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32:穏やかな日々
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ジュリウスがマクミラン家で生活をするようになってから半年ほど時間が経ち、二人は殆どの時間を一緒に過ごすようになった。
辺りは初夏の匂いを纏わせ始め、二人が出会った季節がやって来ていた。
朝早く、涼やかな空気の中二人は庭を散歩し、その後朝食を食べてから家庭教師と勉強をする。その後、刺繍の時間を兼ねたティータイムを行い、昼食を食べてからは、アリシアは剣や乗馬に、ジュリウスは刺繍や菓子作りに精を出し、ジュリウスが作った茶菓子を食べる。
そうして一日を締めくくるように、二人は邸の中を静かに歩くのだった。
「アリシア、ザックさんがまた迷路を新しくしてくれたんですって。明日行ってみましょうよ」
「またか? この間新しくなってから、それほど時間が経ってない気がするんだが」
「僕を飽きさせないようにと思ってくれているようですね。最近は友人の物書きに頼んで謎解きを考えているとか」
マクミラン家は、じゃじゃ馬お嬢様の婚約者であるジュリウスを歓待した。特に庭師のザックは、ジュリウスが体調管理の為に庭を散歩しているのを知ってすぐ、小さな迷路を作り上げた。少しでもジュリウスが楽しんで散歩が出来るようにとの配慮だったが、あまりにジュリウスが楽しそうにしているものだから、ザックの方も楽しそうに迷路を作っている。
とはいえ、そう頻回に変更するわけにもいかず、友人に頼んで謎を考えてもらい、宝探しのようなものを計画しているのだとか。
「まあ、ジュリウスを楽しませようという姿勢は褒めたたえるべきだな」
そう言いながら、アリシアはジュリウスが作ったゼリーを口に運んだ。
「ん、ふるふるで美味いな。中に閉じ込められた果物が正反対の食感で、楽しい。宝探しでもしているみたいだ」
「でしょう? 普通に作ると獣臭くて食べられたものではなかったんですけど、臭味を出さないように弱火で数時間煮込んで、レモン汁で臭味を緩和して。紆余曲折を経て、どうにか食べられるものが出来たんです」
何度も失敗したのだと、ジュリウスは楽しそうに笑う。その笑顔に、この一年で、描いていたはずの未来から随分遠い所へ来たものだと、アリシアはしみじみと思った。
男らしいその容貌に一目ぼれし、この婚約を承諾した。それなのに木登りすら出来ない病弱っぷりに激怒し、婚約を破棄したいと思ったはずなのに。
今や、彼が隣に居るということに安心感を覚えている。
「ジュリウス、私と婚約してくれてありがとう」
「へ? 急にどうしました?」
「いいや、ただ、言いたくなっただけだ」
「そうですか? 僕こそ、ありがとうございます」と、愛らしい婚約者は不思議そうにしている。
日差しが穏やかな時間に数十分だけしか歩けなかった体は、何度も熱を出し、その度にアンドレが控えの間から飛んできた。皆が心配そうにするたびに、彼は申し訳なさそうにし、早く良くなろうと無理をして、アンドレに「合言葉は?」と怒られていた。
そんな彼が、朝夕と体を動かせているほどに体調が改善されてきていて、感慨深いものだと、アリシアは澄み渡る空を見つめる。
「ジュリウス、明日は午後から外出しないか?」
「え! 外出ですか?」
「ああ、貴方も大分体調が良くなってきただろう? アンドレ医師に確認を取ってみて、許可が出たら、フェリシタードに行かないか?」
「い、良いんですか!?」
破顔するジュリウスに、絶対に許可をもぎ取ってやろうとアリシアは思ったのだった。
◇ ◇ ◇
「さ、そろそろ行こうか」
あの後アンドレから許可を得た二人は、短時間で帰宅すること、休憩を挟むこと、人混みを割けることを条件にジュリウスの外出は許可された。
「はい! フェリシタードに行くの、楽しみです」
馬車へと乗り込んだ二人はカフェへと向かう。
