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『安寧を願う木』
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ある平和な村にひとりの少女がおりました。
少女は類稀なる光の魔法の才能を持っており、光の乙女と呼ばれていました。
少女はその力で村人や旅人の怪我や病気を治していました。
皆は少女に感謝をし、穏やかな日々を送っていました。
ある日、闇に堕ちた魔王が現れたという報せが少女のもとに届きました。
話によると、その魔王は人に裏切られた悲しみで我を忘れて暴れているそうです。
その心の傷を癒せるのはあなただけだ、と周りの人々は少女に言います。
頼られた少女は魔王を憐れに思い、その対処を請け負いました。
貴重な光の乙女である少女を守るため、数人の騎士が少女と共に旅立ちました。
そこには少女の父親も混ざっていました。
道中、魔物達に襲われながらもやっとのことで魔王と相対した少女たち。
戦いは日を跨いで続き、少女は荒れ狂う魔王の心を癒し続けましたが、少女を守る騎士たちは次々に倒れてゆきました。
少女の力でも治せない傷を負わせるほど、魔王は強かったのです。
夜が明け朝陽が昇り始めた頃、魔王の動きは大分鈍くなっていましたが、残ったのは父親とひとりの騎士のみとなっていました。
討伐が不可能だと考えた騎士は少女と共に魔王を封じることにしました。
どうにか封印は成功しました。
しかし魔王は眠る直前に涙を流しながら、独りは嫌だ、と少女に呪いをかけてしまったのです。
呪いを受けた少女はそれまでと一変して周りの命あるものを壊してしまうようになりました。
殺してくれと少女は頼みますが、残ったふたりにそんなことはできません。
己が周りを傷つけてしまうと悲しみに暮れる少女の姿を嘆いた父親は、少女の呪いを己の身に移しました。
そしてその身を貫いて息を引き取ったのです。
その後、父親の死を悼み泣き続ける少女を騎士は慰め支え続け、やがてふたりは恋人となりました。
驚いたことに、その騎士は王国の王子様でした。
王様はたいへん感服され、ふたりは救国の英雄として互いに支え合いながら国を導いてゆきました。
魂の湖へたどり着いた父親は、大きな木の下で心が癒え、呪いが解けるのを待ちながら少女たちの幸せを願い続けたそうです。
----
魂の湖=あの世
あまりにも執筆が進まないので申し訳程度に御伽話を投下。
本編でも、番外でもない、いつかあったかもしれないおはなし
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しかし魔王は眠る直前に涙を流しながら、独りは嫌だ、と少女に呪いをかけてしまったのです。
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そしてその身を貫いて息を引き取ったのです。
その後、父親の死を悼み泣き続ける少女を騎士は慰め支え続け、やがてふたりは恋人となりました。
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