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番外編1:甘い煙と夜のシーシャバー〜揺らめく大人の色香〜
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【前書き】
今回は、番外編でちょっと大人なシチュエーションでドキドキをお届けします。普段とは違う二人の甘い時間を楽しんでください!
ーーーーー
「あ~……ダメだ、今日も筆が進まない……」
ソファに倒れ込みながら、紫はうんざりとノートパソコンを見つめる。
画面には、開きっぱなしの原稿ファイル。カーソルが瞬いているだけで、文章はひと文字も増えていない。
「もうちょっとで形になるって思ってたのに……なんでこうなるの」
指先でこめかみを揉んでいると、不意にスマホが震えた。
画面に表示されたのは、カイからのメッセージ。
『今夜、シーシャバー行かね?気分転換しようぜ』
「……シーシャバー?」
思わず声に出して呟いてから、紫の表情がぱっと明るくなる。
「うん、行きたい!」
気づけば、立ち上がってクローゼットを開けていた。
いつもならTシャツにデニムで済ませてしまうけど、今日はちょっとだけ、大人っぽい自分で会いたい。
ベージュのロングスカートに、落ち着いたグリーンのトップス。
耳元に揺れる小さなピアスをつけて、髪をゆるく巻いて。
最後に、小さめのバッグにノートパソコンを入れて——たぶん使わないけど、お守り代わりに。
「どうかな……変じゃないよね?」
鏡の前でくるっと一回転して、自然と笑みがこぼれる。
「よし、行ってこよう。……カイに会いに」
待ち合わせの駅前。
人混みの中、ひときわ目を引く大きなシルエットが、紫に気づいて手を振った。
「おーい、紫!」
カイの声が届くと、紫の心臓が跳ねた。
ひさしぶりに見る私服のカイは、黒のシャツに細身のパンツで、いつもより落ち着いた雰囲気。
髪を後ろにまとめていて、どこか大人びて見える。
「ごめん、待った?」
「いや、俺も今来たとこ。……って、お前……」
ふと視線を落としたカイが、言葉を止めた。
視線の先は、紫のコーディネート。スカートの裾が風で揺れ、上品なピアスがきらりと光る。
「めちゃくちゃ、可愛いじゃん……」
不意に照れたように笑うカイの言葉に、紫の頬がじんわり熱くなる。
「え、そ、そう……? ちょっと頑張っただけ……」
「そっか。頑張ってくれて、ありがとな。……じゃあ、行くか」
そう言って、カイが軽く手を差し出してくる。
自然すぎて、戸惑う暇もなくその手を取ると、指が絡まった。
「……初めてだから、色々教えてね」
「任せろ。俺のおすすめ、いっぱいあるから」
そうして2人は、灯りの落ちた静かな路地に佇むシーシャバーへ。
ドアを開けると、甘くてスモーキーな香りがふわりと漂ってきた。
店内は、まるで時間がゆっくりと流れているみたいだった。
照明は落とされて、天井から垂れる間接照明が足元をほんのり照らしている。
ガラスのランプが柔らかい色で揺れていて、スモークのような煙が静かに空中を漂っていた。
「すご……こんなとこ、初めて……」
紫が思わずこぼすと、カイがくすっと笑う。
「だろ?俺のお気に入りなんだ。静かで、居心地いいだろ?」
店員に案内されて、奥の個室に入ると、ふたりきりの空間がそこにあった。
低いテーブル、ふかふかのソファ、そして真ん中にはシーシャがセッティングされていて、まるで異国の部屋みたい。
「ちょ、なんか…すごい密室感…!」
紫がそわそわとソファに腰を下ろすと、すぐ隣にカイも腰を落とした。
距離が近い。さっきまでの外の空気が、嘘みたいに静かだ。
「緊張してる?」
