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プロローグ
ある古人の回顧
しおりを挟む未だに想像することがあるのです。
後悔しても足りなくて、諦めきれずに夢を見てしまうのです。
私は貴女に恩返しをしたかったの。
今度こそは穏やかに過ごせるようにと出来る限り悪意から遠ざけようとしました。
けれど貴女は自分からそれに飛び込んで行ってしまいました。
結局私は貴女に救われるばかりで、貴女を守ることもできませんでした。
『護ってくれて、支えてくれて、ありがとう。』
そんなことを言って貴女はまた、あの時と同じように傷つくことを選んでしまいました。
自分の傷が誰かを救う代償だと、信じて疑わずに。
私が我儘を言って、泣いて止めようとする姿にすら心を痛めて。謝る必要なんてどこにもないのに、目に涙を溜めながら謝って、けれども最後は去ってしまいましたね。
次こそは、という淡い期待を抱いていたのです。けれど、そんなものは簡単に砕け散ってしまいました。
ああ、やはり。帰ってきてはくれないのですね。
貴女が救った者達は与えられた日常をそれと知らずに甘受し続けています。
貴女の言葉を聞き入れず、勝手に危機に陥っておきながら、助けられたことすら自らの日頃の行い故だと思い込んで。
……どうして貴女を苦しめたあの男まで許してしまったの。
貴女が犠牲になってまで救わなくとも、他に方法があったでしょうに。
それを優しさ故だと割り切れたなら、どれだけ楽でしょう。
ときに優しさは単純な悪意よりも残酷で、只の刃物よりも深く心を切り裂いてしまう。
貴女は己が持つ刃に気付いていたのでしょう。
少ないながらも貴女に救われ、貴女の力になりたいと思っている者が居ると、貴女が犠牲になる事で悲しむ者が居ると知っていたでしょうに。
私のことも、その者達のことも置いていってしまいましたね。
人間というのは強かで、私が塞ぎ込んでいる間に貴女の居場所を作り上げていました。
けれど、貴女の母君の御尽力が無ければ難しい事だったと思います。
貴女にはもう会うことは出来ないのでしょうか。また、此方に戻りたいと願っては貰えないでしょうか。
……恩返しのチャンスを、どうかもう一度、私に頂けませんか。
もし可能性があるのなら、その為に行動している者がいるのなら、私は……私も皆の様に前を向こうと思います。
今度こそ、貴女を守ると誓いましょう。
旅立っていった彼らが残した真白な聖堂で、いつの日か、また──。
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見切り発車。
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