【完結】賞品は四人目 〜セッ◯スかデスゲームしないと出られない部屋に取引先の社長と閉じ込められたけど、運営が手緩い~ 【衝撃のラスト】

桐ヶ谷るつ

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【第八話】君の評価

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「み、見ました?」
「…………なにを?」
「……いえ、なんでもないです。それより今日は夕方に伺いますって、メッセージ送ったじゃないですか」
「そう? 気付かなかったなあ」

 プライベートの方でも連絡をしていたというのに、入れ違いになってしまったのか。それとも別件で顔を出す用があったのか。冷ややかに返された言葉が突き刺さり、それ以上の追求を阻害する。
 どちらにしても、顧客である彼を頻繁にオフィスへ呼び出すのは体裁が悪い。上司に見つかる前に移動せねばと思考を巡らせ、理人は営業部のミーティングルームの扉を開いた。

「来月のイベントのプロモ動画、サンプル上がってきてますよ」
「へえ、いい感じだね。どこかの運営さんとは大違いだ」
「営業かけてみようかなあ」
「異世界の会社相手に?」
「異世界の会社でも一件は一件です」

 今月も残すところあと一週間。二ヶ月ほどで年末となり、今年度の売り上げが決まる。同期の樹とはほぼ平行線、もしくは少し劣勢か。新規の顧客獲得数も既存客からの追加注文も、顔が広い彼はその気になればいくらでも取ってこれるのだろう。

 努力をしていないとは言わない。陽気な気性も幅広い人脈も、その人物を形成するものの一つであり、これまでに築き上げてきた歴史だ。他人と自分を比べたところで、生まれ持った素材が違えば育った環境も違う。不毛な妬みは健康を害するだけだと理解しながらも、根付いた思考はそう簡単には変えられない。一種の癖のようなそれはいつも、本人の意思とは別のところで作動するのだ。

「理人、寝てないだろ」
「ちょうどさっき仮眠とったところです」
「そうじゃなくて」
「……わかってますって、週末に寝溜めするようにしてるんですけど」
「一人じゃ寝れない?」

 カタッと席を立ち、理人の横へ回った一色は深い隈を刻んだ目元を見据える。ただの寝付きの悪さも、ここまで長引けは治療が必要な域に達した。悪夢を見る度に飛び起きて、どのくらい眠れているかは本人にもわからない。加えて、家にまで仕事を持ち込めば、ただでさえ少ない睡眠時間が削られた。

「今日はうちに泊まる?」
「まだこのあと営業部のミーティングが入ってるんです。それに今月はあと最低でも三件持ってこないといけなくて」
「数字だけが君の評価じゃないよ」
「数字だけが俺の評価です」

 普段はけして声を荒らげない理人も、数字のこととなれば目の色が変わる。色素の薄い瞳に映り込む数字の螺旋。バサリと切り捨てるように吐かれた言葉は鋭利な刃を従え、真っ直ぐに自身の胸へと突き刺さっていた。

「もう親の目を気にしてたころと違うんだから」
「あんなクソ親はどうでもいいんです。売上を出せない俺を会社は必要としてくれない、結果が出せない俺は社会のクズです」
「親の次は会社、会社の次は社会。そんなに自分を追い詰めて楽しい?」

 ぐっと噛み締めた唇を紐解くように当てられた親指。赤らんだ頬はなにを思い起こしたのか、理人は視線を逸らせ、部屋の奥に飾られた花を捉えた。
 ただ愛らしいという理由だけで存在を許された花。人も同じように、無償でその価値を与えられたならばどれだけ楽なことか。

「……僕は、君が今ここで息をしてくれてるだけでも嬉しいのに」

 否定的な言葉はいらないと封じられた口には甘い接触が施される。その巧みな舌遣いにまで嫉妬を覚えるのだから、本当にどうしようもないなと、理人は自嘲じみた笑いに瞼を伏せた。




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