「人気店って言ってましたよね、並ぶでしょうか」
「予約が取れている。シフォンケーキの発売から一年経つからな、それほど難しいことではなかったよ。それよりも、他にどこか行きたい場所はあるか?」
短時間で帰ってこいとの指示ではあったが、休憩を挟めと言っていたから、もう一か所くらいならどこかに行けるだろう。
「んー、あまり出かけないので分かりません」
「そうか、なら、目についた所に入ろう」
ガタゴトと石畳を走っていた馬車が、目的地に着いて止まる。
「さ、行こう」
店内に入ると、店員が現れる。女性客が多いらしく、落ち着いていながらも可愛らしさがある店内に入り、奥まった場所へと案内される。
「な、なんだかドキドキしますね」
「そうか? ジュリウスは何が食べたいんだ?」
「ええっと、やっぱりシフォンケーキ……いや、でも季節のタルトも食べてみたいな。どっちにしよう」
「どちらも食べれば良いじゃないか。今のジュリウスなら食べられるだろう?」
食べられなさそうだったら、持ち帰りにしてもらえばいいとアリシアは言う。それもそうだと、ジュリウスは二つのケーキを頼んだ。
「んー、やっぱり美味しいです」
アリシアは美味しそうに食べているジュリウスを見つめた。ジュリウスが作ってくれる菓子以外で、アリシアが美味しいと感じたものは少なかった。これもアリシアにとっては甘すぎるのだろうと思いながら見つめていると、ジュリウスがフルーツタルトからベリーを一つフォークで刺し、アリシアの口元へ持っていった。
「フルーツなら、アリシアも食べられるでしょう? どうぞ」
「い、いや」
ジュリウスが使っていたフォークで、ジュリウスの手から食べさせられるのは恥ずかしすぎると、アリシアはたじろいだ。
「どうぞ? このタルトは下にクリームが敷いてあるけど、上のフルーツなら食べられますよ?」
「うぐっ、あーん」
善意しかない笑みに負けたアリシアは、ジュリウスから果物を食べさせられたが、まったく味が分からなかった。
◇
「はー、美味しかったです」
店外へと出たジュリウスが、満足そうな声を出す。
「ああ、喜んでくれたなら良かったよ。腹ごなしに近くを散策するか」
「はい!」
花屋や仕立屋、宝石店などが立ち並ぶ道を進んでいく。
「わぁ、綺麗ですね」
ジュリウスが感嘆の声を上げ、窓ガラスへと視線を向ける。雑貨屋らしき店の窓から刺繍が施された布製の鞄があった。
「気になるなら入ってみようか」
「はい、行きましょう」
カラコロとドアベルを鳴らして中に入ると、色々な雑貨が雑多に置いてある。
「ペーパーウェイトにキャンドル、コップもあるのか」
「本当に、たくさんの雑貨がありますね。このペーパーウェイト、猫の形をしているんですね。あ、練り香水なんてのもあるみたいですよ。見てみませんか?」
「ああ。そうしよう」
それぞれの花や果物をイメージさせる色で、ラベルに絵が描かれている。
「ジュリウス、これなんか貴方に良いんじゃないか? ラベンダーとミントの匂いがするらしい。安眠や、鎮痛なんかに効果があるんだろう?」
「なら、アリシアはこれが良いんじゃないですか? 柑橘とお茶の匂いですって。柔らかなお茶の凛とした香りに柑橘の匂いが爽やかで。アリシアらしいと思います」
お互いに、自分が好む匂いではなく、相手に似合う匂いを選んでいる。甘酸っぱい二人を、周りはほのぼのと見守っていた。
「「あ」」
互いが選んだ匂いの練り香水を買おうかと話していた二人が、言葉一つに顔を見合わせる。
「桃の匂いがする。初めてのお茶会でジュリウスが選んだのもピーチティーだったな」
「このネロリの柑橘の香りは、アリシアに作ったレモンタルトやオレンジの砂糖煮を混ぜたクッキーを思い出しますね。あの時の爽やかさと、ほんのりとした甘さがアリシアみたいです」
声が被った二人は、くすくすと笑い、これを買って帰ろうと話し合った。
「では、購入してくる」
「え、僕が買ってきます」
「良いんだ、ジュリウスは私にドレスを贈ってくれただろう?」
