そのステップは必要ですか?  ~精霊の愛し子は歌を歌って溺愛される~

一 ことり

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第3部

ぎゅっってしていいよ?

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 「オリヴェル、急なことだが、新聞に出ていたようにヴァレリラルドの結婚相手を早々に決めなければならない。でないとエンゲルブレクトがヴァレリラルドに見合いを強要すると言っているんだ。エンゲルブレクトには困っているが、いずれそういう話も出てくるだろう。本人同士に結婚の意志があるなら、ヴァレリラルドの婚約者が内定したと発表したい。エルランデル公爵家として問題はあるか?」

 王太子の婚約者を決めるという国の重要案件のため、ベルンハルドの口調が重くなる。

 「私たちもアシェルナオが望むなら、反対はいたしません。ですがアシェルナオは13歳になったばかり。来月から初等科の2年生です。周囲が騒がしくなり、アシェルナオが勉学に集中できなくなるのは受け入れ難いです。そのあたりの配慮をお願いします」

 「わかった。婚約者が決定したとだけ発表しよう。ローセボーム、頼むぞ」

 「請け合いました」

 頷くローセボーム。

 「結婚だって」

 くすぐったい響きに、アシェルナオははにかんで笑う。

 「結婚するならナオとしかしないって決めていたんだ。私は嬉しい」

 ヴァレリラルドはすぐ近くにあるアシェルナオの顔を、おでこがくっつくくらい間近で見つめる。

 「僕も」

 ヴァレリラルドの大人になった魅力にあてられてアシェルナオは頬を赤らめる。

 『けっこんー』

 『おめでたいねー』

 『しあわせにねー』

 『ナオがしあわせ、みんなもしあわせー』

 『ちゅっちゅー』

 精霊たちが舞い踊ると、アシェルナオが手に持っている、ヴァレリラルドからもらったサネルマの花束から花の妖精が出てきた。

 『結婚するって? おめでとう』

 「まだ先の話だよ?」

 『人間なんてあっという間に年取るのよねー。じゃあ、前祝いねー』

 そう言うと花の妖精が両手を下から上にあげる仕草をした。

 はらはらと、白、ピンク、赤、黄、青、紫、色とりどりの花弁がヴァレリラルドとアシェルナオの上に舞い降りる。

 「ありがとう、妖精さん」

 祝福のお礼を言うアシェルナオに、

 「妖精?」
 
 ヴァレリラルドは突然降ってきた花弁を見上げる。

 「花の妖精さんが、結婚の前祝いだって」

 にっこり笑うアシェルナオに、

 「ナオ以外に花の妖精がいるのか」

 真顔でヴァレリラルドは呟く。

 『ナオは精霊の愛し子で妖精は私よ』

 失礼しちゃうわね、と、花の妖精は花の中に消えて行った。

 「ところで、王太子殿下。いつまでうちのナオ様を膝の上にのせておられるので?」

 テュコが険のある言い方をする。 

 オリヴェルがベルンハルドをせっついても状況が変わらないことに業を煮やしていた。

 「まだナオの成分が足りていない」

 ヴァレリラルドはアシェルナオのうなじに顔を寄せてクンクンと匂いを嗅ぐ。

 「ヴァル、僕おりるよ?」

 人に見られて恥ずかしいというより、ヴァレリラルドの息がうなじにかかってドキドキしているアシェルナオは、膝から降りようとした。

 「いまナオを離すと、ナオがまた遠くに行ってしまうかもしれないと思ってしまうんだ」

 耳元で切なげに言われると、8歳の頃の思い出が消えないアシェルナオは、自分のお腹に回されたヴァレリラルドの手に自分の手を重ねる。

 「どこにもいかないから大丈夫だよ? 心配なら、もっとぎゅっってしていいよ?」

 年長者が年少者に諭すように言うアシェルナオだが、その頭上ではヴァレリラルドがドヤ顔を見せていて、テュコは悔し気な顔を隠せないでいた。

 「ところでナオは今日で13歳なんだね? 閨教育は受けた?」

 閨教育は普通は12歳までに終わらせるもの。13歳になったアシェルナオは受けていて当然なのだが、

 「してませんよ」

 テュコが言いたくなさそうに答える。

 「閨教育……? 前にドーさんにしてもらったよ?」

 きょとんとした顔のアシェルナオに、ヴァレリラルドはオルドジフを怖い顔で見る。

 「え? あ? ああ、そういえば、以前エンロートで……言葉だけですよ」

 王太子に睨まれて、オルドジフは身の潔白を訴えた。

 あからさまにほっとするヴァレリラルドは、

 「婚約したんだ。ナオの閨教育は他の者にさせない。そのためにもお泊りさせます」

 ベルンハルドとオリヴェルに有無を言わさなかった。

 「殿下がナオ様にいかがわしいことをしないように、私もついていきますよ」

 テュコが言うと、

 「私たちも参ります」

 「ナオ様のご入浴は私たちがお世話します」

 控えていたアイナとドリーンも追随する。
 
 まだ13歳のアシェルナオの貞操の「て」の字も穢れてしまわないように3人で結託していた。
 
 「妃にもナオのことは言っていない。ナオのことを言えば会いたいと願うだろう。アネシュカにも会わせたい。オリヴェル、ナオを家族だけの晩さん会に招待させてほしい。その日は泊まらせてもよいだろうか」

 ベルンハルドに言われればオリヴェルも受け入れるしかなかった。

 「わあ。テンちゃんに会うの楽しみ」
 
 「ああ、妃も喜ぶだろう」

 「しかし、陛下」

 それでもアシェルナオをお泊りさせるのが不安なオリヴェルに、

 「ナオ、私からのプレゼントもあるんだ」

 ベルンハルドは楽しそうに笑った。
 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 病み上がりで職場の忘年会に行ったら、ひどい二日酔いになりました。
 丸一日経ってもだめです。
 明日の更新はお休みします(><;;

 くっ。私が二日酔いなんて・・・くっ・・・。         
 
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