紫は少しだけ身を縮めるようにして、小さく笑った。
「……緊張、っていうより……ドキドキしてる、かも」
「店の雰囲気に?」
「ううん、それもあるけど……カイにも、ね」
一瞬だけ、視線が合う。
それだけで、紫の胸は跳ね上がるように高鳴った。
ゆっくりと肩を抱かれるような空気の中で、まだ何もされてないのに、心だけがずっと触れられている気がする。
カイが唇の端を上げて、ふっと笑った。
「そっか……そりゃ、来てよかったな。紫の“ドキドキ”もらえたから」
紫が小さく笑うと、カイがメニューを開いて「どんな香りが好き?」と優しく聞く。
甘いフルーツ系、ミント、スパイスの効いたもの──ずらっと並ぶ名前に、紫の目が泳いだ。
「んー、どれがいいのか……わかんない……」
「じゃあ、俺が選んでいい?紫が好きそうなの」
「うん、カイのおすすめ……試してみたい」
そのやりとりすら、なんだかいつもよりドキドキする。
まるで大人の世界に迷い込んだみたいで、胸の奥がくすぐったい。
カイが店員に注文を済ませると、静かにふたりきりの時間が始まった。
カイがゆっくりとシーシャのパイプを手渡す。
「まずはゆっくり吸ってみて。焦らなくていいから」
紫は緊張しながらも、カイの指先に触れるパイプをそっと手に取る。
「こうやって…?」
軽く吸い込むと、ふわっと甘い香りが鼻をくすぐり、思わず顔がほころぶ。
「そうそう、その感じ。慣れてきたら、少しずつ深く吸ってみて」
カイの優しい声に導かれ、紫の心臓は速く鼓動を打つ。
「貸してみ?こんな風に…ふぅー」
パイプを返すと、今度はカイが同じように煙を吸い込み、ゆったりと吐き出す。
「良い香りだろ?」
煙が夜の空気にゆらゆらと溶けていく。
二人の視線が重なり、空気がぐっと熱くなる。
紫は思わず顔を赤らめ、カイの手がそっと肩に触れた。
紫は目を細めて見つめる。
「なんだか…いつもとは違う色気だね」
カイは煙を少しずつ吐き出しながら、にやりと笑う。
「煙は焦らず、ゆっくり楽しむのがコツだぜ?」
「ほら、…もっと香りを感じろよ」
紫も再びパイプを手に取り、ゆっくりと吸い込んでみる。
「慣れてきたか?」とカイが優しく聞くと、紫は少し照れながらも小さく頷いた。
「うん……でも、上手くできてる?まだ難しい」
カイはすっと紫の手を包み込みながら、低く囁く。
「香りを楽しんでりゃ大丈夫。ちゃんと俺が吸わせてやるから、安心しろよ」
二人の距離がまた少し縮まった気がして、紫の胸は甘く高鳴った。煙を吸い込む動作もだんだん慣れて、紫の表情にほんのり艶が差してきた。
「どうだ?香り、楽しめてるみたいだな?」
「うん…なんだか不思議な感じ」
「甘くてふわふわして、煙に包まれるって心地いいね」
カイは紫の頬にそっと手を添え、指先でゆっくりと撫でる。
「とろけた顔、…そそられるな」
その声に紫は胸が熱くなり、視線をそらす。
「もっと深く、感じていいんだぜ」
カイの声は甘く、でもどこかちょっとだけからかうような余裕があった。
「急がなくていい。ゆっくり、俺に預けてみろ」
焦らされながらも優しい言葉に、紫の心はほどけていく。
二人だけの秘密の時間は、甘やかしと焦らしが絶妙に絡み合って、
夜の闇に包まれながら、少しずつ距離も心も解けていった。
紫はふわふわの煙に包まれて、ゆるりとカイの肩に頭を預ける。
「……なんだか、すごく落ち着く」
囁くように言いながら、カイの温もりを全身で感じていた。
カイは優しく肩を回して、紫をそっと引き寄せる。
「その髪の香りも、香水もいいけど、何より今日の紫は特別だな」
じっと見つめながら、少しだけ口元を緩めた。
ふと視線が紫のスカートに落ちる。
ゆらゆらと揺れる裾が、いつもより大人っぽく、そして艶っぽく映った。
