小石投げたら魔王が消し飛んだんですけど!?

真鯛浜池

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第一章 最強投擲少女、爆誕

第三話 脳筋少女、お金持ちになる

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 ―――朝になった。

 起きたら元の世界に戻ってないかなとか思ったりしたけど、そんな甘くなかった。メイドさんに起こされた。

 「おはようございます、ミズキ様。申し訳ありませんが、アルヴィン様とマルテ王子が客間でお待ちですのでお越しいただけますか?」

 ・・・ん?王子?
 王子って国の王の子?エライヒト?

 「あの、私偉い方へのマナーとか礼儀とか全然わからないんですけど・・・!」
 「マルテ王子はお優しい方なので大丈夫でございますよ。アルヴィン様もミズキ様のご事情はお話しているみたいなので、問題ないかと思われます」

 ええ・・・そうは言われても緊張するし怖いものは怖いよ・・・
 どうせなら昨日みたいにいきなりポンッと呼び出されたほうがまだマシだよ・・・

 「お着換えはこちらにご用意してありますので、お着換えになりましたらお呼びくださいませ。廊下でお待ちしております」

 メイドさんが告げるだけ告げて廊下に出ていく。
 当然だけど私に選択肢はないらしい。

 (勘弁してよ~・・・)

 そう言っても助けてくれる人なんて誰もいるはずもなく。
 私は重い体を動かして用意してもらった服に着替えた。
 昨日のお風呂上がりに用意してもらった服よりも更に豪華になっていた。


◇―◇―◇―◇―◇


 「アルヴィン様、マルテ王子。ミズキ様をお連れいたしました。」
 「うん、ありがとう。下がっていいよ。何かあったら呼ぶ」
 「かしこまりました」

 メイドさんに案内してもらって、客間へとやってきた。
 なんていうんだろう。大食堂とかにも驚いたけど、客間もとてつもなく広い。
 ソファもめっちゃふかふかそうだし。20人くらい座れそうなくらい置いてるし。

 「ミズキ、起こしちゃってごめんね。できるだけ寝かせてあげたかったんだけど、マルテが忙しくてあまり時間が取れなくてね」

 今日は鎧ではなく、貴族服?を着たアルヴィンさん。

 「貴女がミズキか。私はレーリス王国第一王子、マルテ・レーリス。気軽にマルテと呼んでくれ」
 「い、石守瑞希です、よろしくお願い致しますマルテ王子様」

 緊張しすぎて自分で何を言っているか全くわかってない。ダメだ・・・

 「あっはは!緊張しなくていいよミズキ!とりあえず座って!マルテもここは僕の家なんだから普段通りでいいよ普段通りで」
 「そうか?俺はこれが素なんだがな・・・善処しよう」

 王子が苦笑いしながら話しかけてくれる。
 うん、これなら大丈夫だ。緊張もほぐれた。座らせてもらう。

 「さ・・・てと。色々ミズキに話さないといけない事はあるんだけど、僕からはいつでも話せるから先にマルテの用事を済ませちゃうね」
 「用事ですか?」

 国の王子様が私に何の用だろう。いや、魔王の事なんだろうけど。

 「そうだな、まずは魔王デイブの討伐。この事について王国を代表してお礼を言わせてもらいたい。また後日王宮で表彰があると思うが、先に俺個人から言わせてもらおうと思ってな」
 「いえ、そんな!私もなんでああなったのかわかっていませんから!」
 「そうは言ってもミズキが魔王を討伐したのは事実だからな。国からの恩賞も出ている。受け取ってくれ」

 王子から麻袋を渡される。チャリチャリなっているしお金だろうか?めちゃくちゃ重い。かなり入っていそう。

 「ミズキは異世界からやってきたと聞いている。この国の通貨の価値等はわからないと思うが、その弱みに付け込んで恩賞金を減らしたりはしていない。安心してくれ」
 「いえあの、貰えるだけでもありがたいです!むしろ貰うのも申し訳ないというか」
 「ふむ・・・アルヴィン、異世界人というのは謙虚なのだな」
 「ミズキが特別そうってだけかもしれないけどね」

 アルヴィンさんが笑いながら言う。いえ、本当に石投げただけでお金貰うのが申し訳ないだけなんです。

 「その袋の中のお金の事は後で僕から説明するとして・・・もう一つ、ミズキに決めてもらわなければいけない事があってね」
 「決める事・・・ですか?」
 「うん、その・・・この世界にきて2日目のミズキに本当は決めてもらうような事じゃないんだけどね・・・」

 アルヴィンさんが申し訳なさそうに話す。え?そんな面倒な事なの?

