【完結】賞品は四人目 〜セッ◯スかデスゲームしないと出られない部屋に取引先の社長と閉じ込められたけど、運営が手緩い~ 【衝撃のラスト】

桐ヶ谷るつ

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【第二十四話】僕の大切な人

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「好きだよ、理人」
「だ、め……っ、一色さん」
「大好き、理人」
「俺、は……好きじゃ、ない」

 唇の先が触れる手前でどうにか押し止め、理人は手のひらで一色の口元を覆う。その口から織りなされる睦言も、脳蕩かせる舌の温度も、受け入れてしまえばまた振り出しに戻ってしまう。
 やっと合わさった視線はすぐさま雫の中に溺れ、救いようのない情炎に喉が震えを帯びた。

「あなたを、好きになんてなりたくない……っ、努力して、惨めったらしく縋り付いても、見返りが得られなかったら死にたくなる。嫉妬に駆られてまで走り続けるのはもう嫌だ」

 目尻に溜まった涙が停滞し、視界を歪ませる。一色がどんな表情でそれを聞いていたのかはわからなくとも、その必死さは届いたのだろう。キスの代わりに触れ合った額は冷たく、美しい睫毛が情緒的に憂いを帯びる。

「こんなに伝えてるのに、まだ信じられない?」
「信じられるかどうかじゃないんです……あなたに愛されるために、なにを犠牲にすればいいのかがわからない」

 この冷厳な社会では居場所を確保するために代価が求められた。毎日が椅子取りゲーム、不用品だと判断されないように、席へしがみ付かなければならない。

 数字は正直だ。なにがいいか悪いのか一目でわかり、結果として手元に戻ってくる。それに対して愛なんてものは不安定な感情論に過ぎない。大半が搾取されて終わるだけ。人は欲深い生き物だ。いくら口で甘いことを垂れようと、その腹の奥では損得の計算が行われる。それが悲しくも現実であり、義両親との関係から学んだことでもあった。

「理人は誰に認められたいの? 社会なんて誰かが作った概念でしかないのに」

 一色は親指を理人の唇に押し当て、滞った憐憫を吐き出すように促した。夢の中で何度と繰り返されたその仕草。身に染み込んだ流れは理性を通さずに、内に秘めた思いを吐露させる。

「……拓さんの葬式に来てた人が言ってたんです、なんで生き残ったのが俺だったんだろうって。義両親だけじゃない、親戚も友人もみんな口を揃えて言ってました」

 毒を吐く度に、刃を持った言葉たちが哀傷を刻んでいく。堪え切れずに零れた涙はボロボロと大粒の雫になって頬を汚し、その心痛を露呈させた。

「兄さんの代わりに、俺が死ねばよかった……っ」

 ぐっと喉を押し潰して滲み出た感情の膿。濁流のように渦巻く心中は嫉妬と懺悔、そして幼いころに置き去りにしてしまった孤独感を引き連れた。

「理人、お願いだから、僕の大切な人にそんなこと言わないで」

 酷い音を立てて嗚咽する背を抱き寄せ、一色は赤く腫れた瞼の上に優しく口付ける。柔らかな接触と心地よい肌の温度を前にはプライドなど意味をなさないのだろう。理人は子供のように声を上げては喉を掠れさせ、自身の欠陥を覆い隠すためだけにキスを求めた。

「僕は君がここにいてくれるだけで幸せになれる……息をしてるだけでもいい、だからそんな酷いことを言わないで」

 息継ぎの度に注ぎ込まれる囁きは、いつになればその腹部まで辿りつくのか。一色は理人のうなじへと手を回し、角度を変えては接続を深めた。

「君はどうすれば自分を許してあげられるんだろうね」

 スーツという甲冑で身を包み込み、社会という戦場を駆ける彼はまだこんなにも未熟な声で泣く。成長過程で分離してしまった、大人と子供の自分。成長が止まった心は静かに主へと歩み寄り、愛に臆病になってしまったもう一人の身体を優しく抱き締めた。




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