「おい、そのスカートの揺れ方はずるいだろ」
からかうように笑いながら、紫の腰に手を回す。
紫は顔をほんのり赤らめて、もじもじと笑う。
「カイだって、そのシャツ…ボタン開けすぎじゃない?」
指で軽くシャツの胸元をつまんでから、挑発するように見上げた。
カイはそんな紫を見下ろしながら、ゆっくりと口角を上げる。
「……お前を誘ってんだよ」
低く甘く囁いて、紫の髪に指を絡める。
「今日の紫は、格別に艶っぽい。そんな顔されたら……理性、持たねぇ」
カイの声が紫の耳元で震える。
紫がふわっと笑ってカイに寄りかかる。
スカートが揺れて、鎖骨がのぞく――視界に入るたび、カイの理性がじわじわ削られていく。
「なあ……それ、わかっててやってんのか?」
「……え?」
「とぼけんなよ。俺を誘ってんだろ?」
囁き声は耳に、体に、染み込むみたいに響く。
紫は一瞬で真っ赤になって、けれど否定も逃げもしない。
「こんなに色っぽいのに……俺に寸止めさせる気か?」
そう言ってカイは、あえて指先で頬を撫でるだけ。
キスも、抱き寄せることも、まだしない。
「……もっと、焦らされたい顔してるぞ」
沈黙の中、紫が小さく囁く。
「……焦らされすぎて、もう限界かも」
その一言で、カイのスイッチが入る。
「そうか――ならもう、止めない」
すぐに紫の腰を引き寄せ、唇を奪う。
深く、甘く、煙と熱に包まれたキス。
「我慢なんて、できるかよ」
低く、熱のこもった声で囁きながら、紫の背に腕を回し、ソファへ押し倒す。
煙の香りと、カイの体温が絡み合って、空気すら甘く濃密に変わる。
押し倒された紫。
煙がまだゆらゆらと漂う中、カイの手がスカートの上から膝をなぞる。
服の上からなのに、熱がじわりと伝わってピクリと震える。
「……ちゃんと触ってないのに、こんなに感じてんのか?」
「もう…分かってるのに、言わないでよ…」
カイの視線がとろけそうなくらい熱を帯びて、
紫の目を、唇を、胸元を、まるごと愛おしそうに見つめてくる。
「ほら……首も、赤くなってきてる」
指先でそっと首筋に触れて、なぞる。
ビクッと反応する紫の息遣いが、カイをさらに煽る。
「……なあ、紫。今、俺のことしか考えられないだろ?」
そう囁きながら、唇がゆっくり耳元に近づく。
「甘い香りに包まれて、とろける紫……たまんねぇな」
耳たぶに軽くキス。
吐息がかかるたび、紫の全身が甘く震える。
「……ねぇ、キスは?」
紫が揺れる声で問いかける。
カイは答えずに、指先だけで唇の端に触れて、
「俺のキス、そんなに欲しいのか?」と、また焦らしてくる。
「ねぇ……」
甘えた声で見上げられて、カイがようやく唇を重ねる。
けど、すぐに深くはしない。
「俺が本気出したら、お前……帰れなくなるぞ?」
濃厚なキスも、甘い手つきも、全部寸前で止める。
でももう紫は、動けないくらいとろけてる――脚に力が入らず、カイの膝の上に身を預けるしかなくて、
視線も、思考も、甘い煙と彼の体温に溺れてる。
「なぁ……執筆どうすんだ?書けそうか?」
ボソリとカイが囁く。
紫の耳元に、キスにもならない優しい吐息を落としながら。
紫はゆっくり首を振る。
「……むり、もう、無理だよ。頭、真っ白で……」
「ふふ……だろうな」
カイの指が、紫の顎を軽く持ち上げて、もう一度ゆっくりと唇を重ねる。
「でも、お前が“書きたい”って言ったんだよな」
唇が離れるたびに、紫の息が乱れる。
もう言葉を繋げるのも精一杯。
「じゃあ……ご褒美、もう一つだけもらってからにしろよ?」
そう言って、今度は首筋に長めのキス。
パルスのように全身に痺れが走る。
「…ご褒美って……それ、書けなくさせるやつ…」
「知ってる。でも……もう十分気持ちよくなったろ?」
「……ぅん」