むうっと拗ねたような顔をしたが、ジュリウスはアリシアに購入を譲ってくれたらしい。すぐに帰るから待っていてくれとアリシアはレジへと向かった。
辺りは初夏の匂いを纏わせ始め、二人が出会った季節がやって来ていた。
朝早く、涼やかな空気の中二人は庭を散歩し、その後朝食を食べてから家庭教師と勉強をする。その後、刺繍の時間を兼ねたティータイムを行い、昼食を食べてからは、アリシアは剣や乗馬に、ジュリウスは刺繍や菓子作りに精を出し、ジュリウスが作った茶菓子を食べる。
そうして一日を締めくくるように、二人は邸の中を静かに歩くのだった。
「アリシア、ザックさんがまた迷路を新しくしてくれたんですって。明日行ってみましょうよ」
「またか? この間新しくなってから、それほど時間が経ってない気がするんだが」
「僕を飽きさせないようにと思ってくれているようですね。最近は友人の物書きに頼んで謎解きを考えているとか」
マクミラン家は、じゃじゃ馬お嬢様の婚約者であるジュリウスを歓待した。特に庭師のザックは、ジュリウスが体調管理の為に庭を散歩しているのを知ってすぐ、小さな迷路を作り上げた。少しでもジュリウスが楽しんで散歩が出来るようにとの配慮だったが、あまりにジュリウスが楽しそうにしているものだから、ザックの方も楽しそうに迷路を作っている。
とはいえ、そう頻回に変更するわけにもいかず、友人に頼んで謎を考えてもらい、宝探しのようなものを計画しているのだとか。
「まあ、ジュリウスを楽しませようという姿勢は褒めたたえるべきだな」
そう言いながら、アリシアはジュリウスが作ったゼリーを口に運んだ。
「ん、ふるふるで美味いな。中に閉じ込められた果物が正反対の食感で、楽しい。宝探しでもしているみたいだ」
「でしょう? 普通に作ると獣臭くて食べられたものではなかったんですけど、臭味を出さないように弱火で数時間煮込んで、レモン汁で臭味を緩和して。紆余曲折を経て、どうにか食べられるものが出来たんです」
何度も失敗したのだと、ジュリウスは楽しそうに笑う。その笑顔に、この一年で、描いていたはずの未来から随分遠い所へ来たものだと、アリシアはしみじみと思った。
男らしいその容貌に一目ぼれし、この婚約を承諾した。それなのに木登りすら出来ない病弱っぷりに激怒し、婚約を破棄したいと思ったはずなのに。
今や、彼が隣に居るということに安心感を覚えている。
「ジュリウス、私と婚約してくれてありがとう」
「へ? 急にどうしました?」
「いいや、ただ、言いたくなっただけだ」
「そうですか? 僕こそ、ありがとうございます」と、愛らしい婚約者は不思議そうにしている。
日差しが穏やかな時間に数十分だけしか歩けなかった体は、何度も熱を出し、その度にアンドレが控えの間から飛んできた。皆が心配そうにするたびに、彼は申し訳なさそうにし、早く良くなろうと無理をして、アンドレに「合言葉は?」と怒られていた。
そんな彼が、朝夕と体を動かせているほどに体調が改善されてきていて、感慨深いものだと、アリシアは澄み渡る空を見つめる。
「ジュリウス、明日は午後から外出しないか?」
「え! 外出ですか?」
「ああ、貴方も大分体調が良くなってきただろう? アンドレ医師に確認を取ってみて、許可が出たら、フェリシタードに行かないか?」
「い、良いんですか!?」
破顔するジュリウスに、絶対に許可をもぎ取ってやろうとアリシアは思ったのだった。
◇ ◇ ◇
「さ、そろそろ行こうか」
あの後アンドレから許可を得た二人は、短時間で帰宅すること、休憩を挟むこと、人混みを割けることを条件にジュリウスの外出は許可された。
「はい! フェリシタードに行くの、楽しみです」
馬車へと乗り込んだ二人はカフェへと向かう。
「人気店って言ってましたよね、並ぶでしょうか」
「予約が取れている。シフォンケーキの発売から一年経つからな、それほど難しいことではなかったよ。それよりも、他にどこか行きたい場所はあるか?」