 「まあその・・・貴族として領地が与えられるから、その領地をどこにするかっていうのを決めて貰わないといけなくてね?」
 「貴族!?!?!?領地!?!?!?」

 え?何言ってるのこの勇者様?
 貴族とか領地とか意味のわからない言葉ばかり出てきたよ?脳筋ゴリラ女には理解が追いついてないよ?
 確かに最初に会ったあの日、恩賞が出るとかは聞いてたけどそこまでぶっ飛んだ話になるのは聞いてないよ?

 「いやもちろん、領地を一人で治める訳じゃないしミズキは何も知らないのは僕もわかってるからミズキが覚えるまでは僕が代行する。どうしても爵位と領地を与えるって王様が言い張っててね・・・」
 「この国では子爵になると屋敷とその屋敷がある街を、伯爵になると小規模の領地を与えられると決まっていてな。親父が最低でも伯爵の地位を与えないと国の面子に関わると俺とアルヴィンの意見を聞いてくれんのだ」

 二人は、異世界からきた若い女性にそこまでの負担はかけられないと反対してくれたらしいけど、王様が断固として聞き入れてくれないらしい。勘弁してください王様・・・

 「で、でもこんないきなり現れた小娘にそんな事しちゃったら他の貴族の方とか絶対怒りますよね?やめたほうがいいですって!」
 「俺もそう思って女男爵、せめて子爵にしてアルヴィンの元で勉強してからにしろって親父に言ったんだがな・・・」

 いえ、それでもやりすぎです王子。そもそも2日目にして貴族とか重いですって。

 「ん~、ミズキの元の世界がどうだったかはわからないんだけど、この世界だと強さが正義・・・とまでは言わないけど、力のある者が上に立つ世界なんだ」
 「実際、アルヴィンも元は平民の出の冒険者だからな。それが数年で公爵になって最強の勇者と呼ばれる存在にまでなった」
 「それは恥ずかしいから置いといてほしい・・・。で、ミズキは下手をすれば国を滅ぼしかねない魔王を倒しちゃったんだ。王様が張り切っちゃうのも無理ないんだよね」

 いや、それでも無理ですって。勘弁してくださいって。
 
 「その・・・できれば一番下というか、限界までその恩賞?って下げられませんか・・・?やっぱり私には無理です・・・」
 「ふむ・・・親父に本人が拒絶しているともう一度相談はしてみよう。だが結果には期待しないでくれ。親父は一度決めた事は全く変えんのだ」
 「本ッッッ当に嫌なんで!!!!お願いします!!!!」
 「お、おう・・・善処しよう・・・」

 本当にお願いします、王子。私の平穏な生活・・・が送れるかはわからないけど、その生活を守ってください・・・

 その後、王子は用事があるとの事で帰っていった。

 ちなみに貰ったお金だけど、大金貨1000枚でした。
 価値がわからないのでアルヴィンさんにわかりやすく例えてほしいと言ったら、

 「そうだね・・・今、僕の住んでるこの屋敷。大体だけど大金貨600枚だよ」

 ・・・と仰られました。
 この異世界にきて2日目。なんかとんでもない大金持ちになっちゃいました。


◇―◇―◇―◇―◇


 [補足]この世界での通貨の価値をもしも日本円に換算した場合
 (主人公は知りません)
 
 銅貨10円 大銅貨100円 小銀貨1,000円 
 大銀貨10,000円 小金貨100,000円 大金貨1,000,000円
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