「だったら、後は俺に甘えてりゃいい」
肩を抱かれて、紫はそのまま寄りかかる。
ノートPCは鞄から出さないことにした。
「カイ……ねえ、もう今日は……執筆、お休みじゃだめ?」
「いいよ。俺が“書かせないようにしてる”んだしな?」
「……ずるい……」
紫がふっと笑って、目を閉じる。
カイの手がそっと髪を撫でる。
「…お前がとろけるくらい、甘やかすのが、今日のデートプランだからな」
カイが、耳元で囁くように言って、ニヤリと笑った。
紫は照れたように笑いながら、
ノートパソコンに、ふと視線を落とす。
「……今の気持ち、ちゃんと書けるようにしてみる」
「ん?」
「もうちょっとだけ、こうしてて……それから、頑張る。
書きたいことが、浮かびそうな気がするから」
紫の言葉に、カイは腕の中で小さく頷く彼女を見下ろして、満足そうに笑う。
カイが紫の頬に髪をかけながら、低く囁く。
「……これで、ようやくお前のスイッチ入ったな」
「これで書けるなら、また連れてきてやるよ」
紫が顔を上げると、カイは少しだけ口元を緩めて笑った。
「……俺のこと、もっと作品に残してくれていいんだぜ?」
紫は少し顔を赤らめて、視線を逸らしながらも小さく笑った。
「そ、そんな…私のことまで見透かして…ずるいよ、カイ…」
ぽっと頬を染めながらも、心の奥は嬉しく甘く蕩けていた。
再び重なる唇の、
ゆるやかな熱と香りに包まれながら──
夜のシーシャバーは、
二人だけの秘密の執筆空間になった。
ーーーーー
【後書き】
最後まで読んでいただきありがとうございました‼️今回の番外編は、思う存分じっくりと描きたくて長めになりました‼️自分なりに大満足の仕上がりです✨これからも二人の甘い物語をどうぞお楽しみに‼️
いいねいただけると励みになります✨良ければ感想もお待ちしてます‼️
今回は、番外編でちょっと大人なシチュエーションでドキドキをお届けします。普段とは違う二人の甘い時間を楽しんでください!
ーーーーー
「あ~……ダメだ、今日も筆が進まない……」
ソファに倒れ込みながら、紫はうんざりとノートパソコンを見つめる。
画面には、開きっぱなしの原稿ファイル。カーソルが瞬いているだけで、文章はひと文字も増えていない。
「もうちょっとで形になるって思ってたのに……なんでこうなるの」
指先でこめかみを揉んでいると、不意にスマホが震えた。
画面に表示されたのは、カイからのメッセージ。
『今夜、シーシャバー行かね?気分転換しようぜ』
「……シーシャバー?」
思わず声に出して呟いてから、紫の表情がぱっと明るくなる。
「うん、行きたい!」
気づけば、立ち上がってクローゼットを開けていた。
いつもならTシャツにデニムで済ませてしまうけど、今日はちょっとだけ、大人っぽい自分で会いたい。
ベージュのロングスカートに、落ち着いたグリーンのトップス。
耳元に揺れる小さなピアスをつけて、髪をゆるく巻いて。
最後に、小さめのバッグにノートパソコンを入れて——たぶん使わないけど、お守り代わりに。
「どうかな……変じゃないよね?」
鏡の前でくるっと一回転して、自然と笑みがこぼれる。
「よし、行ってこよう。……カイに会いに」
待ち合わせの駅前。
人混みの中、ひときわ目を引く大きなシルエットが、紫に気づいて手を振った。
「おーい、紫!」
カイの声が届くと、紫の心臓が跳ねた。
ひさしぶりに見る私服のカイは、黒のシャツに細身のパンツで、いつもより落ち着いた雰囲気。
髪を後ろにまとめていて、どこか大人びて見える。
「ごめん、待った?」
「いや、俺も今来たとこ。……って、お前……」
ふと視線を落としたカイが、言葉を止めた。
視線の先は、紫のコーディネート。スカートの裾が風で揺れ、上品なピアスがきらりと光る。
