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一章
エーテルアーマー
しおりを挟む教室を出て、近くの設置されたベンチに二人で並んで腰掛ける。
「それにしても……ミゼルくんは優しいですね」
「何が?」
何かクレアにしただろうか? クレアには道案内をしてもらったりで、逆に恩を感じているんだが……。
「私は未熟者ではありますが、この学園の一年生首席であることに変わりはありません……皆さんはその肩書きのせいか中々話しかけてくれる方はいません。ですが、ミゼルくんはそれでも依然と変わらず話しかけてくれています」
「当たり前だろ? たかがそれだけの理由で拒否する奴がどこにいるんだよ。ってかそもそもどんなことがあっても友達でいてくれる? って前に言ってたじゃないか」
「そうでしたね……覚えていてくれて大変嬉しいです」
とてもニコニコとした笑顔で言う。
「ところでミゼルくんはこれから街に決闘に行くのですか?」
「いやー今日はいいかなって思ってて……」「嘘ですね」
なんでバレたし……。
「私もこれから行く予定でしたので……一緒にどうです? 勿論無理強いはしませんが……」
そう言って上目遣いでじっと見つめてくる。
「……」
「……」
「……」
「……ああ、もう分かったよ! 俺も一緒に行くよ」
「それでは決まりですね」
無言のやりとりに根負けした俺は、しぶしぶながらも了承する。しかし、恐ろしいもんだなあの仕草。本人は無意識の内にやっているようだが……。
「……?」
「いや、こっちのことだから」
「では……そろそろ行きましょうか」
「ああ」
椅子から立ち上がろうとしたその時。
「おいおい! ちょっと待てや!!」
大きな怒鳴り声と共に、大きなバットを振りかぶったプリン頭の男がこちらを睨みつけるようにして見ていた。いや、正確にはクレアの方をか。
「なんでしょうか? これから街に決闘をしに行こうかと思っていた所だったのですが……」
氷のように冷たい口調でクレアが返答する。
「そうかよ! じゃあちょうどいいじゃねぇか。俺と決闘しようぜぇ! 首席様よぉ!! この天下のセルク・サンガー様が叩き潰してやるぜ‼」
「……いいでしょう。それでは始めましょうか。ミゼルくんは下がっていて下さい」
そう言うと二人は学生証を取り出して、操作する。
すると、頭上にAre You Ready? の文字が浮かびあがり、二人の体を白い光が包む。あれがエーテルアーマーなのだろうか。
クレアは何処から取り出したのか赤い長剣を、男は元より持っていたバットを構えた。
このままカウントダウンを待つものだと思っていた俺は驚愕した。
カウントダウンが終わる前に、男はバットに雷魔法の付与をして、無防備なクレアへとダッシュしたのだ。男は当然のように無属性の身体強化をしている為、クレアは反応できない。そう思って思わず目を瞑った。
だが。
「……これで終わりでしょうか?」
「は?」
目を開けると、クレアが剣を振るいバットを切断した姿が。その剣には微かに炎が纏わりついていた。
「すごい……」
「まさかカウントと同時に攻撃するなんていうことだけで、私を倒せるとでも思ったのですか? それくらいは予想がつきますし、恐らくそれをされる方は大勢おられるでしょう。ファイナルでも、されていた方は大勢いましたよ」
「だ、だまれ! うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」
男は魔力を高め、雷の上級魔法を打とうとするが……。
「遅いです」
クレアが剣を男に一閃させて、その体を包んでいた白い光が飛散した。
男はそのまま気絶してしまったようで、立ち上がる気配はない。
そしてクレアの頭上にはYou Win ! の文字が浮かび上がった。
相変わらずどういう仕組みなんだろうか。
クレアはふぅと一息付くとこちらに走り寄ってくる。
「すみません、お待たせしました」
「いや全然待ってないし。でもすごいなクレアは。首席の実力は本物だ」
「いえいえまだまだです」
謙遜だなと思っていると、違和感に気が付いた。
「あれ? クレア、さっきこいつに思いっきり剣降ってなかったっけ?」
「ええ」
「じゃあ、なんでこいつは無傷なの?」
男には地面についていた土が全身についているだけで外傷は全くと言っていいほどなかった。
「あれ? 説明されませんでしたか? エーテルアーマーをしていれば、体には傷はほとんど入らないんですよ?」
「え?」
思わず頭がフリーズする。
「く、クレア。もう一回言ってくれない?」
「ですから……エーテルアーマーをしていれば、体には傷はほとんど入らないんですよ?」
「う、嘘だろ……」
ということは、俺の体には傷がつかず、あの神の呪いも発動しないということに……。いやいやまだ試してもいないのに決めつけるのは早計というもの。
「……ど、どうしたのですか? 顔色が悪いようですけど?」
「なあクレア。決闘しなくてもそのエーテルアーマーって出せるか?」
学生証をクレアに取り出して見せる。
「ええ、出せますよ。ここをこうして……っと! はい出来ました」
クレアが俺にも見えるように操作すると、俺の体を白い光が包んだ。だからといって今のところ変化はわからない。
とりあえず、その辺りに落ちていた石を拾う。クレアは怪訝な顔をするが、まあ見ててくれと言って、石に目を向けた。
俺はこの石の尖ったところで、自分の腕に傷をつけた。
いつも通りならば、傷をつけた瞬間に石が割れ、傷も元通りに戻る。
だが。
「……」
「ミゼルくん、さっきから何を……」
「……き、傷がつかない」
俺は血の気を失い、そのままその場にへたりこんだ。
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