短時間で帰ってこいとの指示ではあったが、休憩を挟めと言っていたから、もう一か所くらいならどこかに行けるだろう。
「んー、あまり出かけないので分かりません」
「そうか、なら、目についた所に入ろう」
ガタゴトと石畳を走っていた馬車が、目的地に着いて止まる。
「さ、行こう」
店内に入ると、店員が現れる。女性客が多いらしく、落ち着いていながらも可愛らしさがある店内に入り、奥まった場所へと案内される。
「な、なんだかドキドキしますね」
「そうか? ジュリウスは何が食べたいんだ?」
「ええっと、やっぱりシフォンケーキ……いや、でも季節のタルトも食べてみたいな。どっちにしよう」
「どちらも食べれば良いじゃないか。今のジュリウスなら食べられるだろう?」
食べられなさそうだったら、持ち帰りにしてもらえばいいとアリシアは言う。それもそうだと、ジュリウスは二つのケーキを頼んだ。
「んー、やっぱり美味しいです」
アリシアは美味しそうに食べているジュリウスを見つめた。ジュリウスが作ってくれる菓子以外で、アリシアが美味しいと感じたものは少なかった。これもアリシアにとっては甘すぎるのだろうと思いながら見つめていると、ジュリウスがフルーツタルトからベリーを一つフォークで刺し、アリシアの口元へ持っていった。
「フルーツなら、アリシアも食べられるでしょう? どうぞ」
「い、いや」
ジュリウスが使っていたフォークで、ジュリウスの手から食べさせられるのは恥ずかしすぎると、アリシアはたじろいだ。
「どうぞ? このタルトは下にクリームが敷いてあるけど、上のフルーツなら食べられますよ?」
「うぐっ、あーん」
善意しかない笑みに負けたアリシアは、ジュリウスから果物を食べさせられたが、まったく味が分からなかった。
◇
「はー、美味しかったです」
店外へと出たジュリウスが、満足そうな声を出す。
「ああ、喜んでくれたなら良かったよ。腹ごなしに近くを散策するか」
「はい!」
花屋や仕立屋、宝石店などが立ち並ぶ道を進んでいく。
「わぁ、綺麗ですね」
ジュリウスが感嘆の声を上げ、窓ガラスへと視線を向ける。雑貨屋らしき店の窓から刺繍が施された布製の鞄があった。
「気になるなら入ってみようか」
「はい、行きましょう」
カラコロとドアベルを鳴らして中に入ると、色々な雑貨が雑多に置いてある。
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「本当に、たくさんの雑貨がありますね。このペーパーウェイト、猫の形をしているんですね。あ、練り香水なんてのもあるみたいですよ。見てみませんか?」
「ああ。そうしよう」
それぞれの花や果物をイメージさせる色で、ラベルに絵が描かれている。
「ジュリウス、これなんか貴方に良いんじゃないか? ラベンダーとミントの匂いがするらしい。安眠や、鎮痛なんかに効果があるんだろう?」
「なら、アリシアはこれが良いんじゃないですか? 柑橘とお茶の匂いですって。柔らかなお茶の凛とした香りに柑橘の匂いが爽やかで。アリシアらしいと思います」
お互いに、自分が好む匂いではなく、相手に似合う匂いを選んでいる。甘酸っぱい二人を、周りはほのぼのと見守っていた。
「「あ」」
互いが選んだ匂いの練り香水を買おうかと話していた二人が、言葉一つに顔を見合わせる。
「桃の匂いがする。初めてのお茶会でジュリウスが選んだのもピーチティーだったな」
「このネロリの柑橘の香りは、アリシアに作ったレモンタルトやオレンジの砂糖煮を混ぜたクッキーを思い出しますね。あの時の爽やかさと、ほんのりとした甘さがアリシアみたいです」
声が被った二人は、くすくすと笑い、これを買って帰ろうと話し合った。
「では、購入してくる」
「え、僕が買ってきます」
「良いんだ、ジュリウスは私にドレスを贈ってくれただろう?」
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