「めちゃくちゃ、可愛いじゃん……」
不意に照れたように笑うカイの言葉に、紫の頬がじんわり熱くなる。
「え、そ、そう……? ちょっと頑張っただけ……」
「そっか。頑張ってくれて、ありがとな。……じゃあ、行くか」
そう言って、カイが軽く手を差し出してくる。
自然すぎて、戸惑う暇もなくその手を取ると、指が絡まった。
「……初めてだから、色々教えてね」
「任せろ。俺のおすすめ、いっぱいあるから」
そうして2人は、灯りの落ちた静かな路地に佇むシーシャバーへ。
ドアを開けると、甘くてスモーキーな香りがふわりと漂ってきた。
店内は、まるで時間がゆっくりと流れているみたいだった。
照明は落とされて、天井から垂れる間接照明が足元をほんのり照らしている。
ガラスのランプが柔らかい色で揺れていて、スモークのような煙が静かに空中を漂っていた。
「すご……こんなとこ、初めて……」
紫が思わずこぼすと、カイがくすっと笑う。
「だろ?俺のお気に入りなんだ。静かで、居心地いいだろ?」
店員に案内されて、奥の個室に入ると、ふたりきりの空間がそこにあった。
低いテーブル、ふかふかのソファ、そして真ん中にはシーシャがセッティングされていて、まるで異国の部屋みたい。
「ちょ、なんか…すごい密室感…!」
紫がそわそわとソファに腰を下ろすと、すぐ隣にカイも腰を落とした。
距離が近い。さっきまでの外の空気が、嘘みたいに静かだ。
「緊張してる?」
紫は少しだけ身を縮めるようにして、小さく笑った。
「……緊張、っていうより……ドキドキしてる、かも」
「店の雰囲気に?」
「ううん、それもあるけど……カイにも、ね」
一瞬だけ、視線が合う。
それだけで、紫の胸は跳ね上がるように高鳴った。
ゆっくりと肩を抱かれるような空気の中で、まだ何もされてないのに、心だけがずっと触れられている気がする。
カイが唇の端を上げて、ふっと笑った。
「そっか……そりゃ、来てよかったな。紫の“ドキドキ”もらえたから」
紫が小さく笑うと、カイがメニューを開いて「どんな香りが好き?」と優しく聞く。
甘いフルーツ系、ミント、スパイスの効いたもの──ずらっと並ぶ名前に、紫の目が泳いだ。
「んー、どれがいいのか……わかんない……」
「じゃあ、俺が選んでいい?紫が好きそうなの」
「うん、カイのおすすめ……試してみたい」
そのやりとりすら、なんだかいつもよりドキドキする。
まるで大人の世界に迷い込んだみたいで、胸の奥がくすぐったい。
カイが店員に注文を済ませると、静かにふたりきりの時間が始まった。
カイがゆっくりとシーシャのパイプを手渡す。
「まずはゆっくり吸ってみて。焦らなくていいから」
紫は緊張しながらも、カイの指先に触れるパイプをそっと手に取る。
「こうやって…?」
軽く吸い込むと、ふわっと甘い香りが鼻をくすぐり、思わず顔がほころぶ。
「そうそう、その感じ。慣れてきたら、少しずつ深く吸ってみて」
カイの優しい声に導かれ、紫の心臓は速く鼓動を打つ。
「貸してみ?こんな風に…ふぅー」
パイプを返すと、今度はカイが同じように煙を吸い込み、ゆったりと吐き出す。
「良い香りだろ?」
煙が夜の空気にゆらゆらと溶けていく。
二人の視線が重なり、空気がぐっと熱くなる。
紫は思わず顔を赤らめ、カイの手がそっと肩に触れた。
紫は目を細めて見つめる。
「なんだか…いつもとは違う色気だね」
カイは煙を少しずつ吐き出しながら、にやりと笑う。
「煙は焦らず、ゆっくり楽しむのがコツだぜ?」
「ほら、…もっと香りを感じろよ」
紫も再びパイプを手に取り、ゆっくりと吸い込んでみる。
「慣れてきたか?」とカイが優しく聞くと、紫は少し照れながらも小さく頷いた。
