに与えていた。
ヴォルターたちが峠の向こうへ飛び立ってすでに4時間――修理の工程は見積もりよりもいくらか早く、その半ば程を消化しつつあった。
「……ッ!」
激しいのどの痛み――単なる渇きではなく、声を張り上げ続けたことによる炎症にパキラは顔をしかめた。水が飲みたい。だが、この大夏の北西街道ぞいではことさらに水は貴重だった。
フェルディナンドにはまだ水がいくらか積んである。だがそれもブルゼンで積み込んだ十日以上前の水だ。沸かさなければ飲めるものではない。
「すみません! 誰かみ……ゲホッ」
水売りを探そうとして声を張り上げかけ、喉に入ってきた空気の冷たくささくれた味に、パキラは激しく咳き込んだ。眼尻へとにじむはずの涙すら、この乾ききった夜気の中では涙腺を出たふりをするだけだ。なんとか冷たい水で喉のほてりを冷やし、潤したかった。
「械匠さま、お水をご所望ですか?」
背後からふとそんな声が聞こえた。玉を転がすような艶やかな女の声だった。
「――誰?」
ぎくりとして振り向くと、そこには色白な若い女が水差しをもって立っていた。肋骨の下辺あたりまでしか覆わない絹の胴着に、華やかな巻きスカート――美しく行き届いてなおかつ儚げな装いは、普通に考えればどこかの富豪の側仕えをする少女といった風情だ。
背にはゆるく筒状に巻いた布を籐の細い籠にさして背負っている。どうやら野外で食膳を広げる時に使う、薄い敷物であろうかと思われた。
「あ、ああ。確か長者様の……」
パキラはその少女に見覚えがあった。長者ゴータムの随員の一人だ。だが、長者の一行は既にダンバーへ向かって移動を始めていたはずではなかったか?
そのことを尋ねると、少女は少し頬を赤らめて笑った。
「ぎゅうぎゅう詰めの乗り物の上で、少し気分が悪くなってしまいまして。それで、騎士様や械匠の皆様のお世話をするという名目で、残らせて頂いたのですよ」
「そうだったの……逃げ出したのかと思っちゃった」
少女は手に捧げ持った水差しで口元を隠し、くすくすと笑った。
「まあ、そんなこと……あり得ませんわ、私たちは長者様の奴隷というわけではありませんし、ましてやひどい仕打ちをされている身でもありませんもの。図々しいとお思いでしょうが、良かったら後でダンバーまでご一緒させてくださいまし――お水は、ほら、こちらに」
彼女は腰の小物入れからガラス造りの小ぶりな椀を取り出し、水を注いでパキラに手渡した。
「橘香草の若葉で香りと甘みを付けてあります。のどの痛みも取れますよ」
「ありがとう!」
喉を滑り落ちる水の冷たさと、それでいて柔らかなのどごしに、パキラは蘇生した思いだった。椀を少女に返すと、再び作業に戻る。
長者の側女は再び水差しを胸に抱き、フェルディナンドから降ろした荷物の側で見張りをする兵士たちのところへと歩いていくようだった。
さらに一時間――
「騎士様……ガラヴェイン卿! こちらの作業はもう大丈夫です。マーガンディの操縦籠へお入りください、脚部駆動系の最終調整をします!」
パキラが叫んだ。絹糸束筒の取り付けは完了、あとは調整と装甲の取り付けだけが残っていた。
「おお、ついに……!」
ガラヴェインは一か月にわたる憤懣を喜色に変換して満面に浮かべた。飛ぶように走り、渉猟械の操縦籠に躍り込む。
「械匠資格者以外の人は退避させてあります――起動して!」
操縦籠の蓋を閉じ、操縦桿の間に突き出た台座の上、水晶の擬宝珠にガラヴェインは手をかざした。
「我は盾! 我は剣! 必滅のこの身に、されど戴くは不滅の法身――マーガンディ、参陣!」
渉猟械に共通の起動詠唱とともに操縦籠の内壁前面が晴れあがり、仰向けに横たわる械体を照らす無数の星々が映った。
フフフ……ハハハハハハハ……ワハハハハハハハハ……!
夜空の下で、伝声管から奇怪な音が響いた。それは他の渉猟械と異なる奇妙な特徴だった。
――マーガンディは、起動時に吼えない。
笑うのだ。
足首の動きは軽く、そして力強いものに見えた。ここまでは問題ない。
パキラは口に手を当て、ガラヴェインに叫んだ。
「問題なさそうです! 立ってみて!」
「――お嬢様! 注水終わっております!」
スィナンが鋭く叫んだ。パキラはその一瞬、びくりと硬直し内心でほぞをかんだ。
熱水循環系に水を補充させる指示を出していなかったのだ。スィナンの叫びは、報告の形をとった厳しくも温かい叱咤だった。
「……ありがとう、スィナン!」
(マーガンディだって、喉が渇くわよね――しっかりしなきゃ、私!)
マーガンディが膝を折り曲げて引き付け、足を踏ん張ってゆっくりと立ち上がる。
乗械壇が普及していることからわかるように、熟練の騎士でも普通は仰臥姿勢から直立への移行は避けたがる。高い技量を要求される、困難な動作なのだ。
だが、ガラヴェインはこともなげにやってのけた。沿道の群集から歓声が上がる。
〈よし、いける! 今こそこのひと月の無念を晴らし、峠の向こうで戦うヴォルター殿と不屈の騎士に肩を並べようぞ!〉
「――もう少しだけ待って、装甲をつけます! それにガラヴェイン卿、マーガンディの剣は……」
〈半月盾を持って行けばいい。手槍が二本ついている!〉
本来は投擲用として装備されているものだ。パキラは不安になったが、もはやガラヴェインは止められそうにもない。叫び出したいような気持を押し殺して、マーガンディの脚部に装甲を取り付けていく――
ふとその時、頭上で金属のこすれる音が響き、操縦籠の蓋が開いたのがわかった。
「ガラヴェイン卿、どうしたんですか?」
適当な武器が見つかるまで待ってくれるのだろうか? パキラはそんな期待を持ったが、騎士の意図はそうではなかった。
「パキラ殿! マーガンディの修理、大儀であった! 見事な仕上がりだ。この書状をもってダンバーの械匠ギルドへ出向かれよ、姫様の署名入りの推薦状だ!」
縁を金泥で飾られた上質紙の筒が、パキラの胸元に降ってきた。その閉じ紐に施された封蝋に、パキラは息をのんだ。
「……こ、これ! 王家の――!?」
〈マーガンディ、出立する!〉
赤毛の少女の問いに応えはなく、マーガンディはトラスカン峠への長く緩やかな上り坂を、飾り布をなびかせながら疾走し始めていた。
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