「うん……でも、上手くできてる?まだ難しい」
カイはすっと紫の手を包み込みながら、低く囁く。
「香りを楽しんでりゃ大丈夫。ちゃんと俺が吸わせてやるから、安心しろよ」
二人の距離がまた少し縮まった気がして、紫の胸は甘く高鳴った。煙を吸い込む動作もだんだん慣れて、紫の表情にほんのり艶が差してきた。
「どうだ?香り、楽しめてるみたいだな?」
「うん…なんだか不思議な感じ」
「甘くてふわふわして、煙に包まれるって心地いいね」
カイは紫の頬にそっと手を添え、指先でゆっくりと撫でる。
「とろけた顔、…そそられるな」
その声に紫は胸が熱くなり、視線をそらす。
「もっと深く、感じていいんだぜ」
カイの声は甘く、でもどこかちょっとだけからかうような余裕があった。
「急がなくていい。ゆっくり、俺に預けてみろ」
焦らされながらも優しい言葉に、紫の心はほどけていく。
二人だけの秘密の時間は、甘やかしと焦らしが絶妙に絡み合って、
夜の闇に包まれながら、少しずつ距離も心も解けていった。
紫はふわふわの煙に包まれて、ゆるりとカイの肩に頭を預ける。
「……なんだか、すごく落ち着く」
囁くように言いながら、カイの温もりを全身で感じていた。
カイは優しく肩を回して、紫をそっと引き寄せる。
「その髪の香りも、香水もいいけど、何より今日の紫は特別だな」
じっと見つめながら、少しだけ口元を緩めた。
ふと視線が紫のスカートに落ちる。
ゆらゆらと揺れる裾が、いつもより大人っぽく、そして艶っぽく映った。
「おい、そのスカートの揺れ方はずるいだろ」
からかうように笑いながら、紫の腰に手を回す。
紫は顔をほんのり赤らめて、もじもじと笑う。
「カイだって、そのシャツ…ボタン開けすぎじゃない?」
指で軽くシャツの胸元をつまんでから、挑発するように見上げた。
カイはそんな紫を見下ろしながら、ゆっくりと口角を上げる。
「……お前を誘ってんだよ」
低く甘く囁いて、紫の髪に指を絡める。
「今日の紫は、格別に艶っぽい。そんな顔されたら……理性、持たねぇ」
カイの声が紫の耳元で震える。
紫がふわっと笑ってカイに寄りかかる。
スカートが揺れて、鎖骨がのぞく――視界に入るたび、カイの理性がじわじわ削られていく。
「なあ……それ、わかっててやってんのか?」
「……え?」
「とぼけんなよ。俺を誘ってんだろ?」
囁き声は耳に、体に、染み込むみたいに響く。
紫は一瞬で真っ赤になって、けれど否定も逃げもしない。
「こんなに色っぽいのに……俺に寸止めさせる気か?」
そう言ってカイは、あえて指先で頬を撫でるだけ。
キスも、抱き寄せることも、まだしない。
「……もっと、焦らされたい顔してるぞ」
沈黙の中、紫が小さく囁く。
「……焦らされすぎて、もう限界かも」
その一言で、カイのスイッチが入る。
「そうか――ならもう、止めない」
すぐに紫の腰を引き寄せ、唇を奪う。
深く、甘く、煙と熱に包まれたキス。
「我慢なんて、できるかよ」
低く、熱のこもった声で囁きながら、紫の背に腕を回し、ソファへ押し倒す。
煙の香りと、カイの体温が絡み合って、空気すら甘く濃密に変わる。
押し倒された紫。
煙がまだゆらゆらと漂う中、カイの手がスカートの上から膝をなぞる。
服の上からなのに、熱がじわりと伝わってピクリと震える。
「……ちゃんと触ってないのに、こんなに感じてんのか?」
「もう…分かってるのに、言わないでよ…」
カイの視線がとろけそうなくらい熱を帯びて、
紫の目を、唇を、胸元を、まるごと愛おしそうに見つめてくる。
「ほら……首も、赤くなってきてる」
指先でそっと首筋に触れて、なぞる。
ビクッと反応する紫の息遣いが、カイをさらに煽る。
「……なあ、紫。今、俺のことしか考えられないだろ?」
そう囁きながら、唇がゆっくり耳元に近づく。
「甘い香りに包まれて、とろける紫……たまんねぇな」
耳たぶに軽くキス。
吐息がかかるたび、紫の全身が甘く震える。
「……ねぇ、キスは?」
紫が揺れる声で問いかける。
カイは答えずに、指先だけで唇の端に触れて、
「俺のキス、そんなに欲しいのか?」と、また焦らしてくる。
「ねぇ……」
甘えた声で見上げられて、カイがようやく唇を重ねる。
けど、すぐに深くはしない。
「俺が本気出したら、お前……帰れなくなるぞ?」
濃厚なキスも、甘い手つきも、全部寸前で止める。
でももう紫は、動けないくらいとろけてる――脚に力が入らず、カイの膝の上に身を預けるしかなくて、
視線も、思考も、甘い煙と彼の体温に溺れてる。
「なぁ……執筆どうすんだ?書けそうか?」
ボソリとカイが囁く。
紫の耳元に、キスにもならない優しい吐息を落としながら。
紫はゆっくり首を振る。
「……むり、もう、無理だよ。頭、真っ白で……」
「ふふ……だろうな」
カイの指が、紫の顎を軽く持ち上げて、もう一度ゆっくりと唇を重ねる。
「でも、お前が“書きたい”って言ったんだよな」
唇が離れるたびに、紫の息が乱れる。
もう言葉を繋げるのも精一杯。
「じゃあ……ご褒美、もう一つだけもらってからにしろよ?」
そう言って、今度は首筋に長めのキス。
パルスのように全身に痺れが走る。
「…ご褒美って……それ、書けなくさせるやつ…」
「知ってる。でも……もう十分気持ちよくなったろ?」
「……ぅん」
「だったら、後は俺に甘えてりゃいい」
肩を抱かれて、紫はそのまま寄りかかる。
ノートPCは鞄から出さないことにした。
「カイ……ねえ、もう今日は……執筆、お休みじゃだめ?」
「いいよ。俺が“書かせないようにしてる”んだしな?」
「……ずるい……」
紫がふっと笑って、目を閉じる。
カイの手がそっと髪を撫でる。
「…お前がとろけるくらい、甘やかすのが、今日のデートプランだからな」
カイが、耳元で囁くように言って、ニヤリと笑った。
紫は照れたように笑いながら、
ノートパソコンに、ふと視線を落とす。
「……今の気持ち、ちゃんと書けるようにしてみる」
「ん?」
「もうちょっとだけ、こうしてて……それから、頑張る。
書きたいことが、浮かびそうな気がするから」
紫の言葉に、カイは腕の中で小さく頷く彼女を見下ろして、満足そうに笑う。
カイが紫の頬に髪をかけながら、低く囁く。
「……これで、ようやくお前のスイッチ入ったな」
「これで書けるなら、また連れてきてやるよ」
紫が顔を上げると、カイは少しだけ口元を緩めて笑った。
「……俺のこと、もっと作品に残してくれていいんだぜ?」
紫は少し顔を赤らめて、視線を逸らしながらも小さく笑った。
「そ、そんな…私のことまで見透かして…ずるいよ、カイ…」
ぽっと頬を染めながらも、心の奥は嬉しく甘く蕩けていた。
再び重なる唇の、
ゆるやかな熱と香りに包まれながら──
夜のシーシャバーは、
二人だけの秘密の執筆空間になった。
ーーーーー
【後書き】
最後まで読んでいただきありがとうございました‼️今回の番外編は、思う存分じっくりと描きたくて長めになりました‼️自分なりに大満足の仕上がりです✨これからも二人の甘い物語をどうぞお楽しみに‼️
いいねいただけると励みになります✨良ければ感想もお待ちしてます‼️
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担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
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